ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

認証パーム油について(熱帯林減少、生物多様性と企業、CSPO )

[ 2014/11/10 (月) ]
世界的なパーム油の生産量の増加とともにパーム油の原料となるアブラヤシ(パームヤシ)の生産面積が増加しており、熱帯林減少の大きな要因と言われています。
少し調べてみたら、“ネスレ本社に対するグリーンピースのネガティブキャンペーン”などの興味深い情報が色々とありましたので、まとめます。

少々、長いエントリーなので、目次です。
ページ内リンクが付いています。

1.パーム油
2.アブラヤシ(パームヤシ)の生産面積
3.ネスレ本社に対するグリーンピースのネガティブキャンペーン(2010年)
4.RSPO、CSPO
5.つぶやき
6.おまけ 【レインフォレスト・アライアンス認証】
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1.パーム油

植物油はさまざまな原料からできていますが、世界で最も多く消費されているのがアブラヤシの実を原料とするパーム油です。(パーム油+パーム核油が全体の36%)

パーム油
資料:WWFジャパン「植物油ってなーに」「使ってもいいの?暮らしの中のパーム油」より環境省作成  出典:平成26年版 環境白書

パーム油は日本国内でも菜種油に次いで多く消費されており、さまざまな製品に使われていますが、商品の原材料表示には植物油としてしか表示されていないため、一般にはあまり知られていません
日本の植物油使用量
データ出典:植物油の生産から消費まで(一般社団法人 日本植物油協会)

2011年の日本のパーム油使用量(パーム核油を含む)は68万トンで、世界のパーム油使用量5,438万トンの1.2%になります。
主要国の油種別消費量2011年
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2.アブラヤシ(パームヤシ)の生産面積

パーム油の原料のアブラヤシはアフリカ原産の熱帯性の永年性樹木(常緑樹)で、熱帯の湿潤な地域で育ち、一度植栽すると概ね40年間は高い生産力を保持するとされています。また、年間を通じて絶えず果実の収穫が可能です。このため、1年1作の油糧種子とは異なり、生産面積当たりの油の生産性が極めて高いという特徴があります。
生産面積は、熱帯林を転換する形で1970年の326万haから2008年には1,462万haまで4.5倍に増加しています。
世界の生産量の85%がインドネシアとマレーシアの2か国で生産されています。インドネシア、マレーシアでは油を搾る工場を中心にアブラヤシの広大なプランテーションがつくられており、そのために広大な熱帯林が伐採され、希少な野生生物が絶滅の危機に瀕しています。

パームヤシ
出典:平成23年版 環境白書

こうした問題が社会に広く認識されるようになると、欧州を中心にパーム油を買わないようにする運動が展開されるなど、企業も対応を迫られる状況となりました。
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3.ネスレ本社に対するグリーンピースのネガティブキャンペーン(2010年)

ネスレの人気商品のキットカットなどの主原料として使われるパーム油の仕入れ先(シナール・マス(Sinar Mas)社)が、再三にわたりインドネシアの熱帯雨林を破壊してアブラヤシ農園を開発し、批判を受けている業者だったのだ。このことが判明し、2010年3月、ネスレは批判の矢面に立たされた。

グリーンビース
は、熱帯雨林の保全と絶減危倶種のオランウータンやその他の希少動物の保護のために、ソーシャルメディアを使った世界的な抗議行動を開始した。
彼らの作った動画――オフィスで会社員がキットカットのパッケージから中身を取り出して食べてみると、それはオラウー夕ン(正確にはオランウータン)の指だった――は広く拡散した。このぞっとするような映像は、消費者の問にネスレに対する激しい怒りを巻き起こした。そしてTwitter、ブログ、Facebook、YouTubeなどの何千もの投稿で、ネスレのパーム油の仕入れ問題が取り上げられたのである。

ネスレはオンラインでの抗議行動を把握したが、適切なレスポンス方法をすぐに見出せなかった。批判を鎮めるために同社が最初に取った行動は、詰めの甘い保身的なものだった。その時点では、まだエンゲージメントを構築することと会話の重要性を理解していなかったのである。同社は著作権を侵害しているとして、グリーンピースの動画をYouTubeから削除させた。
しかし、この抑圧的な従来型のコミュニケーション戦術が、さらに生活者を怒らせてしまった。生活者はますますこの動画に興味を持ち、反ネスレのセンチメントが高まったのである。ネスレのFacebookのページは、同社がパーム油問題に関するネガティブなコメントをすべて「削除」していることに対する激しい批判で埋め尽くされた。オンライン上でのネスレの評判はがた落ちで、生活者はその状態を「大惨事」、「悪夢」、「メルトダウン」と表現し、「キットカタストロフィー」という造語も生まれた。

ネスレは、もっとオープンな態度で真っ向からこの件に取り組む方法を検討した。
同社はFacebook上で謝罪するとともに、この問題についてのオープンな議論を開始し、同社の主張を率直に語った。同社は問題のバーム油会社との取引はすでに終了していること、同社からの仕入れは全体の1.25%にすぎなかったことを説明した。
グリーンビースのビデオが投稿されてから問もなく、ネスレは「森林伐採ゼロ」の原則を発表し、同社の取り組みのモニ夕リング役としてフォレスト・トラスト(The Forest Trust)と提携した。
グリーンピースは、ネスレが掲げた原則と持続可能なパーム油生産への努力を高く評価し、重要な勝利と位置づけた。

ネスレの事例では、ほかにも幾つか議論すべき重要なポイントがある。
第一に、世界中の生活者がソーシャルメディアを介してこの問題に参加し、自ら行動したことを、グリーンピースが大きく評価しているという点だ。グリーンビースの言葉を借りれば、「生活者は素晴らしい!」のである。彼らは生活者に指針を与えることが使命だと考えていて、生活者を裏で操ったり、いちいち行動のお膳立てしたりはしない。生活者が自ら慎重な判断を下し、ソーシャルツールを使って互いに協力し、正しい行動を取ると信じているのである。
第二にネスレ批判のキャソペーンがわずか10週間で終わったという点だ。これは1四半期にも満たず、経営陣が市場の大きな変化を経験するほどの期間ではなかった。それ以前の、乳幼児用粉ミルクに反対するグリーンピースのキャソペーンに10年が費やされたのとは対照的である。
最後に、グリーンビースの取った戦術がネスレを圧倒し、当初は手の打ちようがなかったという点である。グリーンビースは生活者にネスレのFacebookの友達になるよう促し、キットカットをもじった「キラー」の画像をアバターに使用して、バーム油問題を批判するコメントを投稿するよう呼びかけた。そして、2万人以上がそれを実行したのである。
ソーシャルネットワークを利用する人が増えるにつれ、ソーシャルメディアを用いた世界規模の強力なキャンペーンは今後ますます広がっていくと思われる。

出典:リッスン・ファースト! ソーシャルリスニングの教科書

グリンピースのサイトでは、以下のようにその成果が発表されています。

2ヵ月で、
34 カ国から、
30万通以上のメッセージ。
150万回視聴されたビデオ。
↓↓ その結果 ↓↓
5月17日、 世界最大の食品・飲料会社ネスレ本社は、熱帯雨林を破壊してつくられた製品の使用中止を発表しました!
しかも、消費者と向き合う企業としてはもっとも包括的なパーム油などの調達指針を掲げ、熱帯雨林とオランウータンたちの保護をすすめる画期的な方針を打ち出しました。
出典:「ネスレ本社は、熱帯雨林を破壊してつくられた製品の使用中止を発表しました!」(グリンピース・ジャパン)

 今回のキャンペーンのためにグリンピースが作った映像は非常に効果的なものでした。文字で表現しただけであれば、これほどの大きな反響はなかったかもしれません。わかりやすく、そして誰しもこれはマズイ!と思うような映像にすることで、多くの消費者から賛同を得、その声がネスレに届いたのだと思います。映像が150万回視聴されたというのもさることながら、映像を見た5人に1人がネスレにメッセージを送ったという驚異的な割合が、映像のインパクトの大きさを物語っています。

(中略)

 さらにはパーム油だけではなく、包装に使用する紙についても、同じシナール・マス(Sinar Mas)グループのAPP社の製品は購入しないことを宣言しています。APP社もやはり、熱帯林を破壊してパルプを生産していると非難されているからです。
 以上のことについては、ネスレ本社からは以下のような詳しい声明が発表されています。ただ残念なのは、日本のネスレのサイトには、一切そうした説明がないことです。日本ではあまり問題にならなかったということなのかもしれませんが…
■”Statement on deforestation and palm oil“(Nestle)

 今回のネスレの一連の対応は非常に素早いもので、ネスレを動かしたグリンピースのキャンペーンは大成功だったと言えます。しかし、さらに注目したいのは、グリンピースのキャンペーンが非常に用意周到であったということです。
 というのは、ネスレはパーム油の問題について、これまでまったく何もしてこなかったわけではありません。既にある程度CSPO*1の利用も始めていました。また、パーム油はネスレにとって主要な原材料ではなく、さらには、シナール・マス社からの購入量も全体の中で大きいものではありませんでした。つまり、ネスレが本気で変えようと思えればすぐにでも変えられる部分を、グリンピースは突いたのです。
 そして4月15日のネスレの株主総会をも意識していたのではないかと思えます。ネスレの経営層が、株主総会できちんと回答しなければいけないことを見越して、グズグズとしている時間を与えないようにキャンペーンのタイミングを設定したいのではないでしょうか。
 つまり、どういう時に、どういう行動を促せば企業が反応せざるを得ないか、そのことをきちんと計算した上で戦略的にキャンペーンをしかけたであろうということです。もちろん、どのようにアピールすれば消費者が反応するかも、きちんと計算しているはずです。
 さらにはこのように成功しやすいキャンペーンを行い、見事にそれを成功させることで、グリンピースは自分たちの存在感や影響力をアピールすることにも成功したと言えます。世界中の注目を集めて、手堅い勝負を仕掛けたのです。

 今回のキャンペーンではグリンピースの手腕の鮮やかさが目立ちましたが、実はこれはWWF*2の成功でもあるのです。ネスレが2015年までに100%の切り替えることを約束したCSPO*1は、WWFがユニリーバなどと始めたRSPO(持続可能なパームオイルの円卓会議)*3が作った規格です。
 既にユニリーバなど世界の19社が2015年までにCSPO*1に完全に切り替えることを宣言していますが、今回ネスレが20番目の企業となったわけです。RSPO*3というフレームワークを作ることにより、WWFは世界の先進的企業を次々に変えることに成功しているのです。

 このように、海外のNGOは非常に戦略的です。そして、企業にも、社会にも、大きな影響力を持っています。この点は日本とは随分と事情が異なります。日本の企業はそのことを見落としてはいけないでしょう。
 これまでのところ、日本の消費者は欧州の消費者のように熱帯林の破壊や生物多様性の問題には反応して来ませんでした。消費者を動かすような、戦略的なNGOもあまり存在していないのかもしれません。

(後略)

出典:株式会社レスポンスアビリティ 2010/5/31 NGOを舐めてはいけません

*2 WWF:(公益財団法人)世界自然保護基金
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4.RSPO、CSPO

*3 RSPO持続可能なパーム油のための円卓会議。Roundtable on Sustainable Palm Oil
環境や社会に十分配慮したアブラヤシ農園を積極的に支持し、持続可能なパーム油産業への転換を目的として、WWFを含む賛同団体により、2004年に設立された。

*1 CSPO:RSPO認証油。Certified Sustainable Palm Oil
原生林などの伐採禁止、地域社会との協調などを含む持続可能なパーム油生産のための「原則と基準」に基づく認証制度
7つのセクター(アブラヤシ生産者、製油会社・貿易商社、製造業者、小売業者、銀行・投資会社、自然保護NGO、社会・開発NGO)の参加により取組を進めている。
2008年から市場に流通し始め、2014年4月にはパーム油全体の16%を占めるが、日本国内ではCSPOを店頭で目にする機会はいまだ限られている。
一方で、ユニリーバ、ネスレ、マクドナルド、カルフールなどの国際的な企業は、欧米消費者の高い関心を背景に、2015年までにCSPOに100%切り替えることを宣言している。

日本企業も多数がRSPOに加盟
(最新の情報を見つけられませんでしたが)
2011年で11社。出典:拡がる認証パーム油~企業と生物多様性の視点から~(2011/2/24 株式会社レスポンスアビリティ足立直樹代表取締役/JBIB事務局長)
三菱商事(2004年8月)、サラヤ(2005年1月) 、ライオン(2006年3月)、 伊藤忠商事(2006年6月)、 コープクリーン(2006年7月) 、花王(2007年4月) 、三井物産(2008年3月) 、エックス都市研究所(2008年10月)、 資生堂(2010年8月) 、磐田化学エ業(2010年9月) 、ミマスクリーンケア

【メモ】第3回持続可能なパーム油のためのシンポジウム「生物多様性と企業の役割~認証パーム油の最新動向」(2011/2/24 一般財団法人地球・人間環境フォーラム)
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5.つぶやき

森林破壊は生物多様性問題のなかでも大きな命題ですが、貧困問題も絡んでいるので、オゾン問題や温暖化問題のように国際的に有効な取り組みは働いていない、と言われています。
本件でのグリーンピースの過激なところやネスレの脇の甘さについては、様々な意見があるだろうし、色々と考えさせられる所がありますが、森林破壊についても、企業の取組みが重要で、それに影響を与える消費者の行動が大きなポイントになりうることを示す実例だと思いました。

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6.おまけ 【レインフォレスト・アライアンス認証】

キリングループが2014年度版環境白書の中で「2020年型企業」として紹介されている。

キリングループが、スリランカの紅茶農園のレインフォレスト・アライアンス認証*1の取得支援に2013年(平成25年)から取り組んでいます。
日本に輸入される紅茶葉の約60%がスリランカ産、2011年(平成23年)はそのうち約25%が同社のブランド商品に使用されました。これを受けて調達先の農園について調査した結果、生物多様性保全に寄与する認証を受けている農園が約4割だった一方で、経済的な理由で認証取得ができない農園も多いという実態が把握できました。
このため、キリングループでは地域全体の将来的な持続可能性の向上を目指して認証を支援する取組*2を開始しました。まさに企業が人的資本、自然資本、地域社会に投資しながら、自らの事業活動を行っている事例です。

*1 レインフォレスト・アライアンス。Rainforest Alliance
米国ニューヨークに本部を置く団体で、1987年地球環境保全のために熱帯雨林を維持することを目的に設立された国際的な非営利団体。
*1 レインフォレスト・アライアンス認証
  • 違法伐採や農地への転用などによる森林の減少を防ぐため、持続可能な農業基準に則って運営している農園を認証する制度
  • 2013年末時点で、認証地は43か国にわたり、総認証面積は約300万ha
  • 認証農園で生産される農作物は、コーヒー、カカオ、紅茶、野菜、果物や花など75品目を超えている。
  • レインフォレスト・アライアンスは、環境や社会だけでなく経済面での持続可能性も重視しており、認証取得が生産の効率化、土地の生産性の向上、高品質化につながり、収穫量と収入が増えるなど農家にとっても大きなメリットがある。
*2 2013年は15農園が取得のためのトレーニングを終え、2014年は30以上の農園が受ける。

なお、キリンホールディングスのHPを覘くと、CSPOの使用についても、
  • 一次原材料として使用しているパーム油:2013年までに全量を対応。(RSPO認証証書を取得)
  • 二次原材料として使用しているパーム油:2015年までに全量を対応。
とある。

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農地などへの土地利用の転換に関連した認証制度(メモ)
[ 2014/11/10(月) ] カテゴリ: 生物多様性,外来種,森林破 | CM(0)
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