ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

(新聞・テレビ離れを加速?)豊洲の環境基準報道

[ 2016/10/01 (土) ]
測定回数、関連データ、外部情報リンクについて修正・追記。2016/10/1
初回公開日:2016/09/27


豊洲関連の分析データが、環境基準の4割とか、少しオーバーしたとか、と発表or報道されています。
その辺りについて勉強してみました。その結果、マスメディアがあまりにも不勉強と感じた次第。

少し長くなりますが、豊洲のスタートから
スタートは、この用地で、7種の有害物質(カドミウム、シアン、鉛、六価クロム、ヒ素、水銀、ベンゼン)の基準超過が確認された事

土壌汚染対策法による27種の有害物質*の詳細調査の結果、明らかになった。(念のための補足:売買以前に概要は明らかになっていた事。)
土壌汚染対策法では、稲が枯れたり、お米の中にカドミウムが蓄積されたり、地下水が汚染されたり、泥遊びをしたり、ほこり(土埃)を吸ったりして害にならないように、土壌汚染の基準*が決まっている。
* 参考までに、本エントリの一番下に全項目を記載。

東京都は、土壌汚染対策法による対策を実施した (正確には遥かに上回る対策)

土壌汚染対策法の目的は、必要な調査を行い、対策を実施することにより、土壌の環境基準をクリアーすること。
東京都は法やガイドラインより遥かに厳重(オーバースペック)な対策を行ったので、現状は、土壌の環境基準は問題ない。(汚染土壌を除去して清浄な土と入れ替えたのだから)
具体的な内容は後ほど記載。

今回の騒ぎに関して、様々な基準が出てきますが、整理しておきます。
環境基準、その他の基準
今回、対象になってる7種の有害物質のみを抜粋
様々な基準値
重要な補足
  • 関連する基準で、ほぼ同じ値を使っている。(網羅しました)
  • A欄とB欄の数値は同じだが、A欄は土壌そのものの分析値なので本質的に異なる。
  • B欄の土壌汚染対策法の地下水基準は、関係する地域に飲用井戸がある場合に問題となる(らしい)。
  • B欄のうち地下水、公共用水域の環境基準値は年間平均値。ただし、全シアンに係る基準値については最高値。
  • ヒ素や鉛などの重金属は、自然界に普通に存在しており、これらを含む土壌が広く分布しているとされる。

ネット検索すれば、豊富な情報がありますが、
地下水、公共用水域、の環境基準の意味

環境基準は環境基本法に規定されている。
環境基準は安全基準(危険基準)ではない。イメージでいえば環境基準値の10~100倍位が安全とはいえないレベル=正確な言葉としては、耐容一日摂取量:TDI や、最小有害作用濃度:LOAEL:ノアエル
上表でわかるように、今回対象になる有害物質に関しては、地下水、公共用水域、の環境基準は、水道法の水道水質基準と同じという厳しい値である。
(水道法適用の場合、基準から外れた時には、迅速に再検査を実施するとともに、原因の究明および対応策を講じる必要がある。)
汚染のモノサシとして、「環境基準の○○倍の汚染」といった表現で使われることも多い。

参考情報だが、H26年度環境省地下水質測定結果によれば、何らかの項目で環境基準を超過した井戸は6.2%(超過井戸数/全調査井戸数)あり、環境基準を超えた場合、行政は飲用しないよう指導している(ようだ)。

ちなみに、企業等の排水に対しては排水規制(水質汚濁防止法による排水基準)が規定されており、有害物質の場合、環境基準の10倍の値である。こちらは、基準を超過したら罰則がある。

まず、基本を押さえておきます。
土壌汚染対策法による措置の概要

土壌汚染問題とは、土壌汚染が存在すること自体ではなく、土壌に含まれる有害物質が人体の中に入ってしまう経路(摂取経路)が存在していること。そのような経路を遮断するような対策を取れば、有害な物質は人体の中に入ってくることはなく、土壌汚染による健康リスクを減らすことができる。

対応する対策の基本は、
 ①有害性を取り除く(浄化、除去) または
 ②有害物質はそのままにして、人への暴露経路を遮断(覆土、囲い込み)
により、人に対するリスクを一定レベル以下に低減すること。
有害物質の種類や量に応じて、法やガイドラインで原則として行う措置が定められている。かなり複雑だが簡略してイメージ的に書くと
高スペック対策:汚染土壌の除去
中スペック対策01:原位置封じ込め(地下水を遮水壁で、地表を盛土or舗装で)。この場合、措置後のモニタリングが必要
中スペック対策02:土壌入換え(地表から50cmの範囲にある汚染土壌を掘削し、汚染されていない土壌で覆う)
低スペック対策:盛土(50cmかさ上げ)or舗装のみ
(結構複雑なので、誤りがあるかも知れません。)

やっと、本題に近くなりました。
東京都が行った土壌汚染対策

法やガイドラインより遥かに厳重(オーバースペック)な対策を行った。
キーワードとしての“安心・安全”を実現するためであろうが、当然、コストは跳ね上がった。
(1) 周りを遮水壁で囲って地下水の出入りをなくす。
(2) 当初の地面(ガス工場操業地盤面)から2mの深さ土を入れ替える。
(3) それ以上深いところの汚染の激しい所は土を入れ替える。基準外の地下水を綺麗な水と入れ替える。
(4) その上にさらに、2.5mの盛り土を行う。
これを土壌汚染対策として広報しているが、この部分は本質的には高潮対策である、との声もある。
→賛同です!安心ファクターなんだから、てんこ盛り表現して置けばよい、という意識があったんでしょうが、これも地下ピットをめぐる騒ぎの要因になっているかと。
(5) 地下水がA.P.1.8m以上に上がってこないよう、揚水井戸(58本)で地下水レベル管理を行う。(2016/10/17稼働開始予定)

①地下水の管理02
出典:土壌汚染対策工事と地下水管理に関する協議会、第7回(2016/6/28) 資料 地下水管理に関する説明資料 (3.7MB)
地下ピット(空間)が書かれてない、との声が聞こえそうですが、その安全性問題も、じきにはっきりするでしょう。

東京都の動画が分かりやすい。

13分ちょっとのユーチューブ動画公式HPのものはWMV形式なので)

次の論説も、大変参考になる。
豊洲市場の地下空間問題の最大の問題点/マスメディアの悪意報道(2016/9/19)
(地盤内浸透流、物質移動、浸出水(たまり水)の発生メカニズム、などから様々に考察している。)

(完成後に)東京都が行う汚染のモニタリング

(前述のとおり)汚染土壌を除去して清浄な土と入れ替えたのだから、土壌の環境基準は問題ない。(土壌モニタリングは意味がない)
地下水と室内空気をモニタリングすることとしており、すでに始まっている。地下水は2年間地下水モニタリングと称している。
地下水モニタリング(毎回の観測井戸数は201本。分析項目はベンゼン、シアン、ヒ素、鉛、水銀)
第1回(2014年11月)~第7回(2016年5月)までは全て基準値未満。
第8回(2016年8月?)は、速報値で、ベンゼンが2点基準値を若干超過(0.011mg/L、0.014mg/L)、ヒ素が1点基準値を若干超過( 0.019mg/L)
施設内空気のモニタリング(分析項目はベンゼン、シアン化水素、水銀)
2016年4月、5月(2回)の3回は全て基準値未満(地下水管理に関する説明資料 (3.7MB)のP13)。さらに、9月24日の地下ピットの空気中ベンゼンは基準値未満。(豊洲市場の水質調査及び空気測定の結果について

問題は、東京都は汚染対策に自信があるとみえて、判定基準として地下水と大気汚染の環境基準という高いハードルにしたこと。
飲用どころか床掃除にすら使わない地下水が飲めるかどうかを確認する意味があるのか?などという声も多いし、空気についても、ベンゼンを大気中に排出する主要な発生源は、ガソリンを燃料とする自動車である。
(参考情報)下水があふれ出す築地の方が安全? 橋下徹氏「豊洲と築地比較すべき」(ライブドアニュース2016/9/26)

今回あらためて、マスメディアがあまりにも不勉強で、しかも、(起こるかも知れない)風評被害の原因になっていることが分かりました

個別の報道内容は省略しますが、拙ブログに、こんなエントリがあります。→木村太郎というリスク (ヒ素がでたので豊洲市場は白紙撤回という発言) 
マスメディアは、福島第一原発事故の報道で、なにも学ばなかったのでしょうか?
2013年春のPM2.5騒ぎで勉強したことも忘れたんでしょうか?
今回、どこぞの議員が大騒ぎした時にこそ、冷静な解説が必要だったのではないでしょうか?
新聞もテレビも、ゼロリスクを煽りながら、どんどん不要な存在にお成りになるのは一向に構いませんが。

やっと、ここ数日は、専門家会議の平田座長の安全コメントで、急速に沈静化した感がありますね。

小池都知事の対応は???

すでに過去の話になりますが、小池都知事が、地下水のあと1回(11~12月実施、来年1月に結果公表)の調査(全8 9回のうち7回は201点全数が基準値未満、9月29日発表の8回目は3点が若干の超過)を安全性の確認という理由にして移転延期を決断しましたが、以上のことから、それが、“筋が悪い”といわれたのも“なるほど”です。
些末な話ですが、8 9回目の調査で基準値をオーバーしていても、(上の表の重要な補足のとおり)8 9回平均で基準値以内であれば、(本来、適用の必要ない)環境基準を満足していることになります。
都政の悪ガバナンスや手続きの過失、建築業界との癒着、広報政策の失策などに全く無関係の豊洲で働く予定の人々に大迷惑、損害を掛けた責任を追及される可能性があった訳です。
現在、安全性以外の様々な問題が表面化して一番胸を撫で下ろしているのは、決断したご本人ではないでしょうか。
運に恵まれるのも政治家の資質の一つなんでしょうか?それとも、最初から用意していたシナリオどうりなんでしょうか?
ただし、移転延期決定以降、今後起こるかも知れない風評被害についての広報政策の責任は小池都知事にあります。(半分はマスメディアにあるが)

次の論説も、大変参考になります。
権力闘争の具につかわれた豊洲新市場の悲劇(財部誠一 nikkei BPnet 2016/9/28)
(11月7日に引越す準備をしていた仲卸業者たちが被った精神的、経済的なダメージははかりしれない。権力闘争を仕掛けるのはけっこうだが、小池知事のやり方がもう少し賢く、丁寧であれば、豊洲はこれほどのダメージを受けることはなかった。今後どれだけの「安全」を積み上げれば、豊洲は蘇生するのだろうか。)

関連エントリ

(新聞・テレビ離れを加速?)豊洲の環境基準報道←本エントリ
木村太郎というリスク (ヒ素がでたので豊洲市場は白紙撤回という発言)
(メモ)豊洲新市場建設の基本情報

メモ
豊洲市場の地下水管理システムの本格稼働に対するマスメディアの非論理的報道(マスメディア報道のメソドロジー 2016/10/22)
テレビ朝日で森山高至さんが流した「ガセネタ」ハイライト(Yahoo!ニュース 2016/10/21 山本一郎)
豊洲新市場(地下たまり水)と築地市場(濾過海水)、独自調査では双方から環境基準値を超える汚染物質が検出も…?(東京都議会議員 おときた駿 公式サイト 2016/10/15)
「基準値」ってなんだ? (科学コミュニケーターブログ2016/10/11)
豊洲市場「空洞」騒動の真実。なぜデマが世論を席巻するのか?=内閣官房参与 藤井聡(マネーボイス 2016/9/25)
【新聞に喝!】豊洲市場の「危険性」強調報道は適切か?これでは東北の風評被害と変わりない(産経ニュース 2016/9/25 山本一郎)
朝日新聞の「豊洲でシアン化合物検出」(安井至 市民のための環境学ガイド 2016/9/23)
(畑明郎元教授のコメントですが、朝日の記者にこう言って欲しいと説得され、言ったことにした、という説明がもっとも妥当性が高いように思います。新聞記者が、コメントをこうやって作るのが、今では普通になってしまいました。これは、福島第一の事故以来の非常に強い傾向です。)
盛大にガセネタを乱舞させていた森山高至さんが東京都専門委員に就任のお知らせ(Yahoo!ニュース 2016/9/17 山本一郎)
(検索用→株式会社CRA取締役の森山高至、高野一樹)

(参考)
土壌汚染対策法による27種の有害物質
特定有害物質の種類と基準と土壌の汚染状態に関する基準及び地下水基準出典:土壌汚染対策法の概要(公益財団法人日本環境協会)

関連カテゴリー

土壌汚染(豊洲問題)
[ 2016/10/01(土) ] カテゴリ: ★小池劇場 | CM(0)
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