ポストさんてん日記

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【日本版コラム】東京電力の「発送電分離」、日本のエネルギーイノベーションに不可欠

[ 2011/06/02 (木) ]
http://jp.wsj.com/Japan/node_243883
5月31日ウォール・ストリート・ジャーナル 尾崎弘之東京工科大学教授のコラムの見出しである。

【つぶやき】

●米国、EUの自由化・送配電分離の違いや、初期のデメリットが判った。
●日本が送配電分離を進めるための課題が判った。ただし、その姿や達成可能なのか、いつ達成できるのか、といった具体的なイメージがわかない。


【抜粋】
発送電分離と電力自由化

 発電、送電、配電(電力小売り)が分離されるようになったのは、1990年代に「電力の自由化」が欧米で進んだことだ。
 1980年代に世界の電力需要の伸びは頭打ちになった。また、安価な天然ガス採掘とガスタービン技術の向上によって、火力発電業者の新規参入が容易になった。電力業界が規制から市場原理による自由化へシフトしたのである。
 米国では1996年に、電力会社は送電線を開放し、電力卸売市場形成、発電事業の自由化が義務付けられることになった。
 EUは1996年に、加盟国は2003年までに発電部門と配電部門を自由化し、送電部門の使用について電力会社は差別的な扱いを行わないことなどが義務付けられた。EUを電力の面で、ひとつの国のように連結することが目標とされたのである。

競争が起きる発電・配電と競争が起きない送電

 発電部門と配電(電力小売り)部門は新規参入企業によって市場競争を起こすことができるが、送電部門は本来公共財であり、競争に適しない。したがって、効率的に自由化を行うためには、発送電分離して、送電部門を公益に基づいて管理することが必要となったのである。
 発送電分離の方法は、国・地域によって異なる。欧州の電力会社は、もともと国営企業が行ってきたケースが多く、株主の権利調整が不要で、発電、送電、配電(電力小売り)に電力会社を分割することが容易だった。
 これに対して米国の電力会社は、規模が異なる多数の企業が地域毎に入り組んでいたので、送電部門は既存電力会社が保有したままだが、送電網の管理はISOと呼ばれる「系統運用機関」が行うことが一般的となった。

中途半端な日本の電力自由化

 一方、日本では、自由化を「中途半端に」導入するという方法が取られた。
1)入札によって発電事業を行う「卸供給事業者」(IPP)を認めること。現在ではIPPではなく、業務用大口顧客をターゲットにした「特定規模電気事業者」(PPS)が、新規発電会社の主流となっている。
2)配電(電力小売り)を段階的に自由化すること。現在では50kw以上の大口利用者(小規模工場、中小ビル、スーパーなど)の市場は自由化されている。
 自由化が中途半端だった結果として、PPSがそれ程伸びなかった。理由は2点
1)電力会社が積極的に電気料金を引き下げて、PPSにシェアを渡さなかった。平均販売単価は1995年から10年間で約2割下がった。
2)PPSが使う電源が、二酸化炭素(CO2)排出量が多い火力発電が中心で、顧客から敬遠された。

発送電分離・自由化のデメリット

 日本の電力会社は、発送電分離のデメリットを指摘してきた。分離すると、電気料金の高騰を招き、企業利益が優先されるので、長期的なエネルギー政策を反映させにくいという主張だ。
 自由化には、利益優先で設備投資がおろそかになり、電力の安定供給が損なわれるという懸念もつきまとう。自由化に反対する人がよく引き合いに出すのが、2003年8月に発生した北米大停電である。自由化が進み、小規模な電力会社が乱立しており、発電能力の増強に釣り合う送・配電網への投資が十分に行われてこなかったことが停電の主な原因とされている。また、英国やカリフォルニア州でも競争不全で電力料金が高止まりするという自由化反対論者を勢いづかせる事例がある。
 さらに、米国や欧州は域内に安価な天然ガスが豊富にあり、PPSが新規参入すれば、安い電力を供給しやすいという日本にはない利点がある。また、欧州では、各国が連結送電線で網の目状につながっており、国内で供給不安が起きても、他国から電力供給を受けることができる。日本は、国内でさえ東西二つに分かれ、隣国ともつながっていない。自由化発送電分離をしても、本来期待できるメリットが欧米より出にくいことは事実である。

日本は発送電分離を真剣に考えるべき

 しかし、設備投資がおろそかになるという自由化の弊害には対応方法がある。例えば、参入している電力会社やPPSに一定水準以上の設備の余裕を確保することを義務付ければ良い。また、米国で行われているような予備力の枠を売買する「キャパシティ・クレジット」と呼ばれる制度を取り入れることもできる。
 発送電分離・自由化は、コスト削減やサービス向上を目的とした競争と技術イノベーションが進みやすくなる。
 これから期待されるイノベーションは、出力不安定な太陽光発電に対応できる「クリーンエネルギー仕様の送電網」である。現在の送電網は発電所の出力調整への対応能力が高く、停電時間も短い。しかし、需要側から送電網への電気の逆流(逆潮流)には弱い。家庭や工場で太陽光パネルを設置する量が増え、天候や電力需要によって逆潮流の量が大きく変動すると、日本の送電網でも対応困難である。現状、太陽光発電比率は電力全体の1%未満なので、逆潮流は巨大な送電網の中で吸収できるが、比率が数十%になると、新たな送電網を作るイノベーションが必要となる。ただ、ばく大な賠償責任が続く東京電力にそのようなことをする余裕があるだろうか。おそらく、送電網を分離して、他社の参入を促進しなければ、新しいシステムの創造は困難であろう。

 クリーンエネルギーの比率を「本気で」増やしたいのであれば、どうするべきか。そのためには、今の送電システムを大きく変えるイノベーションが必要である。発送電分離は、「政治的な言い訳」ではなく、電力ビジネスのイノベーションという大きなテーマの一環として捉えるべきだろう。

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●【続01】発送電分離の経緯・過去の取り組み、総合資源エネルギー調査会、村田成二・事務次官
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[ 2011/06/02(木) ] カテゴリ: エネルギー政策,発送電分離 | CM(0)
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