ポストさんてん日記

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ドイツとスペインで失敗した全量固定価格買取制度

[ 2011/08/07 (日) ]
 再生可能エネルギー特別措置法案の本格審議が始まっている。
制度の目的は、太陽光・風量などの再生エネルギーの普及であり、
制度の基本は、太陽光・風量などの再生エネルギーで発電した電力を、電力会社が固定価格で買い取り、その費用を電気料金に転嫁するものだ。 (既エントリー)

 この制度への反対論拠として良く使用される、“ドイツとスペインでの失敗例”の情報を2点、拾ってみた。


 ライン・ヴェストファーレン経済研究協会(RWI)が2009年11月に発表した「再生可能エネルギー推進の経済的影響」と題する論文の邦訳である。

【要約】

 ドイツ政府は2000年から再生可能エネルギーを20年間に渡り全量固定価格で買取る制度(フィード・イン・タリフ)を施行してきたが、10年近い経験を積んだ現在、消費者に莫大な長期負債を残すとともに、その目指す目標がほとんど果たされていない、むしろ正反対の結果となっていることが、ドイツのルール大学など3大学で構成される経済研究シンクタンク(RWI)の調査研究で明らかになった。 

(1) 結論
  フィード・イン・タリフを通じて再生可能エネルギーを推進するやり方は高コストをもたらし、炭酸ガスの効率的削減、雇用増大、エネルギー安全保障、技術イノベーションなどの目指すものは何も得られない結果となっている。
 政府の役割としては研究開発(R&D)で民間を援助すべきであろう。競争力を持たない揺籃期の技術については、大規模な生産を推進するよりも研究開発に投資する方がコスト効率は高い。特に太陽光発電について言えることである。

(2) 要点
① 消費者の負担

 電力会社はグリーン電力を、「平均小売価格の90%」で、買取を義務付けられている。(通常の発電コストは2~7 ユーロ・セント/KWH であるが、2009 年の太陽光発電の買取価格は43 ユーロ・セント/KWH)
 電力会社がグリーン電力買取に要する(通常の発電コストからの追加)金額は2008年現在1.5ユーロ・セント/ KWH(2円)で、家庭電力料金の7.5%に相当。
 20年間のグリーン電力買取を保証しているので、仮に2010年に制度を終了させても消費者側の支払債務は、太陽光発電で533億ユーロ(7兆円)、風力発電で205億ユーロ(2.7兆円)の巨額に達する。
② CO2削減の費用対効果
 太陽光発電によるCO2削減費用は716ユーロ/CO2トン、風力発電によるCO2削減費用は54ユーロ/ CO2トンで、欧州排出権取引市場価格(18ユーロ/CO2トン)のそれぞれ40倍、3倍というコスト効率の低いものとなっている。
③ 雇用創出面
 太陽光の場合、実際にはアジアをからの輸入によって設置数の半分が占められている。
 太陽光従事者48,000人に純増コストを割振ると、1人当たり175,000ユーロ(2,200万円)の補助金を出していることになる。
④ エネルギー・セキュリティー(輸入燃料依存度を下げ、エネルギー安全保障を増す)
 2000 年と2008 年の比較では、風力(1.3%→6.3%)が増えているが、太陽光は0.6%とまだグラフに表せるほどの数値には達していない。相変わらず火力発電が6 割近くを占めている。ガス火力(8.8%→13%)が増えている
 バックアップ電力としてガス火力発電を待機させる必要があり、2006年には5.9億ユーロ(750億円)を要した。またガスの36%はロシアから輸入されるため、セキュリティーの向上ではなく引下げとなっている。
⑤ コスト削減とイノベーション
 目指しているものと正反対の結果となっている。太陽光発電の投資家は今日現在の高い価格での長期販売を望み、技術の改善には無頓着である。政府が勝者と敗者を分けるようなプログラムでは効率的なエネルギー・ミックスは実現しない。


 ブルームバーグ2010/10/19の記事である。

【ほぼ全文引用(一部略)】

 2007年、スペイン北東部の町リェイダ周辺の平原地帯では、太陽光発電を支援する政府の補助金を得るため、農家が農地に光起電性パネルを次々と設置していた。そこでビリメリス氏は、5エーカー(約2ヘクタール)の農地でナシを栽培して生計を立てていた父親のジョームさんを、農地の一部を太陽光発電事業に利用するよう説得した。
 ビリメリス氏(35)は投資資金を確保するため、貯金を下ろしアパートを抵当に入れて40万ユーロ(約4,500万円)を超える融資を取り付けた。太陽に向かって傾けられた7つの台には計500枚の太陽光パネルが設置され、発電能力は80kW。

 サパテロ政権は07年に制定された法律で、太陽光発電による電力について最大44セント/ kWhの料金を25年間にわたって保証した。07年の大手エネルギー供給会社の電力卸売価格の平均は同約4セント/ kWh。その10倍以上の価格だった。ビリメリス氏ら太陽光発電への投資家はこの法律に引き付けられた

 この奨励策のおかげで一家は借入金を毎月返済し、少額だが利益も出た。ビリメリス氏は、18年に借入金の返済が終了したら、法律で補助金が保証されているその後15年間にさらに利益を上げるのを楽しみにしていた。

 「だまされた気分」

 今になって政治家らが、最初に投資の動機付けとなった価格保証の引き下げを検討しているため、ビリメリス氏らスペインで太陽光発電を起業した5万人以上が財政難に直面している。ビリメリス氏は「だまされた気分だ。われわれは法律に基づいて資金を注ぎ込んだ」と語る。

 サパテロ首相は3年前(2007年)、スペインの化石燃料への依存度を軽減する取り組みの一環として補助金制度を導入。同時に、再生可能エネルギーへの投資は製造業の雇用創出につながり、二酸化炭素(CO2)排出削減を目指す国々に太陽光パネルを販売できる可能性もあると約束した。
 ところが、プログラムのコスト管理に失敗し、スペイン政府は再生可能エネルギー投資家に少なくとも1,260億ユーロを支払う義務を背負い込むことになった。国内の製造業者は短期的な需要に対応できなかったため、太陽光パネルの大半を輸入。投資は、環境関連の雇用創出を目指した政府の目標達成にもつながらなかった

 スペインの光起電性パネル向け投資家で米複合企業ゼネラル・エレクトリックの元幹部、ラモン・デ・ラ・ソタ氏は、スペインの事例は、数十億ユーロ規模の補助金制度を導入しても代替エネルギー産業の構築がいかに困難かを示しており、中国や米国などグリーンエネルギー政策を推進する国々にとって教訓になると指摘した。

【追記】
●「SankeiBiz(サンケイビズ)」2012/4/4 ソーラー発電大国・ドイツの落日 収益急減 最大手メーカー破綻
●「toshi_tomieのブログ」2012/03/21 ドイツは、風力・太陽光の不安定な電力を周辺諸国に流し、迷惑をかけっぱなし
●「国際環境経済研究所」2012/3/5 先人に学ぶ2 ~ドイツの挫折 太陽光発電の「全量」買取制度、廃止へ~
●「Meine Sache ~マイネ・ザッヘ~」2012/2/25 脱原発に愛想を尽かすドイツ人たち
●「アゴラ」 2012/02/08 エネルギー政策コラム グリーンジョブは補助金で生まれない-固定価格買取制度の幻想
●「アゴラ」 2011/9/21 次々と破綻する欧米の再生可能エネルギー関連企業

つぶやき

 上記のほかにも、“太陽光 バブル”で検索すると、いっぱい出てくる。
 “出羽の守(でわのかみ)”で恐縮だが、欧州では失敗しているのに、今の様な混乱した時期に無理やり進めるのはマズイだろう。
 さらに、“脱原発”には何の寄与もしないのだから、“脱原発のためなら、ちょっと位の負担はしょうがない”との意識を利用した詐欺だ。
 これよりもっと急がなければならない事、重要な事があるでしょう。

関連エントリー(新しい順)

●再生可能エネルギー買い取り制度に関する論説いろいろ
●問題が大きい再生可能エネの買い取り価格
●再生可能エネルギーに頼れない理由
●ドイツとスペインで失敗した全量固定価格買取制度 ←本エントリーです
●中野剛志 電力自由化反対論 ちょっと惜しい
●“再生エネルギー特別措置法”の目的・目標は?

その他の関連エントリーはカテゴリーにひとまとめにしています。記事下部or左欄のカテゴリーリンクから、どうぞ。
[ 2011/08/07(日) ] カテゴリ: FIT認定制度に関する事 | CM(0)
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