ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

“再生エネルギー特別措置法”の目的・目標は?

[ 2011/07/31 (日) ]
 再生エネルギー特別措置法案の本格審議が始まった。ネットでは反対意見よりも賛成意見がはるかに多い様である。反対あるいは要修正意見を中心に情報を整理してみた。

1.再生エネルギー特別措置法案とは、
 家庭や企業が太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスで発電した電力を、電力会社が固定価格で一定期間、買い取る仕組みをつくる。買い取り費用は電気料金に転嫁する。
 買い取り価格や期間は政府が決定し、10年間が想定されている。
 ただ、電気料金への転嫁は、電気を大量に使う企業の経営を圧迫する。一律に値上げすることで、低所得者ほど負担増の割合が大きくなる逆進性が起こる。さらに、買い取り価格が高すぎれば、大規模設備を導入できる資金力のある事業者がもうかりすぎる問題も指摘され、課題が多い。
 政府は2012年度の導入を目指す。導入後3年ごとに制度を見直す。

2.期待する目的と的外れの目的
【期待する目的】再生可能エネルギーの増加
 同様の法律は世界で40カ国以上が採用しており、再生可能エネルギーの普及に確かに効果がある。(風力発電は10年度から発電所建設に対する国の補助金が事実上なくなったため、国内で新設がほぼストップしている。)
 ただし、太陽光と風力は、気象条件によって変動し発電量がほとんどゼロにもなる。欧州での太陽光・風力の高い普及率は、その間欠性と変動性を欧州全体の巨大な統一電力網で吸収できるから可能なのであり、日本の場合は望めない。法案第五条には、例外的に買取を拒否できるケースとして、「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき」が挙げられている。
 さらに、コストや用地の問題、出力の弱さなどから「10年以内に20~30%の電力を安定的に供給できる可能性はゼロに近い」と指摘がある。

的外れの目的1】原発の代替え
 太陽光と風力は、間欠性と変動性のため、ベース電源として100%に近い出力で一定運転している原発の代替えにならない。本法案は脱原発・減原発に何ら寄与しない。

的外れの目的2】化石燃料火力発電の代替え
 太陽光と風力は、バックアップが必要である。
 欧州の場合でも全体でみれば、既存の発電所を残したまま風力・太陽光発電を併設し、条件の良いときには風力・太陽光発電で電力を供給し、発電できないときには既存の発電所を動かすという運用を行うというのが実態。つまり、既存の発電システムの置き換え・代替えにはならないのである。実際には、効率の悪い出力調整可能な火力発電を常に運転して、頻繁に出力調整をする事になるため、燃費は極めて悪くなる。風力・太陽光発電が増えたが為に、CO2排出量が増加したという指摘もある。(大規模な蓄電システムが実現しない限り)

3.電気料金への転嫁(利用者負担)
 海江田経産相は付加金が「0.5円/kWhを超えないように運用する」と説明している。上限を課すことは、再生可能エネルギーの導入を実質的に低く抑えることにほかならず、今後の普及にブレーキをかけるとの指摘もある。
 一方、0.5円/kWhでも、日本の総発電量は2009年で9,551億kWhなので4,780億円/年、10年間では約4.8兆円となる。

4.法案に対する主な反対・要修正意見(産業界の反対意見を除く)
●再生エネルギーは、補完的なエネルギー源としては有効だろう。だから、大いにその方面で実用化を進めればよい。だが、基本的に補助がなければ成り立たないエネルギー源がメインになるということは、生きてゆくためのエネルギー源が他の産業を食いつぶすと言うことだ。エネルギー産業が農業と同じ補助金産業になり、国家統制が強まる。

●同様の制度を1994年に導入したスペインでは投機目的のメガソーラー(大規模太陽光発電所)建設が急増した後、買い取り価格を引き下げて「太陽光バブル」がはじけた。スペインの経済破綻の大きな部分は、自然再生エネルギーに対する過大な負担がある。

●ソフトバンクなどの発電業者にとっては安定的な利益を得られる巨大なメリットがあるが、馬鹿を見るのは負担が増える一般国民だ。実際、孫氏は買い取り価格について「世界的な相場観なら採算が成り立つ。政府の決め方次第だが、日本だけが異常に低いとなると実験レベルで終わってしまう」と発言している。

●技術開発のために資金を集中して実験プラントを作るなら必要だろうし、常に技術発展のための投資だ。だが、実現もしていない技術を補助金前提に立ち上げ、多くの素人自治体がだまされている実態は異常としか思えない。失敗した風力発電以上の大失敗になる。

●現状の法案は、電力会社の地域独占体制を現状維持することがたくみに隠される。まず電力自由化し電力会社の地域独占体制をなくし効率化をはかることをすべき。市場を健全に自由化した上で、再生エネ法案のような特定のエネルギー源を優遇する法案は慎重に制度設計するべき。

●非常に好意的にみれば、これは過渡的な措置だ。むしろ、過渡的なものとして扱わなければならない。何らかの形で、原発はものすごく優遇されて、有利な条件で整備されてきた。実際は立ち上がりの時期から今日まで補助金漬けで出来上がっている。そのような意味では、再生可能エネルギーも何らかの形で政府の後押しが入るのは悪いことではないが、最終的にはマーケットにゆだねられないといけない。その道筋がこの法律には用意されていない。

【つぶやき】
●反対・要修正意見に同意or賛成。(そのようなものをピックアップしたのだから
●重要度から言えば、発送電分離の方が重要で、それを前提とした電力自由化の方向明確化が先、こちらは急ぐ必要はないと思う。やむを得ず、この法案を実施するのなら、将来の発送電分離の障害とならないように
●再生可能エネルギーの普及を何らかの形で後押しする事は必要だ。過去にも、省エネへの優遇政策が日本の省エネ技術を世界一にした要因の一つであった。
普及促進と利用者負担のバランスを考えた制度設計が重要で、電力の買い取り価格が適正であること、が必要だ。
優遇政策が新たな利権を産まないようにしなければならない。(原発ビジネスで明確になった様に)利権が絡むとブレーキが利かなくなるので。


【関連エントリー(新しい順)】
●再生可能エネルギーに頼れない理由
●ドイツとスペインで失敗した全量固定価格買取制度
●“再生エネルギー特別措置法”の目的・目標は? →本エントリーです
●【後半】デンマークのエネルギー政策など(自然エネルギー、風力発電、発送電分離)

その他の関連エントリーはカテゴリーにひとまとめにしています。記事下部or左欄のカテゴリーリンクから、どうぞ。
[ 2011/07/31(日) ] カテゴリ: FIT認定制度に関する事 | CM(1)
拍手コメントありがとうございます。
わざわざお越しいただいて、ありがとうございます。
またお邪魔させていただきますね。
[ 2011/08/26 10:31 ] [ 編集 ]
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