ポストさんてん日記

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(メモ)ベニー・パイザー氏へのインタビュー記事2点

[ 2018/12/19 (水) ]
欧州における地球温暖化とエネルギー問題での動きの変化に関する興味深い情報でした。

ベニー・パイザー氏 Benny Peiser

地球温暖化問題について、中立的な立場から情報を分析・発信している英国のシンクタンク「地球温暖化政策財団」(The Global Warming Policy Foundation)所長。イスラエル生まれ。独フランクフルト大で博士号。社会科学者。61歳。
ベニー・パイザー

氏が登壇された国際シンポジウム「地球温暖化の科学的知見と欧州における政策」についてのリンクは本エントリーの③にあります。

① 論点 変わる欧州の温暖化対策
2018/11/2読売新聞朝刊のインタビュー記事(聞き手・編集委員 三好範英)

【部分的な引用】
私は1970年代終わり、ドイツの環境政党「緑の党」の創設に関わった一人だ。しかし、次第に現実主義的な立場を取るようになった。当時、酸性雨問題で「ドイツの森は枯死する」などと言われていた。環境派の主張に誇張が多かったことに疑念を抱いたのがきっかけだった。

温暖化対策で世界をリードしてきだ欧州だが、この2・3年、明らかな議論の変化を感じている。議論は環境重視一辺倒から、経済とのバランスを考慮する方向に変わっている。
温暖化対策に最も熱心だったドイツでは、数年前まで、全政党がほとんど伝道師的に、再生可能エネルギーへの転換を進めねばならない、と主張していた。しかし、今やエネルギー転換が頭痛の種になっている。
エネルギーコストは継続して上昇している。再エネ事業はまだ補助金なしにはやっていけない。再エネ事業は今、補助の減ったヨーロッパから、利益になる世界の他地域に移っている。
確かに洋上風力発電所の発電コストは入札制度を導入して下がったが、風力発電事業者は採算がとれるか確信していない。建設がどんどん進むという状況ではない。入札制度が続くかどうかはわからない。
ドイツ2022年までに脱原発を実現するには、化石燃料発電所への依存度を高めざるを得ない。天気任せの不安定な再エネでは代替不能だ。脱石炭の動きも強まっているが、脱原発、脱石炭の両方の実現は不可能だ。温室効果ガス排出量は増えることになる。
また、天然ガスはロシアからの輸入に頼っており、ガス発電への過度の依存は安全保障上、負の影響が生じるだろう。
世界には温室効果ガスの削減に関して、後ろ向きの国も多い。グローバルな経済競争に負けないためには、欧州諸国が、温室効果ガス削減を一方的に担うことは好ましくない。欧州各国政府の政策が急激に変わるとは思わないが、議論の上ではそうした主張が徐々に強まっている。
脱原発の際の、スイスのようなやり方が賢明だ。2034年までに脱原発する計画だが、情勢次第ではできるだけ先延ばしにすることもあり得る。
長い間には人々の考え方や技術は変わるかもしれない。非常にコストがかかる政策に関して言えば、急激な政策転換を避けるのが賢明なのだ。

【メモ】現実を見据えた地球温暖化対策を(三好範英 IEEI 2018/11/14)

発言の要旨については、11月2日付け読売新聞「論点」で取り上げているが、この欄では、主な発言を一問一答形式でやや詳しく報告したい。


② 英国から考える、気候変動政策の今後
地球温暖化政策財団 ベニー・パイザー氏にきく
竹内純子 IEEI 2018/12/18

【小見出しとごく一部のみ引用】詳細は原典をご覧ください。

  • 気候変動の科学と政策のあり方について
    私はもともと、ドイツの「緑の党」立ち上げに関わったメンバーの中の一人です。しかし、環境配慮を強く求める人の主張は、どこか終末思想的であり、誇張が多いことに気がつきました。
    例えばIPCCも、自然科学分野を担当するワーキンググループ1は科学的に慎重な態度を維持していると思います。しかし、政策担当者向けの要約をつくる段階では相当政治的な調整を受けています。
  • EUの気候変動政策の今後
    今起きていることを評価すれば、EUはもともと、依って立つ前提の多くが結局本当でなかったということを認識しはじめていると思います。もちろん、オープンにそれを認めることはしていませんが……。例えば再生可能エネルギーの導入を進めるためのコストについて、再エネへの補助も大きく膨らんだのに加えて、再エネをうまく活用するにはグリッドを含めたコスト全体を考えなければならないという事実の前に、「話が違う」と考えている人は多くいます。
    何よりも重要なのは、EUにとって気候変動アジェンダは最重点ではないということです。移民、雇用維持などの経済政策などのほうが優先すべき課題と認識されています。欧州の「リップサービス」を信じないでください
    パリ協定の採択は、コペンハーゲンでのCOP15 の大失敗というトラウマから脱するための政治的PRツールとしては成功でしたが、CO2 削減の戦略としては失敗です。

    確かにLCOEコスト(建設単価や燃料費、維持費等発電所の平均稼働期間の全必要経費を想定して、平均稼働率によって求められる各電源の1kWhあたり発電コストを評価するもの)は下落しています
    ただ、発電所を建てればよいわけではなく、電気はグリッドで活用しなければなりません。そうしたシステムコスト、すなわち、送配電網の整備調整力としての火力発電のコストも考えれば、本当に安いとは言い難いのです。
    むしろ私たちは、EUにおける再エネへの投資がこの10 年で半分になったという事実をみなければなりません(図1)。
    再エネが安くなっているというなら補助金なしでもっと増えるはずなのに、補助金がなくなれば導入量が減っていることが、そうではない事実を伝えているのではないでしょうか。
  • 石炭の廃止を進められないドイツ
    EUの二大国である独仏についていえば、フランスはまだ原子力に大きく依存するでしょう。
    ドイツは石炭の廃止を進められず苦しんでいます。
    こうした状況を受けて、実は、EU 全体の目標引き上げの最大の反対者は実はドイツなのです。
    欧州における原子力には二つ問題があります。一つはおっしゃった通り、温暖化対策として非常に有効な手段ではあるのですが、環境派は統合失調症の気味があり(笑)、原子力発電をするくらいなら石炭火力を利用すると主張する人が多いことです。
  • 日本への示唆
    (ESG 投資についての評価をお聞かせいただけますか?)
    アンバランスだと思っています。OECD諸国が内輪でルールを決め、例えば石炭火力に融資が起きないようにしたとしても、それは誰か他の人、例えば中国がそのチャンスを持って行くというだけです。中国はそこに何のためらいもありません。西側諸国の「自縄自縛」でしかありません。エネルギー問題という極めて国のあり方にとって重要な問題を、文化的なプレッシャー、ムーブメントで決めてはいけません。安全保障であり、経済なのです。
    欧州では既に太陽光産業でバブルがはじけました。
  • まとめとして
    わが国のエネルギー・環境政策の議論においては、頻繁に「〇〇では」という他国の事例が引用されるが、パイザー氏の「欧州のリップサービスを信じないで」というコメントは、エネルギー・環境政策は各国それぞれが生き残り戦略として策定するものであることを改めて示唆するものであった。
    最後に、こうした有識者を招聘し、直接そのお話を伺う機会を積極的に設けてくださるキャノングローバル戦略研究所の活動に心から敬意を表し、このインタビューへのご協力に御礼を申し上げたい。



【第1部 地球温暖化の科学】
●Benny Peiser
"Climate Realism: Understanding Agreement and Disagreement in Climate Science"
 発表資料PDF
杉山大志(キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員)
「地球温暖化の環境影響についてのコメント」
 発表資料PDF

【第2部 欧州の温暖化対策】
●Benny Peiser
"The Crisis of EU Climate Policy"
 発表資料PDF
●竹内純子(NPO法人国際環境経済研究所 理事・主席研究員)
「日本のエネルギーが直面する5つの課題」
 発表資料PDF

関連エントリーとメモ

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【メモ】
ドイツ政府もフランス国民も「温暖化対策より経済」(山本隆三 WEDGE Infinity 2013/12/13)
エネルギー貧困層を追い詰めたフランス炭素税(山本隆三 IEEI 2013/12/19)
[ 2018/12/19(水) ] カテゴリ: 温暖化対応は行き過ぎか | CM(0)
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