ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

脂質の消化・吸収・代謝から善玉・悪玉コレステロールまで

[ 2017/09/25 (月) ]
栄養素の消化・吸収・代謝の基礎、全体概要に続き、脂質の基礎から善玉・悪玉コレステロール辺りのところを勉強しましたので、そのノートをまとめてみます。生理学などの基礎的素養がない素人のノートなので誤りがあるかも知れません。
ちなみに、人体の構成要素の割合は
  1. 水分           :50~70%
  2. タンパク質  :15~20%
  3. 脂質           :13~20%
  4. ミネラル分  :5~6%
  5. 糖質           :1%
目次

1.理解のための基礎知識
  脂質は3栄養素のひとつ
  脂肪酸、中性脂肪(トリグリセリド、トリアシルグリセロール
  コレステロール
2.脂質は水に溶けないのでリポタンパク質(というキャリアー)に取り込まれて体内を移動する
  リポタンパク質は4つに大別される。
  コレステロールを運ぶリポ蛋白は2種類
3.悪玉コレステロールと善玉コレステロール。なぜ、配達は悪玉、回収は善玉と呼ばれているのか?
  マクロファージと動脈硬化
  HDLはコレステロールを全身の臓器から回収して肝臓に運ぶ
4.悪玉中の悪玉、sdLDL(small dense LDL)ってなに?
5.関連エントリー

1.理解のための基礎知識

脂質は3栄養素のひとつ

栄養素の摂取と代謝02
脂質とは、油脂脂肪酸グリセリンリン脂質ステロール、など。
別の言い方として、体内の疎水性の物質

エネルギー源としても重要だが膜構造の主要成分として、あるいは様々な生理活性物質の素材としても必須である。特に、不飽和脂肪酸のリノール酸α-リノレン酸は、体内で合成できない必須脂肪酸で、それら脂肪酸を含む中性脂肪やリン脂質を外から摂取する必要がある。
他の生物の脂質はその生物に合わせて合成されているわけで、必ずしも私たちの身体に合っているとは限らないので、中性脂肪は、いったんは脂肪酸グリセロールに分解して、そこから私たちの身体にあった脂質へと再構成される。

脂肪酸、中性脂肪(トリグリセリド、トリアシルグリセロール

【消化・吸収】
サラダ、豚や牛の脂肪、魚の油などの油脂の主成分は化学的に安定した中性脂肪トリグリセリドトリアシルグリセロール* で、血液検査で測定する中性脂肪と同じ。
*名前が3つもあるので混乱するが、『トリ』は3、『アシル』は脂肪酸がエステル結合したという意味

栄養素のクロストーク01
中性脂肪リン脂質は水に溶けず、中性脂肪・リン脂質どうしが集合して巨大な塊を作っている。その状態では消化酵素も取りつく島がないので、消化管の中で細かく分散させる必要がある。
胆汁酸で細かく乳化されミセルという小さな構造になる。
ミセル化した中性脂肪は、膵臓から分泌されるリパーゼなどによって分解されて2つの脂肪酸モノアシルグリセロールとに加水分解される。
なぜ、(下図の矢印の逆のように)脂肪酸グリセロール(グリセリン)とに完全に分解しないのかだが、細胞に取り込まれた後にすぐ中性脂肪やリン脂質を再構築することになるので、中性脂肪・リン脂質の「フォーマット」を残しておいた方がよいのだろう。
油脂グリセリン脂肪酸 油脂

グリセリンは常温常圧で無色透明の液体。保水性と保湿性を示す。浣腸液や目薬に使用される。ニトログリセリン(爆薬)の原料。
グリセリン脂肪酸カルボキシル基と結合することができる手を3本持っていて、グリセリンに脂肪酸が(エステル結合で)3個つながったものはトリグリセリドトリアシルグリセロール)。
この3つくっつく脂肪酸の種類によって油脂(中性脂肪)の性質も変化する。

脂肪酸は、炭素(C)の原子が鎖状につながった分子で、その鎖の一端に酸の性質を示すカルボキシル基(-COOH)と呼ばれる構造を持っているのが特徴。鎖の長さや炭素の二重結合(-CH=CH-)の数と位置によってたくさんの種類がある。
この辺りの詳細は食品中のトランス脂肪酸は問題か?にあります。

リン脂質1つの脂肪酸リゾリン脂質(リン酸基とアシル基だけがついている)とに加水分解される。

消化で生じた分解産物は、特別なトランスポーターなどを介さずに小腸の上皮細胞に吸収され、その細胞内で私たちの身体状況に合わせた中性脂肪・リン脂質・脂肪酸のついたコレステロールが合成・再構築される。

なお、リパーゼの作用で遊離した脂肪酸のうち、炭素の鎖が10個以下の中鎖脂肪酸は、ブドウ糖やアミノ酸と一緒に門脈経由で肝臓に向かい、主にエネルギ-源として代謝される。
すなわち、細胞膜も構成できないような「未成年」な脂肪酸は、即戦力としていきなりエネルギー代謝の現場に投入されるのた。中鎖脂肪酸が「太りにくい脂肪」といわれるのは、その分解されやすさによる。

一方、小腸の上皮細胞で再構築された中性脂肪・リン脂質・コレステロールなどは、まとめて外へ運び出されることになる。タンパク質と結合し、カイロミクロンという大きなリポタンパク質(後で詳説)をつくる。
このカイロミクロンは巨大すぎて、肝臓につながる小腸の毛細血管へ入ることができない。そこで、遠回りにはなるが、より通過しやすいリンパ管に入って静脈→心臓経由で、HDLなどとリポタンパク質や脂質の交換をしながら全身をめぐり、各組織に脂質を供給する。

このように、脂質の吸収はタンパク質ほど特異的なやり取りがなく、脂肪酸の種類などもあまり区別されることなく取り込まれ、細胞内で微調整するという形をとる。
脂質の多い食品は糖質やタンパク質が主体の食品に比べ、消化の始まりが遅く、吸収に時間がかかる。脂っこい料理が腹持ちがいいのは、こうした長いプロセスがあるため。

【代謝】
リポタンパク質に包まれ全身に運ばれた中性脂肪は、筋肉細胞等に運ばれ酵素により再び脂肪酸に分解されエネルギー源として利用されたり構築材料として利用されるか、皮下、腹腔、筋肉の間などにある脂肪細胞中性脂肪トリアシルグリセロールとして再合成されて貯えられ、必要に応じて再び脂肪酸に分解される。

なお、中性脂肪の分解でできた)グリセロールは中性脂肪に再合成されたり、解糖系で代謝されたり、肝臓での糖新生によってグルコースに変換される。

コレステロール

健康診断で悪者扱いされているイメージしかないかもしれないが、それは誤解。
コレステロールは、細胞膜の構成成分ステロイドホルモンの材料、消化吸収を助ける胆汁酸の材料ビタミンDの材料に欠かせない栄養素。
健康を保つためには、成人の場合1日1~1.5gのコレステロールが必要とされる。そのうちの20~30%を食事からとり、70~80%は(糖質や脂質が分解されたアセチルCoA(アセチルコエンザイムA)を材料にして)肝臓で作られており、血液の中で一定の量が保たれるように調節されている。
コレステロール
出典:脂質代謝異常症 (佐野内科ハートクリニック)

しかし、何らかの理由でそのバランスが崩れて、血液の中のコレステロ-ルが増えすぎると脂質異常症になる。
従来、血液中のコレステロールや中性脂肪が多い状態やHDLコレステロールが少ない状態を「高脂血症」と呼んでいたが,日本動脈硬化学会のガイドライン改訂(2007)に伴い「脂質異常症」という疾患名に変更になった。
.
2.脂質は水に溶けないのでリポタンパク質(というキャリアー)に取り込まれて体内を移動する

界面活性剤(洗剤の主成分)の作用と同じ
界面活性剤の作用
出典:脂質はどのようにして運ばれるか(リポタンパク質)(役に立つ薬の情報~専門薬学)

リポタンパク質は4つに大別される。
リポタンパク質02の2
コレステロールエステル(コレステリルエステル、コレステロールアシル):コレステロールの多くは、安定して輸送されやすいように脂肪酸(アシル基)をつけた形になる。

リポタンパク質は、密度の違いから4つに大別される。
カイロミクロン
VLDL:Very Low Density Lipoprotein、超低密度リポタンパク質
LDL:Low Density Lipoprotein、低密度リポ蛋白
HDL:High Density Lipoprotein、高密度リポ蛋白

リポタンパク質の種類主な構成成分特徴粒子の
大きさ
密度
カイロミクロンほとんどが
中性脂肪(トリグリセリド)
小腸細胞内で再構成された
食事由来の中性脂肪
全身の組織へ輸送。
各組織では、LPL(リポタンパクリパーゼ)*
という酵素が働いて中性脂肪を分解して
脂肪酸が各組織で利用される。
中身の中性脂肪が次第に減少して
小さくなりカイロミクロンレムナント
という遺残物となって肝臓に取り込まれる。
VLDL中性脂肪(トリグリセリド)
が主体(約50%)
肝臓で合成された中性脂肪
コレステロールを
血液中へ分泌、全身へ輸送。
カイロミクロンの時と同じで組織に
中性脂肪が運ばれると、各組織でLPL*
働いて中性脂肪を分解して脂肪酸に変え
各組織で利用される。
VLDLも中身の中性脂肪が次第に減少して
小さくなりVLDLレムナントという遺残物
となって肝臓に取り込まれる。
LDL
低密度リポたん白質
悪玉コレステロール
コレステロールが約50%肝臓に取り込まれたVLDLレムナントからLDLができる
各組織にコレステロールを運ぶ
HDL
高密度リポたん白質
善玉コレステロール
リン脂質が約50%
コレステロールが約30%
肝臓で作られるいちばん小さい
リポタンパク質で、細胞や血管の
コレステロールを肝臓へ回収
*LPL(リポタンパクリパーゼ):主に筋肉や脂肪組織で作られて、血管壁の表面に存在し、そこで血中を流れてくるリポ蛋白(内の中性脂肪)を分解する。

リポタンパク質05
出典:脂質代謝異常症 (佐野内科ハートクリニック)
出典:脂質・リポタンパク(KENKO PROJECT  2010/6/11)

コレステロールを運ぶリポ蛋白は2種類

上記のように、血液中でコレステロールを運ぶリポ蛋白には大きく2種類あり、肝臓から細胞へと新しいコレステロールを配達するものと、細胞から古いコレステロールを回収して肝臓へ捨てに行くものがある。いわば配達トラック回収トラック
この、配達トラックと積み荷のコレステロールを合わせて悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と呼び、
回収トラックと積み荷のコレステロールを合わせて善玉コレステロール(HDLコレステロール)と呼んでいる。
積み荷のコレステロールそのものは同じ。運んでいるトラックと、運ばれていく方向が違うだけ。(コレステロールを運ぶリポタンパクの種類の違いで区別しているだけ。)
悪玉と善玉02
出典:善玉・悪玉コレステロール(左利き肝臓専門医ブログ 2016/12/1)

3.悪玉コレステロール:LDL善玉コレステロール:HDL。なぜ、配達は悪玉、回収は善玉と呼ばれているのか?

マクロファージと動脈硬化

食生活のバランスが崩れたりして、LDLが血液中に増え過ぎると、血管の壁の中にコレステロールが入り込み酸化される。すると、白血球の一種であるマクロファージがやってきて丸呑みしていくうちに、マクロファージ自身が膨れ上がって死に、血管の内壁にたまっていく。こうしてできるのがプラーク
そうして血管が厚く変質し、結果として動脈硬化が進んでしまう。やがてプラ-クが破れて血栓ができて、心筋梗塞や脳梗塞というような命にかかわる重大な病気を引き起こすリスクが高くなる。

【参考】動脈硬化は生活習慣に関係なく発症しうる病気だと思う(Pursuing Big Oceans 2014/10/2)

HDLはコレステロールを全身の臓器から回収して肝臓に運ぶ

HDLの表面に存在するコレステロールがLCATという酵素によりエステル化され、HDL粒子の内部に移動して粒子の表面に隙間ができる。HDLは全身の臓器にあるコレステロールを引き抜いてこの表面の隙間に埋め込んで、それがLCATにより内部に移動する。
こうした過程の繰り返しによりHDLは組織からコレステロールを剥ぎ取り、自らの内部に溜め込んで肝臓に運ぶ。肝臓に戻されたコレステロールは胆汁酸などの合成に利用される。
悪玉LDLにより血管壁に運ばれたコレステロールを取り去って肝臓に戻してくれるので動脈硬化を予防する作用があり、逆に血中のHDLが低いと動脈硬化になりやすいので、低HDLコレステロール血症は病気と見做されている。HDLは喫煙で低下し持久的な運動で増加する。

配達と回収はどちらも人体にとって大切な働き。正常な量のコレステロールが血液中を運ばれる時は、決して、善玉でも悪玉でもない。ただのコレステロールの配達と回収。血液中のコレステロールが増えてしまった時に、悪玉になったり善玉になったりする。

4.悪玉中の悪玉、sdLDL(small dense LDL)ってなに?

悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールの中にも、大きな粒子のLDLもあれば、小さな粒子のLDLにあります。コレステロールを多く含むと大きくなるし、少ないと小さくなります。
コレステロールを多く含んでいる方が悪いLDLのように考えがちですが、前述したようにコレステロール自身に悪玉、善玉という意味はありません。
小型のLDLコレステロールのほうが、動脈硬化の危険因子と言われる所以は、そのサイズが小さいので血管壁に入りやすいということと、酸化変性を受けやすい(毒性が強くなる)ということで、マクロファージの標的になりやすいのがsmall dense LDLなのです。
しかし、今はsmall dense LDLそのものの測定には保険適応がないので、予測するしかありません。small dense LDLが高くなりやすい人は、糖尿病、肥満、メタボといった人で、LDLコレステロールがあまり高くないけど、中性脂肪の高い人、HDLコレステロールの低い人などはLDLのサイズが小さくて、値が見かけ上低く出ている可能性があります。LDLコレステロールが正常でもアポB(LDLの数をみる検査)が若干高い人も怪しいですね。また、non HDL-Cで代用するのもの(相関0.8)勧められています。

5.関連エントリーなど

【参考】
動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版の改定のポイント PDF
脂質異常症の原因と診断(左利き肝臓専門医ブログ 2017/1/31)

【メモ】
脂質異常症(池田医院)FH、角膜輪

【関連エントリー】転記
食品中のトランス脂肪酸は問題か?
それ以外は↓のカテゴリにまとまっています。
[ 2017/09/25(月) ] カテゴリ: 生理学・栄養学の基礎 | CM(0)
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