ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

第4のがん治療法 新しい免疫療法薬

[ 2014/11/18 (火) ]
2014/11/13の読売新聞夕刊に『免疫を利用 がん治療薬』の記事がありました。概要は

  • 癌の新しい免疫療法の薬が承認された。(チェックポイント阻害薬)
  • 日本の「オプジーボ」(7月、小野薬品工業)と、米国の「キートルーダ」(9月、メルク社)
  • どちらもメラノーマ(悪性黒色腫)の患者の3割前後で、がんが縮小し数カ月程度の延命効果が確認されている。
  • 腎臓がんや肺がんでの効果のデータも出始めた。(未承認)
  • 今後、手術・抗がん剤・放射線療法に続く第4の治療法になる可能性がある。
  • これらの薬の作用機序は従来の免疫療法と正反対。

内容は、結構、専門的なようですので、勉強してみました。

免疫細胞のブレーキ解放

PD-1.png
出典:がんサポート2014年6月 今、最もホットな話題―開発が進む3つのタイプの抗体薬

T細胞(キラーT細胞)が、がん細胞にとりついて、その細胞を殺すこと(アポトーシス)を、 (基礎知識02)免疫とは~自然免疫、獲得免疫、細胞性免疫、体液性免疫などで勉強しました。
しかし、T細胞にはPD-1という受容体があり、がん細胞のPD-L1(PD-1リガンド*)とつながると、T細胞の攻撃力が抑制されてしまいます。(PD-1とPD-L1が結びつくことで相手を攻撃しないための信号をT細胞に送り込む。)
PD-1分子が免疫細胞のブレーキボタンなら、PD-L1分子は、ブレーキボタンを押し続けるがん細胞の腕にたとえられる。
* リガンド:特定の受容体に特異的に結合する物質のこと

新薬は、PD-1と結合する抗体で、抗体が結合してしまえば、PD-1PD-L1が結合できないため、体内の免疫系を強化して、抗腫瘍効果を発揮するものです。いわば、免疫細胞のブレーキを解放するという発想

オプジーボ(一般名:ニボルマブ(遺伝子組換え))は、ヒトPD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体。小野薬工業のサイトのオプジーボ作用機序の動画が分かりやすいです。

【関連情報】
「WSJ 2014/11/17」 ブリストルの免疫療法薬、皮膚がん患者に効果

効く仕組み 従来と正反対

従来の免疫療法の薬はアクセルを踏むという作戦で、ワクチンで免疫を活性化させたり、リンパ球などを体外で活性化して体に戻したりする治療が、主として行われてきました。ところが、免疫応答を抑制する自己調節機能が働いてしまい、なかなか期待したほどの効果が得られないという問題がありました。安定した治療効果の報告はほとんどなく、国内の承認例もない。
がん専門家の多くは、免疫療法の実現性に懐疑的だった。

おまけ的な情報
自然免疫力」は「自然」とは関係ない、という話
  (「トンデモ」健康本のテクニックについて)
「楽園はこちら側2014/10/25」新谷弘美と内海聡。トンデモ健康本をも少し考える。から、一部のみを引用。

新谷弘実著「新谷式 病気にならない食べ方の習慣」(アスコム)という本など、自然免疫力を高める食事をすすめる、自然免疫力を賞賛する、といった「トンデモ」健康本は多いです。
「自然」というキラキラワードが、その手の人たちに魅力的に響くだからでしょう。人工的、現代科学的な汚染被害を受けていない純粋な自然免疫力ってイメージです。
【基礎知識02】で勉強したように)、自然免疫の「自然」とは英語のnatureのことではありません。「自然環境」という使い方をする「自然」とは別物なのです。自然免疫は、病原体の曝露がなくても発動する免疫能力なのです。獲得免疫よりも後でこの免疫力の存在は知られるようになり、免疫学の領域では注目を集めている研究対象です。
病原体ひとつひとつに効く獲得免疫は麻薬Gメンやマル暴のような特殊部隊に例えられます。一方、いろいろな病原体に広く対応できる自然免疫は交番のおまわりさんに例えても良いかもしれません。ただし、これは「広く薄く」の免疫力なので、決して強い免疫力ではありません。免疫力そのものでいうと、獲得免疫の方がずっとその力は強いのです。
自然免疫力をになう主力細胞のひとつ、NK細胞についても、漢方薬とか生活習慣でNK細胞の活性は上がるのですが、それは極端に強い免疫力ではありません。例えば、NK細胞活性をあげる漢方薬で、肺癌患者の腫瘍マーカー(血液検査)を改善させたり、食欲が増したりといったマイルドな効果が期待できますが、肺癌そのものが治るわけではありません。「自然免疫力を高めて病気がゼロ」というのは高望みというものです。
しかし、「トンデモ」健康本はこの自然免疫に特別な意味を賦与します。例えば、自然免疫を「免疫細胞よりもっと古い時代から引き継がれてきた」とか、「単細胞生物の時代から備わってきた原始的な免疫機能」だとか、「原始」「古い時代」というキーワードを連発して、いかにも身体に良さそうな印象を醸し出します。「本来の免疫力」という表現も用いています。
自然免疫の方が獲得免疫よりも古かったという証明はなされていませんが、その可能性はあるかもしれません。しかし、進化の過程では古いものほど悪いもの、というのが一般的です。そうでなければ「進化」ではなく「退化」ですからね。「自然」「原始」「太古の昔から」といったキラキラワードは人を魅了しますが、別に古いからといって自然免疫の優位性があるわけではないのです。
トンデモ本は、「ワクチンを打っても感染症にかかることがある」「抗生物質でも治せない病気がある」と説きます。まったくそのとおりです。しかし、この勢いで「だから自然免疫を高めれば良いのだ」という論理の飛躍に走ります。自然免疫があっても感染症にかかり、自然免疫でも治せない病気があるという事実は捨象してしまうのです。
ひとつの原則をAには適用してBでは捨ててしまうのは、科学的な態度ではありません。トンデモ本の筆者がこれを知らずにやっているとしたら医学者・科学者としての知性にかなり問題があると思います。知っていてやっているとしたら倫理的に非常に悪質だと思います。よって、医学者(科学者)としての資質・能力には大きな問題を感じます。一方で、詐欺師としては一流なのかもしれません。たくみに虚実を織り交ぜて人をだますのが詐欺師の常套手段ですから。



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【メモ】
がん新薬の「実力」 効果を最大限高める方法とは(田中秀一 YOMIURI ONLINE 2017/4/1)
高額医療問題についての議論に必要なものとは何か―オプジーボを利用する肺がん患者の声から(齋藤公子 SYNODOS 2017/2/20)
5陣営がしのぎを削る免疫チェックポイント阻害薬、最新の国内開発状況まとめ(AnswersNews 2016/12/19)
高額がん治療薬「オプジーボ」、普通の人にもわかりやすいように問題点を解説します(五本木クリニック院長ブログ 2016/11/18)
[ 2014/11/18(火) ] カテゴリ: 生物・医学の基礎 | CM(0)
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