ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

(メモ)CAR―T(カーティー)細胞療法

[ 2018/10/29 (月) ]
自分用のアーカイブです。


眼病治療には「1億円薬」
超高額薬はオプジーボにとどまらない。スイスの製薬大手ノバルティスの日本法人は今年4月、オプジーボと同様に次世代のがん治療薬として開発が進む「CAR-T細胞療法」の製造販売の承認を厚生労働省に申請した。
この療法は、遺伝子組み換え技術を使い免疫細胞を活性化させるもので、若年性の白血病などに効果が確認されている。米国では「キムリア」の製品名で昨年8月に承認され、欧州でも今年8月に承認を取得した。ただ米国では、投与1回当たり47万5千ドル(約5300万円)。厚労省によると、日本での同薬の患者数は250人程度とみられ、市場規模を100億~200億円と見積もる。
そのほか、米国では、投与1回当たり4200万円のリンパ腫治療薬「イエスカルタ」や、両眼への投与1回当たり1億円近くにもなる遺伝性網膜疾患の治療薬「ラクスターナ」も出現している。

「費用対効果」の手法、導入へ
「現在の薬価制度では対応が難しい」。厚労省の担当者は新たな超高額薬の登場にこう懸念を示す。遺伝子組み換えや細胞を改変するこうした「バイオ新薬」は、開発費が大きく膨れ上がり薬価に反映されているという。
しかし、保険が適用されるため、患者の一般的負担は3割。大半は高額療養費制度が適用され、数千万円の薬でも自己負担は年間100万円程度(所得に応じて異なる)となり、残りは公費負担だ。
医療財政への懸念から、厚労省は薬の費用がその効果に見合うか分析する「費用対効果」の手法について、来年度からの本格導入を目指している。すでに28年度に試行的に導入され、オプジーボなどが検討の対象になった。
今月10日に開かれた厚労省の社会保障審議会部会でも、キムリアなど超高額薬への対応の必要性を議論したが、「経済性で保険適用を判断するのは難しい」との意見も出た。
これに対し、今月9日に開かれた財務省の財政制度等審議会分科会では、「費用対効果評価の活用」を確認し、厚労省を牽制。日本医師会は「費用対効果を用いるべきでない」との立場を示すなど、“命の値段”をめぐって関係機関の思惑が錯綜している。

日本でも登場近づくCAR T細胞療法、実力は?
横山勇生 日経メディカル 2018/10/24

10月13日。大阪国際会議場で開催された日本血液学会の一室は、立ち見を含む多くの聴衆が集まり、熱気にあふれていた。CD19を標的としたCAR T細胞療法薬「tisagenlecleucel」(CTL019)の再発B細胞性急性リンパ芽球性白血病B-ALL)への有効性を示した「ELIANA試験」の日本人コホートの結果が発表されたからだ(関連記事)。
tisagenlecleucelは、世界初のCAR T細胞療法薬。CAR T細胞療法は、患者から採取したT細胞に、CD19などの標的分子に結合しやすくなるように遺伝子改変を行ってから、再び患者の体内に戻す治療法である。
2017年8月に米国で、25歳までの再発・難治性B-ALLを対象に初めて承認され、2018年5月には米国で再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫DLBCL)を対象に承認された。2018年8月には欧州でも、再発・難治性B-ALLDLBCLを対象に承認された。
開発が進められているCAR T細胞療法薬はtisagenlecleucelだけではない。CD19を標的とした別のCAR T細胞療法薬であるaxicabtagene ciloleucelは、2017年10月に世界で初めてDLBCLを含む再発・難治性の大細胞リンパ腫を対象に米国で承認された製剤だ。この他にもJCAR017のリンパ腫を対象にした開発が行われている。適応症も再発・難治性の多発性骨髄腫まで広げようとされている。
日本でもCAR T細胞療法薬の実用化に向けた動きが加速している。tisagenlecleucelについては、今年4月に日本でも25歳以下の再発・難治性B-ALLと再発・難治性のDLBCLを対象に申請が行われている。axicabtagene ciloleuceとJCAR017についても、厚生労働省から希少疾病用再生医療等製品に指定されたことが、今月、相次いで発表された。日本でもCAR T細胞療法薬が登場するのはもうそれほど遠くない状況だ。

CAR T細胞療法の費用は本当に高いのか?
このCAR T細胞療法薬は、普及するのだろうか。今回の学会発表を機に、複数の関係者にCAR T細胞薬の展望を聞いてみた。
まず、費用の問題について。CAR T細胞療法薬は、T細胞を分離し、遺伝子改変を行い、輸注する。文字で書くと簡単だが実際の作業はかなり手間がかかり、多くの費用がかかる。tisagenlecleucelの場合、米国の価格はB-ALLの場合で47万5000ドルDLBCLの場合で37万3000ドルになる。B-ALLでの使用においては、治療で効果が認められた場合にのみ費用請求が行われている。
この金額について、関係者の多くは「必ずしも高いとは言えない」と口を揃える。それは、CAR T細胞療法の場合、1回輸注するだけで、長期間の効果が期待できるためだ。一般的に血液がんは、薬価が高い薬剤が多い。1カ月の費用が100万円を超えるがん種も少なくない。例えば、あるがん種で3年間治療を継続する場合、月に100万円かかるとすると3600万円となる。つまり、そのがん種で1回のCAR T細胞療法でCR(完全寛解)が得られ、3年間再発がなければ既存の治療の3600万円と同等の効果が得られることになるというわけだ。1回の輸注で済むため、CAR T細胞療法の方が患者の負担は明らかに少ない。
もっとも現時点では、CAR T細胞療法の効果は臨床試験で確認されたものが主で、人数は限定され長期間の観察が十分とは言えない。実際の臨床で、CAR T細胞療法でどの程度CRが得られ、どれくらいの期間、再発を抑制できるかは、明確にはなっていない。
にもかかわらず、アンメットメディカルニーズとなっている再発・難治性の血液がんの患者に対して、CAR T細胞療法が高い奏効率を示し、それなりに長い無再発期間が報告されているだけに、期待が集まっている状況だ。問題となる費用についても、症例数が増えればコストが安くなり、費用はもっと少なくて済むようになるだろうと考える専門医も多かった。
次の問題は副作用。今回の血液学会の発表で、日本人コホートにおいても、グレード3/4の副作用が全員に発現したことが報告されている。いずれも管理可能な副作用だったと報告されているが、CAR T細胞療法ではサイトカイン放出症候群CRS)が高頻度で発現することが分かっており、ICUとの連携が必須とされる。CRSの対応に慣れた医師は少なく、中枢神経系の副作用の指摘もある。どこででもできるような治療ではなく、少なくともICUの施設がある医療機関に限定されるだろうとの声が多かった。
では、どういった患者にCAR T細胞療法を用いるか。複数の専門医が、「標準的な治療が終わって、しかも全身状態が良い人」と語った。「日本においてCAR T細胞療法の対象となる患者は、年間で1000人もいないのではないか」という意見もあった。
CAR T細胞療法は、副作用の管理の大変さはあるものの、十分にアンメットメディカルニーズを解決できる可能性がある。実臨床でどの程度の有用性を示すことができるのか。従来の薬剤とは全く異なるタイプだけに、承認されてからのフォローアップがとても大切になりそうだ。

がんの反撃はじまる 7000万円「特効薬」の攻防
高田倫志 日本経済新聞 2018/10/1会員限定

がん特効薬と呼ばれる「オプジーボ」に続き新たな免疫療法「CAR―T(カーティー)細胞」が注目されている。特定の白血病患者の8割に効くという驚異的な効果の反面、治療費は1回7000万円を超えるケースも出てきた。さらに追い打ちをかけるのが「がんの反撃」という不穏なニュースだ。

難治性白血病の8割以上に効果
「ほんとうにこの薬をまっていた」――。声をふりしぼるように語るのは福岡県に住む40歳代の会社員、中川昭博さん(仮名)だ。4歳の息子が白血病だとわかったのは今から3年前。医師から病名を告げられた時、全身の力が抜け落ちるほどの絶望を感じた。

子どもの白血病は抗がん剤治療でがん細胞が消え去ることもあり、親や兄弟から造血幹細胞を移植することで治療ができる。ただ中川さんの息子は1度治療し造血幹細胞を移植したが再発した。「なぜ自分の子どもがこんなことになるのか。不条理を呪った」

白血病に関するあらゆる研究や、製薬会社による臨床試験(治験)を調べたところ、CAR―T細胞療法という新規治療法があることがわかった。そこに今年4月、ノバルティスが日本でCAR―T細胞をつかった治療法「キムリア」を申請するというニュースが出た。「ようやく患者、その家族に希望が届いた。これで命をつなげる」。キムリアを待ち望む声は中川さん以外にも多いという。

CAR―Tは、小野薬品工業などが開発したがん免疫薬「オプジーボ」と同じく、患者の免疫を活用してがんを治療するしくみだが、使うのはオプジーボと違い薬ではなく免疫細胞そのもの。患者から取り出した免疫細胞に、がんを発見するレーダーとなる遺伝子を組み入れて患者の体内にもどす。体内にもどった免疫細胞は体内に潜むがん細胞の目印を探し当てて攻撃する。

がん患者や家族がここまで待望する一番の理由は、白血病に対する圧倒的な治療成績だ。ノバルティスの臨床試験(治験)では、抗がん剤が効かなくなり、骨髄移植もできない状態に陥った難治性の白血病患者の8割以上に治療効果があった。さらに効果があった患者の多くでがん細胞がほぼ消失。米食品医薬品局(FDA)が迅速に承認した。

英国では7200万円の例も
「治療成績だけでみればまさに“特効薬"だ」。製薬会社幹部は一様に口をそろえる。実際、2016年7月に小野薬品がベルギーのセリアド社と技術提携したのを皮切りに、17年1月に第一三共が米カイト・ファーマ(米ギリアド・サイエンシズが17年に1兆3000億円で買収)と、17年9月には武田薬品が山口大学発スタートアップのノイルイミューン・バイオテック(東京・中央)とそれぞれ提携、開発に着手。「CARレース」は混戦模様となってきた。

世界で最も早く実用化にこぎ着けたのはノバルティスだ。17年8月30日にCAR―T療法の第1弾として米国で「キムリア」の承認を取得。次に同年10月18日には米カイト社(現ギリアド社)の「イエスカルタ」が承認された。

しかし「問題はそのコストだ」。厚生労働省の幹部はそう話す。
キムリアの治療価格は1回47万5000ドル(約5300万円)。17年3月に英国で医薬品の価値評価を行う英国立医療技術評価機構が公表したCAR―T療法の値段は1人当たり50万ポンド(約7200万円)。「自己負担額を最小限までおさえる日本の社会保障制度で本当に受け入れ可能なのか。財政面から否定的な見方をする専門家の声も根強い」(同幹部)と慎重な姿勢だ。

つきっきりの手作業で2カ月
なぜこんなに高いのか。「CAR―T療法が高いのはそもそもつくるコストが高いからだ」。そう話すのは自治医科大の小沢敬也名誉教授だ。一般的ながん治療で使われる抗体医薬などは大量生産できるが、細胞そのものを医薬品として使う場合はそうはいかないからだ。

まず患者の血液から免疫細胞を取り出して、CARという遺伝子を組み込培養する。自己増殖するiPS細胞やES細胞などとちがって、免疫細胞はそう簡単に増殖してくれない。決まった温度で、特定の神経伝達物質をあたえるなどして刺激してやる必要があるのだ。

こうした作業はもちろん機械化されておらず、ほぼ作業員による手作業だ。しかも毎日のようにつきっきりで細胞の様子を見まもり、途中で死んでしまった細胞をとりのぞいたり、元気な免疫細胞に移しかえたりしなければならない。

「培養のために必要な時間は品質チェックなども含め2カ月程度」(小沢名誉教授)。特別なスキルをもつスタッフの人件費だけで費用は膨大になる。さらに患者自身の免疫細胞を使うため、通常の医薬品のように大量にストックすることもできない。現時点で細胞培養を自動化する技術が確立できていないのが価格が高くなる最も大きな理由だという。

「なぜメディアは報じないのか」
普及の壁となるコストの問題にたたみかけるように今年2月、不穏なニュースが舞い込んだ。
「いったんがん細胞が消失しても、再発する患者がいる」。米ニューヨーク・マンハッタンの高層ビルが立ち並ぶ一角にあるメモリアル・スローン・ケタリングがんセンター。世界のがん治療研究をリードしてきた最高峰のがん研究機関が、最高権威とされる米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に世界を驚かせる1本の研究結果を発表した。

CAR-T細胞を使った治療の流れ
CAR-T細胞を使った治療の流れ

発表内容はこうだ。調査期間は2010年から2016年までのおよそ6年間。CAR―T療法を受けた患者53人のうち44人(83%)で、体内のがんがほぼ消失する「完全寛解」の症例が出た。しかしそのうち26人を観察したところ、17人が再発または死亡。そして53人のうち半数の患者がおよそ13カ月で死亡したという。いったんがん細胞が消失したのに再発してしまったケースだ。

「CAR―Tは決して万能ではない。そのことをなんでメディアは報じないんだろうね」。ある国内大学の研究者は今年7月、現地でメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターの研究者とこんな話を交わしたという。一度CAR―Tを投与しても再発する。そして同じCAR―Tは2回目は使えない。そうした事実が証明されたのにもかかわらず、今も「がんが消える」「がんの特効薬」といったタイトルのニュースで紹介される――そのことに研究者は不信を抱いているようだった。

がんの「学習能力」
なぜ再発したのだろうか。小沢名誉教授は「免疫細胞に記憶させて、探索を強化するためにがん細胞につけた目印が消えてしまったためではないか」と分析する。実は現在承認を受けているCAR―Tは、免疫細胞にがん細胞の表面にある「CD19」というタンパク質を目印として記憶させる治療法だ。

だが、がん細胞もしたたかだ。攻撃を受けた原因がCD19にあると学習するやいなや、この目印を消して患者の体内に潜伏する。その後、時間をかけて復活し再び患者の中で増え始める。いわば製薬会社のテクノロジーにがん細胞が反撃し始めるというわけだ。

もちろんがん研究者にいわせると、こうした反撃はおりこみ済みでもあるという。すでに海外の研究機関ではCD19の次に使うための「CD20」、「CD22」といった別の目印を覚えさせたCAR―Tの開発が進んでいる。ただ反撃は今後、何度も繰り返され、いたちごっこになる可能性が高い。

「それでも製薬会社は細胞治療のノウハウを積み重ねなければならない」。第一三共の古賀淳一研究開発本部長は、霞が関の厚生労働省と、品川の研究拠点を往復する毎日を繰り返している。目的は同社がカイト社から導入したCAR―Tを治験に移すための打ち合わせだ。

まずはCD19を使う。この目印だけではがん細胞を撲滅できない可能性がわかったが、だからといって手を止めることはできない。細胞の培養方法や、それを自動化するための技術、がん以外に適応できる可能性……。「こうしたノウハウをここで蓄積しておかないと出遅れてしまう」。CAR―Tをはじめとする開発競争はまだ始まったばかりで実質的な成功者はいない。第一三共の挑戦も将来を見すえた布石の一つに過ぎない。

ブラックボックスの価格議論
がん治療に効果のあった患者だけが治療費を払う――。高額なCAR―T療法は、米国ではこうした「成果報酬型」の制度をつかって承認された。これなら高額費用の支払いを保険会社に認めさせることができるからだ。

ノバルティスは、日本でキムリアの承認を得るために、こうした制度も提案しているとみられる。申請中のキムリアの薬価は販売承認が下りた後、中央社会保険医療協議会(中医協)で開かれる薬価の算定組織が決める。しかし算定組織はメンバーも議事録も非公開。中立の立場である公益委員すら議論内容を聞くことができないため「透明性がなく、全面公開すべきだ」との意見もある。

完全にブラックボックスとなり、外から見えない価格決定のプロセス。だが、以前この部会で別の薬の価格決定に参加したことのある大学教授が語ってくれた。

「基本的には製造コストが重要視される。製造原価、物流コスト、外国価格との比較で調整する」。製造販売の承認を下すにあたり、今後の算定組織の議論は「製薬会社からのヒアリング、提出資料の精査が中心となる」という。中医協は基本的に、国の医療費をどう配分するかが主なテーマで、薬価部会でも「社会保障費にどのような影響を与えるかなどの議論は原則としてしない」……。

仮に1回数千万円という価格がついた場合、オプジーボのように「高すぎる」という批判にさらされる可能性もある。

今後、患者からの強い需要や、製薬会社に注がれる投資家の期待を後ろ盾に研究が進めば、コストや再発の問題は解決する可能性はある。しかし開発が進んだとしても日本の医療現場、保険制度でこうした最先端の「特効薬」を今後も受け入れていくことが可能なのか。「価格」「再発」という2つの壁の先には、日本の保険制度という最大の難関が待っていそうだ。
[ 2018/10/29(月) ] カテゴリ: がんに関する事 | CM(0)
コメントの投稿










管理者にだけ表示を許可する
このブログについて
管理人 icchou から簡単な説明です 更新,追記の通知はTwitter
カテゴリ
最新記事
ブログ内検索