ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

デング熱、ヒトスジシマカについて

[ 2014/09/07 (日) ]
グラフ更新。2015/9/14
(上記までの追記・更新記録は割愛)
初回公開日: 2014/08/28


デング熱が70年ぶりに国内感染のニュースに驚きましたので、少し勉強しました。

デング熱(Dengue Fever)とは

蚊によって感染するウイルス感染症で、デングウイルスに感染してデング熱を発症する頻度は10~50%である。 感染によりインフルエンザ様の症状が出る。
 
【潜伏期間】ふつうは1週間以内。長くても2週間です。
【発熱】軽い人も多いのですが、40度近くの高熱がでる人もいます。その場合には食欲も落ちるので、水分をしっかりとって脱水に気をつけてください。
【頭痛】激しい頭痛を訴える方はまれです。典型例では目の奥の痛みも訴えます。これまでの発症者には、必ずこの症状がないか尋ねてきましたが、みんなが訴える症状ではありません。むしろ目の奥の痛みを訴えない人の方が多かったです。
【発疹】発熱初期よりも、下熱期近くにでることが多いのが特徴です。下腿が最もでやすいですが、全身にでる可能性があります。(もっとも出現しにくいのは顔面) 典型的なものは、風疹のような細かく赤い発疹です。その一方で、融合傾向の強い発赤となる例もあります。発疹のパターンは多彩であるといのが印象です。また、発疹がでると痒みを訴える人も多いです。この発疹は数日で自然に消えていきます。出典:今村顕史医師の2014/9/3発信デング熱...次に知っておきたいこと

国立国際医療研究センターで診療した17例についての疫学的情報、臨床症状、検査所見などの詳細報告 → <速報>日本国内で感染した17例のデング熱症例(2014/9/19 国立感染症研究所)

むやみに怖がる必要はないデング熱ですが、もし、急な発熱や目の奥の痛みがあったりしたら、これだけは注意していただきたいことがあります。→「科学コミュニケーターブログ」 2014/9/22 高熱が急に...風邪?デング熱?家にある解熱薬は飲まないで!
【参考】新ルル-Aは大丈夫。ベンザブロックは銀と青はダメだけど金色のは大丈夫。

また、時には、重症型のデング熱と呼ばれる、死亡する可能性のある合併症を起こすことがある。
デング熱や重症型のデング熱のワクチンや抗ウイルス薬はない(数種類のワクチン候補が臨床試験の各段階)。

症状に応じた治療が行われ、早期発見と適切な医療機関を受診することにより、死亡率を1%未満に低下させることができる。
.血液中のウイルス非構造タンパク抗原(NS1抗原)などの検出キットが開発されている。

今回の報道をみている多くの方は、デング熱の検査が簡単に行えるものだと思っているでしょう。しかし、実際にはそうではありません。デング熱では、一般的な保険適応の検査がありません。ベットサイドで行える迅速検査キットは、未承認なので、感染症の病院などが自腹で輸入して使っています。そもそも、この検査は感度が低く、初期には感染していても陰性となってしまいます。確定診断やウイルスの型を調べるための精密な遺伝子検査などは、一部の研究施設に検体を送付して検査をお願いする必要がありました。出典:今村顕史医師のデング熱...今知っておきたいこと、および、デング熱の国内発生は「想定内」

世界的に見て、最近の数十年間で、デング熱の罹患率が劇的に増加している。

日本での感染の推移
【グラフ更新】
報告患者数グラフ201509
2015年は第36週(9月5日現在)の報告数。青:輸入症例、茶:国内症例
日本では、海外の流行地で感染し帰国した症例(輸入感染:グラフの青)が近年では毎年200名前後おり増加傾向である。2009~2013年の輸入感染発症者918人中、重症になったのは40人(約4%)。なお、統計のある1999年以降の約1,600例のうち、死亡は海外で治療を受けた1例のみ。
日本国内で感染した症例(国内症例:グラフの茶)は、1945年を最後に報告されていなかったが、2013年には、ドイツ人渡航者が日本で感染したと疑われる症例が報告され、2014年に国内感染が162事例確認された。 厚労省のデング熱サイトの『デング熱の国内感染事例の発生状況について』にデータがある。

デング熱のリスクのある国、流行状況

流行地域世界 
       出典:感染症についての情報 デング熱(厚労省 FORTH)

世界中の熱帯及び亜熱帯地域でみられ、都市部・準都市部での伝播が著明に増加。 現在、世界人口の約半数にリスクがあり、WHOは世界中で毎年5000万人から1億人がデング熱に感染していると推計。
アジアやラテンアメリカの数か国では、重症型のデング熱が、小児に起こる重篤な疾患や死亡の主な原因となっている。
デング熱の予防と制御は、もっぱら、効果的なベクター(媒介者である蚊)コントロールに依存している。(病室内への蚊の侵入を防ぐこと、など)

マレーシアでデング熱の発生件数が急増している。今年、8月30日時点でデング熱関連による感染者は6万8144人、死者は131人。前年同期は感染者は1万8923人、死者は38人。出典:WSJ 2014/9/4 マレーシアシアでデング熱感染が急増、死者は前年の4倍に―新型ウイルスが一因

アジアでの発生状況:2014年と2013年の同時期比較(2014/5/20付け)
アジア流行状況
       出典:FORTH 最新ニュース 2014年

アメリカ大陸での発生状況:2014年第33週(2014/9/2付け)
アメリカ大陸流行状況
       出典:FORTH 最新ニュース 2014年


デングウイルス

デングウイルスは日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科に属するウイルスで、エンベロープを有する球状粒子で、ウイルス遺伝子は1 本鎖RNA である。
4つの型(1型、2型、3型、4型)に分類される。ある種類のデングウイルスに感染して回復し、その後別の種類のデングウイルスに感染すると重症型のデング熱になるリスクがあるという説が有力である。

今回の発症例のうち、血清型が報告された症例は全てデングウイルス1型である。出典:デング熱の国内感染症例に係る疫学情報のまとめ(n=67)(国立感染症研究所感染症疫学センター 2014/9/5現在)

【関連エントリー】
【基礎知識01】ウイルス、ワクチン、抗ウイルス薬
“デング熱の重症化”と“ワクチン製造の難しさ”は、デングウイルスの“ある特性”による

感染経路、ヒトスジシマカ

ヒトからヒトへは感染せず、ウイルスが蚊の体内で発育・増殖*し、ヒト→蚊→ヒト→蚊→ヒトの経路で感染する。日本脳炎ウイルスにおけるブタのような増幅動物は存在しない。 (ヒトが唯一の増幅動物)
* ウイルス含有血液を吸った蚊が感染性を持つまで8~12日かかる。5日との説明もある。
主たる媒介蚊はネッタイシマカ(Aedes aegypti)(日本には常在していない*)および、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(青森県以南の都市部によく見られるヤブカ)である。 ネッタイシマカの方がより媒介しやすい。
なお、国内の住宅地でヒトスジシマカと同程度に生息数の多いアカイエカは、デング熱の媒介蚊ではない。
* 【参考】成田便、やっかいな蚊も搭乗? 感染者増えるデング熱(朝日新聞デジタル2014/7/31)

ヒトスジシマカは、日中、屋外での活動性が高く、活動範囲は50~100メートル程度。国内の活動時期は概ね5月中旬~10月下旬頃まで。成虫の寿命は平均で13.8 日(9月)~40.8 日(6月)との文献がある。

仮に流行地でウイルスに感染した発症期の人(日本人帰国者ないしは外国人旅行者)が国内で蚊にさされ、その蚊が他者を吸血した場合に、可能性は低いながらも感染する。ただし、仮にそのようなことが起きたとしても、その蚊は冬を越えて生息できず、また卵を介してウイルスが次世代の蚊に伝わることも報告されたことがないため、限定された場所での一過性の感染と考えられる。

ヒトスジシマカ

蚊の種類と代表的な感染症
蚊の種類と代表的な感染症
出典:Dengue in Japan?(日本のデング熱について)(2014/8/27 国際感染症センター 忽那賢志医師)

温暖化の影響で、ヒトスジシマカの生息域が拡大している。

2010年現在、日本における分布域の北限が東北地方北部であり、この北限が年々北上している。2010年の調査では青森県内で初めて生息が確認され、生息しない地域は北海道だけ。ヒトスジシマカの分布域を定める気候パラメーターは年平均気温11℃の気温。
ヒトスジシマカ北限
   出典:地球温暖化「日本への影響」2014/3/17

デング熱の国内発生は「想定内」
今村顕史医師の発信から部分的に引用

実は想定内だった国内発生
これまで多くのデング熱患者を診療してきた自分にとっては、この国内発生は想定内の出来事でした。
海外渡航者の発生は、毎年200例前後は報告されています。つまり、最低でも5年間で1000人くらいがデング熱を国内で発症しているわけです。そして、デング熱ウイルスを媒介することができるヒトスジシマカは、北海道以外の全国に常在しています。この状況を考えれば、国内発生が起こることに何の不思議もないのです。

もっと前から国内流行はあった?
今までにもデング熱の散発的な発生はあったのではないかと考えています。
デング熱の多くは、一過性の発熱などで発症し、自然軽快していきます。仮に、これまでに国内発生があったとしても、本人も医療者も、まさか国内の発熱をデング熱とは思わないため、検査そのものが行われる可能性がほとんどなかったはずです。さらに、デング熱の検査のハードルも高い(ページ内リンク)ため、海外渡航者以外に検査することはありえなかったのです。
このような現状を知れば、デング熱の国内発生が、これまで全くなかったと断言することはできないはずです。むしろ、散発的に発生していたと考える方が自然だといえるでしょう。

参考にした主な資料

感染症についての情報 デング熱(厚労省検疫所 FORTH)
デング熱と重症型のデング熱について(ファクトシート 2013年9月)(厚生労働省検疫所)
デング熱(国立感染症研究所感染症情報センター) 
デング熱診療マニュアル(案)(厚労省)
デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き 地方公共団体向け (案)(2004/7 国立感染症研究所)

【メモ】
日本感染症学会 四学会緊急セミナー「エボラ出血熱およびデング熱への対応」(動画)2014/10/13
デング熱の基礎と疫学(森田公一先生(長崎大学熱帯医学研究所))
デング熱の診断、NS1

デング熱の臨床(大西健児先生(都立墨東病院感染症科))
非重症化デング、重症化デング

「アイラブサイエンス」 2014/10/11  熱帯感染症を媒介する蚊を絶滅させよ!「遺伝子組み換え」「不妊虫放飼法」「天敵クモ」

「日経トレンディネット 大西睦子氏」 2014/9/12 日本だけじゃない! 「デング熱」が世界規模で拡大する理由は?

「Master of Life Blog Remaster」 2014/9/9 【公衆衛生】デング熱って無症状の患者さんから感染できる?蚊から卵を通じてウイルスは伝わる?感染経路について二つの疑問。


「感染症診療の原則」2014/8/31 新潟県の失敗、NHKの誤報 追記:横浜




「感染症診療の原則」2014/8/27 冷静じゃない人 と その周辺(渡航歴なしデング熱症例)

環境省レポート 地球温暖化と感染症 いま何が分かっているのか?
.
[ 2014/09/07(日) ] カテゴリ: 生物・医学関係一般 | CM(0)
コメントの投稿










管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

このブログについて
管理人 icchou から簡単な説明です 更新,追記の通知はTwitter
カテゴリ
最新記事
ブログ内検索