ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

【基礎02】免疫とは~自然免疫、獲得免疫、細胞性免疫、体液性免疫など

[ 2014/09/16 (火) ]
3項に「抗原提示細胞は樹状細胞」を追記。2016/2/14
7項を追記。2014/10/28
初回公開日:2014/09/16


【基礎01-1】ウイルス、ワクチン、抗ウイルス薬に続いて、免疫細胞について勉強がてら、まとめてみました。関連する論説などを読むときに、役に立つかも知れない基礎知識です。

目次 (ページ内リンクが付いています)

1.免疫細胞とは
2.自然免疫と獲得免疫
3.体液性免疫と細胞性免疫【追記】
4.ヘルパーT細胞の“指令”、“命令”がサイトカイン
5.自己と非自己の認識
6.免疫細胞は造血幹細胞で生まれ、骨髄、胸腺、脾臓、リンパ節で成熟
7.「自然免疫力」は「自然」とは関係ない、という話 (「トンデモ」健康本のテクニックについて)【追記】
8.参考にした文献・サイト
9.関連エントリー
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1.免疫細胞とは

免疫細胞の種類

白血球の種類

リンパ球は血液細胞中の白血球に20~30%程度含まれる細胞です。健康診断の後に受け取る報告書には血球数の項目中に白血球の分画という欄があり、その中のLyあるいはLymphと書かれている細胞がリンパ球に相当します。

免疫系にかかわる器官や主な免疫細胞
免疫系にかかわる器官と免癌細胞
さまざまな免疫細胞が血管やリンパ管を通じて体内をめぐり.外界から侵入しようとするウイルスや細菌,異常が発生した体の細胞などの異物と戦っている。 出典:Newton 細胞のしくみ
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2.自然免疫と獲得免疫

体表面での物理的、化学的防御
これは自然免疫の一種です。

病原微生物や異種蛋白などの侵入経路は、一般に皮膚や口腔粘膜、気道粘膜、消化管粘膜、尿路粘膜ですが、これらの上皮表面はまず、覆うことで防御し、さらに、いろいろなしくみでバリアーとなっています。
物理的防御には、覆うほか、皮膚の角質化した表面、気道の線毛運動や咳・排痰、尿路での排尿による洗浄などがあり、化学的防御には、皮膚の酸性の脂分、粘液中の酸やタンパク質分解酵素、唾液や涙液などに含まれるリゾチーム(グラム陽性菌の細胞膜を破壊)などがあります。
体表面での非特異的感染防御機構
出典:明治薬科大学 薬学教育研究センター 石橋芳雄教授 微生物学講義ノート

自然免疫

細菌やウイルスといった病原体などの異物(本分野では抗原という)が体の中に入ってくると、食細胞といわれる好中球マクロファージ:貪食細胞(どんしょくさいぼう)、樹状細胞(DC:Dendritic cell)がこれに立ち向かいます。これらは、生物が最初に持った免疫システムです。

好中球は、病原体が侵入すると真っ先に集まってきます。ケガの傷口に生じる膿は、細菌との戦いで死んだ好中球の死体が主な成分です。
マクロファージは、病原体を丸々飲み込んで、消化酵素で病原体を分解します。まさに食細胞の名のとおり、「食う」のです。姿も作用も、単細胞生物の名残をもっとも強く残していることが知られています。名前の由来は、マクロ(Macro)は大きい、ファージ(PHage)は食べるもの。
マクロファージと動脈硬化
血液中で酸化したLDL(悪玉コレステロール)をマクロファージが丸呑みしていくうちに、マクロファージ自身が膨れ上がって死に、血管の内壁にたまっていきます。そうして血管が厚く変質し、結果として動脈硬化が進んでしまうのです。もちろん、マクロファージが悪いのではなく、LDL過剰が問題。
【参考】「Pursuing Big Oceans 2014/10/2」動脈硬化は生活習慣に関係なく発症しうる病気だと思う
樹状細胞(DC)には、好中球やマクロファージなどのような旺盛な貪食作用を認めませんが、抗原を細胞膜で取り囲むようにして細胞内へ取り込み、抗原を分解し処理する能力に優れています。そして、抗原を取り込んでリンパ節へ移動し、T細胞へ抗原の情報を伝達するだけでなく、その後の免疫反応の強さや方向性を決定する重要な役割を担っています。

これらの作用は、生まれつき備わっている働きで、非自己を見つけ次第働きます。相手を選ばず攻撃するので、自然免疫又は非特異的免疫と呼ばれています。

獲得免疫

好中球マクロファージは万能でなく、血液中に流れる毒素分子やウイルスなどの小さな病原体、細胞の中に入り込んだ病原体などを感知できません。そこで自然免疫を乗り越えた病原体に対しては、リンパ球が働きます。

このうちNK細胞(ナチュラルキラー細胞)は例外的に自然免疫系で、ウイルスに感染した細胞(細胞膜上のウイルス抗原)や、突然変異により発生した異常な細胞(腫傷細胞のマー力一)を認識して攻撃・破壊することができます。
NK細胞は標的となった細胞に取りつくと、タンパク質のツブツブで、まるで銃弾を浴びせたように相手の膜に穴を開けます。そこからツブツブに含まれる別の成分が入りこんで、それが相手をアポトーシス(自殺)に追い込むように作用するのです。 文字通り生まれついての殺し屋です。

残るリンパ球のヘルパーT細胞キラーT細胞B細胞非自己なら何でもかんでもというわけではなく、それぞれの病原体を1種類ずつ認識して排除を行います。さらには、それを記憶し、再び同じ病原体に出会ったときにすぐに認識・排除に移れるようになる、という特徴があります。簡単に言えば、「はしかに一度かかると、もうかからないか、かかっても軽くすむ」というおなじみの現象です。 これらは、一度、その病原体に感染することで体の中に産生されるので獲得免疫又は特異的免疫と呼ばれています。

獲得免疫は自然免疫に比べて、その作用は大変強力(これをうまく利用したのがワクチン)ですが、敵の侵入から数時間で発動する先陣部隊の自然免疫に比べ、獲得免疫の立ち上がりはのんびりで数日かかります。これが感染防御に失敗すると、その病気に感染し発病してしまいます。

          生物史から、自然の摂理を読み解く01
TNFα(腫瘍壊死因子)、IL12(T細胞活性)、IFNα(NK活性と抗体産出)は感染を受けた細胞がウイルスの増殖を抑えるため産生するインターフェロンで 、「ウイルス侵入」のシグナルです。
出典:生物史から、自然の摂理を読み解く

ヘルパーT細胞は免疫の司令塔であり助っ人。樹状細胞・マクロファージから病原菌などの抗原(獲得免疫系を発動させる非自己=病原体等)の情報を受け取り、B細胞抗体を作るよう指令を出し、抗体を作るのを助けます。また、樹状細胞・マクロファージと共同で、サイトカイン情報伝達分子)を放出し、NK細胞キラーT細胞を活性化させます。
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3.体液性免疫細胞性免疫
複雑な関係を分かりやすく示した図を引用します。
オーケストラ02
           出典:グッドヘルスコミュニケーションズ

オーケストラ01
     出典:サプリメント指導士のひとりごと

他にも、分かりやすい図が、WEB PHYSIOLOGY 人体のしくみと働きにあります。
図中で、ヘルパーT細胞に信号を出す役割を担っている細胞(抗原提示細胞)はマクロファージになっていますが、樹状細胞が正解です。(後述)
なお、ヘルパーT細胞は、2種類に分けられるのですが、上図では簡略化しています。詳細は【基礎04】にあります。

体液性免疫

非自己の情報が樹状細胞・マクロファージヘルパーT細胞B細胞と伝達され、B細胞抗体免疫グロブリンというタンパク質)をつくり出し、相手である抗原に向かって放出、結合させてその働きを抑えてしまいます(抗原抗体反応という)。働きを封じ込められた抗原は、好中球やマクロファージなどの食細胞が平らげてきれいにしてしまいます。
それまでの免疫細胞は自身が標的にくっつくところから排除が始まっていましたが、抗体はいわば飛び道具。しかも、抗原ごとに異なる抗体をあてがい(抗原特異性)、2度目の侵入時にはすみやかにその抗原に対応した抗体だけ量産できるようになっています。効率的かつ確実に非自己を排除できる方法を、発明したというわけです。
このようにB細胞が放つ抗体によって非自己を排除する獲得免疫は、体液性免疫とよんでいます。
B細胞の一種はメモリー細胞(M)となって次回の感染に備えます。

免疫細胞ではないのですが、補体というものもある。

病原細菌の表面にくっついた抗体が目印となって、そこに補体という物質(血液中にある酵素タンパク群(20種類の血漿タンパク)、抗菌ペプチドとも呼ばれる )が集まり、病原細菌の細胞膜に穴を開けて破壊したり、炎症の開始など感染に対する防御の働きをします。
病原細菌に結合した抗体または補体の複合体があると、食細胞は活性化され貧食能が促進されます。この作用をオプソニン作用と呼びます。

体液性免疫
細菌やウイルスに対して、彼らが細胞外=血漿中や間質液中にいる時は、B細胞が量産する抗体が役立ちました。さらに、補体系や食細胞たち(好中球マクロファージ)も動員されて、細胞外にいる外敵は効果的に駆逐されていくのでした。

細胞性免疫

キラーT細胞は殺し屋。感染した細胞にとりついて、その細胞を殺しますが、進化の先達であるNK細胞の殺傷方法を継承しているようです。どちらも名のとおり、まさに「キラー」ですね。なお、このように、キラーT細胞に排除が委ねられる獲得免疫を細胞性免疫として体液性免疫と区別されています。

細胞性免疫 cell-mediated immunity
外敵が細胞外ではなく、細胞内にいると、体液性免疫は手も足もでなくなります。
ウイルスたちは基本的に細胞内に寄生し、私たちの細胞の中にある構造を使って自分たちの身体をつくるタンパク質を合成していきます。 彼らが1つの細胞から次の細胞に移動するときだけを狙って、食細胞抗体たちが働いても、十分効率的に駆除できません。
そこで役に立ってくるのが細胞性免疫であり、ウイルス感染によって「自分ではない自分」になってしまった細胞や、癌化によって「自分ではない自分」になってしまった細胞を見つけて殺していく役割です。

【追記】抗原提示細胞は樹状細胞

人の体に病原菌やウイルスが侵入したとしよう。最初に反応するのは、食細胞と呼ばれるマクロファージで、病原体を見つけては相手を食い殺してくれる。
樹状細胞も戦いの現場に現れ、長い触手を伸ばして病原体の断片を体の中に取り込んでいく。しかしこの細胞は、戦場に長居はしない。マクロファージが外敵を食い殺すのを主眼としているのと違って、樹状細胞は病原体を捕まえたら血管やリンパ管を通ってリンパ節に達し、そこでヘルパーT細胞と出会って、病原体の断片を提示するのだ。抗原提示である。
樹状細胞の抗原提示によってヘルパーT細胞が活性化すると、マクロファージにも抗原提示の働きが備わる。マクロファージもただ病原体を食い殺すだけの細胞ではない。ただし樹状細胞と還って常に戦いの現場にいるので、抗原提示への寄与は限定的だ。
樹状細胞は全身にくまなく存在しているが、どの組織においてもその量はほんのわずかだ。例えば、血液中にはさまざまな免疫細胞が流れているが、そのうち樹状細胞が占める割合は、ゼロ・コンマ数%にすぎない。
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4.ヘルパーT細胞の“指令”、“命令”がサイトカイン(情報伝達分子)

以上の説明で、非自己の情報を受け取ったヘルパーT細胞が“指令”や“命令”を出すと表現していますが、その実態がサイトカインの放出です。(サイトカインとは、免疫システムの中で細胞間の情報伝達のために分泌され放出されるタンパク質の総称)
主としてT細胞から分泌されるサイトカインインターロイキン*と呼ばれる一群です(その他のサイトカインとしてはインターフェロンTNF(腫瘍壊死因子)なども、がん治療への応用で有名です)。
* インターロイキンとは白血球と白血球の間をつなぐ分子という意味の言葉。
サイトカインの指令を受けてようやく、眠っていたB細胞非自己の排除に乗り出します。また、感染細胞からの訴えを聞いて出動したキラーT細胞も、実はまだ待機状態だったのですが、ヘルパーT細胞からの指示を受けて初めて排除を実行します。

ちなみに、免疫細胞が連絡を取り合っている時、それを自分でも実感できることがあります。例えば、傷口の周りが赤く腫れあがって熱を持ったり痛んだりすること、炎症です。これは何かと言うと、サイトカインの指令に従って免疫細胞が集まり活発に働いている状態なのです。
炎症は、江戸時代の町火消しが家を壊しながら鎮火したように、自己を壊しながら非自己も沈静化させる働きがあります。適当なところで治まらないと、非自己よりも恐ろしいことになりかねません。

上述した樹状細胞も、抗原提示をしているだけでなく、サイトカインIL6IL12)を放出してT細胞を活性化しています。樹状細胞が最も多く分泌するサイトカインIL6です。

自己免疫疾患
免疫が、誤って自己に攻撃を仕掛けると、様々な体の不調が生じることになります。これこそが、自己免疫疾患です。関節リウマチなどがそれです。原因として多いのは、免疫が、自己を非自己と誤認してしまうこと。また炎症性のサイトカイン等が過剰に作られてしまう場合もあります。なぜそういうことが起きるのかの詳細はよく分かっておらず、免疫の働きを抑制する治療が行われています。遺伝的に受け継がれやすいものもありますが、全体として患者数が年々増加していることから、環境の変化やストレスなども影響しているようです。
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5.自己と非自己の認識

免疫細胞が自己と非自己を識別する方法は、大きく3パターンに分けられます。

TLRによる非自己の認識

多くの病原体の細胞膜上に共通して存在する非自己の構造を、TLR(トル様受容体)という認識道具で判別します。TLRは原始的な性質を残している食細胞でも進化した免疫細胞でも必ず持っていますが、かなり大雑把で、例えば子供が落書きで「マルの中に目と鼻と口があって......」と円と直線で顔を描いてもそれなりに「ヒトの顔だな」と分かるように、「病原菌ならばまず持っている特定のパターン」を認識できる程度のものです。

MHCを使った自己の認識、鍵と鍵穴の関係

進化の過程で出てきた新しい免疫細胞は、TLRも残しつつ、別の目印 MHC:major histocompatibility complex (主要組織適合抗原)も利用するようになりました。ヒトの場合、HLA:human leukocyte antigen (白血球抗原)と呼ばれるものです。
MHCは、(免疫細胞自身を含む)自己の正常細胞であれば共通して表面に持っているタンパク質の構造物で“鍵”のようなもの。免疫細胞の表面にはこれに対応した“鍵穴”があり、パトロール中にみつけた疑わしきものが鍵を持っているかを確かめることができます。
TLRとは逆で、「自己かどうか」のチェックポイントがMHCというわけです。ただ、標的となる細胞の全体をくまなく精査するわけでなく、表面のMHCだけで判断する点では、TLRの病原菌認識と大差ない簡略ぶりにも思えますね。

がんは非自己?
がん細胞もウイルス感染細胞も元は自分の細胞ですが、この「自己の目印」たるHLAが消えたり減ったりしていることが分かっています。そもそもがん細胞は、変異によって本来の役割を放棄し、勝手に増殖を始めてしまった細胞。その身勝手を許しておけば最終的に他の細胞や臓器を侵し、全体の生命を奪うことになりますから、もはや「自己」と認識すべきではありませんよね。ウイルス感染した細胞もしかり。というわけで、HLAによる識別は非常に具合がいいんですね。
ただし、がん細胞は時に一枚上手。しばしば、PD-L1と呼ばれるたんぱく質を「身分証明書」として表面に持つことで、NK細胞等の攻撃をくぐり抜けてしまうらしいのです。このたんぱく質は正常細胞の表面にも存在しているため、NK細胞は怪しみつつも「あれ? 鍵はないみたいだけど、証明書があるし、正常な細胞なのか」と誤解して見逃してしまうというわけです。

臓器移植後の拒絶反応はなぜ起きる?
答えはHLAの型が違うため。他人の細胞にあるHLAは、自分の免疫細胞の鍵穴と合いません。そのため、「非自己」と分かって排除の対象とされてしまうからです。
これは、HLAを形づくっているアミノ酸の並び方が、人によって少しずつ異なるため。 
一卵性の双子は、もつ遺伝子が全く同じであるため, MHC分子も区別できない。 兄弟では25%で一致する。
ちなみに輸血で拒絶反応が起きないのは、赤血球が例外的にHLAを持たないからです。

【メモ】 HLAをより深く知る | HLAについて | HLA研究所

獲得免疫を担うヘルパーT細胞キラーT細胞B細胞などが非自己を認識する方法

ちょっとややこしいのは、これらは、独力では非自己たる病原菌やウイルス等をほとんど認識できないことです。樹状細胞・マクロファージなど別の免疫細胞から「こんな奴がいましたよ」という情報をもらうか、あるいは既に感染してしまった細胞から事後的に「感染しちゃったよ」などという訴えをキャッチすることになります。
樹状細胞・マクロファーは、巡回中に出くわした病原菌等を自らある程度まで分解して、その一部を自らのMHCに乗せてヘルパーT細胞に提示します。ヘルパーT細胞はその断片を見てようやく「そんな奴がいたのか」と気づき、他のリンパ球に排除のための指令を出すのです。
感染してしまった細胞も、ウイルス由来の(自らの遺伝子に由来しない)非自己タンパク質を作ることになります。細胞には、内部で作られているタンパク質の断片をMHCの上に乗せて細胞外に提示する働きがあり、キラーT細胞に対して「自分はもうだめだ。こんな奴にやられた。殺してくれ」と細胞が示しているようなことになります。
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6.免疫細胞は造血幹細胞で生まれ、骨髄、胸腺、脾臓、リンパ節で成熟

免疫細胞は他の血液細胞と同じく、造血幹細胞で生まれます。造血幹細胞は胎児のときは肝臓に、生まれてからは骨髄にあります。
造血幹細胞

造血幹細胞02
出典:免疫細胞はどこで、どんな細胞からつくられるの?(理研免疫発生研究チームHP)

B細胞は造血幹細胞から生まれた後、骨髄(Bone Marrow)の中で成長します。だからB細胞。なお、B細胞が成熟して抗体を合成するようになったのをプラズマ細胞という。
T細胞は生まれてすぐに胸腺という胸骨の裏側にある臓器へ移動した後に成長します。胸腺というのはT細胞をつくるためだけにあるといってよい臓器で、T細胞のTは胸腺(Thymus)のTです。
B細胞T細胞はそれぞれ骨髄胸腺で一応の成熟を遂げて、血液中へ出て行きます。ただし、このままの状態で免疫細胞として活躍するわけではありません。免疫反応を起こす現場で、さらに練り上げられ、磨き上げられ、役に立つ細胞へと分化していくのです。ここで免疫反応の現場というのは脾臓リンパ節のことです。
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おまけ的な項目
7.「自然免疫力」は「自然」とは関係ない、という話
  (「トンデモ」健康本のテクニックについて)
「楽園はこちら側2014/10/25」新谷弘美と内海聡。トンデモ健康本をも少し考える。から、一部のみを引用。

新谷弘実著「新谷式 病気にならない食べ方の習慣」(アスコム)という本など、自然免疫力を高める食事をすすめる、自然免疫力を賞賛する、といった「トンデモ」健康本は多いです。
「自然」というキラキラワードが、その手の人たちに魅力的に響くだからでしょう。人工的、現代科学的な汚染被害を受けていない純粋な自然免疫力ってイメージです。
(本エントリーで勉強したように)、自然免疫の「自然」とは英語のnatureのことではありません。「自然環境」という使い方をする「自然」とは別物なのです。自然免疫は、病原体の曝露がなくても発動する免疫能力なのです。獲得免疫よりも後でこの免疫力の存在は知られるようになり、免疫学の領域では注目を集めている研究対象です。
病原体ひとつひとつに効く獲得免疫は麻薬Gメンやマル暴のような特殊部隊に例えられます。一方、いろいろな病原体に広く対応できる自然免疫は交番のおまわりさんに例えても良いかもしれません。ただし、これは「広く薄く」の免疫力なので、決して強い免疫力ではありません。免疫力そのものでいうと、獲得免疫の方がずっとその力は強いのです。
自然免疫力をになう主力細胞のひとつ、NK細胞についても、漢方薬とか生活習慣でNK細胞の活性は上がるのですが、それは極端に強い免疫力ではありません。例えば、NK細胞活性をあげる漢方薬で、肺癌患者の腫瘍マーカー(血液検査)を改善させたり、食欲が増したりといったマイルドな効果が期待できますが、肺癌そのものが治るわけではありません。「自然免疫力を高めて病気がゼロ」というのは高望みというものです。
しかし、「トンデモ」健康本はこの自然免疫に特別な意味を賦与します。例えば、自然免疫を「免疫細胞よりもっと古い時代から引き継がれてきた」とか、「単細胞生物の時代から備わってきた原始的な免疫機能」だとか、「原始」「古い時代」というキーワードを連発して、いかにも身体に良さそうな印象を醸し出します。「本来の免疫力」という表現も用いています。
自然免疫の方が獲得免疫よりも古かったという証明はなされていませんが、その可能性はあるかもしれません。しかし、進化の過程では古いものほど悪いもの、というのが一般的です。そうでなければ「進化」ではなく「退化」ですからね。「自然」「原始」「太古の昔から」といったキラキラワードは人を魅了しますが、別に古いからといって自然免疫の優位性があるわけではないのです。
トンデモ本は、「ワクチンを打っても感染症にかかることがある」「抗生物質でも治せない病気がある」と説きます。まったくそのとおりです。しかし、この勢いで「だから自然免疫を高めれば良いのだ」という論理の飛躍に走ります。自然免疫があっても感染症にかかり、自然免疫でも治せない病気があるという事実は捨象してしまうのです。
ひとつの原則をAには適用してBでは捨ててしまうのは、科学的な態度ではありません。トンデモ本の筆者がこれを知らずにやっているとしたら医学者・科学者としての知性にかなり問題があると思います。知っていてやっているとしたら倫理的に非常に悪質だと思います。よって、医学者(科学者)としての資質・能力には大きな問題を感じます。一方で、詐欺師としては一流なのかもしれません。たくみに虚実を織り交ぜて人をだますのが詐欺師の常套手段ですから。
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8.参考にした文献・サイト(本文中の出典資料以外で)

免疫きほんのき(ロハス・メディカル)
WEB PHYSIOLOGY 人体のしくみと働き
免疫細胞とは、頼もしい戦士たち:免疫細胞の働き(免疫プラザ)
免疫、その功罪(東京都神経研 )
免疫について(日本血液製剤協会)
免疫が挑むがんと難病 現代免疫物語beyond(岸本忠三・中嶋彰 著)
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9.関連エントリー

【基礎03】抗体とは~免疫の飛び道具
その他の関連エントリーはカテゴリにひとまとめにしています。記事下部or左欄のカテゴリリンクから、どうぞ。

【メモ】
YouTube 医学映像教育センター:サンプルムービー
目で見る医学の基礎 第2版 Vol.13 免疫系
目で見る医学の基礎 第2版 Vol.12 感染

免疫~感染症に対する生体防御(ワクチノーバ株式会社 vaxxinova Japan)
免疫は難しい
[ 2014/09/16(火) ] カテゴリ: 生物・医学の基礎 | CM(0)
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