ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

“脱プラスチックストロー”という変なブーム

[ 2018/11/19 (月) ]
プラスチックストローの廃止の動きが広まっていますが、海洋に行き着くプラスチック廃棄物全体からすればごくわずかなのに何故か?
勉強してみると、やはり少々おかしな所もあるようです。

目次

1.まずは各企業の具体的な動きの例
2.世界の動きの発端は、欧州委員会、2018/5/28、使い捨てプラスチックに関する新ルールを提案
3.中国での資源ごみ輸入禁止が世界に影響
4.広がる“アンチストロー”の波
5.プラスチックごみによる海洋汚染への対応として、脱プラスチックストローよりも先にやるべき事がありそう
6.日本での対応は廃プラスチック処理の中で考える必要がある
7.環境負荷の少ないプラスチックは2種類あるが目的が違う
8.マイクロプラスチックについて
9.関連エントリー

1.まずは各企業の具体的な動きの例.

最近のプラスチックごみ削減に向けた企業の動き
プラスチックごみ削減に向けた企業の動き
出典:2018/11/16朝刊
現時点で、スターバックス、マクドナルド、すかいらーくホールディングス、ロイヤルホールディングス、の4社が脱プラスチックストローを表明している。

2.世界の動きの発端は、欧州委員会、2018/5/28、使い捨てプラスチックに関する新ルールを提案

海洋ごみとなりやすい10種類の使い捨てプラスチック製品や漁具を対象に、新たなルールを提案した。2019年5月までに新法の成立を目指す。
綿棒や使い捨てナイフやフォーク、皿、ストロー、マドラー、風船の柄など代替品のあるものは禁止
②プラスチック製食器や飲料カップは有料化などにより削減
③食品容器包装や飲料容器、タバコ、ウェットティッシュ、風船、プラスチック袋などの代替素材の確保が難しい製品は、生産者に廃棄物管理や清掃費用等の負担を義務付
④2025年までに飲料容器はデポジット制度などにより90%以上の回収を目指す。
⑤海岸ごみの27%を占める漁具については、漁具用の生産者責任制度の枠組みを完成させる。
など、詳細は、
EUにおける使い捨てプラスチック等の規制案
出典:PDF国内外の資源循環政策の動向(環境省環境再生・資源循環局リサイクル推進室 井上雄祐 2018年7月)

背景や戦略 ソースは毎日新聞2018/6/5産経ニュース2018/6/28、など
中国の廃プラスチック輸入禁止への対応。EUは再利用のために収集した廃プラスチックの半分を輸出し、対中輸出はこのうちの8割以上を占めていた。(詳細は3項)
●域内産業への影響を最小限に抑える。禁止品(市場規制)のほとんどは域内で生産しておらず、アジア・太平洋地域から輸入。(なんで「綿棒」や「風船の柄」のようなものまで?と思いましたが納得)
●代替品の開発などで先手を打てれば、その分野でEU企業の競争力を高めることにもつながる。
●世界のごみ対策をリードする姿勢を演出。

3.中国での資源ごみ輸入禁止が世界に影響

中国は、これまでは国内の資源不足を補うため、それなりの価格で、高品質の分別廃プラスチックから、分別されておらず汚れた低品質のものまでを大量に引き受け、資源としてリサイクルしてきた。2016年に中国は世界の廃ブラスチックの56%、約735万トンを輸入していた。
世界各国のプラスチックごみ輸入量

それが、環境へのリスク軽減のために規制を始めた。
 2017年末から非工業由来廃プラスチックの輸入を禁止、
 2018年末から工業由来廃プラスチックの輸入を禁止。
中国の廃プラスチック輸入相手国
2017年、構成比
中国の廃プラスチック輸入相手国2017

欧州
ドイツから2016年に約56万トンが中国に輸出、これはEUからの輸出量約160万トンの35%にあたる。
英国はリサイクル用プラスチックのほぼ全量を中国と香港に送り処理していて、2017年には26.4万トンを輸出、これは英国の廃プラスチック総量の3分の1を上回る量。
廃プラスチックが自国であふれ返る危機感もある。

EUのプラスチックごみ輸出
中国への輸出は、2018年1-2月は1.3万トンと前年同期(32.5万トン)比96%減少
EUのプラスチックごみ輸出
日本
2016年の廃プラスチック排出量は約900万トン、そのうち約153万トンン(17%)が輸出されていた。輸出先の1位は中国(約80万トン)、2位は香港(約49万トン)、香港への輸出は実質的に中国向けなので両者を合わせると129万トン輸出の84%が中国向け
中国の輸入禁止措置を受けて、国内資源循環体制の整備のため緊急的な財政支援措置などが講じられている(リサイクル高度化設備導入に対する国庫補助、H30年度15億円)
日本は国民的な分別体制高度リサイクルなどポテンシャルは高いが、今までは、それなりの価格で中国に輸出できたので国内対応が進まなかった面がある。例えば、ボトルtoボトル事業(PETボトルからPETボトルをつくる)が進まなかった事例など。(こちらに概要がある)

日本のプラスチックくずの輸出量(月単位)
中国への輸出は2017年下期から激減。東南アジアへが増加。
我が国の プラスチックくず輸出量
出典:PDFプラスチックを取り巻く国内外の状況(環境省 2018年8月)

日本から各国への廃プラスチック輸出量の推移
出典:プラスチックごみ問題の行方:中国輸入規制の影響と今後の見通し(森田宣典、林志浩、地球環境戦略研究機関 IGES Publication Database 2018/10)

東南アジア市場の限界
中国に代わり廃プラスチックの受け皿となっているのは東南アジア諸国だが、自国内の急速な経済成長と人口増による廃プラスチック量の増大も予想されるため、早晩、中国と同様な状況になると考えられている。

4.広がる“アンチストロー”の波

欧米ではストローを処理する際に埋め立てる国が多く、その一部が海に流出しプラスチックごみによる海洋汚染に繋がることを懸念しているようだ。
たいした量でないストローが狙い打ちされたのは、(障害者や子どもなどの例外はあるが)簡単に対応しやすい上、イメージ戦略としても有効。ストローメーカーは政治力がない小企業が多いからやりやすい?(PETボトル廃止など言ったら大騒ぎになる)
一例をあげれば、
  • スターバックスが2020年までに全世界の店舗でプラスチック製ストローの使用をやめると発表。これと並行して、イギリスでは4月、アメリカのシアトル市では7月に、プラスチック製ストロー廃止の方針が打ち出された。
  • マクドナルド 19年末までに英国とアイルランドの全店舗でプラスチック製ストローを紙製に切り替え
  • ヒルトン 世界650軒のホテルなどで18年末までにプラスチック製ストローの提供を停止

5.プラスチックごみによる海洋汚染への対応として、脱プラスチックストローよりも先にやるべき事がありそう

陸上から海洋に流出したプラスチックごみ発生量(2010年推計)ランキング

2010年推計ランキング
データ出典:Plastic waste inputs from land into the ocean, Science (2015)
(PDF海洋ごみをめぐる最近の動向(環境省 2018年9月)

世界の海洋プラスチック廃棄物の9割は、わずか10の河川から流れ込んでいる
  • 長江黄河海河珠江:中国
  • アムール川:中国とロシアとの国境
  • メコン川:東南アジア縦断
  • インダス川ガンジス・デルタ:インド
  • ナイル川:アフリカ大陸東北部から地中海へ
  • ニジェール川:西アフリカ
出典:世界の海洋プラスチック廃棄物の9割は、わずか10の河川から流れ込んでいる(松岡由希子 ニューズウィーク日本版 2018/7/12)
【参考】
世界の海洋プラスチック廃棄物の約9割は、中国・長江などの10の主要河川から海に運ばれている。河川流域での廃棄物監理の重要性がカギ。ドイツの研究チームが解明(各紙)(環境金融研究機構 2018/7/13)

6.日本での対応は廃プラスチック処理の中で考える必要がある

日本における廃プラスチックの処理実態(2013年)
処理の分類2013年処理量同左シェア備考
Aマテリアルリサイクル203万トン22%輸出の168万トンを含む
Bケミカルリサイクル30万トン3%
Cサーマルリサイクル
(焼却時に熱回収)
535万トン57%
D単純焼却98万トン10%
E埋め立て74万トン8%
廃プラスチック合計940万トン100%
詳細は別エントリー【前篇】(プラスチックのリサイクル)マテリアルリサイクルか?、サーマルリサイクルか?を参照

日本では、廃プラスチックストローは大半が焼却処理(上表C,D)される。そのため海洋汚染につながるケースはほとんど少ないという。
(ちなみに、1項の業者は廃棄物処理法により最終処分まで把握・確認しなければならないので、自社から出た廃プラスチックストローがどのように処理されているか?把握しているはず。)

別の材質に転換する場合、ライフサイクル全てでの環境負荷、例えば、プラ製を紙製に変えたとき、材料としての木材の伐採から始まりパルプ製造などすべての工程でのエネルギー使用量(CO2排出量)や用水の使用量で評価する必要がある。(再生紙がバージンパルプより環境負荷が高いという論議もあるので)

ちなみに、本気で使い捨てプラスチックを減らすためには、自社から排出される廃プラスチックの内、使用量が多いものから対策を考えるのが合理的で、ストローより先に削るものがあるのでは。

【参考】ストローの主原料はPP(ポリプロピレン)。安全性を十分に評価された『ポリオレフィン等衛生協議会』 認定のPP樹脂のみ使用。(出典:シバセ工業㈱のHP)
.
7.環境負荷の少ないプラスチックは2種類あるが目的が違う

生分解プラスチックとバイオマスプラスチック
生分解プラスチック
自然界で分解される、
最終的には水とCO2にまで。
微生物が出す酵素で
分解される成分でできている
非生分解系
バイオマスプラスチック
カーボンニュートラルの考え方ができる
原料が植物由来のバイオマスで、
燃やしても地球全体のCO2は増加しない
生分解マルチフィルム、
ティーバックなど
素材はPLA:ポリ乳酸など
(原料はトーモロコシ,サトウキビ)
自動車の内装材、
電気・情報・OA機器など、
メーカーの地球温暖化対応
として増えてきた。
非バイオ(石油合成系)医療用縫合糸、釣り糸
畑の畝に使用する生分解マルチフィルム
(収穫後にフィルムを剥がす必要がなく、
そのまま鋤きこめる

堆肥化施設に回収する生ごみ用袋
移植用苗ポット
素材はPGA:ポリグリコール酸など
一般のプラスチック
現状では、圧倒的に多い。
  • 増えているのは『バイオ』で『非生分解』の部分。トヨタなどの自動車メーカーの発信情報をみるとかなり積極的に取り組んでいる事がわかる。
  • 『生分解』の部分の釣り糸の例では製品価格が高くなるため普及が進んでいない。
  • 両方の特性が同時に求められるニーズは少ないようだ。
  • 焼却処理するプラスチックを『生分解』に転換するのは、理にかなわないトンチンカンな対応。
1項の業者の中に、トンチンカンな対応を表明している業者がいるようです。付録エントリー国内各社の脱プラスチックストロー対応を参照ください。

追加情報として、
  • 国連環境計画(UNEP)は、生分解性プラは海洋ごみの現実的な解決方法にはならないと見解を示している。
    しかし、これに関しては議論がある。
  • カリフォルニア州では、プラ素材商品に「生分解可能」「堆肥化可能」という環境に優しい文言を記載することを、法律で原則禁止している。
詳細は別エントリー生分解性プラスチックの種類と特徴

8.マイクロプラスチックについて

脱ストローの話で、マイクロプラスチックという言葉がでることがあるが両者の関連性は低い。
マイクロプラスチックについては勉強中で、別途、まとめる予定。

関連エントリー

付録エントリー国内各社の脱プラスチックストロー対応
【前篇】(プラスチックのリサイクル)マテリアルリサイクルか?、サーマルリサイクルか?
【後篇】(プラスチックのリサイクル)容器包装リサイクル法による対応の問題

【メモ】
日本のプラスチックごみの行方を知って、冷静な議論を(小野恭子 SYNODOS 2019/11/12)
【完全版】海を救え プラスチックのリサイクルは廃止に(ミッコ・ ポーニオ IEEI 2019/7/22)
海を救え。プラスチックのリサイクルは廃止に(ミッコ・ ポーニオ IEEI 2018/7/20)

環境負荷の少ないプラスチックは2種類 各企業の具体的な動きの例
[ 2018/11/19(月) ] カテゴリ: 廃棄プラスチック問題 | CM(0)
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