ポストさんてん日記

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プリン体とは、尿酸の“2つの顔”、プリン体ゼロのビールは意味がない?

[ 2018/12/17 (月) ]
本エントリーでは、下記の【全体概論】に関して、その詳細を勉強しました。
理解できた事を記載しましたが、この話は奥が深く、まだ、先がありそうだという事も分かりました。(生化学の分野は素人にとっては手ごわいです。)

【全体概論】

プリン体ゼロを信じますか?
プリン体ゼロのビールもそうでしょう。体内でプリン体から尿酸が作られ血中濃度が上がり痛風になる。だからプリン体ゼロのビールを、となる。単純な因果推論が展開されています。でも、日本人男性3300人の酒の摂取量を調べ、その後6年間の高尿酸血症の発症状況を調べたところ、 プリン体をたっぷり含むビールを飲んでいた人も日本酒を飲んでいた人も、飲んでいない人に比べて相対リスクは同じように高かった。日本酒にはプリン体はごくわずかしか含まれていないにもかかわらずです。
尿酸は、ビールから摂取するだけではなく体内でほかの物質から合成されます。アルコールその合成を促進させるので、主犯はアルコール。ビールの中のプリン体は共犯の一人でしかないのです。

既エントリー(メモ)松永和紀氏による佐々木敏・東京大学大学院医学系研究科教授へのインタビュー記事から転記

目次

1.プリン体とは
2.人体内のプリン体のうち、飲食で摂取する量は2割程度
3.プリン体が代謝された結果に生ずる尿酸に“2つの顔”
4.アルコールの影響は大きい
5.飲食で摂取する量は2割程度だが、無視はできない
6.ビールのプリン体は、さほど多いわけではない
7.メモ

1.プリン体とは

プリン骨格と尿酸
参考:柔らかいプリンのようなもの?(この世を科学的に知ろう)
尿酸については3項で説明

プリン体とは、プリン骨格:C5H4N4(プリン環ともいう)とよばれる化学構造を分子内にもつ物質の総称
生体内にはこのプリン骨格を持つ分子は非常に多く、私たちの体の全細胞にとって生命の根幹をなす重要な化合物であり、もしプリン体が存在しなかったら地球上の生命は存在しない。
プリン骨格を持った分子の具体例として、
  • DNA,RNAは4種類の核酸塩基がずらりと並んで二重らせんを作ったものだが、このうち2種のアデニンとグアニン。
  • 体の中でエネルギー通貨といわれるATP(アデノシン三リン酸)
  • などなど
これらのプリン骨格は、摂取したタンパク質の中の3種類のアミノ酸(グルタミン酸、グリシン、アスパラギン酸)などを材料にして、10段階の複雑な反応で合成される。

2.人体内のプリン体のうち、飲食で摂取する量は2割程度

プリン体の多くは体内で作られている
体内のプリン体のうち、8割は日ごろから体内でつくられている。飲食で摂取する量は2割程度にすぎない。
その8割の体内でつくられるプリン体には、2つのルートがある。
プリン体を生む2つのルート
出典:痛風クリアランス検査(両国東口クリニック)

細胞の新陳代謝により生成される(細胞が壊れてできる)
細胞は常に新陳代謝を繰り返しており、古くなった細胞は新しい細胞に入れ替わっていく。古い細胞が分解されるとき、細胞内の核(DNA,RNA)が分解されプリン体が放出される。

体内のエネルギー物質の構成成分(エネルギー代謝の過程でできる)
食事で摂った栄養素は最終的にエネルギー源としてATPに蓄えられる。(ATPは筋肉の収縮や生体構成物質の合成などに使われており、生体内の「エネルギー通貨」と呼ばれている。)
ATPは利用されると分解された後、通常はエネルギーを受けて再びもとのATPに再生されるが、急激にしかも大量に利用された場合は、さらに分解が進んでプリン体が放出される。
ATPはエネルギーを放出するとADP(アデノシン2リン酸)に分解され、その後、エネルギーを受けてATPに再生される。この辺りのお話は栄養素の消化・吸収・代謝の基礎、全体概要にあります。
激しい運動などで急激にたくさんのATPを使った場合は、一部のADPはATPに戻ることなく、不用物として体内で分解されプリン体となる。

3.プリン体が代謝された結果に生ずる尿酸に“2つの顔”

体内でプリン体が代謝(分解・利用)された結果、生ずる最終産物が尿酸
尿酸も1項の図のようにプリン体の一種。
定義の話になるとややっこしい。プリン骨格の一部の2重結合が切れて酸素や水素等と結びついた物質や、それらを構成成分に持つ多くの物質を含めて、総称してプリン体と言っている(らしい)。

プリン体は肝臓で分解され尿酸に変わり、腎臓で濾過されて尿として体外に捨てられる。この一連の代謝がスムーズに行われて排泄されていれば問題ない。
“何らかの原因”によって、血液中に多量の尿酸が滞留したのが高尿酸血症であり、さらに、この状態が続くと、尿酸が結晶化した尿酸塩が関節に沈着していき、急性関節炎を発症する。これが痛風で激烈な痛みを伴う。(そもそも尿酸は水に溶けにくく結晶化しやすい)

尿酸もう1つの顔として、血中においてビタミンCに匹敵するともいわれる強力な抗酸化作用を有し、活性酸素などのストレス物質から人の体を守る面がある。
ほとんどの動物では尿酸は分解され体内にたまらない。ところが、ヒトと一部の霊長類は尿酸を分解する酵素:尿酸酸化酵素が欠損しており尿酸がたまる傾向がある。
ヒトは進化の過程で尿酸酸化酵素を欠如させ、血中尿酸を適度に確保して尿酸のもつ抗酸化力を活用するという選択を行い、代償として痛風発症のリスクを背負うことになったわけ。
【参考】PDF尿酸とメタボリックシンドローム(成人病と生活習慣病43巻8号 2013年8月)

【メモ】
一般に、アミノ酸など、プリン体以外の窒素を含む物質は体内で代謝された後に、アンモニア(有毒)に分解され、さらに肝臓で尿素 CO(NH2)2(無害)に変えて排出している。(「オルニチン回路」 別名 「尿素回路」 )
なお、鳥類は、尿素ではなく固形の尿酸の形で排出する。鳥のフンと呼んでいるその一部は、固形化した尿だったのである。その鳥のフンが降り積もって長い年月が経つとグアノと呼ばれる窒素肥料の原料となる。

高尿酸血症を招く“何らかの原因”は2つある。
その1つは、プリン体の代謝が盛んに行なわれて、尿酸が異常に多く合成されること。筋肉の運動でもATPが代謝されるので、アスリートは意外に尿酸値が高い。
2つめは、血液中の尿酸腎臓から尿へと排泄する機能が低下すること。
この両方ともがアルコール摂取と深く関わっている。

4.アルコールの影響は大きい

アルコール肝臓でアセトアルデヒド(有害)→酢酸(無害)に分解(解毒)、最終的には炭酸ガスと水になる。詳細はこちら
その反応に必要なエネルギーとしてATP を使用し尿酸の生成が促進される。
また、アルコールは血中の乳酸を上昇させて腎臓からの尿酸の排泄を抑制する。
さらに、アルコールを飲むと脱水になりやすく、脱水により尿が濃くなるため、老廃物が尿に溶けにくくなる。
アルコール飲料と尿酸値
出典:高尿酸血症の改善には、お酒はひかえめに (帝京大学 臨床分析学研究室)

以上から、プリン体ゼロの発泡酒などでも、飲み過ぎると尿酸が排泄されにくい状況になり、血液中の尿酸濃度は高くなる。

【参考】
糖分では、ぶどう糖尿酸値を上げないが、甘味料として多く使用される果糖:フルクトースの摂りすぎは尿酸値を上げる。代謝の過程でATPを消費する為と代謝産物として乳酸を産出する為(出典はこちら)。

5.飲食で摂取する量は2割程度だが、無視はできない

食品中でも核酸(DNARNA)中に多く含まれ、アミノ酸や脂肪と並ぶ「3大うまみ成分」の1つといわれる。プリン体が多いといわれている物においしい物が多いのもうなずける。
3大うまみ成分とは、一般的には、「グルタミン酸」「イノシン酸」「グアニル酸」、後者の2つにプリン体がある。

核酸から抽出して、うま味系の食品添加物としても使用されている。表示は、単独で使用される場合は「調味料(核酸)」だが、アミノ酸と併用されることが多く、その場合は「調味料(アミノ酸等)」となっている。
酵母エキスにも含まれる。(酵母エキスは食品添加物ではなく、昆布エキスなどと同様に食品に分類される。)

細胞数の多いもの、細胞分裂の盛んな組織に多く存在する。
  • プリン体の多い食品として、分裂を盛んに行なうレバー類や魚卵類などが代表的。
  • 他にプリン骨格を持った有名な化合物としてカフェインなどがある。

動物性食品(魚類や肉類)のほうが、植物性食品(穀物類や野菜類)よりもプリン体を多く含んでいるので、高尿酸血症のリスクは高くなる。ただし、動物性食品であっても乳製品にはプリン体はほとんど含まれない。

プリン体が極めて多い食品(300mg以上/100g)
プリン体が極めて多い食品(300mg以上/100g)

プリン体が多い食品(200~300mg/100g)
プリン体が多い食品(200~300mg/100g)

プリン体が少ない食品(50~100mg/100g)
プリン体が少ない食品(50~100mg/100g)

プリン体が極めて少ない食品(50mg以下/100g)
プリン体が極めて少ない食品(50mg以下/100g)

出典:体に必須なプリン体!?(アサヒグループ食品)

乾物は重量に水分を含まないので含有量は多くなる。
100gを普通に食べる食品かどうかをイメージすると良いかも。
個人的に意外だったのはイクラ・スジコは少ないこと。それらの卵は大きいので、たらこなどの小さな魚卵と比べて卵の数が少なくプリン体の量も少ない。
肉類などは単位重量あたりの細胞の数が多く、その分、プリン体が入っていることになる。

【参考】PDF食品中のプリン体含量(帝京大学薬学部物理化学講座薬品分析学教室 金子希代子教授)

ところで、卵はプリン体をほとんど含まない。卵は1つの細胞で、プリン体は細胞に1つしかないから。パスタなら魚介類の入ったメニューより、卵を使ったカルボナーラのほうがベター。

前述のとおり、体内のプリン体のうち、飲食で摂取する量は2割程度で残り8割は日ごろから体内でつくられている。痛風患者ではなく、尿酸値が高い状態でもない健康な人が、通常の飲食においてプリン体を極度に制限することに意味はない。プリン体含量の多い肉や魚は、栄養分として必須のタンパク質も多く含まれており、通常の量は食べた方が良い。
しかし、プリン体はきわめて多くの食品に含まれているので、食品から摂取するプリン体量も、けっして無視できるわけではない。

なお、痛風の患者は、1日の摂取量が400mgを越えないことを推奨されている。「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)」

6.ビールのプリン体は、さほど多いわけではない

ビールのプリン体は主原料である麦芽(発芽させた大麦)に由来する。麦芽は麦が芽を出して活発に生長している状態なので核酸が増えるわけ。)
しかし、結論は、“ビールはプリン体が多い”、ではなく、“酒類の中では多い”、ということ。
アルコールのプリン体02
出典:PDF飲料中のプリン体の微量分析について(日本食品分析センターJFRL ニュース Vol.4 No.23 Aug. 2013)
【参考】原材料名・栄養成分等一覧(ビール・発泡酒・新ジャンル)(キリンビール)記載されているのは、100ml当りのプリン体量mgのデータ。なお、100mlあたりプリン体0.5mg未満のものをプリン体0と表示。

  • 蒸留酒では蒸留という製造過程でプリン体のほとんどが除かれる。
  • ビールは5項の表では『プリン体が極めて少ない食品』のグループに位置づけされる。(豚ロース・牛ヒレの1/20程度、白米のご飯の1/2~1/3程度)
  • 発泡酒は、麦芽の使用率が低いのでビールの1/4程度。

かつて痛風患者は、厳格なプリン体制限食を指導されましたが、現在では食事からのプリン体摂取により産生される尿酸よりも、体内で合成される尿酸の方が多いことが分かったため、食事制限は以前より緩やかになっています。
しかし、尿酸は水に溶けにくく排泄されにくいことから、やはり食事でのプリン体制限は重要です。
現在では、発作が治まっている時期であれば、ビールも小瓶1本(334mL)程度なら良いと言うお医者さんもいます。
発泡酒の場合、ビールほど注意は要しませんが、とはいってアルコール度数もカロリーもビールと変わりがありませんし、何本も飲めば結局ビールと同じです。

出典:おくすりQ&A 基礎知識編(沖縄県薬剤師会_)

4項のとおり、お酒の種類にかかわらず(「プリン体ゼロ」をうたうアルコール飲料であっても)アルコールを大量に飲めば血中尿酸値を上げる。つまり、「ビールの飲みすぎがよくない」のではなく「お酒の飲みすぎがよくない」のだということになる。
「プリン体の多い飲食物を避けること」に汲々とするよりも、「食べすぎない・飲みすぎない・運動不足にならない」ことのほうが実践的である。

7.メモ

プリン体ってなに?(左利き肝臓専門医ブログ 2016/2/9)
尿酸の産生と排泄(左利き肝臓専門医ブログ 2016/2/10)
高尿酸血症と痛風(左利き肝臓専門医ブログ 2016/2/11)
痛風は痛い!(左利き肝臓専門医ブログ 2016/2/16)
焼き鳥5本以上は要注意、「プリン体」摂取の危険水域とは?(金子希代子氏)(JBpress 2015/2/20)
お酒を飲むなら知っておきたい!プリン体・尿酸って?(タニタ運営)
尿酸ってなに?(痛風財団)

プリン体01
出典:食べ物の「プリン体」悪者どころか超重要成分!(J-CASTトレンド 2016/4/28 )
[ 2018/12/17(月) ] カテゴリ: 生理学・栄養学の基礎 | CM(0)
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