ポストさんてん日記

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脳と記憶、記憶のしくみ

[ 2020/02/05 (水) ]
脳の勉強ノート、第5弾です。
脳内には、コンピュータのように情報をしまう記憶専用のハードディスクはなく、様々な仕方で記憶しているようです。その辺りの基礎的な勉強です。

目次

1.記憶の分類
2.海馬が記憶のゲートウェイ
3.記憶のカギを握るスパイン
4.思い出の記憶をになうのは「扁桃体」
5.鮮明だと感じるエピソード記憶も誤っていることがある
6.リプレイするほど長期記憶になる
7.ダニエル・シャクター博士(ハーバード大学の心理学者)による記憶のエラーの原因7種類
8.アルツハイマー病
9.関連エントリー

1.記憶の分類

保持時間
0.5~4秒程度感覚記憶感覚器官から得た刺激は、感覚記憶として瞬間的に保持されるのみで意識されない。
保持時間は感覚ごとに異なる。
数十秒程度短期記憶
ワーキングメモリー(作業記憶)とも呼ばれる。
聞いてからメモをとるまで、など意識的に留めておこうとした情報は、記憶の司令塔といわれる海馬前頭前野同義語前頭連合野)が担い、一時的に保存される。
短期記憶の容量は多くなく、ランダムな数字なら7±2文字程度が限界。
長期記憶(記憶の固定化)
下記のとおり

【長期記憶】
ちんじゅつ
陳述記憶
(宣言的記憶)

言葉や図形で表現できる記憶。
意味記憶
物の意味や人名、年号など、知識として蓄えられた記憶。
エピソード記憶
個人が経験した出来事の記憶。
例えば、昨日の夕食をどこで誰と何を食べたか、など。
非陳述記憶
(非宣言的記憶)
(手つづき的記)

無意識のうちに覚えている言葉で話せない記憶。
手続き記憶
運動技能、知覚技能、認知技能など・習慣。
同じ経験を反復することにより形成される。
一般的に記憶が一旦形成されると自動的に機能し、長期間保たれる。
自転車の乗り方や職人の技術、ヘビに対する本能的な怖れなど。
プライミング
前に入力された情報が、その後の情報に影響を与える条件反射的な記憶。
例えば、ピザと10回言ったあとに、「ひじ」を「ひざ」と言い間違えてしまう現象は、ピザというプライミング記憶が「ひじ」を「ひざ」と言い間違える影響を与えたことになる。


2.海馬が記憶のゲートウェイ

これらの記憶の中枢となるのは大脳辺縁系の海馬。私たちが全身の感覚から得た情報は記憶を担う海馬に伝わる。海馬には、出生後も神経細胞が生まれ変わっている歯状回と呼ばれる部位があり、新たな記憶の形成に重要な役割を果たしている。海馬は、入ってきた情報を整理して選別する。
海馬が記憶のゲートウェイ

作業をする間だけ覚えておけばいい記憶(ワーキングメモリー)は、前頭前野で処理される。
一方、長い間、覚えておくべき記憶は、海馬から大脳皮質へと転送される。これが長期記憶となるが、大脳皮質で記憶が長期保存されるといっても、記憶専用の特別な細胞でコンピュータのハードディスクのように貯蔵するのではない。

3.記憶のカギを握るスパイン

脳の神経細胞:ニューロン、シナプス、神経伝達物質で学んだように、樹状突起で前のニューロンから情報を受け取り、軸索の末端から次のニューロンに情報を送る。つまり、樹状突起は入力、軸索の末端は出力を担当。
このときのシナプス(ニューロン同士の接合部)で、受け側のニューロンの樹状突起にあるスパイン:棘突起きょくとっきが情報を受け取る。スパインとは「棘とげ」の意。
シナプスが脳の記憶素子
信号の刺激が弱いとスパインは小さいままで、一方、強い刺激を受けるとスパインが大きくなり信号が伝わりやすくなる。小さいスパインは消滅してしまうこともあるが、大きいスパインは残りやすくなる。すぐ忘れてもいい記憶は残らず、大切なことだけが長期記憶として脳に刻まれるのは、このため。
さらに、特定のシナプスが繰り返し強い刺激を受けると、長期にわたってシナプスの伝達効率がよくなる現象が見られる。これを長期増強:LTP:long-term potentiationといい、このLTPも、長期記憶をつくるのにとても重要。事実、繰り返し覚えたことは、いつまでも忘れない。
長期記憶はシナプスに繰り返し刺激を与えることで固定化されるため、「繰り返し学習」が効果的。情報の保存・再生・再保存を繰り返すことで、シナプスが増強され、記憶が安定して保たれる。

また、私たちはふとした瞬間に、ある出来事を鮮明に思い出すことがある。こうした記憶の痕跡のことを「エングラム」と呼び、単なる概念ではなく、実際に脳の中に存在するのではないかと考えられてきた。近年の研究では、特定の経験に対応する特定の記憶ネットワークがあることがわかっている。ある経験の記憶がつくられるときに同期活性化した特定のニューロン集団は、結びつきを強め、セットになって蓄えられる。何かのきっかけで、その一部のニューロンが刺激されると、ニューロン集団全体が活性化し、記憶全体がよみがえる。

4.思い出の記憶をになうのは「扁桃体」

個人的な思い出や強盗にあったときのように強い感情をともなう記憶には、感情(情動)をつかさどる脳の部位、扁桃体(海馬の近くにある)がとくに大きな役割を果たす。左右の扁桃体が損傷してしまった患者は、感情に訴えかける物語を見聞きした1週間後、その物語に関する質問への正答率が通常の人より低いことなどが報告されている。
情動とは、愛、喜び、悲しみ、怒り、恐怖、不安といった本能的で激しい心の動き。意識状態と同時に、顔色が変わる、呼吸や脈搏が変化する、などの生理的な変化が伴う。

扁桃体は快・不快や恐怖などの情動のセンター。
例えば、草むらにヘビがいるのを見たら、感覚情報を中継する視床を経て、大脳皮質で「ヘビ」として認識される。しかし、体はそれよりも早く反応し異常事態に気づく。これは、視床から扁桃体へ高速で情報が伝わるルートがあるため。
扁桃体は海馬や大脳皮質の記憶情報とも照合し、快か不快か、危険か安全かをいち早く判断。不快・危険であれば、即座に緊急事態モードに入り、視床下部に指令を出す。視床下部は、ストレスホルモンの分泌や自律神経の反応を促し、その結果、心臓がドキドキしたり血圧が上がる。この体の異常を大脳皮質が感知することで、人は反射的に逃げるという行動を起こす。
このように、恐怖の情動は、生き延びるために必要な行動を早急に引き起こし、「怖い」という意識的な感情は、あとからじわじわと襲ってくるもの。


5.鮮明だと感じるエピソード記憶も誤っていることがある

閃光記憶(フラッシュバルブ・メモリー)
2001年にアメリカでおきた同時多発テロなど 世界的な重大事件はいやがおうにも記憶に残る。このような場合は、長い時間が経ってからも、そのとき、どこでだれと、何をしていたかなどについても鮮明に思い出せることがわかっている。この記憶現象は写真のフラッシュをたくことになぞらえて閃光記憶(フラッシュバルブ・メモリー)と呼ばれる。その出来事が感情を大きく動かしたためや、重大事件は報道などでくりかえし見聞きするため、出来事を知ったときの周りの状況についての記憶に長く残ると考えられている。

閃光記憶はゆがむ
これらの記憶が鮮明だからといって正確だとは限らない。しかも、正確な記憶ではないのに確信度は強い場合がある。
閃光記憶がゆがむのは、何度も脳の前頭前野で想起され再構成されることによる。元々、『いつ』『どこで』といった情報は出来事が記憶されたときに、ほとんど注意が向けられていない。脳の前頭前野がになう記憶の想起(思い出すこと)は、日付のわからないパズルを集めて一つに組み上げることにたとえられている。それで強引に思いだそうとする結果、その記憶がいつどこでどのように得られたかという情報源(ソース)についての記憶・認識であるソースモニタリングのエラーが起きる。

胎内の記憶は、あとから“埋めこめる”
ソースモニタリングの能力は、6歳児でも、ある程度身についている。しかし3歳より前の記憶は普通、思い出せない。ソースモニタリングをになう脳の前頭前野や、海馬、言語が発達していない幼児期の記憶の仕方は大人とは違っていて、そのため大人になると思い出せなくなるという説が提唱されている。
また、胎内での記憶を覚えていると話す人すらいる。実はこうした記憶は、巧妙な対話で“埋めこめる”ことわかっている。最初は自信のない記憶だったとしても、いわゆる催眠療法を繰り返すうちに、確信をもつようになることも知られている。 「エイリアンに誘拐された」といった記憶も似たしくみで生じるようだ。
実際に経験した記憶なのか、そうでないのかを判断することをリアリティモニタリングという。この判断は6歳児でも難しいとされている。以前の記憶は偽りであったとしても頭の中だけでは判断できず、事実のように思えるというわけ。
【参考】ノーベル医学・生理学賞受賞者の利根川進博士らは、2013年、「マウスに偽りの記憶を埋めこんだ」という研究を報告した。
利根川進MIT教授、「ニセの記憶」をマウスで再現(ハフポスト 2013/7/25)

エピソード記憶はエラーを起こしやすい
私たちが覚えている出来事の記憶を「楽しい出来事」 「普通の出来事」 「嫌な出来事」に分類すると、どのような研究でも、おおむね楽しい出来事の記憶が約50%くらい、普通の出来事の記憶は約30%、嫌な出来事の記憶は約20%という。
強い感情をもつと一般に覚えやすさは低下する。さらに、その記憶を思い出すときには、ソースモニタリングが失敗しやすい。

凶器注目効果
:強い恐怖を感じたとき記憶力は低下する
突発的に出くわす強盗事件のような出来事では、驚きや恐怖の感情が呼びおこされる。そのような状況では、凶器注目効果とよばれる現象がおきる。この現象は、凶器に強く注意が向く一方で、犯人の顔や服装などの背景情報は知覚されにくくなり、ひいては記憶されにくくなるというもの。
凶器に注目してしまうしくみとして、二つの説が有力。
一つは、驚きや恐怖が視覚的な注意の範囲をせばめるというもの。
もう一つは、通常はありえない状況であるため、視覚的な注意が凶器に引きつけられるというもの(包丁が台所にあっても何もおかしくないが、寝室にあれば普通ではない)。
また、緊張感(ストレスや覚醒の度合い)には最適な水準があり、緊張感が強すぎても弱すぎても、記憶力(記憶の効率)は下がるという関係が知られている。


6.リプレイするほど長期記憶になる

3項のとおり、長期記憶はシナプスに繰り返し刺激を与えスパインを強化することで固定化される。

学校の勉強のような「意味記憶」
意味記憶は、時間経過とともに、海馬から大脳皮質に徐々に転送され、最終的には大脳皮質に貯蔵される。
「繰り返し学習」が効果的。よく「予習より復習が大切」と言われるが、復習するということは、脳内に保存された記憶を取り出し、再びしまうことでもある。情報の保存・再生・再保存を繰り返すことで、シナプスが増強され記憶が安定して保たれる。
さらに、好き嫌いや感情を担う扁桃体は、記憶を担う海馬に影響を与える。苦手意識があって、いやいや勉強しても、なかなか覚えられないのは、そのため。反対に、好きな学科や楽しいと思える趣味は、扁桃体からの情報を受けて記憶が定善しやすくなる。
【睡眠が記憶と深く結びついている】
眠っている間も、海馬や扁桃体は覚醒している。(夢を見るのは、そのため)
睡眠が記憶の固定に重要であることは数多くの研究によって定説となっている。学習中と同じ脳の部位が、その後の睡眠中でも活性化すること、学習後の睡眠を制限すると記憶の固定に支障が出ることなどが、さまざまな実験によって示されている。

スポーツのように体で覚える「手続き記憶」
海馬ではなく、大脳の奥にある大脳基底核小脳が中心になって活躍する。
大脳基底核は、筋肉の大雑把な動きを調整すると共に、ドーパミンを放出して学習を活性化する。
一方、小脳は、大脳がイメージする動きを細かく調整し、最適な動きを記憶する。詳細は脳の全体構造、主要な部位にあります。
同じ動きを繰り返すうちに、大脳基底核と小脳が連携し、考えなくても自然に体が動くようになる。

7.ダニエル・シャクター博士(ハーバード大学の心理学者)による記憶のエラーの原因7種類
著書『なぜ、 「あれ」が思い出せなくなるのか』の中で
  1. 物忘れ
    時間の経過に伴う特定の記憶の一般的な欠落。
  2. 不注意
    さっき置いた鍵やメガネを忘れる。注意と記憶のつなぎ目で起こるエラー
  3. 妨害
    固有名詞のど忘れなど。人名や固有名詞には、視覚的印象・概念的印象・音韻的印象・語彙的印象がかかわっている。これをごっちゃにしたり、関連語が妨害する。
    もっと深い問題として、幼少期の記憶が忌まわしくてそれを抑圧してしまったときなど。
  4. 混乱
    デジャヴなど。見ていないのにその光景を過去に見たと思ってしまう。
  5. 暗示
    「暗示されやすさ」ということで、現代ではマスメディアによる暗示がわれわれの記憶をほとんど全域にわたって犯しているといえる。
  6. 書きかえ
    我々は常に記憶を編集しているのではないかという仮説に基ずく最新の研究分野。
    記憶編集に「型」があり「調和編集」「変化編集」「あと知恵編集」「利己的編集」「ステレオタイプ編集」という分類。
    最も多いのは「あと知恵編集」で「ずっと、そう思っていた」「前々から知っていた」というもの。
  7. つきまとい
    いわゆるトラウマなど、忘れたいのに忘れられなくなった記憶エラー。
【参考】『なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか』ダニエル・L・シャクター(松岡正剛の千夜千冊 606夜)

8.アルツハイマー病

認知機能の低下を引き起こす病気には、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症などがあるが、最も患者数が多いのがアルツハイマー病。高齢者だけではなく、若い人もかかり、65 歳未満で発症した場合、若年性アルツハイマー病と呼ばれる。
認知症の原因となる病気
出典:とうきょう認知症ナビ(東京都福祉保健局)

アルツハイマー病は、アミロイドβというタンパク質のゴミ(ニューロンにあるタンパク質が分解されて生じた断片)海馬大脳皮質にたまり、続いてタウタンパクがニューロン内に蓄積し、細胞が少しずつ死滅していく病気。正常な脳は、海馬が情報を選別して大脳皮質に送り、記憶としてとどめるが、海馬が損なわれると情報を処理できず、新しいことが覚えられなくなる。さらに進行すると、これまで覚えていたこと、特にエピソード記憶が思い出せなくなる。

9.主な参考資料

個別に出典を記載した資料の他は以下の資料。
●図解でわかる 14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来(インフォビジュアル研究所(著), 松元健二(監修))
●Newton「偽りの記憶」の心理学

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[ 2020/02/05(水) ] カテゴリ: 脳の勉強ノート | CM(0)
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