ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

イーストフード、乳化剤無添加パンのからくりは?

[ 2019/05/09 (木) ]
本エントリーは、イーストフード、乳化剤無添加パンのからくりは?(松永和紀 WEDGE Infinity 2019/5/9)から、ほぼ全文引用です。ブログ主の身内も勘違いしていましたので。

イーストフード、乳化剤は不使用、無添加……。パッケージに大きく書かれているパンがあるのをご存知ですか?

添加物嫌いの人たちには歓迎されています。私の入っている生協では、「添加物まみれの食品が溢れ返る中、少しでも自然に近いものを選びたい」と大絶賛されていました。
イーストフード・乳化剤無添加

でも、からくりがあるようです。製パン業界1位の山崎製パン(株)が3月、「イーストフード、乳化剤不使用」等の強調表示についてと題するページを公開し、そのノウハウを解説しました。

強調表示というのは、商品の独自の特徴をアピールするもので、法律で決まっている食品表示項目とは別にパッケージに記載します。飲料の「糖類ゼロ」や菓子の「カルシウムたっぷり」などがおなじみですが、パン類では近年、イーストフード・乳化剤不使用や無添加の強調表示が目立ちます。
山崎製パンは、ライバル企業の具体名こそ挙げていませんが、「強調表示は、消費者の誤認を招くものであり、直ちに取りやめるべきだ」と、主張しました。
業界2位の敷島製パン(株)、3位のフジパングループ(株)神戸屋(株)(株)タカキベーカリーなどが、この強調表示をしています。

イーストフードは、酵母の栄養源

イーストフードは、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸三カルシウム等、18種類の物質を指しており、食品表示基準で一括して「イーストフード」として表記することが認められています。
そのために、「隠されている」「危険」などと言われがちで、インターネットを検索するとそうした情報が山のように出てきます。が、化学を少し学んだ人ならわかるとおり、実は、人や動物、植物の中にいくらでもあるごく一般的な元素の化合物ばかりです。
その物質自体を大量に食べれば有害ですが、食品に大量に入れてしまうと味がひどく悪くなりますから、入れることはありません。
「化学物質のリスクは摂取量によって大きく異なる」「添加物は、使い方や使う量が決められて、安全が確保されている」と知っていれば懸念はないはずなのですが、悪者扱いされやすい添加物です。

イーストフードはなんのために使うのか? 主に三つの理由があります。
  1. 酵母(イースト)の栄養源
    パン作りには酵母=イーストを用います。酵母が生地中で糖類をアルコールと炭酸ガスに分解し、生地がそれらにより膨らみます。これが発酵です。ただし、酵母が活発に働くにはパンの原材料だけでは栄養が少し足りないので、イーストフード、文字通り“酵母の食べ物”を与えて酵母の働きを助け、発酵を促すのです。
  2. 原料水の質の改善
    パン作りには少し硬度の高い水が適しています。日本の水は軟水なので、カルシウム、マグネシウムなどをイーストフードで補います。さらに、しっかりと膨らんだ風味のあるパンを作るには生地のpH、つまり酸性度を調整した方がよく、イーストフードはそんな効果も持っています。
  3. pH調整
    イーストフードを使うと、発酵が安定し、パンの風味や香り、ボリューム感等が向上するそうです。街のパン屋さん(リテールベーカリー)の多くも、普通にイーストフードを使っています。街のパン屋さんは対面販売なので、法律上、詳しい原材料名などは表示しなくてもよく、消費者は知らないまま買っています。
では、イーストフードを使わずにパンを作るにはどのような方法があるのでしょうか?

たとえば、生地をこねる時にたんぱく質分解酵素を入れておくと、酵素が小麦粉に含まれるたんぱく質を分解して、酵母が利用できるようになる、というやり方があります。
酵素は添加物として用いられますが、パンが焼かれると酵素も焼かれて活性を失い、食品に含まれるたんぱく質の一部として消化されるだけとなります。加工時に用いられ、食べる際にはもう効果を持たない添加物は加工助剤と呼ばれ、パッケージに原材料として表示する必要がありません。したがって、消費者がパンのパッケージを見ても、酵素の使用の有無はわかりません。
また、水自体に、食品素材である天然ドロマイト(炭酸カルシウムマグネシウム含有物)を入れる、という手法もあります。
人工的に硬度の高い水を作ってしまうのです。
また、生地のpHと調整するために食品素材を用いる場合もあります。
食品素材は加える量が少なければ、表示を回避するテクニックはいろいろあります。こうした方法を駆使して、一部の企業はイーストフード不使用、無添加を達成しています。

もう一つの添加物、乳化剤も、、、同じ成分が食品になったり添加物になったりする

乳化剤は物質としては25種類あります。それを一括して「乳化剤」としてパッケージに表記することが認められています。イーストフードと同じように物質名が“隠されている”と受け止められることが、危ないと言われる一因のようです。
ただし、乳化という現象は調理には欠かせないものです。水と油のように混じり合わないものを均一に混ぜるのを乳化と呼びます。たとえば、マヨネーズでは、酢と油は本来、混じり合いません。しかし、卵黄中に含まれる卵黄レシチンが乳化剤の役割を果たし、一体化してマヨネーズとなります。
卵黄や卵黄油を原材料として用いる場合には、食品素材。ところが、卵黄や卵黄油に含まれる卵黄レシチンを抽出精製し濃度を高めた製品は、添加物(乳化剤)として扱われます。卵黄レシチン自体としてはなにも変わらないのに、面白いですね。
卵黄レシチンに限らず、植物油の原料になるナタネ、大豆などに含まれる植物の成分も、卵黄と同じように最初は食品素材抽出精製し濃度が高められたものは乳化剤となります。
安全性については、油を食べると体内で消化される際に乳化剤と同じ物質ができるぐらいなので、乳化剤が用いられ人が食べても、問題はありません。

乳化剤不使用にも、テクニックがある

さて、この乳化剤、パン生地の中で大きな効果を発揮します。でんぷんと乳化剤が合わさって生地の保水性を高め、パンの柔らかさを保ったり物性を改善したり強くしたりします。
山崎製パンは、植物由来の油脂の成分から作られた添加物を使い、原材料名に乳化剤と表示しています。
では、ほかの社はどうやって乳化剤を用いずにパンを作るのか?ここでも酵素が活躍します。
油を分解する酵素を原材料として入れると、油から乳化剤と同じ成分ができて、同じ働きをします。
乳化剤が担う生地の物性を改善したり強くしたり、という効果についても、たんぱく質分解酵素でんぷん分解酵素等を用いて補います。
これらの酵素は添加物として生地で働きますが、イーストフードで解説した酵素と同じように、添加物としてパッケージに表示する必要がなく、消費者は把握できません。
また、原材料として用いるマーガリンや油脂に乳化剤と同じ成分を混ぜたり、油脂自体を加工して最初から含有させるなどの方法もあります。
必要な量はごくわずかなので、表示しなくてもよかったり、ほかの微量原材料と共に「その他」と表記できるルールがあります。

乳化剤は、パンを分析すると判明する

乳化剤は、焼けたパン自体を分析すると、含有の有無が判明します。山崎製パン中央研究所がパンを分析したところ、不使用、無添加と表示された他社製品から、乳化剤成分が検出されました。
また、乳化剤不使用と書かれた他社のマーガリン注入ロールパンのマーガリンを分析したところ、卵黄由来レシチンが検出されました。
マーガリン製造時に、精製された卵黄由来レシチンを添加物として使った場合には、パンのパッケージにも表示しなければなりません。しかし、マーガリンに、卵や卵黄油などとして用いている場合は食品素材となります。そのまま原材料として記載したり、使う量が少ない場合には表示しなくてもよくなります。マーガリンという表記のみも許されます。
結局のところ、法的に決まっている食品表示基準を吟味して、表示には添加物使用と表れないやり方を駆使してパンを作っているのです。
ちなみに、イーストフードについては、添加してももともと、小麦など原材料中に含まれる元素ばかりなので、焼き上がったパンを分析して使用したかどうかを判断することはできません。

他社からの反論はなし

山崎製パンは、他社製品の分析を行って結果を発表しました。そうなると、「分析を信用して良いの?」「自社の都合の良い結果が出るように分析したのでは?」。そんな疑問も浮かびます。
頭から、同社の言い分を信用する訳には行きません。そこで、今回のウェブサイトでの分析結果発表について、山崎製パンに取材しました。
分析は、同社の研究員が従来からある方法をパン用に改良して確立し、実際の製品を調べた結果だそうです。同社にとっても、自社分析は「信用されにくい」という点は気がかりで、第三者の検査機関にも依頼しました。しかし、「検査技術がない」と断られたとか。食品中にも同一物質やよく似た物質が多数存在する場合の詳細分析は難しいのです。
もし、山崎製パンの分析結果に問題があったら、不使用、無添加をうたう他企業は反論するでしょう。敷島製パンフジパンに「自社の製品についてのデータがあれば、提供して欲しい」と依頼しましたが、回答はありませんでした。
山崎製パンの分析結果は事実なのだろう、と思わざるを得ません。

ではなぜ、山崎製パンは今、「イーストフード・乳化剤不使用、無添加」の強調表示について、他社の製品の分析までして見解を表明したのでしょうか?
日本パン公正取引協議会で、現在検討中

実は、パン事業者約70社などで構成する「日本パン公正取引協議会」に近年、消費者からイーストフードや乳化剤に関する質問が数多く寄せられています。この団体は、「包装食パンの表示に関する公正競争規約」を運用しています。公正競争規約というのは、実態と異なる表示などを防ぐため、業界で自主的に定めるルールのことで、景品表示法に基づき消費者庁長官と公正取引委員会の認定を受け決められています。
そこで、この強調表示が適正なのか、科学的根拠があるのか調査のうえで見解をまとめようということになったのです。
「イーストフード・乳化剤は危険。使用を止めて欲しい」という消費者の苦情は、山崎製パンにも増えてきているそうです。
実際には、ここまで説明してきたように、安全性には問題がありません。添加物は、内閣府食品安全委員会がリスク評価し、厚労省でも審議のうえで使用を認められ管理されています。
食パンやロールパン等でイーストフードと乳化剤について「不使用」「無添加」を表示している企業の多くも、他の製品では使用し、表示もしています。企業として、これらの安全性に問題があるとは思っていない証拠です。
しかし、消費者は誤解しています。消費者庁の行っている「食品表示に関する消費者意向調査」によれば、無添加等の表示のある食品を購入している割合は過半数を超えました。その理由として、7割以上の人が「安全で健康に良さそうなため」と答えています。
消費者は、イーストフード・乳化剤不使用、無添加の表示を見て、より安全、より健康とイメージし購入する。しかし実際には、そんな根拠はないばかりか、添加物とは名が付かない同等の成分が入っている……。これが、パンの強調表示の実態です。

優良誤認の疑いあり?

景品表示法では、実際のものよりも著しく優良であると示している商品は「優良誤認」にあたるとして、違反と見なされる可能性があります。パンのこの状況は、優良誤認にはあたらないのか? そんな指摘も出てきました。
そうしたこともあり、日本パン公正取引協議会と日本パン工業会は調査や協議を行っています。そこで、山崎製パンは業界1位の企業として、自社の姿勢を明確にした、というわけです。
ただし、取材にあたって、同社に強く念押しされました。同社は、イーストフードと乳化剤を使わない手法自体を問題にするつもりはありません。それは企業努力の範疇であり、合法的であり、食品表示のルールにも則っています。実際に、同社もプライベートブランド(PB)などで、求めに応じてこれらを使わない製品も作っています。
「でも、企業として、より安全、健康的という消費者の誤認を招く強調表示は、控えるべきでは?」。そう、同社は問いかけるのです。
強調表示がなくても、消費者は原材料名を見て、イーストフードや乳化剤が使われているかどうかを判断でき、選択の権利が奪われるわけではありません。
私は今回の取材にあたり、現在強調表示している大手2社に、その製品数や山崎製パンの今回の動きをどう思うか、など9項目にわたって質問状を送りました。
敷島製パン広報室は「お問い合わせ内容の件に関しては、日本パン工業会で検討されている問題であり、現時点で、工業会の会員である弊社から個別に回答をいたしかねます」という回答。
フジパンからは、生産本部部長名で「お尋ねの件については回答を控えさせていただきます」という返事が来ました。

なぜ、パンメーカーは添加物が必要なのか?

ここまで読んで、「家でパンを焼くときには、こんな添加物を使わなくても上手に作れる。やっぱり、大手パンメーカーの製品はどれもイヤ」と思った人もいるかも。「本当に添加物が必要ですか?」。山崎製パン中央研究所に、率直に疑問をぶつけてみました。
同研究所によれば、第1の理由は、老化防止効果。手作りや街のパン屋さん(リテールベーカリー)は、焼いたその日に売り、なるべく早く食べてもらうのが基本。翌日は硬くなる、というのも消費者の常識です。この硬くパサつく現象を、パンの老化と呼びます。一方、大手パンメーカーの製品できちんと包装されたものは、工場から店に運ばれ売られ、数日間はふっくらしっとり、やわらかく食べられることを、消費者も期待します。
老化を遅らせ日持ちを向上させるため、パン工場は小麦粉選び、発酵のさせ方、焼き方から添加物の用い方など、技術を駆使してパンを焼きます。また、カビの胞子や細菌が包装前のパンに付かないように施設を整え、高度な衛生管理を行っています。「パンがカビないのは、保存料やイーストフード、乳化剤を用いているから」などと言う人が時々いますが、まったくの事実誤認です。
第2の理由は、機械生産によって生地が受けるダメージを和らげる効果です。家で手作りしたり、街のパン屋さん(リテールベーカリー)が作るときには、手でやさしく作業します。それに対して、パンメーカーは製造を機械で行います。最近の機械はずいぶんと進んでいますが、そうであってもやはり、手ほどやさしく、やわらかく、というわけにはいかず、生地が衝撃を受けます。そのため、イーストフードや乳化剤を用いて発酵を助け、生地をやわらかく、かつ強度を上げて、焼き上げるのです。

消費者も、科学的な判断力が求められている

私は、かなりのパン好きです。おいしい街のパン屋さん(リテールベーカリー)とも、さまざま付き合いがあります。たしかに、手でていねいに作ったパンはおいしい。でも、パンメーカーが、イーストフードや乳化剤も駆使して機械生産し包装し販売されるパンにも、大きな価値があります。
大量生産され日持ちするからこそ、全国どんな田舎であっても、等しくふわふわ、しっとり、おいしい。災害時に山崎製パンのパンがいち早く被災地に届けられる光景も、今やおなじみ。社員は、「おいしいパンを妥当な価格で手軽に食べてもらうために、日々努力を惜しみません」と口を揃えます。
同社だけでなく多くのパンメーカーのおかげで、消費者は安く、1斤百数十円しかしないような食パンを食べられます。海外の包装パンをご存知の人なら、老化が遅い日本の包装パンの特徴、その技術力の高さがおわかりでしょう。
今、パン業界は、強調表示をどうするか、真剣に協議中です。消費者も、添加物の科学的な意味を知り、表面的な言葉に踊らされず判断できる力が求められている、と思えてなりません。

【メモ】
パン業界激震 「イーストフード・乳化剤不使用」表示の是非(清水典之 NEWSポストセブン 2019/5/23)
[ 2019/05/09(木) ] カテゴリ: 食品中の化学物質,リスク | CM(0)
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