ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

【HPV5】村中璃子氏がジョン・マドックス賞を受賞、メディアの論調の経緯などを含めてまとめました。

[ 2017/12/08 (金) ]
『4.メディアの論調の経緯』を追記。2017/12/8
初回公開日:2017/12/5


この機会に関連情報・背景や前回(【HPV4】2016/4/11)以降の経緯などを纏めておきます。

目次

1.後述の“受賞の全体像”で参照した論説
2.受賞の全体像
3.大手メディアによる報道はほとんどない
4.メディアの論調の経緯(過去の記事からあらためて引用します。)

1.後述の“受賞の全体像”で参照した論説

海外の一流科学誌「ネイチャー」 HPVワクチンの安全性を検証してきた医師・ジャーナリストの村中璃子さんを表彰
ネイチャーは日本の状況を、「このワクチンの信頼性を貶める誤った情報キャンペーンが全国的に繰り広げられた」と厳しく批判。

岩永直子BuzzFeed 2017/12/1

【小見出しのみ引用】
接種後の体調不良の声相次ぎ 国は積極的に勧めないように
訴訟を起こされ、仕事も激減
日本での議論に弾みを


「医師とメディア人」二足のわらじを履く理由
小長洋子 東洋経済オンライン 2017/12/1

【小見出しのみ引用】
一般の議論にサイエンスの視点を持ち込む
(科学の議論を法律によって封殺)
反対論者に冷静に対応した
(重要なのはリスクとベネフィットのバランス)
守れる命を奪っている


2.受賞の全体像

ジョン・マドックス賞(John Maddox Prize)とは

ジョン・マドックスは『ネイチャー』の編集長を長期間務めたことで有名で、その功績を記念し、『ネイチャー』などが主宰する賞。多くの困難に遭いながらも科学的なエビデンスに基づき公益に寄与する仕事をした科学者・ジャーナリストに贈られる。
受賞者は『ネイチャー』に発表され、毎年、11月に授賞式が行われる。賞金は2000ポンド。
2012年に開始され今年で6回目。
村中璃子氏は世界25カ国95人の候補者の中から選ばれた。日本人の受賞は初めて。(日本産婦人科医会の木下勝之会長らが村中さんを推薦した)

受賞理由

2015年から副反応に揺れる子宮頸がんワクチン問題に、医師ならではの視点で鋭く斬り込みながらも一般人にわかりやすい記事を多数執筆した。審査講評では「この問題が日本人女性の健康だけでなく、世界の公衆衛生にとって深刻な問題であることを明らかにしたこと」が高く評価されている。

背景

子宮頸がんの90%以上はHPVの感染が原因とされ、WHOも感染予防のためにワクチン接種を推奨している。日本でも2009年に承認され、2013年4月から定期接種となった。
だが、厚生労働省は接種のあと原因不明の体中の痛みを訴えるケースが報告されるとして、定期接種としての接種は継続するものの、全国の自治体に対して積極的に接種を呼びかけることを中止するよう求めた。(2013年6月)
一部メディアでも、接種後の激しい身体症状の原因と報道された。
2016年7月には薬害を受けたとした集団訴訟
ワクチンの信頼性を貶める誤った情報キャンペーンが全国的に繰り広げられた結果、国内の子宮頸がんワクチン接種率は70%台から1%未満にまで低下。グローバルな公衆衛生の問題として事態を重く見たWHOは2度にわたり日本を名指しして警告を発している。
「若い女性たちはワクチン接種によって予防しうるHPV関連のがんに対して無防備になっている。弱い科学的根拠に基づく政策決定は、安全かつ有効なワクチンを使用しないことにつながり、実害をもたらしうる」
それでも、国は積極的な接種勧奨を再開するかどうか、判断を先送りしたまま。

受賞の具体的な内容

困難や敵意に直面しながらも、公共の利益のために科学や科学的根拠を広めた」と評価。

具体的な発信として、2015年10月に始まる一連の記事がある。

村中璃子氏談
「多くの医師からよくぞ言ってくれたという声が届き、書いた後に皆が心配していたテーマだったのだと気づきました。みんな声を上げようとしても、薬害を訴える人たちから攻撃を受けるのを恐れています。実際に、記事が出た後、『村中はワクチンメーカーから金をもらって書いている』という根も葉もない噂が流され、抗議の電話が厚生労働省にも殺到したと聞きました」

『困難や敵意』の一例として、以下がある。

池田修一・信州大学医学部長(当時)を班長とする通称「池田班」(厚生労働省の研究班)が行った2016年3月の研究内容の発表に、「捏造行為があった」と指摘する記事をウェッジに書いた。
筆者
敬称略
サイトなど表題
2016/3/24村中璃子WEDGE Infinity子宮頸がんワクチンと遺伝子 池田班のミスリード
利用される日本の科学報道(前篇)
2016/3/29村中璃子WEDGE Infinity子宮頸がんワクチン「脳障害」に根拠なし 誤報の震源は医学部長
利用される日本の科学報道(中篇)
2016/4/18厚労省平成28年3月16日の成果発表会における発表内容について
2016/6/17村中璃子WEDGE Infinity子宮頸がんワクチン薬害研究班に捏造行為が発覚
利用される日本の科学報道(後篇)
2016/6/20村中璃子Wedge7月号子宮頸がんワクチン薬害研究班 崩れる根拠、暴かれた捏造
2016/6/23村中璃子WEDGE Infinity子宮頸がんワクチン研究班が捏造 厚労省、信州大は調査委設置を
2016/6/27村中璃子WEDGE Infinity正しくは「速報と変わらず因果関係なし」
名古屋市子宮頸がんワクチン副反応疫学調査「事実上撤回」の真相

当時のメディアによる情報キャンペーンについては、【HPV4】池田修一信州大学医学部長(厚生労働省研究班の代表)の発表とメディアの反応にあります。

厚労省が、信州大の調査をもとに「池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となった」と異例の見解を公表した。
平成28年3月16日の成果発表会における池田修一氏の発表内容に関する厚生労働省の見解について(厚生労働省 2016/11/24)

厚生労働省では、HPVワクチンを接種した後に生じた「運動障害」や「慢性の痛み」などの症状について、被接種者とその家族に対して、「適切な医療を提供する」ことに資することを目的として、平成25年度から、厚生労働科学研究事業で2つの研究班「子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究(代表:信州大学医学部 池田修一教授)(以下、池田班)」※と、「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究(代表:愛知医科大学学際的痛みセンター 牛田享宏教授)(以下、牛田班)」※を設置して研究を進めてきました。※研究課題名は平成28年度のもの
平成28年3月16日、地域において適切な医療を提供するという観点から、池田班、牛田班の研究の成果(主に治療成果)を、協力医療機関等の医師に対して情報提供を行うために成果発表会を開催したところ、池田班より、HPVワクチンを接種したマウスのみに自己抗体の沈着を示す陽性反応があった、との報告がありました。これに対して、一部報道よりねつ造の指摘があり、また池田修一教授が所属する信州大学が外部有識者による調査委員会を設置して調査しました。
この度、信州大学の調査が終了し、以下の内容が公表されました。

  • マウス実験は、各ワクチン1匹のマウスを用いた予備的なものであった。
  • 予備的な実験であったため、結果の公表に際しては特段の配慮がなされるべきであった。
  • 池田氏が発表で用いたスライドには、マウス実験結果を断定的に表現した記述や、自己抗体の沈着、といった不適切な表現が含まれていた。
  • 前述より、マウス実験の結果が科学的に証明されたような情報として社会に広まってしまったことは否定できない。
  • 池田氏に対し、混乱を招いたことについて猛省を求める

厚生労働省としては、厚生労働科学研究費補助金という国の研究費を用いて科学的観点から安全・安心な国民生活を実現するために、池田班へ研究費を補助しましたが、池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となったことについての池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾に思っております。
また、厚生労働省は、この度の池田班の研究結果では、HPVワクチン接種後に生じた症状がHPVワクチンによって生じたかどうかについては何も証明されていない、と考えております。


しかし、池田氏は村中さんやウェッジらに対し、名誉を毀損されたとして訴訟を起こした。
この研究発表の直後には、薬害であると訴える人たちによって、国や製薬会社に損害賠償を求める集団訴訟も全国で起きた。(東京など4地裁に63人が)

村中璃子氏談
「訴訟以降は、HPVワクチンについては書かないという空気がメディアに広がり、当時持っていた3つの連載は全て切られてしまいました。私は、『薬害を薬害でないと言っている悪者』と位置付けられ、ほとんどメディアで記事を発信することができなくなりました」
これについても、ネイチャーは
訴訟で彼女の口を封じようとし、彼女の専門家としての地位を貶めようとする動きに直面しながらも、このワクチンの安全性について科学的根拠を明らかにし続けた。これにより、科学的根拠を重視することが日本人だけでなく世界の公衆衛生に対しても役立つということを保証してきた」と論評している。

メディアの責任について村中璃子氏談
「被害を訴えている人の側から書くのが楽だし、売れるのでしょうが、真実は何であるのかという判断を放棄しています。サイエンスを一般にわかりやすく伝えるのはメディアの役割で、正しく伝えることがもっとも大切です」

木下勝之氏談(今回の賞に村中さんを推薦した日本産婦人科医会会長)
「この受賞が、HPVワクチンを日本社会で使うことを推進していくために、厚労省に強いインパクトを与えると信じている。さらに、このワクチンがもたらす多大な公共の利益に疑念を抱く医療の専門家やジャーナリストに対し、この表彰が考えを改めさせるのに役立つよう願う」

「ネイチャー」誌上に発表された村中璃子の受賞コメント

優れた編集者で書き手、そして敵意に遭いながらも公益のためにサイエンスを広めることに貢献したマドックス卿の名を冠した名誉あるこの賞の受賞を、驚きと喜びをもって受け止めています。私が書き続ける理由はふたつ。ひとつは公衆衛生上の脅威となる危険な主張を無視できないからであり、もうひとつは人々に真実を伝える必要があるからです

出典:村中璃子オフィシャルサイト

【追記】
ジョン・マドックス賞受賞スピーチ全文「10万個の子宮」
村中璃子オフィシャルサイト 2017/12/09

【メモ】
Togetter:英ネイチャー、HPVワクチン安全性を検証する発信を続けてきた村中璃子氏にジョン・マドックス賞(Friendboy42(@Friendboy42)さん 2017/12/2)
Togetter:「反HPVワクチン活動家に科学で立ち向かった日本医師への言論弾圧」(@tyurukichi_AAさん 2017/12/3)

3.大手メディアによる報道はほとんどない

今のところ産経のごく短い記事(2017/12/2)と北海道新聞(村中氏は北海道大学を卒業しており、掲載されたとみられる)のみ。
報道されないという事実はチョット異常といえる。
村中璃子オフィシャルサイトに世界の受賞関連報道が纏められています。

【参考】
子宮頸がんワクチン問題めぐる英表彰、報じられぬ日本 新聞では「産経」「道新」のみ(ライブドアニュース 2017/12/6)
子宮頸がんワクチン副作用とマスコミの役割(山形浩生 新・山形月報! 2017/12/11)
日本人医師の国際的な賞の受賞を、国内メディアがボツにした裏事情(冷泉彰彦 まぐまぐニュース 2017/12/13)
「産経と道新のみ」とツイートした医師・村中璃子氏 子宮頸がんワクチンの安全性を積極発信のワケ(産経ニュース 2017/12/16)
村中璃子氏が反 HPV ワクチン運動からの妨害に屈せずJohn Maddox 賞を受賞した件が報道されないのはなぜか(Togetter しんだかわうそ(@Nek_ssd)さん 2017/12/7)

過去にも、多くの方々が、メディアによる煽りに対して、怒りの声・批判・反論を述べている。たまたま、前回(【HPV4】2016/4/11)のエントリーがそのリンク集になっているので、ご参考に。

【追記】
4.メディアの論調の経緯(過去の記事からあらためて引用します。)

【小見出しとごく一部のみ引用】

  • 「このままでは誰も救われない」医師が警鐘を鳴らす
  • いま、なにが起きているのか?
  • 2013年3月、メディアの論調が変わった
    「副作用」問題はどうして、ここまで広がってしまったのか。有力な仮説が浮かび上がった。大手メディアの報道だ。
    「大手紙の記事を検証すると、当初はワクチンの予防効果をポジティブに報道していたのですが、ある時期を境に、ネガティブなトーンが強まり、ポジティブな記事は激減した。バランスが著しく悪くなったのです」
  • 潮目を変えた記事
    津田さん作成のグラフ
    2013年3月を境に、ポジティブと評価する報道は激減し、ネガティブもしくは中立と評価した記事だらけになる。予防の効果についての報道も減り、副作用などのリスクを取り上げる記事が圧倒的多数を占めるようになる。
    2013年3月に何があったのか。津田さんは朝日新聞の1本の記事をあげる。東京都内の女子中学生について報じた記事だ。
    「(ワクチン接種後)接種した左腕がしびれ、腫れて痛む症状が出た。症状は脚や背中にも広がり入院。今年1月には通学できる状態になったが、割り算ができないなど症状が残っているという」
    この記事を契機に、副作用を問題視する記事が次々と報道された。
  • それは「副作用」なのか?
  • 注目される「ノセボ」効果
  • 「本来、防げたはずのがん患者が増える」
  • いまも続く論争の構図 波紋が広がるマウス実験を厚労省が批判
  • 「副作用」を訴える患者の救済が見落とされている
  • 「大事なのは、目の前の子供が治ること」
  • 問い直すべき課題とは?


(次は放射線問題に関連した論説ですが、普遍的な指摘です。なぜ、是正されないのか?不良製品を世に出しっぱなしにして何の対応もとらない面で、一般企業ならとっくに退場ですね。)
坂村健の目:ベビースキャン
毎日新聞 2015/12/17

【ごく一部のみ引用】
事態がわからないときに、非常ベルを鳴らすのはマスコミの立派な役割。しかし、状況が見えてきたら解除のアナウンスを同じボリュームで流すべきだ。


関連エントリー

【HPV1】ヒトパピローマウイルス、子宮頸がんワクチン
【HPV2】子宮頸がんワクチン接種の経緯、利益相反、救済の動き
【HPV3】子宮頸がんワクチン、日本発『薬害騒動』の真相(メモ)
【HPV4】池田修一信州大学医学部長(厚生労働省研究班の代表)の発表とメディアの反応

【メモ】
日本産科婦人科学会(藤井知行理事長)が、接種勧奨の再開を強く求める4度目の声明を発表。出典:産経新聞 2017/12/9
[ 2017/12/08(金) ] カテゴリ: 子宮頸がんワクチン問題 | CM(0)
コメントの投稿










管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

このブログについて
管理人 icchou から簡単な説明です 更新,追記の通知はTwitter
カテゴリ
最新記事
ブログ内検索