ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

福島県で甲状腺癌が激増しているわけではないよ、というお話 (PKA先生の発信)

[ 2016/10/13 (木) ]
久しぶりに、PKA(@PKAnzug)先生が甲状腺がんの医学的情報をまとめて発信されています。

福島県で甲状腺癌が激増しているわけではないよ、というお話
by iamdreamersさん Togetter 2016/10/13 
から、PKA先生の発信部分のみを引用させていただきました。


甲状腺癌について

順を追って説明することにしましょう。まずは甲状腺癌に関して私が知っている内容を順に書いていきますね。最初に、「甲状腺癌というのは非常に増殖がゆっくりで症状が出にくい」というのが、ごく稀なタイプを除く一般的な特徴です。

次に、甲状腺癌というのは非常に有病率が高い癌で、また小児癌を除く大半の癌が老人に起こるのに対し、比較的若い人に発症することが多いというのも特徴です。私の甲状腺癌診療経験はあまり長くないので、診た患者数は数百人程度ですが、それでも20〜30歳の人は結構いました。

甲状腺癌は「成長がゆっくりで症状が出にくい」ので、普通に異常に気付いて病院に来る前に何年もの間、「気が付いてないけど病気は持っている」という状態で潜伏しています。患者さんにざっくり話す時には、「甲状腺癌は見つかる時には十年もの」みたいに言います。

福島での甲状腺検査

ここで問題なんですが、福島で甲状腺癌を探す時に使ってる「甲状腺エコー」という検査は、患者さんが気付いてない甲状腺癌も見つけるんですよね。当然、普通の患者さんよりさらに若い人にも見つかるわけです。

なぜ真の増加だと思ってないかには、当然理由があります。まず、多くの甲状腺癌患者が見つかった時期が、ゆっくりした甲状腺癌の成長に合わないほど早かったことです。2011年3月に発生した甲状腺癌でも、早くとも去年か今年くらいにならんと検査でも見えないはずなんです。

しかも、福島で見つかった甲状腺癌は増殖が極端に早い特殊なタイプではなく、どれも普通の増殖がゆっくりな甲状腺癌ばかり。つまり、あの原発事故より前に既にあったとしか考えようがないんですよ。

さらに、患者の年齢の偏りも放射性物質で出来た癌にしてはおかしいんですね。放射線への感受性(発癌しやすさ)は若い方が高くて、放射線で増えるなら乳幼児によく出るはずなんですが、福島では高い年齢の子に多く見つかってるんです。これは放射線と無関係な癌のパターンです。

さらにさらに、甲状腺癌の出た地域と人数の分布も、原発からの距離や事故後の放射性物質の分布と合致しないんです。放射性物質による発癌だったら、多く被曝した人の方がいっぱい発癌するはずなのに、そういう傾向が全く見られません。

もう1つ。私は「核医学」といって放射性物質を使った治療や検査を専門にしてるんですが、福島の原発事故で甲状腺癌を増やすことを危惧されていた「I-131」という放射性物質を使った甲状腺の検査が核医学にはあるんですよね。原発事故で撒かれたのと全く同じ物質を使います。

この検査は一度に数十万〜百数十万ベクレルくらい投与して、ガンマカメラという機械で見ると甲状腺が真っ黒に見えるほど甲状腺に放射性物質が集積するんですが、何十年も行われてきたこの検査で「子供にこの検査をしても甲状腺癌は増えない」という結果が出ています。

この「I-131」という放射性物質は半減期が8日くらいで、モタモタしてるとすぐ消えてしまうので、あの原発事故で出た正確な量は分かっていません。ただ、「普通に暮らしてて100万ベクレルも摂取してしまうほどの量」は確実に出ていません。出てたら警報機鳴りまくりです。

さらに付け足すと、日本人は海産物や海藻をよく摂取する関係でヨードの摂取量がとても多いので、普通に百万ベクレル投与してもちゃんと甲状腺に入らず、うまく検査できないんですよね。ヨード制限をしないとダメ。当然普通の生活をしてた人はヨード制限なんてしてません。

甲状腺癌発生の時期も、年齢分布も、地域分布も、放射性物質による発癌と合致しない
・原発事故で撒かれたのと同じ放射性物質をもっと多く投与しても甲状腺が増えないのは既知である
これがあの「甲状腺癌多発」が放射性物質が原因ではないと考える根拠です。

先に書いた通り、福島での調査で見つかった甲状腺癌は私の想像よりも多かったですし、一般の方が「こんなに見つかるなんて」と考えるのも無理ないです。ただ、それは放射性物質で増えたのではなく、「未成年でも甲状腺癌は元々結構多い」という事実が発覚しただけのことです。

チェルノブイリに派遣された医師団の見解のこと

あと、「チェルノブイリに派遣された医師団の見解」に関して、私はその人たちのことを全く知らないので、その人たちそのものへの評価はできませんが、一般論として大切なことをお伝えしますね。

医師も人間ですんで、個別に様々な社会思想を持っていますし、「特定思想を持った団体」に所属している医師も大勢います。私は「医師や学者はたとえ自分の思想に反していても、自分の専門領域の学問に忠実であるべき」と思っているんですが、残念ながらそうではない人もいます。

世の中には「反原発」という思想もあって、とにかく「原発はダメなものである」と言いたくて仕方がない人もいます。それ自体は全く悪くないんですが、「白い物を『黒い』と言うと都合がいい状況」において実際に白い物を「黒い」と言っちゃう人がいるんですよね。

なので、その「チェルノブイリに派遣された医師」というのが、どういう背景で「派遣された」のかは確認した方がいいかもしれません。前述の通り、福島の甲状腺癌は医学的には明らかに放射線由来ではないので、「放射線由来だ」と言いたい立場の人達の可能性があるんじゃないかと。

あなたは若い方のようですし、「国や大企業は人を騙す。民間の団体はそうじゃない」と思われているかもしれません。しかし残念ながら「特定思想のためにあなたを騙したい民間団体」も山ほどありますし、大企業や国のようにみんなに見られていない分、悪質なところはより悪質です。

もちろん、私が真実を言っているかどうかはあなたが判断することですんで、ここまで読んでも私があなたを騙そうとしていると思うなら、それはそれで仕方がないです。ただ、先に説明した話は少し調べれば出てくる話ですし、理詰めで説明したのであまり騙す余地はないです。

最後に、あなたを騙したい人は騙そうとし続けますし、嘘つきの言葉を延々と聞いていると信じてしまうのは人情です。とりあえず、我々の対話はTogetterでまとめられる可能性があるので、もしまとまったらコメント欄を見て、ご自身がどう見られてるか確認するといいです。

余談ですが、私はこのツイート群を1時間くらいかけて書き上げてて、あなた1人のために「新婚なのに仕事からの帰りが遅れる」という相応の犠牲を払っていますんで、話を信じるかどうかはさておき、誠意をかけて書いた、ということはご理解いただければ幸い。

実際、長崎かどこかの小児科の先生がその地域の子供を調べて、他の地域でも同じくらい見つかるって話になってたはずです。あと、子供じゃないですが、韓国で甲状腺の検診を広くやるようにしたら、甲状腺癌と診断される人が激増して問題になりました。こっちは原発事故より前の話。

甲状腺癌の治療

まず、ぶっちゃけた話を書いてしまうと、「未成年にたまたま見つかった甲状腺癌」に対する治療方法のガイドラインというのは存在しません。というのは、普通はそんなもの絶対見つからないからです。なので、大人の甲状腺癌治療を基本に、個別に医師が判断する形になるはず。

大人の場合は、手術で切除するのが基本になります。小さければ甲状腺の半分だけ、大きい場合は甲状腺全部、転移の可能性があるリンパ節も必要に応じて取りますし、転移してたら切除した上で核医学治療(I-131大量投与)というのをやることもあります。

で、少し前からは「小さい単発の甲状腺癌だったら、手術しないで定期的に様子を見よう」っていうやり方もあって、実際切らなくてもあまり大きくならず普通に天寿を全うする方もいます。癌なのに切らないというのは、「甲状腺癌は増殖がゆっくり」ならではの話ですね。

で、子供の場合も基本はこれに準じる格好ですが、子供の場合は「今後の余命が長い(最終的に大きくなって問題になる可能性が高い)」のと、あと親御さんが心配するでしょうから、恐らく多くの症例が切除する格好だと思います。ただ、早期発見ですから切除も半分で済むはず。

ただ、これは「将来的に大きくなって問題になる甲状腺癌」を早いうちに発見している(治療も小さく済む)側面もあると思いますんで、「子供なのに手術になってかわいそう」とは必ずしも言えないのではないかと私は思っています。もちろん、確証は得ようがないですが。

あと、見つかった甲状腺癌は、もし最終的に手術になるとしても、たとえば成人するまでは様子を見るとか、ある程度の経過観察期間はあると思うんですよね。というか、私なら必ず厳重に注意しつつ経過を見ます。麻酔とか体格とかの関係で、大人の方が治療もしやすいので。

コメント欄から

私は火傷の話によくたとえるんですが、「お湯は火傷して危ない」みたいなふんわりした解釈だと、お風呂が41〜2度くらいで問題ないと既知なのに、「40度はお湯だから危険」って判断になりうるんですよ。量の概念ってリスクを判断する上では本当に重要なんです。

なお、この調査が行われる以前の小児甲状腺癌(100万人に1人とか言われていた頃)の小児甲状腺癌は、ごく若年でも発生して派手に転移を起こしまくった状態で見つかるものでした。逆に言うと小児甲状腺癌でスクリーニング無しで見つかるものは、そういうものしかありえなかった。こういう調査をしていても当然そういう小児甲状腺癌は低頻度とはいえ出てきますから、「転移・再発率が高い低年齢の症例」ってのが出てくるのは別に不自然じゃないですよ。

あと、その清水一雄医師がどういう意図でそういう発言をしたのかは知りませんが、ちょっとググると2011年の記事で「12年前からチェルノブイリに通ってる」と出てきますね。脱原発学習会というのに参加してる情報も出てくる。「そういう特定思想に寄った専門家の存在」に警戒するよう示した記述もまとめになかったですか?あと今回の件とは別に、私はこういうことも書いています。

白いのが吠えてますが、「調査で出てきた甲状腺癌はほとんどが乳頭癌(一番平凡な癌)であった」というのは普通に発表されてますし、普通ののんびりした甲状腺癌だって転移も再発もします(でなきゃ治療の段でリンパ節転移や核医学治療の話はしない)。激甚に増殖する未分化癌とかは別格の存在。つか、私が説明の段で書いたことは「各種で当たり前に報じられてきたこと」だって、大体の方は知ってますよね?

メモ

現役医師が語る、福島と韓国で甲状腺がん患者が急増した真の理由( ドクター徳田安春 まぐまぐニュース 2017/2/1)
多段階発癌説で見た福島県民健康調査と微小癌の経過観察(ふぁっつ・にゅう 大阪大学大学院医学系研究科甲状腺腫瘍研究チーム)
韓国では無駄な検査で甲状腺がんが6倍に?((大脇 幸志郎 MEDLEY 2016/12/15)
甲状腺検査どうあるべきか 武部氏、「無実のがん」見つけている (2016年9月14日 福島民友)(武部晃司 Yahoo!ブログ 2016/9/14)
少量の放射線はそれほど悪いのか 「発がんリスク仮説」見直しの動き( WSJ 2016/ 8/ 15 )
[ 2016/10/13(木) ] カテゴリ: 甲状腺がんなどに関する | CM(0)
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