ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

(メモ)ドイツのエネルギー政策、電力事情、電力料金

[ 2018/11/05 (月) ]
追記。2019/7/4
初回公開日: 2018/11/05



久しぶりに新しめの関連情報をアーカイブします。

目次

1.『ドイツの電力事情』竹内純子氏によるIEEIへの掲載から2点
 (1) Energiewendeとはなにか
 (2) CO2 削減は進んだか?
2.「環境」がポピュリズム台頭の第3の要因に【追記】
3.エネルギー源別総発電量の推移
4.電力単価の推移
5.参考情報

1.『ドイツの電力事情』
竹内純子氏によるIEEIへの掲載から2点

【部分的に引用】
日本ほどエネルギー政策の議論の中で「世界の潮流」といった言葉を多用し、他国をベンチマークすることに熱心な国を、筆者は知らない。 
その中でも特に多く言及されるのがドイツであろう。
「自由化」、「再エネ」、「脱原発」という今の日本のエネルギー政策のキーワードを先取りしていることなどから、理想像として紹介されることが多い。しかし、前提条件の違いを無視して真似することはできないし、ドイツも成功ばかりではない。
これまでのアプローチに対しては批判的な見方も多い

1.ドイツのエネルギー政策の概観
1.1 EUのエネルギー・気候変動政策
1.2 ドイツの政策

ドイツは「Energiewende」の標語の下、脱原子力・脱化石燃料、再生可能エネルギーへの転換を進めている。
エネルギー転換」あるいは「エネルギー革命」とも訳される。

2.Energiewendeの進捗
2.1 電源構成の変化
再生可能エネルギーの占める割合は順調に増加しており、33.1%に達したとされる。
2017 power mix (2016 values in brackets)
ドイツの2017年電源構成
【引用中断】異なる出典から引用
発電量のエネルギー源別割合(単位:%)(2017年の暫定値)
図2 発電量のエネルギー源別割合 (単位:%)  (2017年の暫定値)
原典:Arbeitsgemeinschaft Energiebilanzen e.V "Bruttostromerzeugung in Deutschland ab 1990 nach Energieträgern" (2017.12.21)

【引用再開】

2.2再生可能エネルギーのコスト低下

これだけ再生可能エネルギーの比率を向上させることができた背景には、再生可能エネルギーのコスト低減に成功したことにある。
規模の大きな(Utility scale)太陽光発電と陸上風力発電は、化石燃料含めた多様な電源の中で最もコストが安くなっていることがわかる。
図3/再生可能エネルギーのコスト

世界各国で再生可能エネルギーのコストが低下している背景には、学習効果・量産効果による設備製造コストの低下がまず挙げられる。
しかし、再エネ設備の製造コストだけでなく、工法の習熟による最適化等によってコスト全体を低減させる必要がある。そのためには、コスト低減に向けたインセンティブを付与する必要があり、ドイツは再生可能エネルギー法(EEG)を数次にわたり改正して、競争原理を強めてきたのである。
競争原理が働きづらいという点で、固定価格買取制度についてはドイツ国内でも批判の声が強い。
再生可能エネルギーのコストや導入量を増やすという点では成功したが、決してそれは効率的になされたものではないという反省が聞かれた。全量固定価格買取制度から、量を定めた買取入札制度などに変更してきたドイツの経験と反省をこそ、わが国は活かして、ドイツの倍諸外国の数倍に高止まりしている再生可能エネルギーのコスト抑制を図るべきであろう。

太陽光・風力は「必要とされる以上に発電してしまう時間帯」が多くでる。
①他の電源から順に発電を抑制するにしても最終的には再エネの発電を抑制する、
②どこかに流す、
③貯める、
のいずれかが必要になるが、①は再エネの稼働率を押し下げてしまうし、③は蓄電技術の進歩が必要だ。現状では送配電網を強化してどこかに流すことが必要だが、それには莫大なコストがかかる。
ドイツでいま、さらなる再生可能エネルギー導入にあたっての最大の障壁とされているのは、南北送電線の建設が遅延していることである。北部に大量に導入された風力発電による電気を南部に運ぶ送電線の建設が、住民の反対等によってほとんど進んでおらず、地中化すればコストが増大することが懸念されている。

本年5月に連邦ネットワーク庁に対して行ったヒアリングで、個人的な見解としながらも、「再エネの導入拡大しか考えず、送電線のことを頭に入れていなかったのは、歴史上最も大きな過ちだった」とのコメントが聞かれたが、拙稿「日本の再生可能エネルギー普及を『真面目に』考える(2)」でも述べた通り、電力システム全体の最適化維持と全体コスト低減のためには、電気料金、託送料金、市場の仕組みを総合的に設計する必要がある。再生可能エネルギーの導入量だけを見た議論は、電力システム全体の中で「木を見て森を見ず」となることがドイツの経験からの学びであろう。


【ごく一部のみ引用】
Energiewendeの目的の大きな一つが温暖化対策であることは間違いがない。
ドイツは電力需要の30%以上を再生可能エネルギーによって賄うなど、再生可能エネルギーの導入については順調な進展が伝えられる一方で、温室効果ガス削減についてはあまり芳しい状況ではない。本来、再生可能エネルギーの導入は手段であって目的ではなかったはずだ。なぜ本来の目的たるCO2削減がそれほど進まないのか。現状を整理し、ドイツの温暖化政策の今後を考えてみたい。

Figure 11 Emission developments by sector (without LULUCF)
図1/ドイツの温室効果ガス排出量推移(セクターごと。土地利用、土地利用変化及び林業部門を除く)
出典:ドイツ環境省“Climate Action in Figures (2017) – Facts, Trends and Incentives for German Climate Policy”

  • CO2削減の進展
    2000年以降特に顕著な減少はみられず、2020年以降の目標数値(右側の棒グラフ)にはかなり距離があることがわかる。
    2000年に全量固定価格買取制度(FIT)が導入され、再生可能エネルギーの拡大が急速に進んだにもかかわらず、期待されたほど削減が進まなかった理由は何か?
  • CO2削減はなぜ進まないのか
    これだけ再生可能エネルギーの導入が順調に進んだにもかかわらずCO2削減が進まない理由は、主には排出量の多い石炭・褐炭火力発電所の稼働を減らせていないことにあると、ドイツ国内でも指摘されている。
    再生可能エネルギーの拡大とあわせて、再生可能エネルギーの調整役として稼働し続ける火力発電の低炭素化を進める必要があるが、ドイツはそれには失敗したということだろう。
  • 2020年の温暖化目標断念と政治状況
    CO2排出削減が順調に進んでおらず、1990年比40%削減するという2020年目標の達成はほぼ不可能であることは、昨年12月に開催されたCOP23以前から既に複数の研究機関やメディアにより指摘されていた。
    こうした状況を受けて、自国で開催されたCOP23においてメルケル首相は、2020年目標の達成は事実上断念することを表明せざるを得なかった。演説の中では、「雇用の確保が課題であり、それはドイツであっても容易ではない」と、この問題の政治的な難しさをにじませていた。
    キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は社会民主党(SPD)との連立を成立させたが、脱石炭・褐炭は新政権でも大きな争点となっている。脱石炭・褐炭について議論する委員会(正式名称「成長・構造転換・雇用委員会」)の設立が閣議決定されたものの、経済省と環境省の間でこの委員会の主導権を巡る争いがあり、結局、内務大臣・労働大臣も加えた4大臣が共同運営することに落ち着いた。本委員会は、2018年末までに具体的な石炭・褐炭関連施設の閉鎖時期や、影響を受ける地域に対する補償プログラム等を決定する方針であるが、委員会の人選は難航し、当初4月末には決定されるはずであったものが、6月26日にようやく第1回委員会の開催にこぎつけたことが報じられている。しかし、筆者が本年(2018年)5月に政府関係者にヒアリングに行った際にも、「この委員会がどうなるか、どういう結論を出すかは全く見通せない」とのコメントが得られており、これからどのような補償措置を講じて、石炭・褐炭産業の廃止に向けた合意を取り付けるのかが注目される。
  • 脱原発か、脱石炭か
    脱石炭が難しいのは雇用の問題だけではない。福島原子力発電所事故を契機に、ドイツは2022年を年限としてすべての原子力発電所を停止することを法定化したので、石炭火力発電及び原子力発電という、安定的かつ安価な電源の二つを同時に縮小していかねばならないのだ。2017年のドイツの電源構成のうち、褐炭・石炭は37%原子力は11.6%を占めている。
    ドイツ環境省が開催した「長期低排出発展戦略(以下、長期戦略)」に関するサイドイベントに登壇したドイツ環境省次官に、「ドイツは脱石炭の期限を決められるのか?」と問いかけたところ、非常にポリティカルな課題であること、また、「脱原子力脱石炭同時に進めることは非常にチャレンジングである」との回答があった。
    重ねて、脱原子力と脱石炭ではどちらの優先順位が高いのかを問うと、「脱原子力は既に法で決定していること」との回答があった。彼の個人的見解ではあろうが、脱原子力と脱石炭では脱原子力を優先させる、ということはすなわち、温室効果ガス削減の目標未達については目をつぶる可能性もあるということだろう。
  • ドイツは温暖化対策の旗を降ろすのか?
    ドイツは、2020年目標(1990年比40%削減)は撤回することで合意したと報じられているものの、目標達成の時期を20年代前半に先送りし、2030年目標(1990年比55%削減)については維持する方向だとされる。
    KASの気候変動政策担当者は、、、
    「エネルギーミックスを変えるのは、新技術の開発もしくは経済的に勝る技術がでてきたとき。気候変動でエネルギーミックスを変えることはない」とも述べた。「気候変動は副次的効果」という言葉が、政権与党のシンクタンクにおける気候変動問題担当から発せられたことには衝撃を受けたが、複数の世論調査から、ドイツ国民は気候変動問題には総論として賛成するもののコスト負担については把握しておらず、負担の許容レベルも低いことがうかがい知れる。現実的には彼のいう通りなのかもしれない。
    ドイツのこれまでの経験から、CO2削減はエネルギー全体を俯瞰的にとらえた「総力戦」が必要であることがわかる。
    具体的な施策としては、省エネの促進と、今まで「電力の転換」に留まり、エネルギー全体での低炭素化が十分ではなかったことを反省し、運輸や熱など幅広いセクターでの低炭素化が必要だとされている。ドイツが今後どのように温暖化対策を進めるのか。そこには日本にとっても多くの学びがあることだろう。



【部分的に引用】

前回前々回に述べた経済界からの「エネルギー転換」政策の修正を求める声に加え、ドイツ国民の反発も近年顕在化してきたように思われる。そうした国民意識の変化を捉え、右派ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が「環境」を、「ユーロ」「難民」に続く第3のテーマとして積極的に争点化しようとしている。
国民の反発とは、電気料金の高騰、ディーゼル車の使用制限といった負担増大に対するものである。こうした負担を「転換」政策や地球温暖化対策といった政策が生み出したものと捉え、国民の日常生活を犠牲にして進められるエリート主導、理念先行のプロジェクトと見る人が増えてきたのである。
AfDは地球温暖化の原因が二酸化炭素(CO2)増大にあるとの知見を否定する唯一の主要政党である。また、ディーゼル車の使用継続を訴え、特に車に頼らざるを得ない地方部で、「ディーゼル車を救う政党」としてキャンペーンを行っている。
福島第1原発事故の際のドイツ人の激しい反原発感情を、ドイツ特派員として当時、身近に体験した私としては、国民の半分近くが原発容認の姿勢を見せることはにわかに信じられないが、「環境」をめぐりドイツの国内事情も激しく動く中で、世論にもやはり一定の変化が生まれていると見てよいのではないか。
福島第1原発事故の際のドイツ人の激しい反原発感情を、ドイツ特派員として当時、身近に体験した私としては、国民の半分近くが原発容認の姿勢を見せることはにわかに信じられないが、「環境」をめぐりドイツの国内事情も激しく動く中で、世論にもやはり一定の変化が生まれていると見てよいのではないか。



3.エネルギー源別総発電量の推移
図3エネルギー源別総発電量の推移(単位10億kWh)
原典:Arbeitsgemeinschaft Energiebilanzen e.V "Bruttostromerzeugung in Deutschland ab 1990 nach Energieträgern" (2017.12.21)


4.電力単価の推移

異なる2つの原典からの引用。
家庭用電力料金における再エネ賦課金の比率は
 4人家族で22.4%=6.8/30.3
 3人家族で23.1%=6.792/29.42
 産業用で39.4%=6.792/17.20

4人家族、年間消費量3,500kWhの場合の平均。
Household power rates, 2007–2018 for 4 person household (annual consumption of 3,500 kWh)
“EEG割増”が再生可能エネルギー法(EEG)による賦課金

ドイツの電力料金の構成と再生可能エネルギー割増の推移(ドレスデン情報ファイル)
データ出所:ドイツ・エネルギー・水道事業連盟(BDEW)、2018年1月9日付け「2018年1月電力料金分析-家庭用および産業用」

3人家族、年間消費量3,500kWhの場合の平均。
(1) A家庭用電力価格の構成と推移

産業用 年間消費量160~20,000MWhの場合の平均。
付加価値税(消費税)は含まない。(最終的には製品価格等に含めて消費者に転嫁される。)
電力多消費型の企業はEEG割増を免除される。
(1) B産業用電力価格の構成と推移

【メモ】[ドイツ] 2019年の再エネ賦課金は前年比5.7%減の6.405ユーロ・セント/kWh(電気事業連合会海外電力関連 トピックス情報2018/11/13)

5.参考情報

ドイツで潰えたグリーン電力の夢
ダニエラ・チェスロー ニューズウィーク日本版 Yahoo!ニュース 2018/10/19

【小見出しのみ引用】

  • 脱化石燃料・脱原発の野心的な目標をぶち上げたドイツだが、送電網の再整備が立ち遅れロシアの天然ガス頼みに
  • 送電網の全面的な再整備が必要
  • 風力発電業界では大量の失業者


ドイツの「エネルギー転換」が大失敗だったと明らかに
実は環境のためにもなっていなかった
川口 マーン 惠美 現代ビジネス 2017/7/28

【小見出しとごく一部のみ引用】

  • 国民負担は永遠に減らない
  • ドイツの電気代はフランスの2倍
    ドイツでエネルギー転換にかかった費用の累計は、2015年までで、すでに1500億ユーロ(19.3兆円強)に達しているという。2025年までの累計の推定額は5200億ユーロ(約67兆円)。
    再エネ業界では“produce-and-forget”と呼ばれる行為が横行しており、太陽が照り、風が強い日には、往々にして電気が余り、電気の市場価格が破壊される(ときにマイナス値になることもある)。電気の価格が下がれば下がるほど、買い取り値との差が広がり、賦課金が上がる。
    賦課金の額は2009年から17年までで4倍になった。電気代はすでにEU平均の50%増、フランスの2倍だ。
  • 遅すぎた制度改革
    そもそも、採算度外視で作った商品(再エネ電気)が固定価格で例外なく買い取られるというのは計画経済の仕組みだ。そのおかげで、再エネ関連企業は、現在、大繁盛している。発電事業者だけではなく、パネル販売者から施工者、融資をする銀行まで、ドイツの再エネはすでに巨大なビジネス畑だ。
    とはいえ、そのような特権的な商品が自由市場で売られているのだから、あちこちに歪みが出る。そして、その歪がなかなか是正されないのは、強力な再エネロビーが形成されているからだと言われている。
    また、ドイツ国民にとってショックなのは、ハウカップ氏が、エネルギー転換が環境改善や温暖化防止に一切役立っていないと断言したことだ。これまでドイツ国民は、環境のためと思って高い電気代を我慢していたところがある。
    ところが同記事によれば、ドイツでもEUでもCO2は減っていないどころか、2016年の排出量は09年より増えたのである。増加の原因は往々にして火力発電に押し付けられているが、ハウカップ氏によれば、それも間違いだ。再エネ電気の供給が安定しない限り、火力発電は止めることができない。
  • 犠牲になるのはいつも国民
    改革が遅すぎたため、すでに20年契約を結んでしまっている膨大な買い取り分が終了しない限り、電気代への鎮静効果はなかなか現れない。
    ドイツを手本として再エネ推進に突入した日本だが、問題は山積みだ。ドイツが抜け出そうとしている迷路で、日本が彷徨い続けるのは無意味ではないか。
    それよりも、一歩先を行くドイツの改革を参考に、日本も適正な再エネ発電量を見極め、一刻も早く制度改革を実施したほうがよい。それが、国民にとっても、国家経済にとっても、エネルギー安全保障にとっても、何よりも大切だと思う。

【余談】
ドイツ在住の、川口 マーン 恵美氏と熊谷徹氏は、ドイツのエネルギー政策に関して対照的な発信をしてきていますが、どうやら、川口 マーン 恵美氏の方が大きな流れを的確に捉えていたようです。
ただし、川口氏の論説には情報出典の記載がないことが多いのが難点です。
[ 2018/11/05(月) ] カテゴリ: 海外のFITに関する事 | CM(0)
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