ポストさんてん日記

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脳内報酬系、ドーパミン、オピオイド、医療用モルヒネ、依存症

[ 2019/12/16 (月) ]
脳の勉強ノート、第3弾です。
前回は神経伝達物質の基礎を学びました。今回は脳内報酬系に関わる神経伝達物質として、ドーパミン、オピオイドや医療用モルヒネなどについてです。だいぶ難しくなって来たので、もしかすると古い理論での理解や間違いがあるかも知れません。

目次

1.ドーパミン神経系
2.エンドルフィン、モルヒネ、オピオイド、脳内麻薬
3.医療用麻薬モルヒネが依存を形成しないワケ
4.興奮薬と抑制薬に分けられる
5.快感の記憶が依存性を強める
6.違法薬物
7.主な参考資料
8.関連エントリー

1.ドーパミン神経系

ドーパミンは不足していても困るけれど、過剰になっても問題がある神経伝達物質。ドーパミンには、腹側被蓋野から出るものと、黒質から出るものがあって、それぞれ働き方に違いがある。
ドーパミン神経系01
出典:ドパミン神経系(管理薬剤師.com)

ドーパミン
ドーパミン

脳内報酬系(A10神経系)
欲求が満たされたとき、あるいは満たされることが分かったときに、脳内報酬系別名:A10神経系)とよばれる神経回路にある神経細胞の間でドーパミンなどの神経伝達物質がやりとりが活性化する。脳内報酬系は、「快感回路」、「快感の伝道師」などとも呼ばれる。
脳内報酬系ドーパミンは、脳幹の中脳の腹側被蓋野(VTA:ventral tegmentum area)でニューロンにより産生され、側坐核および前頭皮質で放出される。
脳幹の中央に3列ずつ左右対称に計40個の神経核が並んでいる(外側:A列、内側:B列、中間:C列)。このうち、外側の A列の下から10番目の神経核がA10神経。

人間や動物にこの回路が備わっているのは、もともとは生存に必要な食欲や性欲を促すため。脳は生命維持にとって必要な、良いことが起きたと判断しドーパミンを放出する。ヒトは、良いことの「報酬」としてもたらされるこの快感を再度得るために、また良いことをする。
たとえば、子どもが勉強する習慣を強化したいなら、勉強するとドーパミンが出るようにすればよいということになる。勉強すると良いことがあるから、また勉強したくなるという循環をつくることだ。そのためにはまず、勉強をしたいと思うきっかけをつくり、勉強することで、ほめられたり、認められたりして「良いこと」だと脳が判断するような環境づくりをすることが必要なのかもしれない。

しかし、お酒がやめられないとか、ギャンブルに夢中になってしまうなどの、いわゆる依存症に関係すると考えられている。
オピオイド(モルヒネなど)、カンナビノイド(大麻など)、コカイン、アンフェタミン(覚醒剤)、などは、この腹側被蓋野からのドーパミンを過剰に分泌させる働きを持っていて、強制的に多幸感や快楽を感じさせる(多くは幻覚症状が出たり、被害妄想を抱くようになる)。

コーヒーのカフェイン、タバコのニコチン、お酒のアルコールもこの回路でドーパミンの働きを促進するが、作用メカニズムはそれぞれ異なる。(後述)

運動機能調節(A9神経系)
「運動」や「意欲」に関係するドーパミンは、大脳基底核の黒質で産生され、その後、線条体で放出される。
このことは、パーキンソン病の研究によって明らかになった。パーキンソン病は、多くの場合、60歳以上の高齢者に発症する病気で、何かしたいという意欲がなくなり、喜怒哀楽に乏しくなるという特徴がある。そのほか歩き方がぎくしゃくする歩行障害や、手が震えるなどの障害が現れる病気。
この病気の原因を研究したところ、パーキンソン病の人は、黒質にあるドーパミン神経細胞がどんどん死んでいくことが分かった。このため、運動指令のコントロールや意思決定にかかわる線条体に送り届けられるドーパミンが減ってしまい、線条体がうまく機能しなくなる。出典:第13回神経伝達物質の謎

2.エンドルフィン、モルヒネ、オピオイド、脳内麻薬

アヘンのことを『オピウム』といい、この名前から「モルヒネと同じような性質を示す物質」の総称として使われる『オピオイド』という言葉ができた。「オイド」は「~様の」という意味で、つまりは「モルヒネ様の」という意味。
体内で作られるオピオイドという意味の内因性オピオイド脳内麻薬とも呼ばれる。

内因性オピオイドの例:エンドルフィンエンケファリンダイノルフィンエンドモルフィン、など
エンドルフィン
β-エンドルフィン

アヘンの主成分であるモルヒネは、なぜ人に多幸感を与え、耽溺性を持つのだろうか?その解明が始まったのは、1970年代のことであった。
アメリカとスウェーデンの3つの研究グループが、人間の脳内にモルヒネがとりつく場所があることを、ほぼ同時に発見したのだ。このように、ある特定の分子が結合し、情報を受け取る部位を、「受容体」と称する。
しかし、なぜこのような受容体が存在しているのだろうか?ある種のケシだけが生産する、特殊な物質のための受容体を、人体がわざわざ用意しているはずはない。ということは、人体はこの受容体に結合する物質を自ら生産していると考えられる。
受容体を鍵穴とすれば、モルヒネはたまたまそこにはまってしまうだけの偽の鍵であり、脳内には本物の鍵が存在しているはず、というわけだ。人間に快楽の感覚を引き起こす本物の鍵こそは、脳の謎に大きく関わる重要物質に違いない。生化学者たちは、この発見に色めき立った。
こうして1970年代から1980年代にかけて、本物の鍵の正体が次々に明らかになった。これらは、アミノ酸が5個から30数個連結した、ペプチドと呼ばれる簡単な物質群で、エンドルフィンと総称される。モルヒネはエンドルフィンの先頭部分によく似た構造をしており、受容体に結合して同じように作用できるのだ。
エンドルフィンは、外傷やストレスを受けた際に放出され、その苦痛を和らげる。たとえば長距離走者が感じる高揚感(ランナーズ・ハイ)は、苦しみを緩和するためのエンドルフィン分泌によるものとされる。また社会的連帯感・安心感や、謎を解いた時、知識を得た時の満足感などにも、エンドルフィンが関わっていると見られている。エンドルフィンとその受容体は、人間の多くの行動の動機に関係する、極めて重要な系なのだ。

モルヒネはこの系に入り込み、かりそめの、しかし深い快感を与える。こうしてモルヒネを授与し続けると、生体は「現在のところエンドルフィンの量は十分である」と判断し、生産を止めてしまう。このためやがてモルヒネが切れると、体はエンドルフィン不足となり、強い不快を感じる。これが麻薬の禁断症状だ。モルヒネを授与すればこれは治まるが、エンドルフィン生産能力はさらに落ち、次回はさらに多量のモルヒネを求めるようになる。まさに悪循環だ。

出典:佐藤健太郎「世界史を変えた薬」

最終段落の部分は、“痛み”がない状態“でモルヒネを服用した場合に限る。痛みのある状態で使えばこのリスクはないという(次項)。

GABAGamma-Amino Butyric Acid
γ-アミノ酪酸 抑制性
GABA.png

【一部のみ引用】

ドーパミン作動性神経が興奮すると、ドーパミンが放出され、脳の奥にある側坐核ドーパミン受容体に結合。すると、脳は、興奮、多幸感、快感などを得られるという仕組み。依存を形成するといわれる全ての薬物に、側坐核のドーパミンが関与する、と考えられている。


痛みのない状態では、
ドーパミン神経GABA神経の抑制を受けている。
痛みのない状態
通常、ドーパミン作動性神経は、過剰なドーパミンによって脳が興奮しすぎないよう抑制を受けている。ドーパミン放出を抑制する神経がGABA(γアミノ酪酸)作動性神経。これには、モルヒネなどが結合する受容体:μ受容体が豊富に存在。

1つのニューロンは1種類の神経伝達物質しか出さない仕組みになっている事は前回勉強しました。

痛みが無いのにモルヒネを服用すると、
GABA神経の抑制が外れ、ドーパミン神経からドーパミンが放出され、精神依存を形成。
痛みが無いのにモルヒネを服用
μ受容体に結合するモルヒネなどの薬物を投与すると、GABA作動性神経の働きが抑制、その結果、抑制のタガが外れたドーパミン作動性神経からはドーパミンが大量に放出、精神依存を形成すると考えられている。

アルコールもGABA神経を抑制してドーパミンの放出を促進する。
ニコチンは興奮性伝達物質のグルタミン酸の腹側被蓋核への分泌を促進してドーパミンの放出を増やす。(出典:福田医師の医療大麻研究(その14)(医療大麻を考える会))


炎症性慢性疼痛があると、
内因性オピオイドと呼ばれる、自分で作る鎮痛効果物質ダイノルフィンが放出されている。その作用でモルヒネを服用しても、ドーパミン神経を活性化しない。
炎症性慢性疼痛
ダイノルフィンは、ドパミン神経に作用し、その働きを抑制的に調節。

神経障害性疼痛では、
内因性オピオイドの一種であるエンドルフィンが放出されている。その作用で、モルヒネを服用しても依存症にはならない。
神経障害性疼痛
βエンドルフィンは、GABA作動性神経に存在するμ受容体に作用。モルヒネが結合すべきμ受容体が、すでにβエンドルフィンによって持続的に占拠され、μオピオイド受容体の機能低下が起こっているため、たとえモルヒネを服用しても、GABA作動性神経の抑制が起こらない。その結果、慢性疼痛下では、モルヒネを服用しても、GABA作動性神経によるドーパミン作動性神経の抑制効果は薄れず、精神依存を形成しない。

慢性痛を我慢することは、百害あって一利なし。医療用麻薬を使うと麻薬中毒や依存症になる、使用すればガンの余命が短くなる、などは誤解。

4.興奮薬と抑制薬に分けられる

最終的にドーパミンの作用を強めるが、報酬系のどのニューロン(神経細胞)に作用するかで興奮薬と抑制薬に分けられる。
中枢神経興奮薬

通称:アッパー系
ドーパミンを出すニューロンに直接作用しドーパミン受容体に到達する量を増やす。
ニコチン
放出されたドーパミンを回収するドーパミントランスポーターの働きを阻害することで、ドーパミン受容体に到達する量を増やす。コカイン
アンフェタミン
中枢神経抑制薬

通称:ダウナー系
ドーパミンの放出をおさえてロックしているニューロンの働きを抑えることで、ドーパミンの放出量を間接的に増やす。(ロックを解除、抑制の抑制)モルヒネ
ヘロイン
大麻
エタノール
カフェイン
エタノールには決まった受容体が存在せず、いろいろな受容体に結合して神経活動を段階的に抑制するが、A10神経系を抑制する神経細胞が先に抑制されるため、最初は気分高揚や興奮を、後に酩酊をもたらす。

5.快感の記憶が依存性を強める

依存症は、特定のものや行為に快感や刺激を求め、それなしでは平常心が保てなくなる状態を指す。
依存症の対象が「物質」の摂取の場合は「物質依存」といい、対象が「行動」の場合は「行動嗜癖」という。

依存(嗜癖)
一般的には「依存」というが、医学的には「嗜癖しへき」という
物質依存行動嗜癖
  • 鎮痛作用・興奮作用・幻覚作用等を有する薬物
  • カフェイン
  • ニコチン
  • アルコール
  • その他
  • ギャンブル・ゲーム
  • ネット・スマホ
  • 食物(過食)
  • 買い物
  • 占い・宗教
  • 異性
  • その他

依存することがやめられないのは、脳が一度知った快感を求め続けるため。
快の情報を受けると、腹側被蓋野が反応しそこから信号を受けた側坐核ドーパミンを放出し、快感や喜びが生じる。この快の情報は、扁桃体で認識され、海馬に送られて記憶として貯蔵される。
しかし、その行為が繰り返されると次第に報酬回路の機能が低下していき、「快感・喜び」を感じにくくなる。そのため、以前と同じ快感を得ようとして、依存物質の使用量が増えたり、行動がエスカレートしたりする。
また、脳の思考や創造性を担う前頭前野の機能が低下し、自分の意思でコントロールすることが困難になる。特に子供は前頭前野が十分に発達していないため、嗜癖行動にのめり込む危険性が高いといわれている。
参考にした資料:PDF「ギャンブル等依存症」などを予防するために(文科省 2019年3月)

6.違法薬物

違法薬物
出典:産経新聞 2020/2/7

7.主な参考資料

個別に出典を記載した資料の他は以下の資料。
●図解でわかる 14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来(インフォビジュアル研究所(著), 松元健二(監修))
5.脳・神経のメカニズム(1)(生物における主の主権 2010/6/10)

【メモ】
薬物依存 dependene(Pain Relief 痛みと鎮痛の基礎知識)
医療用麻薬「事実無根のタブー視」(上)トヨタ元役員事件で日米ギャップ 「〝痛み〟に耐える=美徳」がもたらす「悪循環」(宝田良平 産経WEST 2018/8/7)
医療用麻薬「事実無根のタブー視」(下)「依存症になる」の誤解蔓延 痛み治療が〝中毒〟にならないメカニズム(宝田良平 産経WEST 2018/8/14)
がんの痛みに使用される医療用麻薬(オピオイド鎮痛剤)(塩野義製薬)

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[ 2019/12/16(月) ] カテゴリ: 脳の勉強ノート | CM(0)
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