ポストさんてん日記

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【基礎03】抗体とは~免疫の飛び道具

[ 2014/09/22 (月) ]
体液性免疫といわれる抗体は、抗原を認識したへルパーT細胞の援助によってB細胞から分泌生成されることを【基礎02】で勉強しました。
今回は、無限に産出され、免疫反応の中心的な役割に担う抗体について、少し深く勉強しました。

目次 (ページ内リンクが付いています)

1.抗体の構造
2.抗体の3種類の働き
3.抗体の種類と働き(5つのクラス)
4.感染防御の最前線、腸管免疫
5.抗原抗体反応の落とし穴
6.参考にした文献・サイト
7.関連エントリー
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1.抗体の構造

抗体というのは、「抗原に結合する」という機能を重視した名称で、物質としては免疫グロブリン(Ig:immunogloburin)というタンパク質の分子です。1つのB細胞から1つしかできません。
Y字形をしており、上半分は抗体ごとに違い、それぞれ特定の抗原にだけ結合します。この抗原に応じて様々な構造を持つ部位を可変部と呼びます。
下半分のほぼ一定の構造を有する部位は、非自己に取りついて働きを止めた後に、マクロファージなどの食細胞に処理してもらう際の目印となる部位で、定常部と呼んでいます。
抗体03抗体01
 出典:東京都神経科学総合研究所       出典:協和発酵キリンHP

我々は一生のうちに膨大な数の非自己抗原と出会いますが、免疫はそれら多様な抗原に対応できます。抗体を例にすると、上記の可変部の構造が多様性に富んでいるからです。その仕組みの詳細な説明は遺伝子のお話ですので深入りしませんが、ノーベル賞を受賞した利根川進氏が解明した抗体遺伝子の再編成という仕組みです。
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2.抗体の3種類の働き

(1) 中和作用

細菌の産生する毒素は、標的となる細胞表面のレセプター*と結合して毒性を発揮します。 レセプタ-は別名、受容体ともいいますが、“モノを捕まえる手”と理解するといいでしょう。
* 抗原と抗体、抗原とレセプター(受容体)の関係は鍵と鍵穴の関係に例えられます。
鍵と鍵穴の関係
出典:ちょっと医学的な免疫学初級講座[後編]

鍵と鍵穴の関係02
出典:協和発酵キリンHP

毒素という抗原に特異的な抗体が結合することにより、その毒素は標的細胞に結合できなくなり、毒性を発揮できなくなります。
ウイルスが標的となる細胞へ感染するときも、ウイルスに特異的な抗体は、ウイルスが細胞に結合するのを阻止し、感染防御に働いています。
毒素の中和
     出典:東京都神経科学総合研究所

【メモ】
「Pursuing Big Oceans 2014/6/24」エボラウイルスについての覚書
エボラウイルスの巧妙な免疫回避方法〜デコイ〜 
エボラウイルスの巧妙にして恐ろしいところは、ウイルス本体に発現するGPとは別に、sGPというデコイを大量にまき散らしていて、抗体をそっちに吸着させることで免疫系を欺いている、という点だ。

(2) CDC活性 CDC:Complement-Dependent Cytotoxicity 補体依存性細胞傷害

病原体の表面にくっついた抗体が目印となって、そこに補体という物質(血液中にある酵素タンパク群(20種類の血漿タンパク)、抗菌ペプチドとも呼ばれる )が集まり、病原細菌の細胞膜に穴を開けて破壊します。
病原体の破壊
     出典:東京都神経科学総合研究所

(3) ADCC活性 ADCC:Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity 抗体依存性細胞傷害

病原体に抗体が結合すると、その抗体がマクロファージNK細胞といった免疫細胞を呼び寄せ、その抗体が結合している病原体を殺傷します。
また、ウイルスに感染した細胞は、その細胞の表面にウイルスのタンパク(ウイルス特異抗原で非自己)を現しています。このウイルス特異抗原に抗体が結合すると、この抗体を目印にマクロファージNK細胞などが結合して感染細胞を傷害します。
マクロファージによる貪食の促進
     出典:東京都神経科学総合研究所
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3.抗体の種類と働き(5つのクラス)

抗体は可変部で外敵を捕まえたあと、定常部を使って外敵を処理しています。
抗原とくっつく可変部が1種類でも、外敵の種類や侵入部位に応じて、定常部は5通りの構造体があり、それによって抗体も5種類に分けられます。免疫学の専門家は種類という用語は使わず、「抗体には5つのクラスがある」 と表現します。
たとえば、抗原が体の中に入ってきたときにB細胞が一番はじめにつくる抗体はIgM型です。IgMはつくられるのは早いのですが、抗体としての働きは今ひとつ。
少し遅れて作られる抗体がIgG型で、これは毒素の中和、病原体の破壊の際もっとも効果的に働いてくれる抗体です。ちなみにIgGは胎盤を通過するのでお母さんから胎児の血液中に入り、生まれた直後の赤ちゃんをさまざまな感染症から守ります。
また、消化管や気道に抗体を出動させるのならIgA型です。
クラスの変身(クラススイッチ)のカギを握るのが、AIDという抗体遺伝子改編酵素であることを突きとめたのは、本庶博氏です。抗体の驚異の変身メカニズムが(前述の)利根川進氏と本庶博氏の二人によって解明されたことは、日本の免疫学が世界に誇る成果です。
%数値は血中での存在比
IgM基本構造が5つ結合した構造をもつ最大の抗体。
一次免疫応答*の感染初期を司る。
胎児感染で増加する。
10%
抗体02M
IgG二次免疫応答*の中心となる抗体。
血漿や体液に存在する主要な抗体で補体と協力して細菌やウイルスを攻撃。
唯一胎盤を通過できるタイプであり、母親から移行したIgGは生後1週間まで新生児を守っている。
70~75%
抗体02G
IgA2つのIgAが結合した構造として、血清,鼻汁,唾液,胆汁,初乳,涙,腸液など、主に粘膜中の分泌物中に存在する。(分泌型免疫系)
母乳に含まれるIgA(特に初乳に多い)は新生児の消化管を細菌・ウイルス感染から守る(母子免疫)。
10~15%
抗体02A
IgE即時型アレルギー反応に関与し、肥満細胞上の受容体に結合する。
寄生虫に対する免疫反応に関与していると考えられるが、最近では、花粉症などのアレルギーに重要であることが知られている。
0.001%以下
抗体02E
IgDB細胞表面にあり、抗体産生を誘導するが、その働きは解明されていない。1%以下
抗体02D
出典:協和発酵キリンHP
* 一次免疫応答:初感染は最初にIgMが反応するが、特異抗体のIgGの産生には時間がかかるので病気が長引く。この抗原情報は記憶される。(免疫の獲得)。
* 二次免疫応答:初感染によって記憶された抗原情報と同じ抗原に再感染した場合、短時間でIgGがつくられ、直ちに免疫反応が起きて発病しないで済む。

各種免疫グロブリンの性状
出典:小学生・中学生および高校生のための免疫学 (PFD

血中半減期の長短は免疫機能にとって大きな意味を持つと思いますが、詳しく説明している資料を見つけられません。

【メモ】
IgG4関連疾患の話 石原藤樹のブログ(元六号通り診療所所長のブログ)2012/2/17

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4.感染防御の最前線、腸管免疫

“内なる外”

私たちの体の模式図です。外側の円が外界との境界となっている皮膚、内側の円は消化管や気管などの粘膜です。竹輪をイメージしていただくと分かりやすいのですが、細胞が存在するのは、あくまでも竹輪の身の部分だけで、そこが“自己”
消化管や気管は外界から取り入れた食物や空気が通るだけで、いわば“内なる外”です。
自己の定義
        出典:ロハス・メディカル 免疫きほんのき1

腸管免疫

消化管は口腔~咽頭~食道~胃~小腸(十二指腸~空腸~回腸)~大腸(盲腸~結腸~直腸)~肛門という数種類の器官からなる全長約9mの屈曲した1本の管で、 “内なる外”を形成しています。
腸には、腸内常在菌がたくさんすみ着いていますが、さらに、食物と一緒に外界から細菌などの異物がたくさん入ってきます。それらの細菌から体を守るため、腸には多くの免疫細胞が存在し、全体の60~70%になります。(腸管免疫)。

(1) 物理的バリア
“内なる外”の表面は粘液で被われ、粘液は付着する異物を常に洗い流しています。

(2) 粘液中のIgA抗体
粘液中にはいくつかの殺菌物質やウイルス不活化物質が含まれていて体内侵入の防御に役立っています。 特に重要なのは腸内粘液中に分泌されるIgA抗体で、侵入しようとする細菌やウイルスに結合し、体内への侵入を水際で防いでいます。

(3) さらに、粘膜上皮細胞を突破した病原体対しては、免疫細胞が対応
 (詳細は 【基礎02】 で説明済ですが、概略は次のとおりです。)
  • 細菌の場合は、好中球マクロファ-ジ
  • ウイルスが細胞外(未感染)にいる場合は、対応する抗体がウイルスに結合して感染を防ぐ。
  • 細胞内感染ウイルスの場合は、キラ-T細胞NK細胞

【参考】
腸管免疫のお話 その二 ようこそ喜源テクノさかき研究室へ 2012/5/6

【メモ】
研究内容 国際粘膜ワクチン開発研究センター 粘膜バリア学分野

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5.抗原抗体反応の落とし穴

抗体の登場は、非自己排除の効率と確実性をぐっと高めた反面、しばしば暴走を起こして私たちを苦しめるようにもなりました。アレルギーです。
アレルギーの原因となる免疫グロブリンとしては、IgEIgGが知られています。一般的なのはIgEのほうで、アレルギー喘息、アトピー性皮膚炎、スギなどの花粉症やハウスダストアレルギーなどへの関与がわかっています。本来は体に有害でない物質に反応・排除しようとした結果、咳や鼻水、目や皮膚のかゆみや炎症といった症状が体に現れるのです。
どうしてIgE抗体は暴走してしまうのでしょうか? 本来、IgE型の免疫は、寄生虫や吸血ダニから身を守るために哺乳類が獲得したものでした(皮膚が軟らかいのでやられやすかったんですね)。
このお話は【基礎04】に続きます。
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6.参考にした文献・サイト

M細胞から腸管免疫のメカニズムを解き明かす(理研 研究者インタビュー 2010年2月号)
WEB PHYSIOLOGY 人体のしくみと働き
免疫、その功罪(東京都神経研 )
免疫について(日本血液製剤協会)
免疫きほんのき(ロハス・メディカル)
免疫が挑むがんと難病 現代免疫物語beyond(岸本忠三・中嶋彰 著)
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7.関連エントリー

【基礎04】アレルギーとは~免疫の副作用、発症メカニズム、治療の原理など
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[ 2014/09/22(月) ] カテゴリ: 生物・医学の基礎 | CM(0)
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