ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

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“しきい値なし問題”の考え方(理解のためのメモ)

[ 2014/10/06 (月) ]
表記の命題は、放射線問題だけでなく化学物質の発がん性問題にも共通するものですが、中西準子氏の論説が大変勉強になりましたので、アーカイブさせて頂きます。

(ここは、次項のためのイントロ的引用です)
中西準子氏のHP 雑感614-2012.11.7

放射線による健康リスク、特に低線量被ばくによるがんリスクについての議論は、「直線しきい値なしモデル」をどう考えるかという視点抜きには進めることができない。これは、安全概念の否定になる。しかし、多くの人が、安全概念の否定という重大なことを意識せずに、放射線の健康リスクを論じている。そのことが、いくつもの混乱をひきおこしている。

しきい値なしモデルを認めることは、リスク0の線量(用量)がないということだから、放射線なり化学物質を全部禁止しないかぎり、あるリスクレベルを「現実的安全レベル」として選ばねばならない。それを許容量として使っていかざるを得ない。では、どういう考え方で、そのレベルを決めるのか。従来、安全レベルは、実験が決めてくれた、しかし、しきい値なしモデルでは、何らかの考えを提起し、あるリスクレベルを「現実的安全レベル」として選ばなければならない。

こういう覚悟が、あるだろうか?
こういう社会に突入しているということを自覚しているだろうか?
この点を議論したい。

(中略)

直線しきい値なしモデルは放射線から出発し、化学物質のリスク評価に取り入れられた。放射線のマネをしたようなものだった。しかし、その評価結果をどう活用するか、さらに言えば、どの程度のリスクを許容し、受け入れるかという検討の点では、化学物質の方が進んでしまったような気がしている。

(後略)


(ここが、本エントリーの主題です。)
日本学術会議総合工学シンポジウム(2013/9/5)における講演資料から部分的に引用

5.化学物質リスク管理原則との平仄(ひょうそく)
米国の経験から学ぶこと-LNTの意味
  1. 米国は、1950年代に“LNT”モデルを取り入れ、尚かつ“リスクは0であるべき”との考えが支配的だったために、大混乱になった
  2. LNTを認めることは、単に、そういう事実が見つかったということではなく、“安全対策”として、リスクありを受け入れることなので、全国民に、生活の規範の変更を迫るものだった
  3. では、どれだけのリスクを、何故受け入れるかについて、数十年に亘って、激しい論戦、駆け引きが繰り返された
  4. その過程で、関係した人々が、それぞれ自分達の問題に対し、10-5の発がんリスクならいいのではとか、10-3ならいいとか主張し、それが、一つの形になって、米国の政策が形作られていった
  5. まさに、草の根の議論の集成が米国の今の政策である
  6. 欧州の国々では、LNTに対し極めて冷ややかで、最初はあら探しばかりしていた。最近になって、米国の結果を使っている
しかし、日本では

  • 相変わらず、行政も審議会も、表向きはゼロリスク裏でリスク容認という政策を実施している
    放射線リスク問題が混乱する筈である
  • 一刻も早く、ある場合には、一定のリスクを受容し、技術や物質の有用性を生かせるようなリスク管理をするという当たり前のことを実施できる体制にしたい
  • そのためには、行政や審議会委員の考え方を変えて貰わねばならないが、実は、研究者の側にも考えるべき点がある

6.研究者の課題
線量反応関係についての多くの専門家の説明

多くの識者は、こう説明している
① 100mSv以下では、がんリスクの有意な増加は認められない
② しかし、放射線防護や管理の立場から、しきい値なし直線モデルを仮定しているのであって、これは生体反応の実態ではない
③DNA損傷に対しては修復機能が働くから、損傷=危険とは言えない
このメッセージが間違いだとは思わないし、②の主張も、Scientist魂を感じさせ、理解できる面もある。しかし、よく考えると、これは、ゼロリスクが正しいと主張しているように感じられる

違和感の分解
  1. LSS研究で、100mSv以下の線量では、原爆投下による影響が見えないという事実は重要。皆が,線量と具体的な影響との関係を実感できる唯一の教材。また、臨床医が、この程度のことに怯えるなと言うのも理解できる。
  2. しかし、だからと言って、リスクがゼロではないこと、また、それほど小さくもないことは自明だと思う。したがって、できるだけ現象を正確に表すための推定をして、その大きさについて理解することも重要な筈。
  3. LNTは、確かに安全側推定という面はあるが、相当程度、factによって補強されている。動物試験や、生化学的研究、メカニズム考察などで、支持されている。
  4. 対案を出すのはいいが、それがないにも拘わらずLNTを否定するのは、結局、100mSv以下はリスクはゼロに近いと言いたいからではないのか。
  5. それは、結局、ゼロがいいんだという気持ちがあるからではないか。
推定と科学

  • 推定だから、不確実性も大きいが、その時点で最も確からしい“推定”をして、政策を決めなければならない。
    これも、科学である。いや、むしろ、これこそが今必要とされるサイエンスではないか
  • “推定”なしには、予防医療や安全対策は成り立たない
  • 今までの知識を総動員して考えて、放射線の健康影響についてLNTよりましな推定があるだろうか?
  • ないのであれば、この式から推定されるリスクの値を基礎にして、できるだけ科学的な意思決定をするように努力した方がいいと思うが、どうだろう。

もう一つ大事な視点がある

  • しきい値を求めて、HQ比*を出して何らかの基準にするという方法は、リスク管理には使えないということを早く知って、その先を目指してほしい(ゼロリスク)
    * HQ比:ハザード比=一日用量/一日許容用量(ADI)
  • しきい値について(特に放射線について)、注意すべき点が二つある
    ・・・・ひとつは、個人と集団の違い
    ・・・・もう一つは、放射線の場合、バックグラウンド線量が非常に大きいこと
    いずれの場合も、個人ではしきい値があっても、集団ではなくなることが多い。
    微視的に生物反応を調べても、集団での法則を見つけることはできない。リスク評価に必要なのは、集団での法則である

LNT 仮説・・この図はmisleadingを誘う

       しきい値なし直線仮説の模式図
しきい値なし直線仮説の模式図

LNTモデルの新しい説明図

LNTモデルの新しい説明図
     BG: バックグラウンド値(ここでは累積量)

【ブログ主注】少し意味が異なりますがこちらの図もしっくりきます。
低線量率被ばくによるがん死亡リスクP114
出典:放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成25年度版)の114ページ

ご清聴ありがとうございました

  • 放射線の低線量問題は、行政にも国民にも、安全規範の考え方の変更を迫っている
  • 研究者には、今までとは異なるサイエンスの方法論を要求している

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