ポストさんてん日記

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“デング熱の重症化”と“ワクチン製造の難しさ”は、デングウイルスの“ある特性”による

[ 2014/09/08 (月) ]
図による解説を追記。2014/9/9
初回公開日:2014/9/8


既エントリー デング熱、ヒトスジシマカについて に、
  • ワクチンや抗ウイルス薬はない(数種類のワクチン候補が臨床試験の各段階)
  • デングウイルスに4つの型(1型、2型、3型、4型)がある。
  • ある種類のデングウイルスに感染して回復し、その後別の種類のデングウイルスに感染すると重症型のデング熱になるリスクがあるという説が有力である。
と記載しています。その辺りの詳細な解説を引用させて頂きます。

「六号通り診療所所長のブログ」 2014/9/7
デング熱ワクチンについて

デング熱のワクチンは長く実用化に至りませんでしたが、その大きな理由はこの病気において、 「抗体依存性感染増強現象(ADE:Antibody-dependent enhancement)」という、 ちょっと特殊な病状があるからです。

デング熱のウイルスには、1型から4型という4つの血清型が存在していますが、このうちの1つに感染した患者さんが、それから時間を置いて別個の血清型のウイルスに感染すると、高率に重症化する、という特徴があるのです。

これは一種の交差免疫の作用によると考えられています。

デング熱のある型に感染すると、人間の免疫はその型のみに反応する抗体ではなく、別の3種類の型に対しても反応する抗体を産生するのですが、それが充分に機能しないばかりか、不充分な抗体があることによって、むしろ再感染時の病状の悪化に結び付いてしまうのです。
(実際には複数の抗体が誘導され、その一部がこうした現象に関わると考えられています)

抗体と言うのは一種の目印の働きをして、特定の免疫細胞とウイルス抗原とを結び付け、そこから連鎖的な反応が起こって、 ウイルスを死滅させる*1のですが、この場合は有効な反応を惹起出来ないのに、抗体でウイルスと細胞とを結び付けてしまうので、その細胞内*2でウイルスは増殖して、病状を悪化させてしまうのです。

従って、複数の血清型が流行している地域では、デング熱の重症化は起こり易いのです。

日本で現時点で流行しているのは、1型のみのようですが、これが今後別の血清型が国内に侵入して、感染が拡大するような事態になると、別の血清型による再感染が起こり、重症化のリスクが高くなることが想定されます。

現状で注意するべきは、これまでに海外でデング熱に感染したか、その可能性のある人で、臨床においては、そうした点の聞き取りを、重視する必要があるように思います。

デング熱の流行地域においては、生後半年以内では感染の事例も重症化も少なく、生後半年から1年に掛けてが、重症化の事例が多いということが知られています。
これはお母さんの抗体がお子さんに移行しているためで、それが消失する時期よりも、やや低下した時期により重症化の多いことが分かります。
つまり、抗体依存性感染増強現象は、抗体価のやや低下した時期に起こり易いのです。

こうしたことから考えると、デング熱のワクチンは4種の血清型全てに対して、同時に免疫を誘導するような作用がなくてはならず、またその4種において充分な抗体の上昇がなければ、抗体依存性感染増強現象のリスクを高める可能性がある、ということになるのです。

旧来の手法によるワクチン、すなわち培養を繰り返して病原体を弱毒化したり、病原体をバラバラにして、特定の抗原を集めたりするワクチンでは、この条件に合うワクチンを作ることは不可能です。

それでは、臨床応用が近いと考えられる、 サノフィ・パスツール社のワクチンは、どのようにしてこのハードルを、クリアしようとしているのでしょうか?
サノフィ社のワクチンは、遺伝子操作の手法により、4種の血清型の全ての抗原を含むキメラワクチンです。黄熱病という同じタイプのウイルスに対するワクチンをベースとして、そこに4種類のデング熱ウイルスの全ての血清型の抗原を、発現させる手法によって作られた、合成生ワクチンです。
理屈の上ではこれにより、全ての血清型の免疫が同時に誘導されるので、抗体依存性感染増強現象は起こらない、ということになります。


【ブログ主注】
*1 抗体は色々な働きをするが、そのうち、ADCC活性:抗体依存性細胞傷害と呼び、ウイルスに特異的な抗体が結合すると、その抗体がマクロファージやNK細胞といった免疫細胞を呼び寄せ、その抗体が結合しているウイルスを殺傷する働き。
なお、ウイルスがそれに対する特異的レセプター(受容体)をもった細胞に付着して感染するより先に、ウイルスに特異的な抗体がウイルスに結合して細胞に結合するのを阻止する働きを中和作用と呼ぶ。
*2 マクロファージやNK細胞 樹状細胞といった免疫細胞のなかでデングウイルスが増殖する、と理解しました。

【追記】
抗原抗体反応などの免疫のお話は、素人のブログ主にとっては、かなりハードルが高いです。そこで、図による解説を探して見ました。
2次感染時に発生すると考えられる抗体依存性の感染増幅現象

たとえばデング1型に初感染したヒトが後日デング2型に感染した場合、デング1型に対する抗体はデング2型ウイルスを中和することはないがウイルス粒子に結合することはできる。
したがって、感染力を有したままで、ヒトの抗体をウイルス粒子表面に付けた<デング2型ウイルス-抗体複合体>は、抗体部分のFc部分とデング2型ウイルスが増殖することができるヒト単核球系の細胞表面にあるFcレセプター(受容体)と結合することにより効率よく細胞内に取り込まれウイルスは増殖する。
この抗体依存性の感染形態によりデングウイルスは通常の10倍から時には1000倍もの高率で標的細胞に感染し、さらにウイルスレセプターを持たないがFcリセプターを有する細胞にも感染することが可能となる。これをADEと呼ぶが、この現象のために2次感染において初感染よりもデング感染者はより重症化する可能性がある。



関連エントリー

デング熱、ヒトスジシマカについて
(基礎知識01)ウイルス、ワクチン、抗ウイルス薬
(基礎知識02)免疫とは~自然免疫、獲得免疫、細胞性免疫、体液性免疫など
(基礎知識03)抗体とは~免疫の飛び道具

【メモ】
「五本木クリニック 院長ブログ」2014/9/22 デング熱はなぜ二回目に感染すると症状が重症化して「デング出血熱」になるんだ!!??
デング出血熱の病態解明の進展とワクチン開発の現状(2002年 倉根一郎氏)
PRRSにおける免疫応答(3)(2011年5月 加納里佳氏)
[ 2014/09/08(月) ] カテゴリ: 生物・医学関係一般 | CM(0)
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