ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

(メモ)ワセダクロニクルの“買われた記事”シリーズ

[ 2017/12/27 (水) ]
買われた記事11を追記。2017/12/27
(上記までの追記記録は割愛)
ニセ科学/医学・疑似(似非)科学に関する有用情報へのリンク集から独立・単独化:2017/5/8


『ワセダクロニクル』(渡辺周編集長)というジャーナリズムが、
『医薬品の新聞記事がカネで買われた記事だった。電通グループの顧客である製薬会社の薬の宣伝をするために、共同通信グループが報酬を伴う記事を作成し、それを地方紙が掲載してきた』
との調査報道をシリーズで発信しています。
現時点で、第1回(2017/2/1)第11回(2017/12/27)
自分用のメモとして、小見出し、キーワード、などの部分的引用でアーカイブしています。

2017/2/1 買われた記事01
電通グループからの「成功報酬」

脳梗塞、抗凝固薬電通、電通パブリックリレーションズ(電通PR)、(一社)共同通信社(社団共同)、㈱共同通信社(KK共同)

  • 8紙に掲載
    健康日本21推進フォーラム(理事長・高久史麿東京大名誉教授)
  • 目的は「抗凝固薬広報支援」
    バイエル薬品、イグザレルト
  • 巧妙な誘導
  • 二つの共同は「表裏一体」
  • 「ズルズルっと」
  • 報道用資料は電通グループが作っていた


2017/2/9 買われた記事02
「国の看板」でビジネス

  • 顧客企業の「メリット重要」
  • 「国の看板」で製品の「活用を狙う」
  • 「だまされたな」
  • 「理事長をやめたい」


2017/2/21 買われた記事03
「命にかかわる記事は載りやすい」

  • 「ネタが悪いことも当然ある」
  • 今度は60万円が支払われた
  • 心房細動患者が「従来推計の2倍」
  • 「親と子は分かれていないですよ」
  • 「ひぇーーっ」
  • 「医療人として反省」


2017/3/2 買われた記事04
共同通信からの「おわび」

アダパレンゲル(ニキビ治療薬)、

  • 共同通信の「おわび」までの主な動き
  • 記事を書いたのは「カネの窓口」
  • 共同通信の記者が独自取材」と回答
  • 再確認で一転「おわび」
  • 編集局も「了承」
  • KK共同の記事執筆が常態化か?
  • 共同通信社長は取材断る


2017/3/27 買われた記事05
20年前には始まってい

  • 処方薬は広告制限、でも記事ならば...
  • 少なくとも2005年には
    アステラス製薬 リピトール(高脂血症治療)
  • 「カネの窓口」記事作成、共同通信「知らんふり」
  • 「医療情報センター長」ではなくなった
  • 「いくらいくらって電通の方からくる」
  • 「みんなやってる」
  • 「回答を控えます」


2017/4/20 買われた記事06
電通の「見直し」と消えた組織

  • 電通株主「ステマ広告のような手法、断固放棄を」
  • 電通役員「広告か記事か読者混乱、規定見直す」
  • 共同労組が団交、事実関係や見解を質し「調査結果の公表を」
  • 電通PRが事務局の組織、解散
  • 解散理由は「運営費と理事の高齢化」
  • バイエル社員が内部告発


2017/5/24 買われた記事07
医学論文にも利用されていた

健康日本21推進フォーラム」の患者調査の結果が使われたのは、共同通信の記事だけではなかった。医療学術誌に掲載された医師の医学論文にも使われていたことが明らかになった。
記事だけではなく、医学論文の作成をめぐってもカネが動き、製薬会社の宣伝のために行われた調査が拡散していったのではないか。そんな疑いを持った。

  • 電通グループ利用の患者調査が医学論文で引用
    問題の論文は、宮崎県日南市で開業する江藤琢磨医師(57)を筆者として2013年12月、医療学術誌「PROGRESS IN MEDICINE」に掲載されたものだ。共同通信の記事配信と同じ年である。
    江藤医師の論文のタイトルは「抗凝固療法中の心房細動患者における服用方法の嗜好性とアドヒアランスへの影響―アンケート調査からの考察―」。
  • 「論文で権威付け、販売促進」
    江藤医師の論文では薬の名称として「リバーロキサバン」が出ているだけだ。「イグザレルト」の名称がない。薬には成分名と製品名の二つがある。「リバーロキサバン」は薬の「成分名」だ。これがバイエルが販売する薬の「製品名」になると「イグザレルト」になる。医師や薬剤師ら専門家であればすぐにわかることだ。
  • 「江藤データ」、リーフレット4種類と記事スタイル広告8種類で利用
  • バイエルからの謝礼は10万円
  • 「先生は添削した」
    問題の論文を実質的に執筆したのは江藤医師ではない可能性が出てきた。
    論文は掲載から約2年が経った2016年1月に取り下げられた。
  • 「イグザレルト」論文26本にバイエルマネー
    「PROGRESS IN MEDICINE」を調べてみると、イグザレルトの販売が開始された2012年から2016年までで、江藤論文以外に33本あった。
    その33本のうち26本は、論文の末尾に「論文の作成、および投稿に関する費用はバイエル薬品株式会社が負担した」と記されている。
    また、電通PRが事務局を務める「健康日本21推進フォーラム」の心房細動患者への調査を引用している論文も3本あった。この3本はすべて、自院での「使用経験」について患者調査をまとめたもので、そのうち二つの論文のタイトルに「イグザレルト」という商品名が入っている。
  • 「『健康日本21推進フォーラム』が調査したわけではない」
    「健康日本21推進フォーラム」は、厚生労働省の施策を応援する公的な目的のもと、企業が会員となって作られた組織だ。そうすると、会員企業ではないバイエルが「健康日本21推進フォーラム」の調査にカネを出し、「健康日本21推進フォーラム」の看板を利用してイグザレルトの宣伝をしたということにならないだろうか。
    命にかかわる病気の薬についての調査は影響が大きい。実際、この調査の結果はあちこちで使われている。そんな重要な調査の費用の出所が分からない上、調査主体もあいまいだと、当の「健康日本21推進フォーラム」の事務局長がいう。一体どうなっているのか。
  • 立場の弱い患者にしてみたら
    電通グループは、「健康日本21推進フォーラム」が発表した心房細動の患者調査を共同通信に記事にしてもらい、記事が配信されたら共同通信側にカネを払う。バイエルは、「健康日本21推進フォーラム」の患者調査を引用した論文をつくり、筆者となった医師にカネを払う――。そんな構図だ。


河原局長が2017年5月26日、共同通信労働組合に対して「対価を伴う一般記事」の配信を今後は廃止する方針を示した。

  • 共同通信幹部「報道機関の有り様に疑念」
    河原局長はこれまで、ワセダクロニクルに対して次のように回答している。
    KK共同社団共同の100%子会社ですが、紹介された内容の扱いについては一般のPR会社と同じで、社団共同編集局が取材し、厳しく見極めて『記事化する価値がある』と判断した場合に限って配信に至っています」
    それが一転、報道機関として「疑念を抱かれる」と認めた。さらに今後の方針としてこう語る。
    「成功報酬型のPR事業というのは完全に排除していこうということだ」
  • 「誤解を生じさせかねない」のに、社内調査結果は公表せず?
    労組は、社内調査の結果を公表することを求めている。だが、河原局長は労組に対してこういっている。
    「(ワセダクロニクルは)われわれが答えていることの趣旨を必ずしも正確に反映した形で対応していただいていない」
  • KK共同を「チェック」、独立機関を設置
  • 地方紙は「共同通信に確認したが…」
    以下に、ワセダクロニクルの1月中旬の質問状に対する地方紙の回答内容を紹介する。
    (略)
    地方紙の多くに共通しているのは、「共同通信が対価を受け取ってはいないというのだから」と、共同通信側の説明に寄り掛かろうとする態度だ。読者への説明もしていない。
    電通もすでに社内規定の見直しを2017年3月30日の株主総会で表明している。しかしそれを対外的には公表していない。
    記事をめぐってカネが動いていた。それを私たちが重大だと考えたのは、患者の命にかかわることだからだ。
    しかし電通共同通信も、それによって影響を受ける患者やその家族に事実を知らせないまま、内部だけで問題の処理を進めようとしているように見える。
    ワセダクロニクルでは、共同通信から問題の記事の配信を受け、掲載した地方紙に対して、読者に対する説明責任を問うていこうと考えている。


この回からは糖尿病治療薬に焦点を当てていく。
糖尿病をめぐり、共同通信の100%子会社であるKK共同が配信した記事に、カネが支払われていた。
取り上げられたのは日本で一番売れている糖尿病治療薬、大手製薬会社のMSDが販売する「ジャヌビア」だ。その記事はジャヌビアの販売が始まった2009年2010年に11月14日の「世界糖尿病デー」に合わせて地方紙に載った。
しかも、これまでとは違う構図だ。
これまでのシリーズで報じてきたのは、医薬品の記事を共同通信が配信すると、KK共同にカネが支払われる仕組みだった。
だが、今回はカネを受け取るKK共同自身が記事をつくり、地方紙に配信していた。記事を掲載した地方紙には製薬会社MSDの広告も掲載される。広告は記事の掲載日とは違う「時間差広告」なので、記事と広告が連動しているかどうかわからなくなる。
構図は以下のようなものだ。
(1)KK共同は、MSDの糖尿病治療薬の商品名が記述されている記事を制作し、地方紙に配信。電通からカネをもらった
(2)地方紙は、KK共同が配信したカネがらみの記事を掲載。後日、MSDの広告を載せた

  • 共同通信配信料金・取材費用」などの制作費用で570万円
    きっかけは、私たちが入手した電通グループの内部資料だった。
    製薬会社のMSDをクライアントとし、2009年11月と2010年11月に経理処理されている。いずれも電通PRから親会社である電通への支払い金額だ。さらに電通から共同通信側にカネが渡ったかは記載されていないが、共同通信側が配信した記事にカネが絡んでいるとうかがわせる記載が随所にあった。
    制作費用に関して2009年は450万円、2010年は570万円が計上されている。
    2010年は570万円の支払い内容が「共同通信配信料金・取材費用」などと具体的に書かれている。
    ジャヌビアを販売するMSDの資金を原資として、記事配信料や取材費用といった制作費が支払われ、さらに地方紙に広告費が支払われたということではないかーー。私たちは、そんな疑いを持った。
  • 電通グループの内部資料を裏付け、記事と広告が「あった」
    国会図書館に通い続け、広告を探した。少しずつ、2009年と2010年の記事と広告がそろっていった。
    電通グループの内部資料によると、問題の記事は、2009年は6紙2010年は17紙に載ったことがうかがえる。
    共同通信の加盟社が発行する一般地方紙のうちの37紙を確認することにした。それぞれ11月の1ヶ月分に目を通して、1100日分近い新聞を確かめることになる。
    2009年と2010年に載った広告は掲載紙ですべて同じ。新聞の原本も当たり、広告が本当にモノクロであるかどうかも確認を終えた。
    電通グループの内部資料が裏付けられた。
  • 商品名を「記事」で紹介、「記事」配信は共同通信のシステムを使用
    KK共同が制作した記事は、2009年と2010年に地方紙に配信された。
    その記事は、11月14日の世界糖尿病デーに合わせて掲載された企画特集だった。糖尿病の現状や治療法を探る内容だ。
    2009年の記事は、糖尿病薬の新薬ジャヌビアが日本で承認されたことを報じている。
    2010年の記事は、新薬としてジャヌビアの商品名だけを挙げたうえで「新薬が登場して1年、副作用が少なく治療効果が大きい」などと書かれている。
    記事の大きさは1ページのおよそ半分。MSDジャヌビアが日本で販売開始されたのは2009年12月なので、KK共同がつくった問題の記事は新薬の販売直前という絶妙な時期に載ったことになる。
  • 国の規制に抵触の疑い
    記事の中で、驚いたことがある。MSDの新薬ジャヌビアの名前だけが記事で紹介されていることだ。
    医薬品には成分を表す「一般名」と、製薬会社が売る時の「商品名」がある。ジャヌビアは商品名で、その一般名を「シタグリプチン」という。
    実はこの同じシタグリプチンを、別の製薬会社である小野薬品工業も販売している。商品名はグラクティブだ。ジャヌビアと同じ2009年12月から販売された。問題の記事は、グラクティブジャヌビアも販売直前だったにもかかわらず、記事中に出てくるのはジャヌビアだけなのだ。小野薬品工業グラクティブにはいっさい触れられていない。
    国は、医薬品医療機器法(薬機法)に沿った厚労省の通知で、医師の処方が必要な医薬品の一般の読者や視聴者への広告を規制している。ジャヌビアは医師の処方が必要なので、厚労省通知の規制対象だ。
    だが広告ではなく、一般記事なら記者がスポンサーの利害に左右されない客観的な立場から取材、執筆するので、規制の対象にはならない。2009年と2010年の糖尿病特集は一般記事なのか、広告なのか
  • その日は住宅展示場やピアノ販売の広告でも…
    糖尿病の特集記事をつくったのはKK共同だ。当事者にも話を聞く必要がある。私たちは2016年の暮れ、KK共同の医療情報センター長を訪ねた。
    電通グループの内部資料には、制作費が2009年450万円、2010年570万円。「7段モノクロ広告」の料金としては、2009年が6紙で1392万円、2010年が17紙で2649万円が計上されている。単純計算すれば、広告料金は1紙あたり2009年が約230万円、2010年が約155万円の計算になる。
    ただ、記事の下の7段分の広告は各紙とも住宅展示場やピアノ販売などで、様々。ジャヌビアを販売するMSDとは関係がない。MSDの広告が載るのは後日だ。
    医療情報センター長に尋ねた。
    「日にちをずらして広告を載せているのは、わざとですか」
  • 同じプロジェクト番号で経理処理
    ジャヌビアの商品名が出てくる記事を載せた同じ日にMSDの広告も載せると、宣伝まがいの記事を載せることを条件にMSDから広告を出してもらっているように疑われる。そのため、日にちをずらして広告を掲載したということではないか。
    実際、記事と広告の掲載日は違うものの、電通グループの内部資料では両者は同じプロジェクト番号で経理処理されている。
    医療情報センター長は「別の日に載る場合もある」と答えた。
    根本的な疑問は、制作主体のKK共同にカネが支払われた記事が「広告」ではなく「記事」として掲載されていることだ。掲載時に「広告」と銘打つ必要があるのではないか。そのことを尋ねると、医療センター長はいった。
    「『広告』とつけている場合もある」
    しかし、2009年と2010年の糖尿病特集で「広告」と表示している地方紙はない。
  • 「報酬額は伏せて」、KK共同社長が労組側に申し入れ
    記事の制作主体がカネをもらうことは信じがたい。本当に電通グループの内部資料が示すように記事制作をめぐりカネが動いたのだろうか。私たちが入手した内部資料では、記事配信料などの名目で金額が記載されているが、電通PRの支払い先は電通で、電通からKK共同にカネが渡ったかははっきりしない。
    答えは、2017年2月9日に共同通信と共同通信労働組合で行われた団体交渉で出ていた。私たちは団体交渉の結果を伝える「共同労組ニュース」を入手した。
    私たちは、KK共同の佐藤社長に、2点を文書で質問した。
    (1)電通から受け取った報酬額を教えてください
    (2)共同通信労組に組合ニュースで金額を伏せるよう申し入れた理由を教えてください
    回答は「いただいた質問に対しては回答を控えさせていただきます」だった。


2017/7/19 買われた記事10
広告面指定

(前回第9回のとおり)製薬会社のカネが動き、特集紙面にはその製薬会社の商品名だけが掲載されている。だとしたらそれは広告ではないか。にもかかわらず地方紙は、「広告」ではなく「記事」であると主張してきた。
ところが今回、そうした主張を覆すような内部記録を得た。出所は西日本新聞社だ。

  • 西日本新聞社の内部記録
    (掲載された新聞は、2009年は6紙、2010年は17紙に上る。)今回私たちが取り上げるのはその中の1紙、西日本新聞だ。
    医師の処方が必要な医薬品の広告は、厚生労働省通知で禁止されている。私たちは「厚労省の規制に抵触しているのではないか」という趣旨の質問書を送った。今年1月の回答では「通信社の配信を受けて掲載した特集記事です」と、広告ではないとの見解を示してきた。
    私たちは、問題の2009年と2010年の当該糖尿病特集について、掲載の経緯を示す西日本新聞社内部記録を入手した。
    私たちが内部記録の中で特に注目したのは、その特集の左側に掲載された地元医師の談話だった。
    特集は、KK共同が全国の地方紙に配信し、地方紙がそれぞれの地方で活動している医師の談話を付けて完成させるという構成だ。実際の紙面が下の写真である。西日本新聞の場合、2009年と2010年とも、同じ医師の談話が掲載されている。当時、九州大学先端融合医療レドックスナビ研究拠点の教授だった井口登與志医師だ。
    西日本新聞の井口談話の掲載の経緯を示す記録は2009年と2010年のいずれも次のようになっていた。
     作成者→A氏
     作成者部署名→P&C
     面名→朝広A
    (「面名」とは、原稿を新聞のどのページに載せるのかを示すもの。政治面、経済面など、新聞には様々な種類のページがある。「広告面」もある。原稿の作成者がどの面を指定したのかがわかる。)
  • 広告を扱うグループ会社が作成
    私たちが引っかかったのは、「作成者部署名」が「P&C」になっている点だ。
    P&C、正式社名は㈱ピー・アンド・シーは広告を扱う西日本新聞社のグループ会社だった。つまり、井口談話を取材して原稿を書いたのは、西日本新聞社の記者ではなく、広告を扱うグループ会社の人間だったということになる。
    そのことから、私たちは強い疑いを抱いた。特集は、記事ではなく広告だったのではないかーー。
    地元の医師の談話原稿を書いたA氏の履歴を調べた。もともとA氏は西日本新聞社の記者だった。2009年と2010年当時、編集局を離れ、そのP&Cというグループ会社に出向していた。その間、A氏は記者職ではなかったことになる。
    つまり、井口医師の談話は、広告を扱う西日本新聞のグループ会社の人間が作成していたのである。
  • 「『面名』が広告のページ」
    内部記録にある「面名」には「朝広A」とある。
    西日本新聞社の関係者に聞いた。
    「『朝』は朝刊のことで、『広』は広告のページ、つまり、井口医師の談話記事を、広告として載せますよ、ということです。『A』はカラーをかけることができる紙面」
    「だから当然、原稿の作成者は記者ではなくて、広告を扱うそのグループ会社の人なんです」
    ということは、西日本新聞社は広告であるという認識を持っていたことになる。
  • 「製薬会社から頼まれた」
    私たちは、談話を寄せた井口医師に話をきくことにした。
    井口医師の話でわかったことを整理すると次の3点になる。
    1. MSDの担当者から、「世界糖尿病デー」に合わせ、糖尿病治療の啓蒙についてインタビューを受けてほしいと頼まれた。MSDの新薬ジャヌビアを宣伝する意図はなく、あくまで糖尿病の啓蒙のつもりだった。
    2. 「医療に詳しいライター」が来て、インタビューを受けた。ライターがインタビュー内容をまとめた原稿の下書きを送って来たので、井口医師は「てにをは」を直して送り返した。
    3. 井口医師は掲載された朝刊を見て驚いた。自分の談話記事だけではなく、他の記事も合わせた大きな記事だったからだ。
  • 医師「結果として宣伝、申し訳ない」
    井口医師は、ジャヌビアの宣伝に一役買ったのではないか。その点を尋ねてみた。
    「(商品名が載っているところを除けば)全体的に啓蒙に役立つ内容になっているだろうと。結果としてこういう宣伝の形になったのは申し訳ないとは思います」
    井口医師にしてみれば、自分のインタビュー記事とジャヌビアの商品名が組み合わされた特集が知らない間にセットにされ、宣伝に利用されたということになる。
  • 福岡市は「金銭のやりとりがあれば広告。是正を指導」
    医療用医薬品の一般読者への広告の実際の取り締まりは西日本新聞社の場合は本社がある福岡市が管轄だ。
    福岡市地域医療課医薬務係の担当者はいった。
    「(広告の要件である)特定の商品の誘引の意図があったかは、具体的には金銭のやり取りがあったかで判断する。(金銭のやりとりがあれば)是正を指導することになると思う」
    ただし担当者は、KK共同から配信された糖尿病特集がカネが絡んだ広告だという認識を西日本新聞が持っていたかどうかもポイントだと説明した。
    そこで私たちは福岡市の担当者に、西日本新聞社の内部記録では当該特集が広告面を指定されていたことを伝え、西日本新聞社が広告との認識を持っていたのではないかと指摘した。
    福岡市の担当者はいった。
    「なるほど、分かりました」
    問題の特集は「広告面」の指定だった。西日本新聞社には広告であるという認識があったことにならないだろうか。しかも、井口医師の関連談話を作成したのは、広告を扱う西日本新聞社のグループ会社で、医師にインタビューの依頼をしたのは製薬会社の担当者だった。私たちは、国の規制に抵触する疑いが強いと受け止めている。
  • 西日本新聞社は回答を拒否、「お答えすることはございません」
    ここで一つの疑念がわく。
    それは、「広告面」を指定しながら、「広告」の表示もなく、記事の体裁を取っていることだ。それは、広告であることを伏せて国の規制を逃れるためでないのか――。
    西日本新聞社柴田建哉社長にも質問書を送ることにした。
    2017年10月13日、以下の3点を尋ねた。
    回答期日を、2017年10月17日の正午ということで質問状を出した。西日本新聞社の広報部から回答がきたのは、翌日だった。届いたメールは34字。
    「質問書を拝見しましたが、こちらからお答えすることはございません。以上です」

    =つづく


2017/12/27 買われた記事11
東京都、調査に踏み出す

(前回第10回では)掲載に至る経緯を暴いた。西日本新聞社の内部記録に、糖尿病特集が掲載される紙面は「広告面」と指定されていた。つまり、記事は広告扱いだったのだ。にもかかわらず、紙面に「広告」の表示は見当たらなかった。
しかも、紙面には当時九州大学の教授だった医師の談話が載っていた。医師はワセダクロニクルの取材に対して、MSDの九州大担当者からインタビューの依頼を受けたと証言している。

  • 行政、動く
    規制に抵触しているかどうかのポイントは1の「顧客を誘引する意図が明確であること」だ。そこを判断するために、(東京都健康安全部薬務課の)河野課長と渡辺補佐は「カネの動き」と「MSDから電通への指示」を調べるといっているのだ。都としては、まずは製薬会社のMSDから調査し、電通共同通信側へと広げる方針だという。
  • はっきりしているカネの流れ
  • 医師をオーストラリア旅行に招待、「不当な金銭提供」
    MSDジャヌビアの営業活動で、製薬業界の自主規制団体「医療用医薬品製造販売業公正取引協議会」(公取協)から「厳重警告」を受けていた。
    私たちは、その公取協の警告文書を入手した。日付は2011年5月20日になっている。表題は「MSD株式会社の公正競争規約違反について」。以下が概要だ。
    公取協はこう結論している。
    「参加した一般医師の会議での発表時間は短いものであり、また、帰国後の執筆・講演等の要請も具体的に特定されておらず、会議の議事録も作成されていないところから見ると、本件謝金の支払い及び旅費等の負担は、規約で認められている海外で開催される自社製品関係の調査研究に関する会合に派遣する際の報酬及び費用には該当せず、不当な金銭提供及び旅行招待であるといえる」
    巨大資本を持つ製薬会社の競争にメディアや医師までもがのみ込まれる時、行政は患者を守る「砦」となり得るのか。これからも行政の対応を明らかにしていく。

    =つづく


【参考】
激震!「ワセダクロニクル」スクープの舞台裏(山田俊浩 東洋経済オンライン 2017/2/8)
ついに日本にも新しい形の調査報道メディアが誕生した。
ワセダクロニクルは、早稲田大学ジャーナリズム研究所(所長:花田達朗)のもとに作られた非営利の調査報道メディア。同研究所の招聘研究員でもある渡辺周編集長が手掛けた創刊第1弾は、人の命にかかわる医薬品の記事に金銭が支払われていた、という衝撃的なもの。問題となっているのは電通グループと共同通信社である。さっそく渡辺編集長に会い、今回の調査報道に懸けた思い、そしてワセダクロニクルが目指すものを聞いた。


ワセダクロニカルが報じた、共同通信スキャンダルで問われる日本のマスコミのデータジャーナリズム(坂本英樹 オルタナティブブログ 2017/3/3)
日本のマスコミが、共同通信が配信する記事を拾って見出しをつけて流すのをメインとしているわけで、そこに買われた記事が混じっていたというのは由々しき問題です。

関連エントリー

(メモ)ワセダクロニクルの“買われた記事”シリーズ←本エントリー
(メモ)ワセダクロニクルの“製薬マネーと医師”シリーズ
ワセダクロニクルの新シリーズ「石炭火力は止まらない」は残念な内容
[ 2017/12/27(水) ] カテゴリ: メディアにレッドカードを | CM(0)
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