ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

ポロニウムPo-210(メモ)

[ 2011/12/31 (土) ]
ポロニウム210事件について
(原子力安全研究協会 放射線災害医療研究所 古賀佑彦氏)
緊急被ばく医療 ニュースレターNo.21 2007年3月


ポロニウム210 情報シート

国立情報学研究所のサイトに掲載されていた『ポロニウム210 情報シート』。現在は消されている。 {米国保健物理学会ホームページ http://hps.org/documents/po210_information_sheet.pdf 和訳}

概要

 ポロニウムは地球の地殻中に非常に低い濃度で天然に存在する放射性元素である。マリーとピエールのキュリー夫妻が、ウランを含むピッチブレンド鉱石の放射能の原因を調査中、1898 年にポロニウムを発見した。
 純粋なポロニウムは低融点で、かなり揮発性である。原子量が 192 から 218 までの、25 以上のポロニウムの同位体が知られている(同位体は、原子核中の陽子数は同じだが、中性子の数が異なる元素である)。 
 すべてのポロニウムの同位体は放射性であるが、そのほとんどは非常に短命で即座に壊変する。
3つのポロニウムの同位体だけがある程度の時間存在する。言い換えると、それらは比較的長い半減期を有する。これらの同位体はポロニウム 208、ポロニウム 209 及びポロニウム 210 である。ポロニウム 210 は顕著に天然に存在するポロニウムの同位体であり、もっとも広く使用されている。
 ポロニウム 210 の半減期は 138 日で、α粒子(α粒子は 2 個の陽子と 2 個の中性子を持つ)を放出して安定な鉛 206 に壊変する。比放射能は 166TBq/g であり、1μg で 50Sv の線量を全身に与える。

由来

 ポロニウム 210 は天然に存在する。われわれの体内にも極微量存在し、土壌や大気にも少量存在する。ウラン鉱石や鉱物の化学処理によって産出されるけれども、ウラン鉱石は 1 トンあたり 0.1mg以下のポロニウム 210 しか含んでいない。
 ポロニウム 210 は、通常、ビスマス 209(安定同位体)に中性子を衝突させることで、原子炉内で人工的に生成される。この衝突は放射性のビスマス 210 を生成するが、これは半減期が 5 日である。ビスマス 210 はβ壊変によりポロニウム 210 に壊変する。ミリグラム程度のポロニウム 210 がこの方法により生成される。より長寿命の同位体ポロニウム209(半減期103年)とポロニウム208(半減期2.9年)も原子炉や粒子加速器で生成されるが、非常に高価である。

使用

 ポロニウム 210 は主に静電気の除去器に使用される。これは紙の圧延、シート状プラスチックの製造及び合成繊維の紡績のような工程により発生する機械中の静電気を除去するために設計された装置である。ポロニウム 210 は一般的に裏張りの箔上に電気めっきされ、ブラシ、筒あるいはそのほかの入れ物に封入される。ポロニウムからのα粒子は近傍の空気を電離し、生じた空気のイオンは、空気と接触した表面で静電気を中和する。
 ポロニウム 210 は光学フィルムやカメラのレンズから埃を除去するブラシにも使用される。静電気除去器は概して、1GBq から数 10GBq の放射能を含む。ポロニウム 210 は中性子源を製造するためにベリリウムとも混合され得る。そのほかのα放出核種は頻繁ではないのもの、時々医療や科学的な研究に使用される。

健康への影響

 ポロニウム 210は体内に摂取されたときのみ健康に有害である。外部被ばくは重要ではない。なぜならポロニウムはα放出核種であるからである。α放出核種は体内では生物学的な損傷を実際に与え得るが、体外の空気中では数 cm しか進むことができない。
 ポロニウムは経口あるいは呼吸により体内に摂取される。経口で摂取されたポロニウムの 50%から90%は即座に消化器官に移行し、便として体外に出る。体内の残留分は血液中に移行し、半減期50 日で減少していく。ポロニウムからかなりの線量が体内の多くの組織に与えられることになり、ほとんどすべてのほかのα放出核種よりも多く、ほぼ全身への線量を与える。一般的に、不溶性のものを吸入後に一時的に肺に沈着する場合を除いて、脾臓と腎臓は、ほかの組織よりもポロニウムを濃縮する。線量は脾臓の方が高いにもかかわらず、影響は脾臓より腎臓の方に現れるのが一般的である。吸収されたポロニウムのおよそ 45%が脾臓、腎臓及び肝臓に沈着し、10%が骨髄に沈着し、残りはリンパ節や呼吸器官の粘膜内壁を含む全身に分布すると評価されている。
 ポロニウム 210 から放出されるα粒子は細胞構造を破壊し、細胞核を断片化し、DNA を傷つけ、細胞死を引き起こす。
 消化器官におけるポロニウム 210 のようなα放出核種による生物学的な損傷の程度はよく知られていない。1960 年代の動物実験によるデータには、粘膜内壁へもたらされる単位 Bq あたりの線量は、α放出核種はβ放出核種やγ放出核種と比較して小さいことを示すものもある。これはα粒子の飛程の短さによるものと思われる。食物は塊となり筋肉収縮によって消化器官内を進む。α放出核種を含む食物塊が消化器官を通過するとき、腸の内壁を被ばくさせるほど十分近接するのは、食物塊の端にあるα放出核種のみである。
 腸の内壁に包まれる急速に分裂する細胞は、放射線感受性が高い。消化器系の症状は 5∼15Gy の急性線量で発生し、ネクローシス{細胞の壊死}と潰瘍は 40∼50Gy で発生するだろう。この程度での急性の消化器系の症状の症候は、吐き気、嘔吐及び消化器出血である。骨髄の機能低下は、1 回の全身線量 5Gy で発生するであろう。
 体内のポロニウム 210 は、標準的な体外放射線測定器では検出できない。α線のため、個人の尿や便を検査することが検出の方法となろう。ポロニウム 210 で誰かを毒殺するためには、大線量が必要となるだろう―天然由来のポロニウム 210 では不可能であるが、人工のポロニウム 210 であれば可能である。

半減期比放射能
(TBq/g)
崩壊形式アルファ(α)エネルギー
(MeV)
ポロニウム 2082.9 年21.8α5.1
ポロニウム 209103 年0.63α4.9
ポロニウム 210138 日166α5.3


線量の比較

通常の生活や医療処置から受ける線量と、急性影響を引き起こしうる放射線照射量を以下に示す。

線量(Gy)
ニューヨークからカリフォルニアまでの周遊飛行0.00006
胸部エックス線撮影0.00006
腹部単純エックス線撮影0.001
平均的な年間自然放射線量0.0036
腹部 CT スキャン0.01
NRC 職業人の年間線量限度0.05
白血球数を減少させる急性被ばく線量1
医療処置をしない場合のヒトの半致死線量
(別名 LD50/30)
4.5

訳者注:原文にある旧単位表記、{ }内は和訳に当たって追記の箇所。なお和訳に当たっては、米国保健物理学会の了解を得て、JAEA 金井克太氏と企画委員会で行いました。(原文改訂のため 2007 年 2 月 21 日改訂)
[ 2011/12/31(土) ] カテゴリ: 自然放射線の勉強 | CM(0)
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