すでに紹介した5月11日 現代ビジネス
現職経産官僚が緊急提言 古賀茂明「東電破綻処理と日本の電力産業の再生のシナリオ」から、東電の破綻処理の部分を引用する。一カ月以上前に書かれたものだが、現在の状況でも、提言として充分有効だ。
古賀茂明さんのレポート全体は14ページに及ぶもので、
東電の破綻処理→(東電による日本支配の構造)→新東電の再生→発送電分離 と進む大きなシナリオである。
実は、
発送電分離だけを引用しようと思ったのだが、全体の流れも重要なので、前半の東電の破綻処理を“超要約”して記載した次第。(かなり乱暴な“要約”である事をお許し願いたい)
また、
(東電による日本支配の構造)の部分は、すでに
単独エントリーとして投稿済みである。
【部分的に引用】
原発補償問題と東電の経営問題の処理に当たっては、将来の電力産業や社会の在り方まで見据えた
抜本的な対応策を策定して行くことが求められる。
これには時間が必要だ。従って、
二段階処理が求められる。しかし、だからと言って、初動の対応策を先延ばしにすることは許されない。
第一段階 (かなり乱暴な“要約”)
東電の責任か政府の責任か、決めつけは危険。東電と政府両方に責任、支払い義務がある。
いずれにしろ補償債務を払えないなら破綻処理しかない。東電は払えないと言っている。
株主と銀行の責任を問えば、5兆円近くの国民負担が減る可能性がある。
(破綻処理の際の負担の順位など、略。本来は重要な部分だが。)
(今の政府案では)東電が責任を果たすためには、東電が存続しなければならないという議論になり、後述するような東電の解体による
電力市場の構造改革の障害になる可能性が高い。この点は非常に重要な問題である。
通常の事業再生と同じように、プロに再生計画づくりを任せて政治的なバイアスを取り除き、その結果、企業価値の範囲での支払い責任だけを負わせて、新生東電(最終的には分割されるが)は日本の電力産業の発展の一翼を担う企業にしていくことが
国民経済上最も望ましいと考えられる。
現在伝えられるように新たな機構を創設して長期にわたり東電に支払い義務を課し、政府や政治家が東電の経営などにかなりの影響力を持ち続けるというのは
最悪の選択になる可能性がある。新機構は数年後には天下り機関になることは必定である。その前でも現役出向・派遣と称して多くの官僚がそこで給料を得ることになるであろう。
破綻処理の手段は2とおり考えられる。
●
会社更生法と
企業再生支援機構を使う場合は、管財人がその後の東電の経営管理も行うことなる。JALで行ったような厳しいリストラ(子会社売却を含めた資産売却、人員整理、年金削減等)を実施することになるだろう。
●
特別な立法措置を採るのであれば、東電経営監視委員会のような独立の組織を設けて、そこが管財人のような役割を果たすことにする必要がある。
必要なのは、
財産保全と
電力供給のための資金確保策であり、この第一段階の措置を実行するためには、それほど難しい条文は必要ない。内閣に少数精鋭の改革魂にあふれる独立性の高いプロ(官僚を含む)を集めたチームを置き、作業に当たらせることが必要だ。法案策定等を含めて一ヵ月で実際の破綻処理に移行できる程度のスピード感が必要だろう。
これらの措置をとれば、資金調達に不安はなく、また、今までのような独占を前提にした放漫経営で資産を徒に流出させるようなことも防止できる。もちろん、
電力供給が止まることもない。
「大停電」を脅し文句として
東電と銀行の利益を守ろうとする策略に政府はまんまと乗せられているが、ここは毅然とした態度で、混乱に終止符を打つべきだ。
実際の再生計画作り これまでの多くの巨大企業の再生では、必ず相当無駄なコストが隠れていて、実は、コストカットだけでもかなりの収益構造の改善が出来るというのが常識だ。
東電の場合は独占企業であり、しかも過去に経営危機に瀕したことはないので、その程度はこれまでの企業の比ではない可能性が高い。コストカットは、今後の電力行政の方向がどうであれ、どんどん進めるべき事柄だ。
また、これまで、経産省と東電の間の癒着構造の中で行われていた
料金査定も今回は過去の積み上げからの変化分をチェックするのではなく、根本から徹底的に見直す作業が必要だ。他の電力会社にもその結果は適用されることにする。それによって
電力料金はかなり下がる可能性がある。もちろん、東電への納入側である経済界などの抵抗も予想されるが、これに手心を加えてはいけない。
これらの作業を早期に実施するためにも、早急に
再生処理の専門家チームに今後の東電の経営を任せるスキームに移行しなければならない。いずれにしても、政権は早急に決断しなければならないということに変わりはない。そのことが十分理解されているのか心もとない。
(
後半;発送電分離の具体的なシナリオに続く)
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