ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

アクリルアミドについての情報アップデート

[ 2016/10/19 (水) ]
本エントリーはアクリルアミドについて(きっかけは変な書評)の続編の位置づけです。
最近の情報を基に、勉強した内容をまとめました。

アクリルアミドについての基本的なこと

(まず最初に)
食品中でのアクリルアミドの生成機序

食品中のアスパラギンというアミノ酸とブドウ糖(グルコース)や果糖(フラクトース)などの還元糖という糖類が、揚げる、炒めるなど120℃以上で加熱されるとできる(メイラード反応*)。また、アクリルアミドは食材に含まれる水分が少なくなってから、多く生成する。
食品安全委員会は、遺伝子を傷害する力を持つ「遺伝毒性発がん物質」とみなしている。(参考エントリ:誤解を生む“遺伝毒性”という言葉、リスクコミュニケーションの障害
*メイラード反応とは、食品の色や風味の形成に寄与する反応の一つ。アミノ酸などのアミノ基をもつ化合物と、還元糖などのカルボニル基をもつ化合物を一緒に加熱すると反応が進み、褐色の色素や香気成分が生成する。例えば、パンをトーストしたり、クッキーを焼いたりすると、メイラード反応によって生地の表面が黄褐色に変化し、香ばしい風味がつく。
食品中のアクリルアミドの生成機序02
出典:農水省リーフレット 安全で健やかな食生活を送るために ~アクリルアミドを減らすために家庭でできること~(2015年10月発行PDF:1,465KB)

アスパラギンブドウ糖、果糖などの還元糖は食品にごく普通に含まれる成分なので、人類は火を使って調理し始めた時から、アクリルアミドを食べているとみられる。アクリルアミドは多くの食品の加工調理の過程でできるため、アクリルアミドを含む食品をまったく食べないことは不可能

日本人の平均摂取量

日本人は、高温調理された野菜、飲料、菓子類からアクリルアミドを摂っていて、その量は海外と同じ程度か少ない。
摂取量の推定値は、0.240μg/kg体重/日。つまり、体重50kgの人なら、1日に12μgを食べている。
日本人におけるアクリルアミド推定摂取量03
日本人におけるアクリルアミド推定摂取量04
出典:2016年4月の食品安全委員会評価書(PDF:2,086KB

これまで、アクリルアミドといえばポテトチップスとフライドポテトが“戦犯”扱い。新聞や雑誌やインターネット等でも批判の的だった。だが、現在の日本の食生活では、どうも違う。じつは、もやしや玉ねぎ、れんこん等、野菜全般の炒めや揚げ調理が問題。フライドポテトやポテトチップスは思いのほか、摂取量が少ない。

松永和紀氏のコメント 炒め野菜にほどほど注意〜アクリルアミドの発がん性問題(FOOCOM.NET 2016/2/9)
(後の方に関連情報があります。)

リスクの大きさ、比較

下図を見ると、普段食べているもので、総食品中のアクリルアミドよりリスクの高いものはいっぱいあります。例えばコーヒー(カテコール)とかトマト(カフェ酸)など。アクリルアミドと同じくらいのリスクのものとしては総食品中のアフラトキシン(カビ毒由来の自然天然の遺伝毒性発がん物質)。
暴露マージン:MoEって何? は、既エントリーの説明をご覧ください。)

資料A 食品や食品添加物、残留農薬におけるMoE
MOEの図02
出典:花王資料
(以上、既エントリー発がんリスクの比較~暴露マージン:MoEからの転記。 )

2016年4月の食品安全委員会評価書(PDF:2,086KB)、「加熱時に生じるアクリルアミド」評価書に関する情報(Q&A)(PDF:507KB)でも
動物実験で10%がんを増やす摂取量(BMDL10)は、170~300μg/kg体重/日とされ、上表とほぼ同様に、MOEは約1000と評価された。
一般に、遺伝毒性発がん性の場合は概ね10,000 未満、それ以外の場合(例:神経毒性)は概ね100 未満であると、低減対策を実施する必要性が高いと解釈されている。

低減の考え方と取り組み

要するに、「少々心配だから、減らす努力をしましょうか」ということだと思う。

国際的には「ALARAの原則(As Low As Reasonably Achievable;合理的に達成可能な範囲で、できる限り低くする)」という考え方がとられ、食品安全委員会も今回、従ったのだ。

松永和紀氏のコメント 炒め野菜にほどほど注意〜アクリルアミドの発がん性問題(FOOCOM.NET 2016/2/9)

具体的な方法は、可能な範囲で、(上の方に記載の)食品中でのアクリルアミドの生成機序の要素を減らすこと。

食品メーカーの取組み

食品関連事業者を対象とした加工食品及び調理食品中のアクリルアミド低減のための研究会(2015年6月、農水省)の資料に、カルビー社のポテトチップでの取り組みや日本マクドナルド社のフレンチフライポテトでの取り組みなどが紹介されている。

家庭でできること

農水省リーフレット:安全で健やかな食生活を送るために ~アクリルアミドを減らすために家庭でできること~(詳細版)(2015年10月発行PDF:1,356KB)にまとめられている。このリーフレットの掲載場所は、家庭で出来ること(農林水産省)
具体例のタイトルだけをピックアップします。
  • 炒め調理や揚げ調理に使うじゃがいもは常温で保存しましょう
  • いも類や野菜類は切った後、水でさらしましょう
  • 炒め調理や揚げ調理をするときは、食材を焦がしすぎないようにしましょう
  • 炒めるときは、火力を弱めにしましょう
  • 炒めるときは、食材をよくかき混ぜましょう
  • 炒め調理の一部を蒸し煮に置き換えたりして、炒める時間を短くしましょう

関連エントリー

(発がんリスクの比較)暴露マージン:MoE
誤解を生む“遺伝毒性”という言葉、リスクコミュニケーションの障害
アクリルアミドについて(きっかけは変な書評)

【参考リンク】
アクリルアミドのリスクプロファイルシート
このPDFの掲載場所は、個別危害要因への対応(健康に悪影響を及ぼす可能性のある化学物質)(農林水産省)

食品安全委員会セミナー「加熱時に生じるアクリルアミドの食品健康影響評価及び低減対策について」2016/3/3

(本エントリーのきっかけになったtatsuさんからのコメントでの提供情報に感謝です。)
[ 2016/10/19(水) ] カテゴリ: 食品中の化学物質,リスク | CM(0)
コメントの投稿










管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

このブログについて
管理人 icchou から簡単な説明です 更新,追記の通知はTwitter
カテゴリ
最新記事
ブログ内検索