ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

日本のFITは失敗か?太陽光FITの費用対効果は?

[ 2017/09/04 (月) ]
追記。2017/9/4
初回公開日:2017/08/21


FIT(再生エネルギー特別措置法)に関して、主に、太陽光発電に関するデータなどを久しぶりにまとめておきます。(ブログ主はアンチ太陽光FITなので主観的なところはバイアスが掛かってます。)

目次

1.まずは、2017/4/1からの制度改定時のエネ庁資料です
2.事業用太陽光の買取価格の推移
3.利用者負担として重要なデータは累積賦課金の額
4.今後、どうなるのか?
5.実態として、今なお高額な太陽光買取価格 【追記】
6.費用対効果は?再エネ普及促進の評価は?
7.ドイツのFITについて
8.太陽光過積載問題
9.制度導入時のお話 【追記】

1.まずは、2017/4/1からの制度改定時のエネ庁資料です。
改正FIT法による制度改正について(PDF)

平成29年3⽉ 資源エネルギー庁

この制度が再エネ普及促進と利用者負担のバランスを欠いていた実態と見直し内容を説明しています。
その内容は2011年頃の“再生エネルギー特別措置法”の有効性や必要性の論議、あるいは、施行初期から指摘されていた事ばかりで、いまさら感の高いものです。

官僚の方々にとって、制度導入を決めたのは“政治”(後述)の責任であり、かつ運用の中では、ご自分達にとって最も重要な予算確保の必要がない制度なので、見直しの取組スピードや内容が鈍るのは止むを得ない事かと。
例えば、補助金制度や優遇税制などの場合は、対策のために予算を割く必要があり、それは「どこから持ってくるか」の議論や折衝を欠くことはできない訳ですが、この制度は、消費者が電気料金で負担するだけ(電気料金で100%支えるビジネス、総額も青天井)なので、官僚の腹は全く痛まない訳です。もしかすると、天下り先が増えるというメリットがあるのかも知れません。(自然エネルギー財団?とか太陽光発電協会?とか)
また、一部の関係業者の丸儲け投機商品化している実態、太陽光パネルの設置が環境破壊を招いている実態などがあるようですが、合法行為であれば、それは、いい加減な法律を不用意に作って不真面目に運用した政治・行政の方にも問題があるかと。(道義的責任が欠ける業者は問われるべきですが。)
ちなみに改定後も、FIT導入量や発電種類を直接コントロールする仕組みはありません。

一般論として述べた宇佐美典也氏のコメントですが、FITにも当てはまります。→『日本の官僚機構というのは初めの枠組みさえよければそれをきちんと維持して発展していく能力に富むが、初めの設計がわるいと誤魔化し誤魔化しその枠組みを延命させることになる。』

(少々、過激な主観はこのくらいにして)
再エネ普及促進と利用者負担を説明している2ページ、買取価格の推移の21ページを引用して、データを基に分析していきます。

エネルギーミックスの実現と国⺠負担の抑制

調達価格の⾒直し推移2017年度から、2,000kw以上は入札制に移行し、落札した価格が買取価格。
10kW未満については、2年先までの買い取り価格が決定している。


以下、ブログ主の思うところを指摘します。
2.事業用太陽光の買取価格の推移

上記の買取価格の中で、最大の失策は事業用太陽光の当初のバカ高い買取価格です。これが認定後20年間、適用されます。
これがいかに大きな失策になっているかは、後にデータがあります。

事業用太陽光(10kW以上)の買取価格の推移
FIT買い取り価格推移02

3.利用者負担として重要なデータは賦課金の額

エネ庁資料のグラフはごちゃごやして見にくい上に累積額がないので、賦課金単年度累積をグラフにしておきました。これが電気料金のなかで余分に支払ってきた国⺠負担そのものです。

【単年度】賦課金
FIT賦課金推移2017各年の下の数値は、電気料金の中の標準家庭一か月の賦課金分ですが、グラフ上の単価×300kWhの数値です。ここにもまやかしがあって、この単価は業務用(製造業・サービス業全て)にも掛かるので、購入する商品やサービスに掛かる分を含めた総合的な負担はかなり高いものになります。

2017年単年度の2.1兆円は、消費税の0.8%に相当します。
2017年度予算:(消費税17.1兆+地方消費税4.6兆)/8%=2.7兆円/%、財務省

逆に言えば、消費税2%の増税を景気が悪くなるからといって先送りした効果の半分弱は、FIT賦課金で足を引っ張っているといえるかと。
別の比較ですが、5歳までの保育・幼児教育の無償化に必要な財源は1兆2000億円だそうです。(小泉進次郎はそれを社会保険料に上乗せで、と言ってるようですが)

【累積】賦課金

認定時の買取価格は20年間そのまま適用されるので、電気料金として支払う国⺠負担は累積で見るのが妥当です。
FIT賦課金累計2017
2017年度の累積で、6兆3700億円、国民一人当たり5万円(単純に、現在の人口1億2700万人で割った数値、以下同様)になっています。

4.今後、どうなるのか?

家庭用太陽光でFIT買取が終了する電源が出始める2019年、あるいは事業用でFIT買取が終了する電源が出始める2032年までは、単年度額は二次関数的に増えていき、累積額は膨大になります。
今後の予想に関して、エネ庁資料で示しているのは2030年単年度の買取費用:3.7~4.0億円、だけで、賦課金額や累積額を明らかにしていません。(わざと??)

電力中央研究所の資料、固定価格買取制度(FIT)による買取総額。賦課金総額の見通し(2017年版)PDF(電力中央研究所 朝野賢司 2017年3月)によれば、累積賦課金総額を
2030年:44兆円、国民一人当たり34万円
2050年:69兆円、同54万円、としています。

5.実態として、今なお高額な太陽光買取価格

冒頭のエネ庁資料には、設備容量:kWのグラフを載せており、実態が分かりません。(わざと??)
資源エネ庁の『固定買取価格制度 情報公表用ウェブサイト』に買取電力量:kWh、買取額の実績データがあるので、太陽光に関するデータを中心にグラフにしました。

【累積】FIT太陽光買取電力量、買取額の実績
FIT買取実績2017

  2017年3月末で、制度導入時からの累積で、
  太陽光累積発電量:1033億kWh(FIT全量1525kWhの68%
  太陽光累積買取金額:4兆2301億円(FIT全買取5兆3445億円の79%
  太陽光累積平均買取単価40.9円/kWh

制度開始から5年経っているのに、太陽光の累積買取金額を累積発電量で除した累積平均買取単価が40.9円/kWhと高止まりしているのは、当初の買取価格が高すぎた事が取り返しのつかない失策であることを示しています。
その後、買取価格を下げても、事業者が様々に回避したので効果がでていないという事でしょう。(後述する、「空枠取り」、「事後的過積載」など。)
(なお、グラフの中で、初期からしばらく42円/kWhを超えているのは「移行認定分」の影響?(後述)。)

様々な異論反論があった制度立案が2011年なので、失政失策の原因者である政治家・学者・民間人の個人名の特定は容易ですね。(9項に記載)
参考までに調達価格等算定委員会のメンバーを引用しておきます。(敬称略)
植田和弘*京大大学院経済学研究科教授
辰巳菊子 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会理事
山内弘隆 一橋大大学院商学研究科教授
山地憲治 地球環境産業技術研究機構(RITE)理事
和田武 日本環境学会会長
*驚いたことに、植田和弘氏は2013年8月から1年間、自然エネルギー財団の理事を務めている。

6.費用対効果は?再エネ普及促進の評価は?

FIT以外を含めた再エネ全体の発電電力量が自然エネルギー財団の『自然エネルギーの発受電量の推移(億kWh/年度)』にあります。(現時点で2015年度までのデータが掲載)
そのデータに上記のFIT買取電力量データを載せてみます。(大規模水力を除く再エネ発電量の推移になる)
太陽光、バイオマス、風力、地熱、水力(FITのみ)の発電量推移
太陽光バイオマス風力地熱水力発電量2016仮2016年度はFIT買取電力だけの仮データです。
グラフの上部の%数値は、日本全体の発受電量に対する比率です。
(このデータで意外だったのは、2015年度時点で、太陽光では99%、風力では97%がFIT買取電力で、FIT以前の設備からの電力が想像以上に少ないです。FIT法の施行時に、前の制度からFIT制度へ移行した「移行認定分」の設備が結構多いのでしょうか。)

2015年度時点で、電力全体の5.4%を再エネで発電し、その90%(432億kWh)がFIT買取電力ですが、そのために累計で2兆4300億円(国民一人当たり1万9000円)の賦課金を要している訳です。

この費用対効果をどう見るか?人それぞれの判断ですが、あと数年後のデータを見ればはっきりと結論がでると思います。(ブログ主としてはデータ観察は続けるつもりです。)
現時点で言えることは、ドイツ・スペイン・日本の電力消費者が太陽光バブルを金額面で負担したおかげで、世界の太陽光パネルの価格が一気に低下した訳で、その点は世界中の人々から感謝されるべき、でしょう。 パネルメーカーの育成面では、中国企業を育てただけの結果ですが。

7.ドイツのFITについて
ドイツの「エネルギー転換」が大失敗だったと明らかに
実は環境のためにもなっていなかった
(川口 マーン 惠美 現代ビジネス 2017/7/28)
が参考になります。

【小見出しとごく一部のみ引用】

  • 国民負担は永遠に減らない
  • ドイツの電気代はフランスの2倍
    ドイツでエネルギー転換にかかった費用の累計は、2015年までで、すでに1500億ユーロ(19.3兆円強)に達しているという。2025年までの累計の推定額は5200億ユーロ(約67兆円)。
    エネルギー転換による国民一人当たりの負担は、2016年から25年では、月37.5ユーロ(4800円余)になるという。ここには、賦課金といった目に見える負担だけでなく、企業が電気代の高騰分を商品価格に上乗せした分なども加算されている。
    再エネ業界では“produce-and-forget”と呼ばれる行為が横行しており、太陽が照り、風が強い日には、往々にして電気が余り、電気の市場価格が破壊される(ときにマイナス値になることもある)。電気の価格が下がれば下がるほど、買い取り値との差が広がり、賦課金が上がる。
    ちなみにドイツの電気代の中で、純粋な発電コストと電力会社の利益分の合計は18.3%のみで、すでに24.4%を賦課金分が占めている。賦課金の額は2009年から17年までで4倍になった。電気代はすでにEU平均の50%増、フランスの2倍だ。
  • 遅すぎた制度改革
    そもそも、採算度外視で作った商品(再エネ電気)が固定価格で例外なく買い取られるというのは計画経済の仕組みだ。そのおかげで、再エネ関連企業は、現在、大繁盛している。発電事業者だけではなく、パネル販売者から施工者、融資をする銀行まで、ドイツの再エネはすでに巨大なビジネス畑だ。
    とはいえ、そのような特権的な商品が自由市場で売られているのだから、あちこちに歪みが出る。そして、その歪がなかなか是正されないのは、強力な再エネロビーが形成されているからだと言われている。
    また、ドイツ国民にとってショックなのは、ハウカップ氏が、エネルギー転換が環境改善や温暖化防止に一切役立っていないと断言したことだ。これまでドイツ国民は、環境のためと思って高い電気代を我慢していたところがある。
    ところが同記事によれば、ドイツでもEUでもCO2は減っていないどころか、2016年の排出量は09年より増えたのである。増加の原因は往々にして火力発電に押し付けられているが、ハウカップ氏によれば、それも間違いだ。再エネ電気の供給が安定しない限り、火力発電は止めることができない。
  • 犠牲になるのはいつも国民
    改革が遅すぎたため、すでに20年契約を結んでしまっている膨大な買い取り分が終了しない限り、電気代への鎮静効果はなかなか現れない。
    ドイツを手本として再エネ推進に突入した日本だが、問題は山積みだ。ドイツが抜け出そうとしている迷路で、日本が彷徨い続けるのは無意味ではないか。
    それよりも、一歩先を行くドイツの改革を参考に、日本も適正な再エネ発電量を見極め、一刻も早く制度改革を実施したほうがよい。それが、国民にとっても、国家経済にとっても、エネルギー安全保障にとっても、何よりも大切だと思う。

【余談】
ドイツ在住の、川口 マーン 恵美氏と熊谷徹氏は、ドイツのエネルギー政策に関して対照的な発信をしてきていますが、どうやら、川口 マーン 恵美氏の方が的を得ていたようです。熊谷徹氏はエネルギー関連の発信は止めたのでしょうか?

8.太陽光過積載問題
(IEEI国際環境経済研究所 2017/8/17)

【ごく一部のみ引用】
一般の人には聞きなれない言葉だが、業界関係者にはすでに当たり前になっている。
ネットを見ると、「太陽光発電の増設と過積載 パワコンそのまま年間発電量48%アップ。やらなきゃ損!」というセールスフレーズや、「最適な過積載率やピークカット率などシミュレーション」をうたうホームページなど、枚挙にいとまがない。
従来、太陽光発電設備のパワーコンディショナー(パワコン)の能力はパネルの発電能力に合わせて設置されていた。例えば10kWの太陽光パネルには10kWのパワコンという具合だ。
パワコン能力を据え置いたまま、パネルだけを増強しても設備認定を受けなおす必要は無く、したがって買取価格も設備認定時の価格が維持される。例えば40円/kWhで設備認定を受けた事業者が、その後パネルのみの増設を行った場合、増出力分も40円/kWhで買い取られることになる。パネル価格は年々下落しており、パネル増強による限界コストはピーク時のカットオフを織り込んでも買取価格よりはるかに安いため、太陽光事業者による事後的過積載が常態化することとなった。

【補足】
事後的過積載を禁止する新規制は、2017/8/31(再エネ特措法施行規則の施行日)から適用される。(パネル出力合計を3%以上もしくは3kW以上増加させた場合は、調達価格が変更認定時の価格に変更される。)

9.制度導入時のお話 既エントリーに何度か書いてますが再度

そもそも、基本的な指摘が多い政策、成立の経緯からおかしな法律、です。
2011年に、菅元総理が退陣条件の一つとして法律の成立を上げ、エネルギー全体の政策がない中で、孫正義氏がしゃしゃり出たりして、脱原発の風の中で制度の導入が決まり、2011/8/30に成立、2012/7/1から施行された。
“脱原発のためなら少しぐらい電気料金が上がっても”という錯覚を利用した詐欺に近い、とも言われた。
太陽光に資金が集中する可能性が高く再エネ全体の増加という本来の目的から外れる。そもそも、太陽光の特性である間欠性・変動性のため、原発の代替えには成り得ない。
また、電気料金の持つ基本的な性格である逆進性を増長する、家庭用太陽光を設置できるのは高所得者のみで所得移転が発生、などの指摘も多々あった。
さらに、太陽光の買取価格が世界的に観ても異常に高いなど、大きな問題を抱えて制度がスタートし、「空枠取り」、「小分け」などの問題が多発した。

SBエナジー株式会社(2011/10/6設立、代表取締役社長:孫正義)はソフトバンクグループの完全子会社であり、FITを利用した太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー発電事業を行うIPP。

(公益財団法人)自然エネルギー財団は孫正義氏が設立(2011/09)し現在も会長を務める。

【参考】自然エネルギー財団への疑問-その構造と主張-(その1)(その2) (竹内純子 IEEI 2015/2/9,12)

2015年11月時点の話題では、自然エネルギー財団の役員2名が、河野太郎行政改革相主導の「行政事業レビュー」で意見を述べる参考人(エネルギー・地球温暖化対策分野では3名)になっている。
自然エネルギー財団特任研究員:高橋洋都留文科大学社会学科教授(電力自由化偏向の強い主張を持っている)
自然エネルギー財団事業局長:大林ミカ氏(過去に国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、さらには原子力資料情報室にいた)

関連エントリー

太陽光発電、FIT認定制度はやはり欠陥だらけの悪法
再生可能エネルギーに関する誤解?

【参考】
再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題についてPDF(2017/5/25 省エネルギー・新エネルギー部)
(再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題に関する研究会 第1回 資料3)

【メモ】
日本人が気づかない「再生エネルギー信仰」の不都合な真実(川口 マーン 惠美 現代ビジネス 2017/11/3)
【Togetter】【日本人が気づかない「再生エネルギー信仰」の不都合な真実 川口 マーン 惠美】について(2017.11.4作成)
再生可能エネルギー特別措置法に定める指定入札機関を公募します(経済産業省)
負担は2兆円超へ 太陽光のいま(NHK NEWS WEB 2017/6/29)
[ 2017/09/04(月) ] カテゴリ: FIT認定制度に関する事 | CM(0)
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