ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

(メモ)松永和紀氏による佐々木敏・東京大学大学院医学系研究科教授へのインタビュー記事

[ 2018/11/12 (月) ]
全3回の記事の自分用アーカイブです。いづれも長文からごく一部のみを引用したものですので、正確なところは原文をご参照ください。

食品に関する情報があふれている。
これらの情報をどこまで信じてよいのか? 私たちはどのような食生活を送るべきか。東京大学大学院医学系研究科の佐々木敏教授に話を聞いた。

2018年2月、『佐々木敏のデータ栄養学のすすめ 氾濫し混乱する「食と健康」の情報を整理する』(同)を出版


【小見出しとごく一部のみ引用】
  • 「夏バテに豚しゃぶサラダ」はナゾだらけ
    豚肉ビタミンB1を豊富に含んでいます。それは事実。しかし、慢性疲労とビタミンB1の関連について科学的に調べた研究はごくわずかしかなく、はっきりしたことはわかりません。なぜ「夏バテに豚肉・ビタミンB1」がこんなに世の中に広まったのか、ナゾです。
    なにかを言う科学的根拠(エビデンス)がないです。
  • 野菜先食べ」論文の真相は……
    現時点では、野菜を主食よりも先に食べるのは「有望な選択肢の一つ」くらいに理解しておきたいところです。
  • 「インスタ映え」と同じ。食情報も盛ってある
    ぼくは、食事を体のためのガソリンやオイル、または薬と考えている人や食事にできるだけ時間をかけたくない人には野菜先食べを、そうではない人には三角食べ口内調味を勧めます。
    流行には要注意です。話が単純化されて盛ってあります。最近、インスタ映えとよく言うじゃありませんか。インスタグラムで目立つおいしそうな料理の写真にするために、中央を盛って現実にはあり得ないような形にして写真を撮る。あれが、情報においても行われているわけです。
  • 低糖質ダイエット.プリン体ゼロを信じますか?
    低糖質と低脂質では少し効果が大きいように見えますが、95%信頼区間を考慮すれば、あえてとり上げるほどの違いではない、と見るべきでしょう。
    プリン体ゼロのビールもそうでしょう。体内でプリン体から尿酸が作られ血中濃度が上がり痛風になる。だからプリン体ゼロのビールを、となる。単純な因果推論が展開されています。でも、日本人男性3300人の酒の摂取量を調べ、その後6年間の高尿酸血症の発症状況を調べたところ、 プリン体をたっぷり含むビールを飲んでいた人も日本酒を飲んでいた人も、飲んでいない人に比べて相対リスクは同じように高かった。日本酒にはプリン体はごくわずかしか含まれていないにもかかわらずです。
    尿酸は、ビールから摂取するだけではなく体内でほかの物質から合成されます。アルコールはその合成を促進させるので、主犯はアルコール。ビールの中のプリン体は共犯の一人でしかないのです。
    詳細は別エントリープリン体とは、尿酸の“2つの顔”、プリン体ゼロのビールは意味がない?にあります。
  • 盛った情報が社会に氾濫する理由は……
    テレビや新聞でも「夏バテ防止にはこの食材」「食べる点滴」などと、論文をきちんと調べていればとても言えないような「これさえ食べれば」的な情報が流されます。記者がなにか意図しているわけではなく、とにかく勉強不足、取材不足で、企業やその一部の研究者の言い分をそのまま流すのだと私は考えています。そうしたキャッチーな情報がある方が、メディアにとっても得なので。
    けれどもはっきりしているのは、「それはちがう」と科学的に説明できる人たちが消費者側にいないという事実です。
    「良い食品、悪い食品」という分類は、日本人が昔から行ってきたことなんです。戦後、米を食べたらバカになるとか、牛乳は完全食品だとか、言われてきたではありませんか。発酵食品が良い、というような言い方も、意味がわかりません。最近の流行も、日本人が持つクラシカルな「食品は善悪に分けられる」という意識、思考法を踏襲したに過ぎず、それに「エビデンス」という言葉を付けているだけ、と考えれば、なかなか興味深いです。

【小見出しとごく一部のみ引用】
  • 日本人に「オリーブオイルを食べろ」は意味がない
    たしかに、アメリカでは「オリーブオイルがよい」と言われていますが、あれは日本人には当てはまらないのです。
    アメリカ人にとっては、今の動物性油脂中心の食生活よりはオリーブオイルを食べる方がベターです。
    今、マーケットにあるものの中からもう少し良いものを、となった時に、アメリカ人が「オリーブオイル」となるのは合理的です。
    ところが、同じ情報を日本人に伝えても意味がありません。その理由は、油の脂肪酸組成にあります。
    アメリカ人の食生活は飽和脂肪酸優位型です。それを不飽和脂肪酸に切り替えて行く際に、オリーブオイルはとても身近にあります。アメリカ社会はヨーロッパからの移民の文化が根底にあり、オリーブオイルに慣れ親しんでいます。
    実は、日本人は不飽和脂肪酸を普通に食べて来たのです。表1の菜種油(キャノーラ油)大豆油の組成をみてください。
    日本人におなじみのサラダ油や天ぷら油は、菜種油や大豆油など植物油を混ぜたもので、飽和脂肪酸の含有量はオリーブオイル程度です。
    オリーブオイルが健康によい、という海外の論文、エビデンスから読み取るべきことは日本人の場合、菜種油を食べて来てよかったね、であって、オリーブオイルに切り替えよう、ではありません
  • 地中海食のポイントは、ワインとオリーブオイルではない
    私たちは食品に味や風味健康という異なる2つのものを期待しているのに、それを食品のなかのひとつの成分のおかげだと考える傾向があるようです。食品はとてもたくさんの成分や栄養素からできています。食品のなかのどの成分や栄養素に何を期待するべきか、きちんと分けて考えたいものです。
    オリーブオイルがいい、という情報が広まった方がお得な人たちがたくさんいる。製油メーカーも、安売り合戦にさらされているサラダ油やキャノーラ油よりオリーブオイルを売った方が儲かります
  • 白米より玄米がよい、は本当か.
    食品というのは多様な成分を含み、健康に良い成分とリスクにつながる成分の両方を持っています。それに、食べる人のふだんの食生活や健康状態によって、もっと摂るべき成分、減らした方がよい成分が異なります。だから、これは良い、悪いと一刀両断はできないです。せいぜい、「やや良い食品少し悪い食品」と言えるくらいでしょう。
    玄米白米の健康への影響をきちんと比較した研究、エビデンスは実はありません
    お米では、白米より玄米の方が食物繊維やビタミンB1、カリウムやマグネシウム、鉄などが豊富です。
    ただし、だからといって玄米が無敵の健康食材、というわけではないのです。玄米は、白米に比べてカドミウムヒ素といった毒性を持つ重金属が多く含まれています。カドミウムは腎臓を障害し、ヒ素には発がん性があることが知られています。したがって、次にカドミウムやヒ素の健康影響を検討しなければなりません。
  • 米はカドミウム無機ヒ素の懸念もある
    カドミウムが1kgあたり0.4mgを超える米は市場流通しないように規制されています。でも米からのカドミウム摂取量はゼロではありません。そこで、日本の五つの地域に住んでいる人たちの調査が行われて、地域によりカドミウム摂取量に差があるものの、どの地域でも腎臓障害は出ておらず地域差がないことがわかりました。
    日本人は無機ヒ素の9割をと海藻のひじきから摂っているという報告があります。無機ヒ素の習慣的な摂取量とがんの発症率との関連を調べた疫学研究が日本にあり、その結果では、無機ヒ素の摂取量が増えるにつれて肺がんの発症率が少し増えているように見えます。が、統計学的には有意な差はありません。
    とはいえ、発がん物質である無機ヒ素の摂取量は少ないに越したことはありません。玄米と白米の無機ヒ素含有量を比べると、玄米5割程度多いようです。カドミウムの含有量は玄米と精白米でそれほど大きな差はありません。
    【ブログ主追記】なぜ米に無機ヒ素が多い?
    小麦や大豆と比較して米(玄米や白米)は無機ヒ素を10~20倍程度多く含む。米は水田で栽培されるため、水を張ることで土に含まれるヒ素が米に吸収されやすくなる。水管理を工夫することで米に含まれるヒ素の量を減らす研究が行われている。

    【関連エントリー】“ひじきにはヒ素が多い”という話
  • プラス面とマイナス面の両方を考えて選ぶ.
    結局、プラス面(ベネフィット)とマイナス面(リスク)の両方を考えて食べ物は選ぶものなのです。だからこそ、「良い食品」「悪い食品」という分け方はできません。
    ぼくは、お米については食物繊維による生活習慣病予防への大きなプラス面と、科学的根拠に基づいたカドミウムに対する厳しい管理体制、そして無機ヒ素によるわずかなマイナス面を足し引きして、少なくとも成人では玄米を食べる方がマイナス面よりプラス面が勝っている、と結論します。
    穀物の食物繊維野菜の食物繊維性質が異なります。野菜から摂れば良い、というのは、疾患によっては成り立たない。糖尿病の発症率の疫学研究で、穀物からの食物繊維摂取量が多いと予防効果がありますが、野菜や果物からの食物繊維の摂取量が多くても予防効果は見られませんでした。ましてや、飲料で食物繊維を摂れるというものがありますが、あれが本当に生活習慣病の予防に効果があるのかどうか、エビデンスがありません。
    栄養学は、多くの方が想像するよりも100倍、1000倍、1万倍も難しいものです。
  • 時には銀シャリ、もあってよい
    ぼくも、どれだけエビデンスを積まれてもおすしは絶対に銀シャリです。でも、カレーやチャーハンだったら、玄米にします。麦ご飯もいいですよ。
    数ある食べ物の中でおもな生活習慣病のほぼすべてに予防効果を示すのは全粒穀物以外にありません。欧米諸国の食事ガイドは全粒穀物の摂取を強く進めています。ところが、日本の行政が示す食事ガイドには取り入れられていないのです。白米好きの国民性で「知らんぷり」するのでなく、一人ひとりが自分の頭で考えてほしいですね。
  • エビデンスの丸呑み、は健康の害にもなる
    知識全体を使って、日本人の食生活の現状を把握し、ベネフィットやらリスクやらを検討し咀嚼してやっと、使える栄養学になります。海外の論文をポンと引用する「エビデンスの丸呑み」はかなりやばいですよ。喉に詰まる。むしろ、健康の害になります。
    それにしても、専門家と称して「オリーブオイルがいい」とか「白米は玄米に切り換えて」などという情報を流してしまうのは問題です。ぼくから見れば、専門家ではないからこそ、簡単に切り分ける自信が出てくるのだろうなあ、と思えます。専門家ほど、文章があいまいになる、というのは世間でよくあることですね。専門家でない人ほど、言い切り型の文章を書く
    結局、おかしな本やテレビ番組等が氾濫するのは、栄養学の専門家が日本で圧倒的に足りないからだろう、とぼくは思っています。ぼくが天文学の本を書く、というのは考えられないでしょう。天文学者がいるから、ぼくが書いて出版したら、間違いがすぐバレる。だから出しません。でも、栄養学の本はバレないんです。真がいなければ、偽はバレない。日本はそんな状況にあります。

(3)
はめを外す時もあっていい、健康管理は食べる頻度で
松永和紀 WEDGE Infinity 2018/9/10
【小見出しとごく一部のみ引用】
  • 日本の和食研究は自画自賛?
    世界無形遺産リストの中の和食紹介のページに、健康を意味する説明は一言もありません。なんだ、私たちは農水省にだまされていたのか。
  • 全日本人の必須課題、減塩
    尿中に排出される食塩の量から、平均して男性で14g、女性で11.8gもの食塩を摂取していることがわかりました。
    国民・健康栄養調査の結果は平均して男性で11g程度、女性で9g程度、これは食事の内容を自身で記録してもらう調査法なのでバイアスがかかりやすい。食塩は悪いと多くの人が知っているので、ついつい少なめに答えてしまう。それに対して、24時間の蓄尿検査の結果は実態に近いとみられています。
    WHOの推奨量である一日5gをクリアしているのは、人口のわずか0.063%であることもわかりましたね。やっぱり日本人にとって減塩は急務、という結果です。
    食生活の改善にはまずは、自身の食生活でどの栄養素は十分にとれていてどれが不足しているかを把握しなければならないのですが、減塩だけは個人の状況にかかわらず、日本人全体に課題として言えることです。でも、こんなに浸透しない話もないですね。日本人にとって明らかなリスクなのに。
  • 周期的に出てくる「減塩は意味がない」のからくりは……
    周期的に「減塩は意味がない」というニュースがマスメディアで流れるのは、「人が犬を噛んだから珍しがられる」というだけではないように思います。「今のままでいいんだよ。塩辛いもの、醤油や味噌をおいしいと思っていていいんだよ」と言われたい、自分は悪くないと思いたい、という読者や視聴者の期待を反映しているのではないでしょうか。
    都合良くそうだそうだ、と言ってくれる医師、科学者がいる。
    そんな記事を読んだときには、コメントしている科学者は本当に独立しているのかな、ということも気にしておく必要があります。「これだけお金を渡すので、こういう発言をしてもらえませんか」というオファーがあっての発言のケースもあります。
    その食品の関係企業や団体が研究費を出して科学者が調査や研究をしている場合もあります。いわゆる利益相反です。
    マスメディアの人たちはエビデンスの質までは吟味できなくて、「科学者が言っているから」と報道してしまいます。
  • 「味噌の塩分ならいい」は否定できる
    「味噌に含まれる塩分は問題ない」は、科学的には高い確率で否定できますよ。これは、疫学の分野ではパラシュート問題と言われています。
    味噌に含まれる塩分も他の食べ物に含まれる塩分もその正体のほとんどは「塩化ナトリウム」でまったく同じ物質です。味噌には健康に良い別の成分があるかもしれません。したがって、「味噌は血圧を上げない」という可能性は残されていますが、「味噌の塩分は血圧を上げない」という可能性はありえません
  • 個人の栄養状況を把握するためのBDHQ
    調査法BDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票:brief-type self-administered diet history questionnaire)
    細かな研究解析に使うのは無理だけれど、個人の各栄養素の摂取状況をかなりの程度把握できます。たとえば、個人が糖尿病にかかっていて、食生活をどのように改善し治療を進めたらよいか、ということを示すくらいの能力は持っています。
  • 量の調節よりも頻度管理で
    頻度管理の方が、食べる量を調節しやすいです。ある食品を1週に1回食べるのと、毎日食べるのとでは、食べる量は7倍違います。毎日食べる量を7分の1にするとか7倍にするのは無理でしょう。
    ご飯の量を毎日、3分の1減らすことを心がけるよりも、週7回食べていたご飯を4回にする、と決めた方が、自分で把握しやすいしごまかしにくい。より簡単に摂取量を減らせるよ、というわけですね。梅干しを食べるのは週1回に限るとか、牛乳を飲む量を週2回から3回に増やしてみようとか、考えやすい。
    頻度にすることによって、はめをはずす自分も楽しめます。焼肉とご飯をお腹いっぱいの翌日は控えめに、と調節するんです。
    人の体はよくできていて、体にたまりやすい栄養素ほど、ぼくたちはめったに食べない。まとめ食いしています。血液に溶けて尿で出る栄養素ビタミンCなどはほぼ毎日摂っています。一方で、骨を支えるビタミンD。あれは、数ヶ月、半年くらい体の中にたまるので、1カ月に1回くらい食べれば大丈夫です。その一方で、食べ過ぎれば害が起きます。
  • サラダチキンに飛びついたら食塩摂取量が増える
    たしかにフレイルは怖い。昨今の低糖質ブームも相まって、自分が日常的に食べているタンパク質の量も知らないまま、「じゃあ、サラダチキンを食べていればいいんじゃないの?」とサラダチキンがブームになる。
    フレイル:加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態
    サラダチキンは、食塩含有量が多いですよ。脂肪が少ない高品質タンパク質を摂って大丈夫と思っていると、食塩の摂取量が増える。これが食品ですね。鶏のささみを冷凍しておいて、電子レンジで解凍加熱して食べればいいんだけどなあ。
  • サプリメントに頼る愚かしさ
    基本的な知識がないのに、周辺の特殊な栄養素の勉強ばかりしている。これが現代社会のように思えます。飽和脂肪酸は英語でsaturated fatty acid、すなわちSFAです。このSFAという言葉は知らないのに、EPADHAは知っている。EPAやDHAの不足よりもSFAの取りすぎのほうが生活習慣病への悪影響が大きいために、諸外国では加工食品に付けられる栄養成分表示にSFAの含有量を含めるなどして、SFAの食べ過ぎへの注意喚起をしています。ところが、日本の栄養成分表示にはSFAは入っていません。
    重要性の小さな情報を取り入れて食生活を改善したつもりになっているけれど、大きなものがすっぽり抜けているのが今の日本の社会ですよ。
    自身の栄養状態の把握が大事なのに、これが良い食品、悪い食品という情報に踊らされ、これさえ食べれば、というようなサプリメントの広告宣伝に流されて、高いお金を払って健康を得た気分になっている
  • 定期検診に、疾患リスクを予測できるBDHQの導入を

メモ

女子栄養大学「佐々木敏トークライブ」“栄養学は教養です”(瀬古博子 FOOCOM.NET 2019/7/10)この中に、190612佐々木敏先生トークライブ(女子栄養大学出版部).pdf(「データ栄養学のすすめ」御礼『栄養と料理』連載100回記念)がある。

研究者と実務者で勉強会(児林聡美 食情報の未来をつくるページ 2018/10/18)
第2回 「体験談」で健康食品が 必ず「効く」理由とは? 佐々木敏(鈴木充 HuffPost Japan 2018/10/11)
プリン体 白米と玄米 食物繊維
[ 2018/11/12(月) ] カテゴリ: 食品中の化学物質,リスク | CM(0)
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