ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

高速増殖炉の原理、歴史、現状、再処理工場

[ 2011/06/15 (水) ]
部分的に最新情報に改定・追記。2016/12/12
(上記までの追記記録は割愛)
初回公開日:2011/06/15


 以前、原発の歴史を調べていて意外だったのは、軽水炉(通常の原子炉)よりも高速増殖炉の方が開発の歴史は早くて、世界初の原子力発電は、1951年の米国の高速増殖実験炉(EBR-I)だ。高速増殖炉(Fast Breeder Reactor:FBR)
 ところが、その後の高速増殖炉開発の歴史は事故の歴史であり、実用化は遅々として進まず、後から開発された軽水炉が主流となり、結局、日本以外の主要先進国はすべて増殖炉開発に見切りをつけて中止した。ロシアや中国が開発に積極的である。
【追記】
 2014年に改定された現行のエネルギー基本計画では増殖の2文字が消えて高速炉となった。目的は
  ①使用済み核燃料の再処理で回収したプルトニウムの利用
  ②放射性廃棄物の減容化・有害度低減 に変わった。
 2016/12/21 政府は日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を正式に決定した。

1.原理

(1) プルトニウム-239の核分裂       (発生熱の記載は省略) 
                           (記号の左下が原子番号、左上が質量数)
プルトニウムの核分裂

 この核分裂で発生する熱エネルギーが発電に使われる訳である。
 燃料の組成などはプルサーマルの経緯、現状、MOX燃料とはを参照。

(2) 核分裂しないウラン-238は、高速中性子を吸収してプルトニウム-239になる。

ウラン238高速中性子

 高速中性子
 (2)の反応でU-238のプルトニウム転換を高比率で行わせる為には”高速”中性子が必要となる。
 (1)の反応ではPu-239は高速中性子で核分裂を起こす事ができる。
 軽水炉(一般の原子炉)では、臨界を継続させる為に水で減速した低速中性子(熱中性子)が必要なのとは対照的である。『高速増殖炉』の『高速』は”高速”中性子が由来である。
 (2)の反応では、(1)の反応で消費される以上(約1.2倍)のPu-239が生産される。『高速増殖炉』の『増殖』の由来である。

 冷却剤としての液体ナトリウム
 燃料から熱を受け取る冷却剤に使われるのが、中性子を減速させないナトリウムである。液体ナトリウムは、水と比べて沸点も高く(約800℃)、熱を伝えやすい。ただし、水や空気(酸素)にふれると、激しく反応するという大きな問題点がある。
 そのため、液体ナトリウムの液面の上部はカバーガス(不活性気体のアルゴンガス)で覆っている。

2.炉心の配置

      高速増殖炉燃料棒配置出典はこちら
 燃料棒は、3つの同心六角形型に配置される。
    最も内側にプルトニウム含有量が約15%のMOX燃料(核分裂する)
    その外側にプルトニウム含有量が約20%のMOX燃料(核分裂する)
    最も外側にブランケット燃料と呼ばれるウラン238である。(高速中性子を吸収し
   Pu-239へ変化する)
【関連エントリー】
●燃料集合体および燃料棒、燃料ペレットなど [2012/11/26]

3.発電タービンまでの熱の受け渡し

      高速増殖炉フロー
(1) 一次冷却系
 液体ナトリウムが燃料からの熱を受け取る
(2) 二次冷却系
 これも、液体ナトリウムで、一次冷却系からの熱を受け取る。もんじゅナトリウム火災が起きたのは、ここの配管だ。
(3) 水・蒸気系
 二次冷却系からの熱を受け取り、タービンを回して発電を行う。

4.燃料の再処理工程

 プルトニウムは自然界には存在しない元素である。
 使用済み燃料からプルトニウムやウランを取りだすのが『再処理』という作業だ。日本には現在、2か所に再処理工場がある。
 ●茨城県東海村(日本原子力研究開発機構)
  再処理技術の研究開発を主体に行っている。
 ●青森県六ケ所村(日本原燃㈱)
  1993年の着工以来、完成はトラブル・事故などで23回延期されている。2015/11/16には竣工時期を、2018年度(平成30年度)上期に変更することが発表された。これら延期のため、当初発表されていた建設費用は7600億円だったものが、2011年2月現在で2兆1,930億円と約2.8倍以上にも膨らんでいる。
  ベルギーとドイツの撤退により核兵器保有国以外で再処理工場を持つ国は、公式には日本だけとなっている。

 MOX燃料への再処理は、今は、英国(セラフィールド)やフランス(ラ・アーグ)に委託しているが、最終的には国内で全量再処理する計画である。
(2011/8/4追記 英のMOX工場が閉鎖へ福島原発事故の影響で

 再処理工場は原発に比べ、はるかに多い量の放射性物質を放出する。
 再処理の工程は裸の核物質を広範囲に扱う。放射線レベルが非常に高く、人が近づくことができない。その為、すべて遠隔操作で行う。

 ガラス固化体
 再処理にともなって高レベルの放射性廃液が出る。溶けたガラスと混ぜ合わせて固定化し、ガラス固化体として管理する。ガラス固化体は、放射性物質の崩壊によって極めて高い放射線を出す為、人間が何の防護もなしに近づく事は出来ない。(防護なしでは、20秒で致死量の放射線量)
 また、常時約280℃を越える温度を持つため 、一時保管場所で30~50年くらい中間貯蔵し、放射性物質が減って温度が下がるのを待ってから最終処分(深い地中に埋める『地層処分』)される。日本における最終処分施設の建設は未定である。
 高レベル放射性廃棄物とは、このガラス固化体のことを指す。
【関連エントリー】
●使用済み燃料の“再処理”と“直接処分”の比較など [2012/12/10]

5.高速増殖炉の開発段階、各国の状況

(1) 実験炉
 日本:常陽(茨城県東茨城郡大洗町、日本原子力研究開発機構)。
 米国:7基作ったがそこで終了。1994年クリントン政権は高速増殖炉を含む核燃料サイクルの研究・開発の中止を決定し、すべての実験炉を閉鎖。

(2) 原型炉

 日本:もんじゅ(福井県敦賀市、日本原子力研究開発機構)。
   1975年9月 原子力委員会によるチェックアンドレビュー開始
   1983年5月 国が原子炉設置許可
   1991年5月 機器完成、試運転開始
   1995年12月 ナトリウム漏洩火災事故発生。
   2010年5月 停止後から14年5ヶ月ぶりに運転再開
   2010年8月 原子炉容器内に炉内中継装置が落下。
   2011年6月24日  炉内中継装置の引上げ完了
 2010年8月 炉内中継装置(直径46cm、長さ12m、重さ3.3トン)がつり上げ作業中に落下する事故が起きた。何回か引き抜き作業を試みるものの失敗し、長期の運転休止となった。
 「技術的常識に従えば本格運転も廃炉措置もできない」という主張もあったが、2011年6月24日に引上げが完了した。装置を引き抜くための工事費や新たな装置の購入で約17億5000万円かかったと報道されている。トラブルがあれば長期停止と多額の費用を要するもんじゅの弱点を改めて示した。
   2015年11月 原子力規制委員会が文科省に運営主体の変更を勧告
   2016年12月21日  政府は廃炉を正式に決定。

 これまで、約1兆円の費用が投入され、停止中でも年間200億円(1日5500万円)の維持・管理費がかかっている。

 英国:1987年に蒸気発生器細管の大破損事故し1994年に閉鎖。
 ドイツ:1985年に完成したが、激しい反対運動や研究者のさまざまな危険性の指摘などを受けて州政府が燃料装荷を許可せず、1991年に開発中止を決定。

(3) 実証炉
 ここまで進んだのが、フランスのスーパーフェニックス(1985年稼働)だが、1999年に主に経済的理由から閉鎖した。
ただし、現在も使用済み核燃料の崩壊期間短縮を主目的とした次世代型高速炉:ASTRIDの開発に取り組んでいる。フランスにとっては技術力のある日本は唯一のキーパートナーである。
 実証炉のあとに、実用炉での開発、その後に商用炉が実現する。

【追記】
6.世界の開発の現状
世界の高速増殖炉の現状
出典:2016/9/22 産経新聞

20161220朝刊

各国の高速炉開発の現状

ループ型とタンク型の違い

核燃サイクル、夢見続ける日本 主な国の高速増殖炉開発(竹内敬二 朝日新聞デジタル 2016/12/11)

主に参考とした資料

Newton 2011年7月号 原発と放射能 緊急特集号第2弾
ウィキペディア

関連エントリー(新しい順)

●燃料集合体および燃料棒、燃料ペレットなど
●高速増殖炉の原理、歴史、現状、再処理工場 ←本エントリーです
●プルサーマルの経緯、現状、MOX燃料とは
●【改定】核分裂、放射線、ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)、人体への影響
[ 2011/06/15(水) ] カテゴリ: 再処理~最終処分に関する | CM(0)
コメントの投稿










管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

このブログについて
管理人 icchou から簡単な説明です 更新,追記の通知はTwitter
カテゴリ
最新記事
ブログ内検索