ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

“川内原発1号機 復水器の細管損傷”についての勉強

[ 2015/08/28 (金) ]
標記に関する諸情報を聞いていて、シンプルな疑問を持ちました。
●このトラブルのリスクは?
●なぜ、出力75%の運転を続けられるのか?
●運転中に、どのようにして点検をして修理するのか?
それらについて、九電の発信情報などをベースに勉強してみます。(今後、新しい報告がでれば修正の可能性もあります。)
なお、ブログ主の一般理系知識での推定も入っています。

このトラブルのリスクは?

トラブルが発生した系統

下の系統図のように2次系(水)【青色】であり、1次系【ピンク色】と蒸気発生器でセパレートされているので、放射性物質の漏えいや原子炉への海水混入はない。
この2次系(水)【青色】と2次系(蒸気)【薄青色】のタービン部分は火力発電の当該部分と同じ(か大きな違いがない)であろう(推定)

川内原発系統図
トラブルが発生した箇所

復水器の細管の内側は海水を流して、外側の、タービンを回し終えた蒸気を冷やして水に戻している。(だから、“復水器”という)。
熱交換という機能上の必要性から細管の厚さは薄い。(0.5 mm?)。
細管の材質は腐食に強い“チタン”である。
検索してみると、建設当時から“チタン”のようだ。なお、玄海1,2号機は2002年?にアルミニウム黄銅からチタンに取り換えている。
外側の圧力は真空に近く、細管に穴が開くと海水が漏れ込む。
真空度は海水温の影響を受け、-702mmHg(海水温29℃)~-736mmHg(海水温10℃)とのデータがある。出典:定格熱出力一定運転ついて(原子力安全・保安院2002/3/19)
トラブルによる海水漏れ込みは想定されており、海水が漏れ込んだ場合はセンサーで検知される。(電導率計)。
漏れ込んだ塩分を除去する装置がついている。(復水脱塩装置)。

トラブルのレベル

今回のトラブルをレベル1としている。

当社が今回の川内原子力発電所の再稼働工程を進めるにあたって、想定される事象と対応について、プラントへの影響の程度によって、レベル0からレベル4にケース分けをしていたもののひとつ。
レベル0:通常操作等の際に、発生が予期しえる警報(運転操作等により発生)
レベル1:警報発信等の事象が発生した機器を監視強化(パラメータの揺らぎ等により発生)
レベル2:再稼働工程を継続しながら、必要な対応を実施(機器の不調等により発生)
レベル3:発電を停止(または負荷降下)し、必要な対応を実施【2次系】
レベル4:原子炉を停止し、必要な対応を実施【1次系】

【コメント】
“レベル2”のような気がするが、、、

【追記】“レベル1”が妥当というしげ吉さんコメントを参照ください。

なぜ、出力75%の運転を続けられるのか?

第一低圧タービンへの2次系(蒸気)の供給を止めれば良いことが、系統図でわかる。
4基あるタービンは共有した軸で発電機を回している図になっているが、実際は低圧タービンはクラッチ機構などで切り離すことができる(推定)ので、今回は第一低圧タービンのみを停止している
【追記】しげ吉さんコメントによると、クラッチ機構は無いとのことですので、第一低圧タービンはB水室のみでの運転、または空回りの状態のようです。

運転中に、どのようにして点検をして、修理対応するのか?

上記のように原発全体は運転しながら、第一低圧タービンのみを停止させ、ある程度【海水側の水室単位で】の点検や修理ができる。
点検の結果、海水が混入した細管5本(A水室全数1万3千本の約 0.04%)を確認している。
予防施栓を含め、計69本の細管(A水室全数1万3千本の約0.5%)に施栓後、復水器の復旧を行い、翌日に出力を75%から95%に上昇させた。

復水器細管の施栓方法(イメージ)【コメント】
施栓というのは、図にあるように結構簡単な仕組みのようだ。火力を含めれば復水器の細管損傷の経験は多くあり、対応のノウハウも豊富なのかも。


損傷の原因

一般的に、復水器の細管損傷の原因は、内側(海水側)からの要因と外側(2次系(水or蒸気)側)からの要因がある。今回は外側からの蒸気とドレンの高速の二層流?によるアタックとのことである。

○復水器内への海水混入が認められた細管の位置は、高温で流量及び流速が大きい第6高圧給水加熱器非常用ドレンの入口近傍である。通常、このドレンは、プラント起動時の水質調整時にのみ復水器へ流入する。
○ドレン入口部に設置している受衝板に衝突したドレンが更に細管又は管支持板に衝突し、復水器への海水混入に至った可能性が考えられる。
細管損傷原因

【コメント】
“高圧給水加熱器非常用ドレンの入口”はA水室にのみにあるのか?B水室からF水室はどうか?知りたいところである。


コメント

原発固有の問題というより、火力発電を含めた、わりと一般的で想定内のトラブルであると理解しました。(加圧水型(PWR)の場合)
極端にいえば、復水器の細管は原子炉本体の安全性には関係しませんね。(加圧水型(PWR)の場合)
すでに、細管の材質を腐食に強い“チタン”にするという腐食対策がとられていますが、今回の原因は細管外側の高温・高速ドレンが原因のようなので、ウォームアップの方法や装置設計にフィードバックが必要になるのでしょう。(素人ながら)


【関連エントリー】
【続01】浜岡5号機の復水器の破損

【メモ】
少し詳しい系統図(関西電力資料)
[ 2015/08/28(金) ] カテゴリ: 原発に直接に関する事 | CM(2)
Re: ブログ主様へ 初めまして。
しげ吉様
有効なコメント、ありがとうございます。大変勉強になりました。
おかげ様で、本文中の間違いを修正することができました。
今後とも、アドバイスなどよろしくお願いします。

ちなみに、先ほど、九電のリアルタイム情報を覗いていみたら、出力がほぼ100%(88.7万kW)になっていました。
9/10の営業運転に向けご尽力されている関係者にエールを送りたいと思います。
[ 2015/08/29 15:48 ] [ 編集 ]
ブログ主様へ 初めまして。
こんにちは、いつも冷静なる分析に勉強させて頂いております。

今回記事の推定の所で、少し気になりましたので失礼ながらコメントさせて頂きます。

タービン軸にクラッチ機構は無く、高圧・低圧タービンともにカップリングボルトで強固に締め付けされています。

ですから、運転中に切り離す事は出来ません。私も推定ですが、A・B系の海水側を停止して、海水室側から施栓をする事で、タービン側(蒸気系)は運転したまま、修理したものと思われます。

細管外側の損傷は、海水側から細管内部の検査(過流探傷検査等)で、細管外側の具合もある程度は分ります。

特に細管に穴が開いていれば、蒸気側は真空状態に近く復水器の菅板にサランラップを張り、サランラップに穴が開く事でも解ります。

仰せの通り火力発電所では多くある事象で、大昔は海水側にオガクズを投入し、細管の穴をオガクズで塞ぐ事もしていたそうです。

ついでに、伝導率高の警報発信事象が発生し、復水器を監視強化とした対応ですから、私はレベル1の解釈と思われます。

その結果、復水器を点検して細管の損傷が見つかったと言うスタンスで、最初から細管損傷が明らかであれば、機器の不調等により発生したレベル2にしたと思います。

まあ、この辺が、原子力広報の難しいところでしょうね。
[ 2015/08/29 12:19 ] [ 編集 ]
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