ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

(メモ)失われてゆく、我々の内なる細菌

[ 2015/10/09 (金) ]
自分用のアーカイブとして、リンクと一部引用のみのエントリーです。

失われてゆく、我々の内なる細菌(岩田健太郎 楽園はこちら側 2015/7/1)

本書はすごい本である。微生物学者、感染症屋はぜひ読むべきだと思うし、消化器内科医とかにも絶対に読んでほしい。産婦人科医も一読してほしい。いや、とにかくみんなに読んでほしい。
本書は抗生物質の使いすぎによる人間の共生微生物、マイクロバイオームの喪失に警鐘を鳴らす本である。というと、妙にナチュラル志向というか、科学否定主義というか、医学・医療全否定とか、「抗生物質やワクチンの副作用が怖いから、感染症になった方がマシ」的な本末転倒とか、そういう類の主張ではないか、と危惧されるかもしれない。トンデモ本なんじゃないの?という懸念もあるかもしれない。
そんなことは全くない。著者のマーティン・J・ブレイザーは超一流の医学者であり、微生物と感染症のスペシャリストなのだから。感染症のオーセンティックな教科書、「マンデル」の監修者でもある。Bennett, Dolin, そしてBlaserの3名が最新の第8版の監修者なのだ。
(後略)


『失われてゆく、我々の内なる細菌』 ピロリ菌だって役に立つ?( HONZ 2015/7/22)

“なぜ、こうした病気が同時期に先進国で増加し、西洋化された開発途上国においても流行し始めたのだろうか。単なる偶然の一致なのか。10の現代の疫病があるとして、10の原因があるというのだろうか。”
本書は、米国感染症学会会長も務めた著者が、自身の細菌研究を振り返りながらこの問の答えに迫っていく。その過程で、細菌の多様な役割は善玉・悪玉の二元論で割り切れるほど単純なものではないことが痛感されるはずだ。そして本書を読み進めれば、我々を構成する細菌が急激に失われており、その欠如がもたらすものは到底無視できるものではないことが、明らかになっていく。本書には、進歩し続ける医学に対して、私たちがどのように向き合うべきかという実践的なアドバイスも収められている。


常在細菌の多様性喪失が 現代の疫病を生む 『失われてゆく、我々の内なる細菌』 (東嶋和子 WEDGE Infinity(ウェッジ) 2015/8/28)

(前略)
抗生物質が仮に治療に役立たなくとも、患者に「害」はおよぼさない、という前提にもとづいているからなのだが、それが大きな間違いだとしたら・・・・・・。
本書は、抗生物質の導入以来、半世紀にわたり、「我々の内なる細菌」ともいうべきヒトの常在菌が撹乱され、その多様性が失われたことで、「現代の疫病」が生み出されている、と指摘する。
肥満、若年性(Ⅰ型)糖尿病、喘息、花粉症、食物アレルギー、胃食道逆流症、がん、セリアック病、クローン病や潰瘍性大腸炎、自閉症、湿疹などである。
これらの世界的な急増や蔓延にはさまざまな要因が挙げられているが、アメリカの微生物学者で、ヒト・マイクロバイオーム研究の第一人者である著者、マーティン・J・ブレイザーは、動物実験や大規模疫学調査などを積み上げて、実証的に抗生物質と「内なる細菌」との関係をあぶりだしていく。
「マイクロバイオーム」とは、訳者あとがきによると、ヒト体内の常在細菌とそれが発現する遺伝子群、および常在細菌とヒトの相互作用を含む広い概念を指す。
本書には、「マイクロバイオータ」という語も出てくる。細菌を含む微生物集団を「微生物相」(マイクロバイオータ)と呼ぶのだそうだ。
(後略)


[書評]『失われてゆく、我々の内なる細菌』 ( WEBRONZA 松澤 隆 2015/10/22)

近頃、これほど夢中になった本はない。
(中略)
抗生物質がよく効き、ヒトの「常在細菌」の働きも封じた結果、何が起きているのか。もはや「副作用」の次元の話ではない。
まず、今や悪名高いピロリ菌(カバー写真)と、ヒトとの関係が象徴的に語られる。
(中略)
瞠目するのは、因果関係を解明する決め手になったのが、1900~1919年に生まれた日系ハワイ人男性という報告だ。
大戦で「抜群の功績を上げた」陸軍第422連隊の元兵士たち(健在の何人かを扱ったドキュメンタリー映画が数年前日本でも公開された)。彼らは差別に耐え、戦場で「四肢と命を危険にさらし」た。そして戦後は、数十年にわたる生活歴を「祖国」に提供し、医学(と医薬産業)に貢献した。退役軍人のカルテは、ピロリ菌の発ガン性を証明したのだ。
だが現実は、喝采で終わらない。ピロリ菌の消滅が何をもたらしたか。食道組織の障害(「バレット食道」)である。
この障害は以前の6倍に増え、80%の割合で食道ガンを惹き起こした。つまりピロリ菌は、本拠地である胃に対してときに「悪さ」をするが、ふだんは胃液の高酸性を中和する働き手だったのだ。そのピロリ菌を失うことで、酸性度の高い胃酸が食道という隣家に逆流し、荒れ狂うのである。
著者は嘆く。ヒトとピロリ菌は「綱渡りをする芸人がバランスをとるように」「お互いに適応してきた」、しかし今や、「相手のいないダンス」が始まってしまった、と。
「相手のいないダンス」は一場だけですまない。それは、ヒト内部の「生物多様性」の喪失を意味する、からだ。
(中略)
では、抗生物質の未来はどうか。著者が示すその驚くべき解決策、それは……実際に読んで確かめてください。むしろ最後に紹介したいのは、著者が10代でR・カーソンの『沈黙の春』から「相互関係性」の意味を学んだという告白だ。
そう、ヒト自身が、関係性を狂わされ危機にある、一個の環境なのである。



【キーワードメモ】
広域抗生物質狭域抗生物質
プロバイオティクス:人体によい影響与える微生物、または、それらを含む食品
プレバイオティクス:生きた菌とは異なり、プレバイオティクスは物質であり,好ましい菌の成長を助ける。たとえばヒトの母乳は,小さな糖分子(赤ん坊の消化管に存在する特定の細菌によって使われる糖の分子)など、プレバイオティクスに満ち法れている。母乳を通して、生後早期の腸に群生する初期細菌の成長は助けられる。科学者はこうした,もしくは似たような物質をプレバイオティクスとして使い、腸内細菌を刺激するために役立てている。
シンパイオティクス:プロバイオティクスとプレバイオティクスの混合物である。プロバイオティクスが腸内で長く生きることをプレバイオティクスが助ける。
糞便移植:この治療を行うために医師は新鮮な便を入手する必要がある。便は、すでに多くの人々を助けたことのある「よい」提供者から、あるいは患者の親戚など健康な人から集められる。医師は食塩水で健の懸濁液を作る。生じた不透明な茶色の液体が、管や経鼻的に十二指腸内視鏡を通して胃に、あるいは逆方向の直腸から浣腸や大腸内視鏡によって授与される。
こうした医療行為は、気持ち悪いイメージを想起させるかもしれない。しかし多くの医師が,すでに何年間にもわたってこれを実践している。

【訳者あとがきから】  山本太郎教授/長崎大学 国際健康開発研究科
私たち人間の身体には膨大な数の微生物が、そこを住処として暮らしている。その個数は100兆単位(ヒトの細胞数の総計は30兆個と推計されている) で、重さは総計数kgに及ぶ。遺伝子総数で言えば200から800万個。ヒト遺伝子の100から数百倍くらいの数となる。重さは、人体のどの臓器より重い。第三の適応を担う器官として機能している可能性は高い。

地球という惑星には1030の細菌が生息している。すなわち、10億×10億×10億×1000個、重さにすれば5×1017グラムに相当し、世界人口を70億人と仮定して、平均体重を60kg弱とすれば、現在地球上に暮らす人間の総重量(4×1014g)の約1000倍、アフリカゾウ2400億頭分の重さと等しい。そのなかの一部が私たちの身体に常在し、それが協調しながら「私」をかたちづくる。
そうした事実は、私たちは私たちだけで生きているわけではないという、根源的な原則を改めて教えてくれる。その意味でも本書のもつ意義は深い。

一方で、いくつか注意すべき点を挙げておきたい。
第一に、すべてを腸内細菌が規定し、それらが解決するといった考えが間違っていることは明らかである。それは、魔法の薬とも呼ばれた抗生物質が感染症のすべてを解決することがなかったのと同じように、である。私たちが本書から学ぶことの一つは、まさにそうしたへ何ごとにも一つの強力な解決策があるわけではない、世界はもっと複雑で、アンフィバイオーシス(本書116ページ)なものである、ということなのだから。その意味では、一つひとつ小さな努力を積み重ねていくしかないのではないかと思う。
第二に、本書が帝王切開や新生児期の抗生物質使用を糾弾したり、そうした行為を行った母親に対する偏見を助長するものになったりしてはいけないと思う。帝王切開や新生児期の抗生物質の使用がいかに多くの生命を救ったことか。問題は、本書でも述べられているように、そうした行為のあり方なのである。
その上で言えば、成長促進を目的とした家畜への抗生物質使用の禁止は、小さいが大切な努力になるのではないかと思う。スウェーデンは1986年に成長促進目的での家畜への抗生物質の使用を禁止した。10年以上の遅れはあったが、欧州連合(EU)もそれに続いた。一方、アメリカでは全面禁止には至っていない。日本も然り。小さな一歩を踏み出すことができればと思う。
それから用語の用い方についてひと言。「マイクロバイオーム」「マイクロバイオータ」、そして「細菌叢」についてである。以前、全生物をまとめた概念である生物相は、動物柄と植物相に二分されると考えられていた。細菌は植物相に含まれるという分類概念に基づき、細菌には「叢=Frora」が用いられてきた。しかし現在では、細菌を含む微生物集団は微生物相(マイクロバイオータ)として分類されており、細菌に「叢=Frora」が用いられることはなくなった(第1章の注(10)を参照)。本文中においても細菌叢という用語を用いるべきか迷ったが、日本ではマイクロバイオータという用語がいまだ普及の途上にあるということもあり、本訳書では原著者の許可を得て細菌叢という訳語も用いた。一方、マイクロバイオームはヒト体内の常在細菌とそれが発現する遺伝子群、および常在細菌とヒトの相互作用を含む広い概念のことである。

【参考】「体内細菌は細胞数の10倍」はウソだった(ナショナルジオグラフィック日本版サイト 2016/1/18)によれば、細胞30兆細菌40兆とする新たな推定値。

【メモ】
腸内細菌は本当に効いた?糞便移植の研究で報告されていなかったこと(大脇幸志郎 MEDLEY(メドレー) 2017/5/29)
最高の食事は、あなたの「腸」が知っている 双子研究の権威が教えるダイエットの真実(中編)(ティム・スペクター,大野和基 ダイヤモンド・オンライン 2017/5/15)
腸内細菌が膨満感・げっぷ・腹鳴の原因に?駆除してよくなった例も(大脇幸志郎 MEDLEY 2017/1/29)
ピロリ菌は胃がんの原因の何%か?(NATROMの日記 2017/1/16)
ガリガリに痩せることができるダイエットサプリ!!薬機法違反大丈夫かよ??!! (五本木クリニック 院長ブログ 2016/12/2)
抗生物質が効かなかった人が9割治った!腸内細菌を活用する糞便移植の効果(MEDLEY 2016/10/27)
●時事ドットコム〔AFP=時事〕(2016/02/02) 帝王切開児に有益な細菌与える方法を発見、米研究
●FOOCOM.NET 松永和紀 2015/2/27 腸内フローラ番組を基に、消費者が情報を読み解く“秘訣”を考えてみた
●厚労省/e-ヘルスネット/情報提供/栄養・食生活/栄養素等のはたらき/腸内細菌と健康
腸内細菌は偉大! 正しく知って健康になる (日経トレンディネット 金井隆典 2014/7/31)

年代別に見た腸内細菌の変化
出典:感染症のピットフォール(連載第6回、最終回)佐賀医科大学検査部 田島裕(JACLaP WIRE No.12 1999.10.08)
光岡知足氏インタビュー (リトル・サンクチュアリ 2011/10/17)
[ 2015/10/09(金) ] カテゴリ: 生物・医学の基礎 | CM(0)
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