ポストさんてん日記

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【後編】発泡酒、第3のビール、その歴史や製造方法の違い

[ 2019/11/18 (月) ]
【前編】からの続きです。

目次

【前編】
1.現在の酒税法でのビールの定義
2.1章 そもそもビールとは何なのか【前編】から一部転記。
3.理解のための背景情報【前編】から転記と追記。
4.3章 発泡酒の登場
【後編】
5.4章「第3のビール」とは何か
6.6章「新ジャンル」とは何なのか
7.5章「糖質オフ」と「カロリーオフ」はどう違う?
8.今後の酒税改定予定
9.関連エントリー

2.1章 そもそもビールとは何なのか

【前編】から一部転記。ビール02
*1 麦芽は大麦を少しだけ発芽させ焙燥したもの、英語はmalt:モルト。発芽により、デンプン糖化酵素、タンパク質分解酵素が発現する。
*2 焙燥した麦芽由来
*3 酵母が利用できるのは、一般的には単糖類と二糖類の一部
*4 アミノ酸は酵母の活動に必要な栄養分

3.理解のための背景情報

【前編】から転記。
2018年で、ビールのシェアは5割を切った。
既エントリービール類の酒税について(今後の推移)から転記
ビール類市場規模(百万函, 課税数量ベース)
2018年で、ビール:49%、発泡酒:13%、第3のビール:38%
ビール類市場規模(百万函, 課税数量ベース, 5社計)
出典:PDFアサヒfactbook2019
メーカーの資料では「第3のビール」ではなく「新ジャンル」という言葉を使っている。

【前編】から転記。
ビール類の税法上の分類
幾度かの改定(改悪)を経て下記のとおり。(2019年10月)
麦芽比率など副原料、その他
ビール麦芽比率
67%以上
(2018年4月から)
50%以上
麦、米、とうもろこし、
こうりゃん、ばれいしょ、
でん粉、糖類またはカラメル

【追加副原料】は略
発泡酒麦芽比率
25%未満
税制上は麦芽比率25~50%の発泡酒
もあるが、税率は25%未満より
高くなるので、
現行の商品としては無い。
第3のビール①
その他の
醸造酒
(発泡性)
麦芽なし
第3のビール②
リキュール
(発泡性)
麦芽比率50%未満の発泡酒に
麦スピリッツを加えたもので
エキス分が2%以上

【追記】
350ml缶 コンビニの代表的な小売価格と税額(2019年10月現在)
既エントリービール類の酒税について(今後の推移)からの転記
ビール類の酒税等の比率2019

ここからが【後編】
5.4章「第3のビール」とは何か

第3のビール① その他の醸造酒(発泡性)←麦芽ゼロ

発酵で生まれるものは再現できない。お酒のなかには発酵によって生まれた、数百~数千に及ぶ複雑なうまみ成分・酸味・芳香成分が含まれている。
タンパク質や微量のビタミン・ミネラルを使って複雑きわまりない香味成分を作るのは生き物の酵母であって、工学的に作り出すことなどできない。

従って、第3のビールも酵母による発酵で造っている。

以下、超要約です。

経緯
  • 2003年、酒税法がさらに改正されて発泡酒の税率がさらに引き上げられる。
  • 2003年9月、サッポロ「ドラフトワン」が九州でテスト販売開始。翌2月に全国発売開始。
  • 2005年、キリン「のどごし(生)」発売
  • 2005年、アサヒ「新生」発売
  • 2006年、サントリー「ジョッキ生」発売
  • 2006年、再び第3のビールが増税、同時に、従来から存在した製法を用いた以外はビールと同額の課税となり、新たな原料や製法を用いた第3のビールが誕生する事は現実的に難しくなった。実際にこれ以降、新たな第3のビール①は生まれていない。アサヒは2009年に撤退した。
  • 一方で、第3のビール②の市場拡大が始まった。(6項を参照)

製造方法

麦芽をまったく使わないとなると、N源(窒素源:タンパク質)が足りないどころではない。麦芽以外の何かのN源から麦芽に近い味を作り出さなければならない。
人の技術はデンプンを自由自在に糖化させるところまで発達した。
問題はN源だ。タンパク質をどこから持ってくればいいのか?
しかも、どの酵母を使えばおいしくできるかはわからず、N源と酵母の組み合わせは無限にあるのだ。

  • 糖化酵素(【前編】の発泡酒と同様)
    酵素とは、ある化学反応を引き起こす、特定の構造を持ったタンパク質の分子のこと。現在はどんなデンプンにどんな酵素を入れるとどんな糖ができるかすでに研究しつくしているのだ。糖化酵素は、いまや微生物を使い、食品用に大量生産されている。(タンパク質分解酵素も同様)
  • 酵母(酵母の選択が味と香りを大きく左右する)
    アミノ酸が少なくても働く酵母を選び、酵母のストレスを徹底的に軽減するという方法。
  • N源(タンパク質)各社とも製造特許
    よいN源さえ見つければ、それに最適な酵母を入れ、発酵させることに関してはすでに高い技術を持っていた。
     サッポロ:エンドウタンパク
    エンドウ豆から抽出されたエンドウタンパクはケーキやジャムやソーセージなど、加工食品の素材や添加物としても一般的に使われている。
     キリン:大豆タンパク
    大豆から油脂、繊維、炭水化物、灰分などを除いて精製し、タンパク質だけを取り出したもの。
     アサヒ:大豆ペプチド(本に記載はないが)
     サントリー:コーン、コーンタンパク分解物(本に記載はないが)
  • 色と香り
    ビールを造るとき、麦芽が焙燻され、ここで糖分とタンパク質が反応するアミノカルボニル反応(メイラード反応ともいう)が起こり、ビールの黄金色とうまみに重要な役割を果たす。
    パンやクッキーの焼き色の部分からコーヒーまで、実はさまざまな食品で古来から利用されている。「みそ」や「しょうゆ」が寝かすことで熟成するのも、このアミノカルボニル反応。
    キリンの特許「ブラウニング製法」は、圧力釜で大豆タンパクと糖分を加熱することで、これを実現し、できた液体は美しい茶系の黄金色となった。
    他社はカラメル(カラメル化反応は糖が高温で分解して進行する反応)で対応した。

2019/11現在、各メーカーで製造されている第3のビール①
各メーカーHPから拾いましたが洩れがあるかも。各社でのカテゴリー名は『新ジャンル』
  • サッポロ:ドラフトワン
    原材料名:ホップ、糖類、エンドウたんぱく/カラメル色素
  • キリン:のどごし
    原材料名:ホップ、糖類、大豆タンパク、酵母エキス
  • アサヒ:なし
  • サントリー:ジョッキ生
    原材料名:ホップ、コーン、糖類、醸造アルコール、食物繊維、酵母エキス、コーンたんぱく分解物/香料、酸味料、カラメル色素、クエン酸K、甘味料(アセスルファムK)/カラメル色素
派生商品の「機能系」として、糖質○%カットとかゼロ、プリン体○%カットとかゼロがある。(7項を参照)

「第3のビール①」は、人間が有史以前から行っていたおいしいお酒造りを分析し、なぜおいしいかを研究しつくし、これに化学の力を加えて作った、まさに「21世紀のお酒」といえるのではないか


6.6章「新ジャンル」とは何なのか

第3のビール② リキュール(発泡性)←麦芽比率50%未満の発泡酒+麦スピリッツ
2006年、第3のビールが増税と従来製法に限られた。これを機に第3のビール②の市場拡大が始まった。

発泡酒とスピリッツ、どちらも従来からあるお酒なので、いかにブレンドしてうまいお酒にするかの技術といえる。
素材となる発泡酒に50%まで麦芽を使えること。これは「第3のビール①」より、ビールらしい味を実現するには明らかに有利となる。スピリッツも大麦や小麦を原料に蒸留したものなので、より麦の香りを生かすことができる。

麦芽を50%程度まで使えるとなれば、今のメーカーは、「ビールとまちがえる」ものを作り出すことができるまで、技術はアップしているのだ。

各社の具体的取組・ノウハウが記述されているが紹介は省略します。

今度は、発泡酒と「第3のビール①」の市場が徐々に縮小していく。メーカー各社は「第3のビール②」の新ジャンルへ続々と新商品を投入していくことになる。

このジャンルは、銘柄が多い反面、新製品のライフサイクルが短いケースがままある(ヒットしなければ終売)。

2019/11現在、各メーカーで製造されている第3のビール
各メーカーHPから代表的な製品を拾いましたが洩れがあるかも。各社でのカテゴリー名は『新ジャンル』
  • サッポロ:麦とホップ
    原材料名:発泡酒(麦芽、ホップ、大麦)、スピリッツ(大麦)
  • キリン:本麒麟
    原材料名:発泡酒(麦芽、ホップ、大麦、コーン、糖類)、大麦スピリッツ
  • アサヒ:クリアアサヒ
    原材料名:発泡酒(麦芽、ホップ、大麦、コーン、スターチ)、スピリッツ(大麦)
  • サントリー:金麦
    原材料名:発泡酒(麦芽、ホップ、糖類)、スピリッツ(小麦)
派生商品の「機能系」として、糖質○%カットとかゼロ、プリン体○%カットとかゼロがある。(7項を参照)

発泡酒や第3のビールはなぜビールのような味がするのか。その仕組みがおわかりいただけただろうか。
たしかに、どちらもきっかけは日本の酒税がビールにだけ重税を課していることから生まれたものだろう。しかし「ただの安い酒にしない」ために、どれほどの努力が込められているかは想像以上である。そうして生まれた新ジャンルも、売れるとすぐ増税されてしまう。
が、メーカーはそれにクサることなく、麦芽の比率を下げ、もしくは麦芽を使わず、ビールでないおいしいお酒を造ろうとしてきた。繰り返すが、ビールは人間が関与できる工程が非常に少ない。麦が発芽するときに糖化酵素が生まれ、何億、何兆という単位の酵母たちが奏でる自然の営みに、人は本来、関与できず、ただ状況を整えることが限界だった。
経験に頼っていたことを、科学的に理解したことで今日の日本のビール風飲料の隆盛が生まれた。


7.5章「糖質オフ」と「カロリーオフ」はどう違う?

機能性ビールのいずれもが、今まで説明してきた発泡酒の技術的進化から生まれている。最初、発泡酒は「味」と「安さ」(もちろん税が安いだけ)を求めて作られたが、いかに麦芽を使わずにおいしく作るかを研究するうち、その副産物として「糖質が少ない発泡酒」などが可能になってきたのだ。


どうやって糖質をカットするのか

糖質が酵母によってアルコールに変われば、それは糖ではなくなる。そして、酵母が食べるためには多糖類を単糖類や二糖類にする必要がある。
ここで糖質をカットするためには2つのアプローチが考えられる。

  • そもそも多糖類を減らす(入れない)
    スターチを全部、小さな二糖類、単糖類に分解しつくしてしまってから加えると、酵母が食べやすくなり、すべてアルコールになる。
  • 糖質を食べつくす強力な酵母を使う
    酵母によって糖質の分解能カは違う。強力な酵母を使って糖質を残らず発酵させてしまえば、お酒のなかに糖質を残さずにすむはずだ。また酵母によっては、一部の多糖類まで旺盛に食べてくれる種類もある。こういった酵母を使えば、いくらかの多糖類が残っていてもすべてアルコールに変えてくれる。
こういった技術革新を通じて、発酵後に残る糖質を極限まで減らしても、お酒としての味を作ることが可能になったのだ。
また酵母選択の自由度が高く、ビールのように伝統にしばられることもない。こうして、ビールではなく発泡酒や「第3のビール」で「糖質オフ」や「糖質カット」の商品が多く実現しているのである。

基礎的な説明は、既エントリー『炭水化物』は、糖類、糖質、食物繊維。おまけで人工甘味料、お酒のカロリーにあります。

プリン体カットの技術

この「プリン体カット」の技術は各社がまさに競い合っていて、簡単にいえば、絶対に漏らせない企業秘密が非常に多いのだ。なので「糖質カット」に比べて、どうしても「触れる」程度になってしまう。が、当然だがギリギリのところまで聞いてきたのでご容赦いただきたい。

方法は2種類しかない。

  • 酵母のストレスをなくす。
    まずは、ビールの中にそもそもプリン体が含まれないようにすることだ。ビールのプリン体はどこから来るかといえば、酵母などの細胞が壊れ、ここから細胞核・DNAが出てくるのが最大の原因だ。
    そこで、まずは酵母にストレスをかけずに醸造することが重要になる。
  • 炭でろ過する。
    プリン体が少ないビールを造ったあと、プリン体を「ろ過」する。ここで使われるのは……なんと「炭」。キリンも、アサヒも、これらの技術に関してはなかなかくわしく話してはくれないが、両社とも炭を使っていることにまちがいはない。たとえばアサヒビールでは活性炭を使ってろ過している。
    よく聞く「炭でろ過」とはどのようなものなのか。炭は全体が非常に小さな穴を持っている。だから、冷蔵庫に炭を入れておくと、においの成分がこの小さな穴に入って据えられると、それが再び出てこない、というわけ。ゲタ箱に入れるのも同じ理屈だ。

基礎的な説明は、既エントリープリン体とは、尿酸の“2つの顔”、プリン体ゼロのビールは意味がない?にあります。

8.今後の酒税改定予定(2019年10月現在)
既エントリービール類の酒税について(今後の推移)からの転記。

最終的には、ビールは下がり発泡酒・「第3のビール」が上がって、ビール類の税率が1本化される。発泡酒、「第3のビール」の市場は激減し、最終的には、なくなっていくかも。
350ml缶当たりの酒税+消費税酒税改定の予定03

9.関連エントリー

【前編】発泡酒、第3のビール、その歴史や製造方法の違い
お酒の分類、超概略製造工程、麹の種類
ビール類の酒税について(今後の推移)
[ 2019/11/18(月) ] カテゴリ: お酒のはなし | CM(0)
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