ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

【後篇】(プラスチックのリサイクル)容器包装リサイクル法による対応の問題

[ 2015/11/25 (水) ]
【前篇】(プラスチックのリサイクル)マテリアルリサイクルか?、サーマルリサイクルか?からのつづきです。
家庭から回収された廃棄プラスチックが、どのように処理・再生されているのか?といったことです。

このエントリーの主題は、容器包装リサイクル法ですが、最初に法体系の全体を挙げておきます。
1.廃棄物・リサイクル関連の法体系

廃棄物関連法規

【この法体系については、ネガティブな批評も多い。例えば、、、】
  • 中央官庁の縄張り争い利害関係者の妥協の末にできた法体系はバラバラ。
  • 官僚は、自分たちの所管する分野に踏み込まれることを嫌う。
  • 個別のリサイクル法にリサイクル業界がぶらさがり、既得権化し、まるでリサイクル産業促進法になっている。リサイクルはごみ減量の“手段”から“目的化”してしまっている。
  • 廃棄物とリサイクルを包含する法律がなく、今後、長期的には廃棄物処理法と資源有効利用促進法の合体が目指されるべきである。

上記のなかで、プラスチックのリサイクルに深く関連するのが、
2.容器包装リサイクル法

容器包装とは

容器包装とは商品を入れる“容器”及び“包装”のことで、例えばジュースの缶やペットボトル、コンビニの弁当容器など。
家庭から出るゴミのうち、容器包装廃棄物は約6割(容積比)を占める。

容器包装
出典:プラスチックのリサイクル 20の?(はてな)

法律による基本的な仕組み

容器包装を市町村が分別回収し、特定事業者といわれる容器包装の製造・利用業者(容器メーカーや飲料メーカー、スーパーなど)でつくる公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会(以下、協会と記載)に引き渡すよう定めている。
協会は、引き渡した市町村毎、ペットボトル・瓶などの品目毎入札を行い、落札したリサイクル業者(再商品化事業者)がリサイクルする。
その費用は特定事業者が払う委託料を充てる。
2000(H12)年4月に完全施行された。
対象は、消費者が排出した家庭系の包装容器。同じペットボトルでも、自動販売機の業者やスーパーが回収した事業系のものや工場から排出された産業廃棄物のペットボトルは法律の対象外。


包装容器リサイクル協会01

容器包装リサイクル協会の収支
包装容器リサイクル協会03

【補足説明】
  • 再商品化委託料(逆有償分) 372億円:プラスチックやガラス瓶のリサイクル処理費用として、協会がリサイクル業者(再商品化事業者)に払った金額。
  • 有償入札分 112億円:ペットボトルと紙製容器包装が売れた金額。協会が得た代金は集めたペットボトルの量と品質によって市町村に分配される(103億円)。
  • 市町村への支出(合理化拠出金) 21億円:市町村が容器包装プラスチックをきれいな状態にしてリサイクル業者に引き渡すことで、当初の予想より費用が浮いて、市町村に戻したお金。

落札単価の推移
容リ協会落札単価の経年推移出典:容リ協会、平成27年度の落札結果速報版を公表(東京23区のごみ問題を考える 2015/2/23)

3.容器包装プラスチック類のリサイクルの実態

法律でルールが規定されているのだから、容器包装プラスチック類のリサイクルは旨くいっているのでは、と想像してしまうが、『ルポ にっぽんのごみ (杉本裕明 著)』を読むと、そうでもないことが分かる。
そこに絡んでくる重要な要素がいくつかある。
最も大きな要素は“コスト”である。市町村による収集と選別・保管の費用は大きい。ただし、市町村によって大きな幅があり、コスト削減の努力が足りないとの指摘もある。
次の要素は、消費者にどこまでの分別と洗浄を求めるか?という問題である。
さらに、清掃職員の雇用問題なども絡んでくる。

4.複雑怪奇なプラスチックのリサイクルの実態

様々な実態があるようなので、理解のし易さの為に、標準パターン(←勝手に設定したものだが、ブログ主の地域でのパターン)をベースにして、それと違うパターンの実態や理由などを記載していきます。

(a)プラスチックごみ:有料の指定袋で回収し、協会に引き渡す
 消費者が食べ残しや汚れが付着したものは洗浄する。
(b)ペットボトル:無料回収し、協会に引き渡す
 消費者がラベルは剥がし、中を洗浄する。

具体例は、『ルポ にっぽんのごみ (杉本裕明 著)』からピックアップさせていただいたものである。

(a)プラスチックごみ:有料の指定袋で回収し、協会に引き渡す

現行の容器包装リサイクル法の枠組みにおいては、収集・運搬、選別・保管に係る市町村のコスト負担が大きい。

東京都杉並区(2011年度)の例
容器包装プラスチックの収集・選別・保管のコストは189円/kg。
可燃ごみ・不燃ごみの処理コストは49円/kgだから、かなり高い。プラスチックは軽くてかさばり、収集運搬や選別・保管に多大なコストがかかる。区内に選別・保管できる施設がなく、足立区までわざわざ運んでいることも、コストを高くしている。

原典のP45

ペットボトル以外の容器包装プラスチックを収集する市町村の参加率は7割程度しかない。

費用負担のため収集しない東京都世田谷区と岡山市
容器包装プラスチックをリサイクルせず、焼却炉で燃やしてしまう市町村も多い。財政が厳しい小規模の市町村が多いが、大都市もある。
例えば、世田谷区は、「大半が住宅地。区内に保管・選別施設を確保できる場所がない。費用もかかりすぎる」(幹部)という理由から可燃物と一緒に収集し焼却している。
世田谷区と岡山市は、そのかわりに、容器包装プラスチックを焼却発電に利用していると言う。

原典のP56

リサイクル業者が、プラスチックの種類ごとに、選別するか、しないか

日本では、協会が入札に参加した約70社を調べたところ、PEとPPに選別し、それぞれ再生原料をつくっているのは7社にすぎなかった。
自動選別装置の普及が進まず、単一素材に分けることが難しい日本では、いくつかの素材が混合されたペレットが安価で流通している。

6万円/トン以上もの処理費をもらって再生原料をつくっても、低品質で、1~2万円/トンでしか売れない

原典のP49

ドイツやフランスでは、選別工場の規模が大きく、高性能の光学式選別装置で素材別に選別し、つくった高品質の再生原料が高値で流通している。

原典のP50

マルチソーター(光学式選別装置)
ベールは解砕機で粗破砕してラインに流す。そして光学式選別装置が、高速で流れるプラスチックの破片に赤外線を照射し、風力でPE(ポリエチレン)を回収する。残ったプラスチックは次のラインに流して選別装置でPP(ポリプロピレン)を、さらに次のラインでPS(ポリスチレン)を回収する。
最後に残った混合プラスチックは、主にRPF(固形燃料)の原料になり、発電に利用される。
選別されたPEの破片は、細かく砕いて洗浄される。そして選別を繰り返して純度を上げ、脱水・乾燥のうえ、ペレタイザーでペレットにする。
素材ごとに分けることで、再生業者に高い値段で販売できる。それを購入した再生業者は、単一素材ペレットで高品質の製品をつくることができる。(純度の高いPEとPPから、何回もくりかえして使えるりターナブルパレットの「MMPパレット」(1.1m角)をつくっている)。

原典のP43

マテリアル(材料)リサイクルとケミカルリサイクル それぞれの定義については【前篇】を参照ください。
2012(H24)年度のリサイクル業者(再商品化事業者)の落札単価は、マテリアルリサイクル業者が69,789円/トンケミカルリサイクル業者は40,481円/トンであった。
落札単価にこんなに差のあるのは、入札のとき、マテリアルリサイクルの業者が優先的に落札でき、残りをケミカルリサイクルの業者で分け合う仕組みになっているからである。
なお、サーマルリサイクル事業者はマテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルでは処理しきれない場合のみ入札可能(=緊急避難的・補完的位置づけ)であり現状では入札資格はない。

再商品化手法別落札量と落札単価の推移
出典:規制改革会議 第3回エネルギー・環境WG 資料2-4-1

【コメント】
再処理のコストは、マテリアルリサイクルが高くケミカルリサイクルは安い、という実態です。社会全体のコストで見ればケミカルリサイクルにした方が好ましい訳ですね。さらには、サーマルリサイクル業者が入札できないルールというのも、【前篇】で勉強した『環境への負荷が抑えられる手段を選択することが大切』と違いますね。なお、官庁資料では、サーマルリサイクルではなくサーマルリカバリーという言葉を使うようです。
比率について、以下のような経緯があるそうですが。


マテリアルリサイクル業者とケミカルリサイクル業者の入札比率
2000年(H12)に容器包装リサイクル法が施行された当初は、マテリアルリサイクルの施設が少なく、総枠の1割しかとれず、残りをケミカルリサイクルが担っていた。
マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルのシェアは、2000年度が20.3%対79.7%だったのが、2006(H18)年度には48.2%対51.8%と、拮抗するまでになった。このままでは、マテリアルリサイクルに市場を独占されると、ケミカルリサイクルの事業者が反発したため、協会は2010年度からマテリアルリサイクルが優先して取れる枠を市町村の申し込み量の50%に設定し、増加に歯止めをかけた。

原典のP47~48

(b)ペットボトル:無料回収し、協会に引き渡す

ペットボトルは大半の市町村が分別回収し、卵のパックやトレイ、繊維製品、シートなどにマテリアルリサイクルされており、リサイクルの優等生と呼ばれている。協会に渡さずに、協会の入札価格より優位な価格で独自に売却している市町村もある。(“独自処理”と呼ばれている。)

2013年度に国内で回収されたペットボトルは61.8万トン。そのうち市町村の回収が29.2万トン事業系の回収が32.6万トンあった。また海外に輸出されたペットボトルは29.8万トンで、このうち3.4万トンは市町村から流れたと推測している。(PETボトルリサイクル推進協議会)

原典のP30

森口祐一東京大学大学院教授は
「環境負荷の面から、海外に出すことについて、いい悪いの議論をしても決着がつかない。どういうリサイクルをよしとするか価値観の問題だ。国内のリサイクル業者を助けるために海外流出を止めようという議論ばかりではなく、事業系ペットボトルのリサイクルをどう進めるかといったことを議論してもいい」
と提案する。

原典のP30 
余談ですが、森口祐一東大教授(@y_morigucci)は、以前、“放射性プルームの動き”のエントリーなどで勉強させていただいています。

なお、PETボトルからPETボトルをつくる(ボトルtoボトル事業)に関しての参考情報が【前篇】にあります。

5.容器包装プラスチックのリサイクル率

【プラスチック製容器包装】
2013年度に市町村による分別回収は72.7万トンで、再商品化量は68.6万トン、再商品化率は95%。
分別収集実施市町村数は1,307市町村で、全市町村に対する実施率は75.0%。
【ペットボトル】
2012年に市町村による分別回収は30.2万トンで、再商品化量は29.2万トン、再商品化率は97%。
分別収集実施市町村数は1,702市町村で、全市町村に対する実施率は97.7%。
出典:平成25年度容器包装リサイクル法に基づく市町村の分別収集及び再商品化の実績について(お知らせ)の図表1(2015/3/9)

6.法律がリサイクルの対象としていない“製品プラスチック”をどうするか?

“製品プラスチック”とは、CDのケース、バケツ、おもちゃ、文房具など、法律の対象外なので、協会に引き渡せない。リサイクル費用も市町村の負担。

港区が、“製品プラスチック”も一括して収集を始めたのは2008年。東京都がプラスチックを埋め立て禁止にし、これまでの不燃ごみ扱いから可燃ごみに変更したことがきっかけだ。区民から、燃やさず、資源化することを求める請願や陳情が区長に出され、区長が決断した。
ところが、収集と選別・保管には、2009年度は総額8億2000万円もかかった。コストは30万円/トンを超え、さすがに区議会でも問題になった。
そこで、瓶や缶の選別をしていた港資源化センターに、新たにプラスチックの選別施設を整備し、2012年度から稼働させた。2013年度は、容器包装プラスチックと製品プラスチックを合わせて2224トン収集し、収集に約2億4000万円、選別・保管に瓶と缶、ペットボトルも含めて約1億4000万円かかった。業者に委託していたときに比べて、約3億円の費用を圧縮できたという。

原典のP53

港区に続き、千代田区も2012年から一括収集を始めた。2007年から容器包装プラスチックの分別収集を始めていたが、「同じプラスチックなのに、製品プラスチックを燃やしているのは区民にわかりにくい」と、民間事業者から製品プラスチックのリサイクル手法も含めた提案を募り、製品プラスチックに含まれる軟質プラスチックはRPF化して発電に利用し、硬質プラスチックはマテリアルリサイクルする、という提案が採用された。

原典のP53

コスト高の課題を、国から特区の指定を受けて克服しようとする市町村も現れた。
秋田県は一括収集したプラスチックを容器包装リサイクル協会に引き取ってもらい、製品プラスチックのリサイクル費用を市町村が払うようにすれば、プラスチックのリサイクルが進むと考えた。港区のように2種類のプラスチックに分ける必要がなく、コストも安くなるというわけだ。そこで2012年、特区の申請をおこない、特例として認めるよう環境省に要請した。ところが、環境省は「事業者が払うリサイクル費用が増加するおそれがある、利害関係者の合意を得ていないことをすべきではない」とし、計画は認められなかった。

原典のP54

名古屋市も2008年に特区を申請しようとしたことがあった。しかし、環境省は受け入れず、市は製品プラスチックを可燃ごみ扱いにせざるを得なかった。

原典のP54

【コメント】
ごみ焼却炉では、燃焼のために化石燃料を使用しています。プラスチックの発熱量は化石燃料と同等なので、製品プラスチックが可燃ごみに入っていれば、その分の化石燃料が節減されるので、わざわざ分別回収して、コストをかけて品質の悪い再生プラスチックを作ったりRPF化する必要もないのでは。
将来、原油の枯渇が問題になる時点に向けて、様々なことをテストする必要は理解できますが。


7.スーパー等が店頭で回収した容器包装プラスチック

店頭回収は容器包装リサイクル法に位置づけられた制度ではない。市町村によって多少区分は違うようだが、店頭回収で回収された容器包装廃棄物は産業廃棄物扱いしているところが多い。
消費者が家庭で発生したものを店頭に持ってきたものであっても事業活動に伴って発生した廃棄物であるとし、缶は金属くず、PETボトルやトレイはプラスチックくず、ガラスびんはガラスくずとして産業廃棄物に区分している。
産業廃棄物とみなされると、店舗からの搬出や物流センターでの積み替えや保管に厳しい規制がかかることになる。
店頭回収は、容器包装以外の資源の回収ルートとしても大きな役割が期待されているが、スーパー業界からは廃棄物処理法の規制が効率化を阻害し拡充の制約になっていると意見がある。店頭回収を促進するためには、収集運搬や選別保管の効率化とコスト削減が課題で、市町村域を超えて収集できる仕組みと、物流センター等での選別、圧縮、保管、積み替え等の作業や施設に関する規制緩和等の措置が求められる。

出典:廃棄物法制の課題 -リサイクルを中心に-(ダイナックス都市環境研究所)

【コメント】
産業廃棄物には、不法投棄などを防止するための厳しいルールが適用されます(排出者責任)。店頭回収の廃棄物に対してそれをそのまま適用するのは、副作用もあるのですね。


コメント

いろいろと勉強してみて、1.廃棄物・リサイクル関連の法体系 に記載した廃棄物法体系が、実態や循環型社会への要請に合わなくなっていることが分かりました。
最後に、【前篇】に記載したことを再掲します。

リサイクルを進めるときには、その手法により新たな資源の投入が抑えられるか、環境への負荷が抑えられるかを慎重に見極める必要があります。
廃プラスチックのリサイクルでも、対象の廃プラスチックの置かれた状況を考え、最も社会的コストが低く、そして環境への負荷も抑えられる手法を選択することが重要です。

出典:プラスチックリサイクルの基礎知識2015(プラスチック循環利用協会)

関連エントリー

【前篇】(プラスチックのリサイクル)マテリアルリサイクルか?、サーマルリサイクルか?
“ごみ”の排出量(経年グラフ)、リサイクル率など
“産業廃棄物”の排出量(経年グラフ)、リサイクル率など
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[ 2015/11/25(水) ] カテゴリ: 廃棄物,リサイクル,レアアース | CM(0)
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