ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

【前編】発泡酒、第3のビール、その歴史や製造方法の違い

[ 2019/11/11 (月) ]
第3のビールは、なぜビールの味がするのか?~新ジャンルの味覚を作る技術(夏日幸明 著)を読みました。

日本が生んだ日本だけのお酒──発泡酒と「第3のビール」。世界的にも高いビールへの課税に対し、ビールメーカーは不屈の努力で新ジャンルを生み出し続け、ついに麦を使わずに造るまでに到達する。醸造という自然の営みが生みだす味を、人はどこまで再現できるのか。味覚の官能に技術で挑んだ、ビール味の飲料をめぐる物語。

アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリーの各社の技術者は「発泡酒・「第3のビール」はなぜビールの味がするのか」との取材に惜しげもなく答えており、それが本書の根幹をなす部分。

醸造学?の入り口、メーカーと国税庁の攻防の歴史、発泡酒・「第3のビール」の歴史、として面白い読み物でした。書評ではなく自分の理解ノートとして書いてみます。本の内容以外の追記もあります。

目次

【前編】
1.現在の酒税法でのビールの定義
2.1章 そもそもビールとは何なのか
3.理解のための背景情報
4.3章 発泡酒の登場
【後編】
5.4章「第3のビール」とは何か
6.6章「新ジャンル」とは何なのか
7.5章「糖質オフ」と「カロリーオフ」はどう違う?
8.今後の酒税改定予定
9.関連エントリー


(本論に入る前に)
1.現在の酒税法でのビールの定義

幾度かの改定(改悪)を経て下記のとおり。(2019年10月現在)
麦芽比率副原料
ビール67%以上
(2018年4月から)
50%以上
麦、米、とうもろこし、こうりゃん、
ばれいしょ、でん粉、糖類またはカラメル
2018年4月から適用の【追加副原料】は欄外
【追加副原料】香り付けや味付けが目的で麦芽重量の5%まで、以下のもの。
果実、コリアンダー・コリアンダーシード、香辛料(胡椒,山椒など)
ハーブ(カモミール,バジルなど)、野菜、そば・ごま、
含糖質物(蜂蜜,黒糖など)・食塩・みそ、花、
茶・コーヒー・ココア(これらの調整品を含む)、牡蠣・こんぶ・わかめ・かつお節

2.1章 そもそもビールとは何なのか

この第1章に50ページ弱(全体の1/4強)を割いている。

なぜなら、化学的な話をしておかなければ、発泡酒との違いも、第3のビールとの違いも説明できないからだ。


理解した概要を、僭越ながら1つの絵にしてみました。(生化学的な変化の概要)

ビール02
*1 麦芽は大麦を少しだけ発芽させ焙燥したもの、英語はmalt:モルト。発芽により、デンプン糖化酵素、タンパク質分解酵素が発現する。
*2 焙燥した麦芽由来
*3 酵母が利用できるのは、一般的には単糖類と二糖類の一部
*4 アミノ酸は酵母の活動に必要な栄養分

副原料
副原料の米・コーン・スターチはビールの味を調整し、バランスのよいものにするのに役立つ。これらは米国や欧州諸国(ドイツを除く)でも消費者の嗜好に合わせたビールを醸造する手段として広く使われている。

日本は(旧)酒税法では「原材料の3分の2(67%)以上は麦芽でなければビールとは呼べない」と定められていた。これは粗製濫造のお酒を防ぐため、という意味もあった。が、海外に目を向ければ、この条件を満たさないものも多いのだ。
一説によると、米国のバドワイザーもそうかもしれない。麦芽の使用比率が3分の2(67%)未満なのではないか、という噂があり、「日本向けの商品は副原料を3分の1に抑えてある」---つまり原材料中の麦芽の使用量が3分の2以上である---とメーカーから宣言がなされた。ということは、これを裏返せば海外の商品は麦芽が3分の2より少ない、という可能性もなくはない。

「スーパードライ」最大の特徴は、米、コーン、スターチなど「副原料」を多めに使ったビールが「うまい」ことを世に知らしめたことだろう。これは「ビール純粋令」的な考えを捨て切れていなかった日本の市場に大きな衝撃を与えた。
いずれにせよ、ここで、ビール造りの各工程に最初のメスが入ったわけだ。そして、このヒットが新たなトレンドを生むことになった。単純にいい切ることはできないが、スーパードライのヒットこそが、発泡酒や新ジャンルの誕生に大きな影響を及ぼしたのだ。

一方で、副原料を全く使わない麦芽100%のビール(オールモルト)は、ドイツのビールは全てだし、日本のビールにも多い。要は、個人の好みの違いになるのだろう。

さて、ビール製造でポイントとなるのは、糖化発酵

糖化
デンプンの糖化お酒のつくりかた02
  出典:理科の授業をふりかえる

各原料の主成分のデンプンは糖の分子が数万~100万個程度繋がった高分子。そのままでは、発酵酵母が分解できないので、麦芽に含まれる酵素(アミラーゼ等)の働きでデンプンを糖に分解しておく必要がある。

休眠状態の麦は胚乳にデンプンやタンパク質を蓄えているが、発芽のエネルギーを得るためにデンプンを糖に、タンパク質をアミノ酸などに、替える必要があり糖化酵素タンパク質分解酵素を発現させる。休眠状態の種子から酵素を発現するこのメカニズムは大麦に限らず全ての種子に共通。
ヒトでも、摂取したデンプン・タンパク質は消化酵素により糖・アミノ酸などに分解された後で吸収され、栄養素やエネルギーとして利用している。

タンパク質もタンパク質分解酵素(プロテアーゼ等)によりアミノ酸に分解され発酵酵母の栄養になる。一部、アミノ酸まで分解されずに残るペプチドやタンパク質はビールの特徴であるコクや泡を形作る役割を担う。

基礎的な説明は、既エントリー『炭水化物』は、糖類、糖質、食物繊維。おまけで人工甘味料、お酒のカロリーにあります。
【参考】第十回~デンプンを糖分に:仕込工程~(ビアバル コムシェモア)


発酵
お酒のつくりかた03 ビール酵母

発酵とは、微生物によって食物が別の味・別の香りに変わること。人間が古来親しんできた、食べものをおいしくする方法。難しくいえば、酵母などの微生物(要するに菌)(酸素のない環境で)糖を酸化して、アルコール、有機酸、二酸化炭素などを生成する過程。
(「発酵」と「腐敗」はメカニズムは同じで、介在する菌によって人間にとって有用な結果をもたらせば「発酵」、有害な結果をもたらすものは「腐敗」。)
ビールは長い目でみれば1万年以上飲まれている可能性があるがその原理…なかでも発酵の原理が突き止められたのはたった100年前に過ぎない。
発酵といっても、これが当然、ひとことでは終わらない。まず、酵母には数限りない種類がある。各社はそれぞれ数百~数千種もの酵母をストックしており、たとえば芳香成分を強く出すもの、N源(窒素源:アミノ酸などのこと)が少なくても元気に働き糖を分解するものなど、さまざまな酵母が今も低温で活動を止められた状態などで活躍の時を待って眠っている。

それくらい酵母にはさまざまな個性があって、味に大きな影響を及ぼす。しかも、発酵の温度などの条件によっても味と香りが変わる。


酵母は、カビやキノコと同じ薗類に分類される生物。菌類の中でも、次の2つの特徴をもつ菌類を酵母と呼ぶ。
  • 球形または卵形の一つの細胞(単細胞)の状態で生活している。
  • 細胞が分裂したり、出芽(元の細胞から芽が曲るように新しい細胞ができること)などで増える。

3.理解のための背景情報

2018年で、ビールのシェアは5割を切った。
既エントリービール類の酒税について(今後の推移)から転記
ビール類市場規模(百万函, 課税数量ベース)
2018年で、ビール:49%、発泡酒:13%、第3のビール:38%
ビール類市場規模(百万函, 課税数量ベース, 5社計)
出典:PDFアサヒfactbook2019
メーカーの資料では「第3のビール」ではなく「新ジャンル」という言葉を使っている。

ビール類の税法上の分類
幾度かの改定(改悪)を経て下記のとおり。(2019年10月)
麦芽比率など副原料、その他
ビール麦芽比率
67%以上
(2018年4月から)
50%以上
麦、米、とうもろこし、
こうりゃん、ばれいしょ、
でん粉、糖類またはカラメル

【追加副原料】は略
発泡酒麦芽比率
25%未満
税制上は麦芽比率25~50%の発泡酒
もあるが、税率は25%未満より
高くなるので、
現行の商品としては無い。
第3のビール①
その他の
醸造酒
(発泡性)
麦芽なし
第3のビール②
リキュール
(発泡性)
麦芽比率50%未満の発泡酒に
麦スピリッツを加えたもので
エキス分が2%以上


4.3章 発泡酒の登場

それまで、ビールの醸造技術はある意味「牧歌的」なものだった。
酵母を変え、使用する麦芽を変え、醸造法を変えていけば、味が変わる。ある意味、人類が何千年も積み上げてきた方法論のなかで「ビール」を作ってきたわけだ。
が、ここから紹介する方法……とくに「スーパーポップス」あたりからは、古代から人類が培ってきた方法から一気に進化を始める。


以下、超要約です。

経緯
  • 1994年、サントリーが「ポップス」を発売。麦芽の使用比率65%未満
  • 1995年、サッポロ「ドラフティー」が登場。麦芽の使用比率25%未満
  • その2品が売れに売れたからこそ、酒税の改定を招くことになってしまう。
    政府は1996年の秋、「発泡酒狙い撃ち」の酒税改訂を実施。麦芽の比率が50%以上の発泡酒(ポップスが該当)の税率をビールと同じにしてしまう。そして、麦芽の使用比率が25%未満の発泡酒(ドラフティーが該当)についても引き上げられた。
  • 1996年、サントリー「スーパーポップス」が登場 。ポップスで65%だった麦芽比率を25%未満にまで落とした。
    この味が再び消費者に受け入れられ、スーパーポップスはサントリーの主力製品にまで成長を始める。
  • 1999年、スーパーポップスの後継となる「マグナムドライ」を販売開始。
  • 時を経て2003年、酒税法がさらに改正されて発泡酒の税率がさらに引き上げられる。
述べられているのはここまで。ちなみに手元の本書は2010年1月の初版

2019/11現在、各メーカーで製造されている発泡酒
全て麦芽比率25%未満
第3のビールが出てから以降、発泡酒の市場は縮小し、メーカーの品ぞろえも減っているため、製品は少なく以下のとおり
(各メーカーHPから拾いましたが洩れがあるかも)
  • サントリー:なし
  • サッポロ:北海道生搾り
    原材料名:麦芽、ホップ、大麦、糖類
  • キリン:淡麗
    原材料名:麦芽、ホップ、大麦、コーン、糖類
    (本に記載はないが1998年発売、7回のマイナーチェンジを経て現在に至る)
  • アサヒ:本生ドラフト
    原材料名:麦芽、ホップ、大麦、大麦エキス、米、コーン、スターチ、糖類
    (本に記載はないが2001年「本生」(現在の本生ドラフト)発売)
派生商品の「機能系」として、糖質○%カットとかゼロ、プリン体○%カットとかゼロがある。詳細は【後編】に記載。

(以下、本の記述と現状のミックス)
製造方法
麦芽が25%未満にまで少ない分、何で補っているか?
  • デンプン
    各原料のデンプンは糖になってしまえばそれほど大きな差はない。
    初めのころは米やスターチ(つまりデンプン)、との記述。(本に記述はないが)現在の主流は、上記の原材料名を見ると大麦らしい。成分としてビールのオリジナルに近く、 ふさわしいのだろう。
  • タンパク質
    タンパク質は穀物ごとにさまざまな違いがあり、製品の味わいやコクなどにとって重要。
    初めのころはホップの割合、酵母の選定、仕込み方法などの醸造技術で対応、との記述。(本に記述はないが)現在の主流は、上記の原材料名を見ると大麦らしい。成分としてビールのオリジナルに近く、 ふさわしいのだろう。
  • 糖化酵素
    酵素とは、ある化学反応を引き起こす、特定の構造を持ったタンパク質の分子のこと。現在はどんなデンプンにどんな酵素を入れるとどんな糖ができるかすでに研究しつくしているのだ。糖化酵素は、いまや微生物を使い、食品用に大量生産されている。(タンパク質分解酵素も同様)

5.4章「第3のビール」とは何か

時を経て2003年、酒税法がさらに改正されて発泡酒の税率がざらに引き上げられる。
すると、今度は麦芽を一切使わないお酒--- いわゆる「第3のビール」が誕生することになる。


【後編】に続く
[ 2019/11/11(月) ] カテゴリ: お酒のはなし | CM(0)
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