ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

がんの10年生存率グラフいろいろ+甲状腺がん

[ 2016/01/25 (月) ]
『NHKの時事公論』を追記:2016/2/20
初回公開日:2016/01/25


国立がん研究センターからがんの10年生存率データが発表されました。
プレスリリース 全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について 10年生存率初集計
全がん協加盟施設の生存率協同調査

発表資料からの引用と、胃がん・乳がん・子宮頸がん・甲状腺がんについてはデータベースからのダウンロード、さらに、甲状腺がんについての分かりやすい解説を引用しました。

プレスリリースの参考資料PDFにいくつかのグラフがありましたので、引用します

生存率のデータを見ていただく時に、いくつかご理解いただきたいことがあります。
生存率のデータは、たくさんのがん患者さんの平均的な数字です。
いわば確率として推測するものであり、一人ひとりの患者さんの余命を決定づける数字ではありません。
この生存率は、日本のデータとしては最も新しいものですが、それでも10年以上前にがんにかかった方のデータです。
ある程度の年数を経ないと、がん統計は結果が出ないためです。
ですから、現在は医療の進歩により、この生存率の数字よりさらに治療成績は向上していると考えてください。
生存率は、何万人というがん患者さんの生と死の結果わかった数字です。
ご覧になる方の受けとめ方によっては、生きる力になることもあるでしょうが、逆にその意欲を失くしてしまわれることもあるかもしれません。
おひとりおひとりが、そのことを心に刻んだうえでご覧ください。



主ながんの10年生存率

KapWebデータの活用例


KapWeb(生存率解析ソフト)のサイトから一部のグラフをピックアップします。

胃がん

症例数 合計7156件男4937件、女2219件、グラフは大きな差はないので男女合計
胃がん男女

胃がん各期
(4つのグラフを重ねて表示)

5年生存率の改善
この種のグラフは自動作成されないようですが、改善していただくと、ありがたいです。

乳がん

症例数 女4865件
乳がん女

乳がん各期
(4つのグラフを重ねて表示)

子宮頸がん

症例数 女1234件
子宮頸がん女

子宮頸がん各期
(4つのグラフを重ねて表示)

甲状腺がん

症例数 合計559件男147件、女412件、グラフは大きな差はないので男女合計
甲状腺がん男女

甲状腺がん各期
2期のグラフは1期と重なるため表示していない(3つのグラフを重ねて表示)

甲状腺がんのデータに関して、ようこそ!Dr.町田のホームページへの1月23日の『99%の甲状腺がんはおとなしい』で、分かりやすく解説されているので、引用させていただきます。

各がんのステージ別10年生存率

ここでは、放射線との関連でよく語られる甲状腺がんについて、このデータをもとに、見てみたい。
あらためてわかることは、やはり甲状腺がんは予後がよいなあ、ということ。通常なら進行がんの部類に入るステージⅢでも、ほとんどの人が(手術を受けなければ生活レベルを落とさずに)生きている。
だがそれもステージⅢまでで、全身転移を意味するステージⅣになると、急激に10年生存率が落ちることがわかる。
甲状腺がんは、前立腺がんとともに、”おとなしいがん”として知られている。死後の解剖で偶然に見つかることも多く(2~3割といわれる)、それはすなわち、このがんにかかっても、天寿をまっとうできる人が多い、ということを意味する。
ではなぜここまで予後はよいのに、ステージⅣで見つかった場合は、極端に予後が悪くなるのか。

これには、おとなしいという甲状腺がんの特質のほかに、一部の甲状腺がんは非常に予後が悪い、という事情がある。
甲状腺がんは、ほとんどはおとなしいがんではあるのだが、ごく一部に、未分化がんという、きわめて予後が悪いタイプがある。(だいたい全体の1~2%)
未分化がんは進行が早く、10年生存率はほぼゼロ(5年生存率も10%以下)であり、したがって、約5割の生存率には、おとなしいタイプの甲状腺がんの予後も含まれていると思われる。
おそらくは、一部ではあるが、おとなしいタイプの甲状腺がんも、発見時、ステージⅣには進んでいたのだろう。だが、もともとおとなしいから、宿主を倒すにはいたらず、といった状態で、ステージⅣの生存率を上げているわけである。

このように、両極端なタイプのがんがあるのが、甲状腺がんと前立腺がんの特徴なのであり、罹患者の99%はおとなしいタイプで10年後も(手術有無とは無関係に)生存し、約1%がたちの悪い未分化がんであり、ほぼ5年以内で亡くなるわけである。つまり、甲状腺がんの場合、ごくわずかしか、症状も出ず死亡することもないので、罹ってもあまり心配は要らない、ということになる。
ここで問題になるのが、罹患率である。

一般的には、チェルノブイリ原発事故後は小児の甲状腺がんの罹患率が増え、約4000人が罹患した、と言われており、統計学的には有意の上昇である。(スクリーニング効果による上昇に過ぎないという意見もある)
しかし、チェルノブイリ20年の真実p27によれば、フィンランドの0歳から15歳の子どもについての死後のスクリーニングでは、いわゆるoccult cancer(死後解剖時に偶然見つかった甲状腺がん)が2.4%(Harach 他)もあったとのことである。(大人での報告のだいたい1/10)
つまり、小児の甲状腺を精査すれば、通常言われている発生率1/100万の1万倍以上ものoccult cancerが見つかるのである。
チェルノブイリ原発事故においては、小児甲状腺がんの死者数は9人とも15人とも言われている。致死率9~15/4000、すなわち0.2~0.3%である。
上記データと比較すると、甲状腺がん患者全体の10年後死亡率はだいたい1%だから、放射線の影響を受けたチェルノブイリの子どもの方が、一般的な甲状腺がん患者よりも致死率は低いことになる。

さらなる問題点は、こうした小児甲状腺がん患者が手術を受けていることである。
現在日本では、1cm以下の甲状腺がんは、すぐに手術をせずに、経過観察をする病院が多い。悪性度が低く、進行がんとなってから手術をしても予後に関係ないこと、そもそも進行がんとなるケースがほとんどないから、である。
こうした見地からすれば、チェルノブイリ原発事故で発生した甲状腺がん患者が受けた手術の多くは、私見であるが、今から思えばおそらくは不要であった、ということである。
甲状腺がんの経過観察療法には批判もあるが、私はこれが正しいと思っている。

まとめ
私は100%の確信を持って、福島原発事故によって、小児甲状腺がんは増加しないと考えている。したがって、スクリーニングそのものが本来は無駄なのであるが、これをしないと放射線脳を納得させられないから、やむをえない。(自分の子供には受けさせない)
それでもスクリーニングを受けてしまって、あなたの子供が、最終診断で甲状腺がんと診断されてしまったらどうすべきか。
まずは、それは放射線由来ではなく、本来なら見つからないでそのまま大人になっていたはずなのが、たまたまスクリーニングで”見つかってしまった”と認識すべきである。

がんが早期に見つかったのなら、不幸中の幸いと思うべき、とあなたは言うかもしれないが、それは違う。甲状腺がんは、胃がんや大腸がん、乳がんなどのように、早期発見が治療成績に結びつくわけではない。(この三つのがんは、ステージⅠで見つかれば、ほぼ治癒することが上記グラフでわかる) 基本的には、しこりが手で触れるなどの、症状が出現した時点で、治療を考えればよい。(ステージⅢまでほぼ治るし、ほとんど進行しないから)

本来なら見つからなかったモノが見つかってしまった、くらいに割り切ってかまわないのである。子供にはその結果は言わないほうがよい。変なストレスを避けるために。
親もそんな結果は本来なら忘れてしまう方がよいが、おそらくはほぼ100%の親は、その後定期的フォローないしは(必要のない)手術を望むことだろう。それは仕方がない。
ただとにかく、そうした徒労は、放射線とは無関係であることだけは、しっかりと肝に銘じておくべきである。


【追記】

甲状腺がんについては、当ブログも、いろいろと書いてきましたが、NHKが分かりやすく報道していましたので、部分的に引用します。

(前略)
NHK甲状腺がん01
被災時におおむね18歳以下だった全ての県民を対象にした「甲状腺検査」です。1986年のチェルノブイリ原発の事故後、汚染されたミルクなどを通じて体内に入った放射性ヨウ素の影響で、特に、子どもの甲状腺がんが多発しました。これを踏まえ、福島では20歳を超えるまでは2年ごとその後は5年ごとにいわゆるエコー、超音波検査を実施します。検査を受けるかは任意ですが、38万人を見守り続ける大規模な調査です。
(中略)
まず事故から3年以内に対象者全てのベースとなる状態を把握しようと、1巡目のエコー検査が行われました。
ところがこの1巡目の段階で、受診した約30万人の中の116人に、甲状腺がんの悪性又は悪性疑い、という判定が出ました。
検討委員会では、これらのがんは「放射線の影響とは考えにくい」としています。福島の被ばく量がチェルノブイリに比べ少ないことや、被ばくからがん発見まで4年以内と短いことなどが理由です。

一方で、去年10月、岡山大学などの研究グループが、同じ調査のデータを使って、県外と比べ最も多い地域では50倍も甲状腺がんが発生しているとする論文を、専門誌に発表し、メディアにも取り上げられてきました。
これに対し、今月、国内や欧米の研究者による複数の反論と、さらにそれに対する岡山大グループの再反論も、発表されました。別エントリー参照
(中略)
「多発」とする岡山大などのグループは、全国で登録された甲状腺がんの数を使って比較しています。全国のがん登録を元に計算すると、18歳以下の甲状腺がんは10万人に1人ぐらいしか見つからないはずでした。
ところが、県民健康調査では10万人あたり30人を越えるがんが見つかっています。地域によっては10万人に5~60人となり、確かに桁違いに多い数字です。
ただ、これには多くの専門家が異議を唱えています。内容は多岐にわたりますが、ひとつだけ簡単に言えば、「数十倍」とされる甲状腺がんの数は、実は異なる方法で数えたものだということです。
NHK甲状腺がん02
全国の「がん登録数」とは主に「何か症状がある人が、医療機関にかかって診断されたがんの数」です。つまり、自覚症状がなく、医療機関にかからなければ、実はがんがあったとしても、数字には反映されません。そして、甲状腺がんは多くの場合、自覚症状が無いことが知られています。要するに、全国の患者数や有病率は氷山の一角しか捉えていない数字なのです。
一方、福島の調査は、18歳以下の全員にエコーによる集団検診を行って甲状腺がんを探そうとするものです。がんが見つかった人も自覚症状はなく、調査が無ければわからなかったと考えられる人たちです。
つまり、意味が異なる数字を比べて「こちらはがんが多い」とは言えないという指摘です。

例えば韓国では、’90年代末から一般の健診で甲状腺エコーを受けられるようにしたところ、甲状腺がんが次々見つかり、見かけ上、十数倍に急増しています。
こうして見ると、県民健康調査の現在のデータから「放射線によってがんが増加した」とは言えないと思います。
(中略)
もう一つ指摘されている問題があります。それは、見つかったがん患者のうち既に101人もの方が手術を受けた、という事実です。全国的に見ても、やはりとても多い数です。
本来は見つからなかったはずのがんを見つけただけなら手術は不要ではないか?本当に手術すべきがんが多いなら、やはり多発しているのだろうか?甲状腺の専門医も頭を悩ませていますが、一つの仮説が浮上しています。
それは、福島に限らず、現在、手術するのが一般的な甲状腺がんの多くが、実は命に関わらないものではないか?という説です。
背景にあるのは甲状腺がんの生存率の高さです。
先月、国立がん研究センターが、がん患者の10年後の生存率を初めて発表しました。
これは治療も含めての数字ですが、甲状腺がんは最も生存率が高かったのです。
NHK甲状腺がん03
実際に手術を見送って調べたケースもあります。神戸市の医師たちが、一定の条件を満たす甲状腺がんの患者さん千人以上の希望を聞き、手術せず経過観察にしたら10年後、1人も亡くならなかったと報告しています。
つまり、福島で手術数が多いのは、やはり、エコー検査で従来は見つからなかったがんも見つかったからで、必ずしも命に関わるものではない可能性も考えられているのです。但し、これはまだはっきりわかっていません。
(後略)


【メモ】
2月15日の報ステ報道とNHK解説( 杜の里から 2016/2/21)
竹田圭吾さんの死と「がんに棲みつく孤独」 がんの部位別生存率を眺めながら、考えたこと (日経ビジネスオンライン 2016/1/26)
福島県の甲状腺がんは「原発事故の影響とは考えにくい」と専門家が話す理由 坪倉正治医師 (THE PAGE(ザ・ページ)2016/1/20)
[ 2016/01/25(月) ] カテゴリ: 生物・医学の基礎 | CM(0)
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