ポストさんてん日記

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海洋大循環とは?弱まりつつあるのか?

[ 2014/01/20 (月) ]
海洋大循環は長期的な気候変動(地球温暖化)に影響する最も重要な要素の一つであると考えられています。海洋大循環とは何か?弱まりつつあるのか?などについて勉強した結果をまとめます。

海洋における水の流れ

海面を吹く風の働きによって生じる風成循環と、水温や塩分濃度からくる密度の違いによって生じる熱塩循環とに分けられる。
このうち風成循環は、深さ数百m程度までの表層の流れ(表層流)であり、日本近海の「黒潮」「親潮」と呼ばれる海流も、北太平洋をめぐる風成循環の一部といえる。
一方、熱塩循環は、数百m以深の深層の流れ(深層流)であり、秒速1cm程度で極めてゆっくり流れながら、平均1,000年(最長2,000年)程度の時間をかけて全海洋を循環すると考えられている。

ブロッカーのコンベア・ベルト

ブロッカーのコンベア・ベルト
ウォーレス・S・ブロッカー博士(アメリカ)が80年代半ばに、ブロッカーのコンベア・ベルトと呼ばれる全地球を覆う海洋大循環流が存在し、その表層水と深層水とが千年単位で入れかわることを発見した。
現在の海洋循環の最も大きな特徴の1つは、大西洋の上層水が強い勢いで北へ動いていることでしょう。この海水がアイスランド近辺に到達すると、カナダやグリーンランドから吹いてくる冷たい冬の空気(カナダ気塊)で冷却されます。アイスランドに到着したときは12~13℃だった海水が、2~3℃にまで冷やされます。大西洋はとくに塩分濃度の高い海ですが、この冷却によって表層の海水密度が増して、海底へと沈んでいき、南方へ流れます。この海水の大部分はアフリカの方に向かって流れ、そして南半球の周極海流へと流入します。
気候にとってこの海流が非常に重要なのは、それが大量の熱を運ぶからです。このコンベアの流量は、あのアマゾン川の実に100本分に相当します。地球上の降水量をすべて合わせたほどの量です。(1秒間に2,000万m3)
コンベアで上層を北へ流れる部分により運ばれ大気に放出される熱量は、ジブラルタル海峡から北の大西洋にまで及ぶ地域に注がれる太陽熱の約25%に相当します。実に巨大な熱量です。これが大気へ放出する熱量は膨大であるため、北ヨーロッパの気温はもしコンベアベルトがなかった場合と比べて5~10℃暖かく保たれている。
出典:ブロッカー博士記念講演『我らが青い星“地球”の気候システムが危ない』(旭硝子財団 H8年度ブループラネット賞)

熱塩海洋循環

上図は、北大西洋で沈んだ海洋が、インド洋と北太平洋で浮上することを示しているが現在では、沈み込みの地点が4カ所あることが確認されている。(下図のL,G,W,R)

熱塩海洋循環
          Stefan Rahmstorf (2006) Thermohaline Ocean Circulation
これらを転換点として、赤色の表層海流は、青色の深層海流、あるいは紫色の海底海流へと折り返され、ACC(南極周極流 Antarctic Circumpolar Current)を形成した後、インド洋、太平洋、大西洋で表層へと湧昇する(海流の経路や湧昇地点に関しては異説もある)。
赤丸は熱塩海洋循環と風成海洋循環の両者による湧昇地点、黒丸は風成海洋循環による湧昇地点。
緑色の海域は塩分濃度が高い領域で、降雨量が少なくて、陸地では砂漠が多い中緯度高圧帯付近に見られる。
水色の海域が塩濃度の薄いところで、降雨量が多い海域。赤道の真上は、雨が多いためもあって、塩濃度は高くはない。

熱塩海洋循環は「海洋における熱と塩分の差異によって駆動される」が、もう少し詳しく説明しよう。北大西洋や南極での海水の氷結は、氷自体は純水であるから、塩分を排出し、海水の塩分濃度を高め、その結果、海水の凝固点が降下する。極地の気温は、きわめて低いので、海水は液体のまま、どんどん水温を下げていく。塩分濃度が高くなって、温度が低くなることで、表層海水は、深層海水よりも密度が高くなり、海底に沈み込む。そしてこの沈み込みが、熱塩海洋循環の動力因となっている。
出典:熱塩海洋循環の停滞は何をもたらすのか(永井俊哉氏 システム論アーカイブ論文編)

【少し違う説明】
熱塩海洋循環の最大の駆動力は、当然、太陽エネルギーでして、赤道付近を通っているときに最大のエネルギーを受けます。
一つは、大西洋のアフリカ沖を通過するときで、ここで太陽熱を受けて、かなりの水分が蒸発し、塩分濃度が上がります。そのときに、雨が大量に降れば話は別ですが、そうでなければ、赤道付近を通過することで、海水の比重は高くなります。それが北上して冷やされるとさらに重くなり、アイスランド付近で一部が沈み込みます。海流はさらに北上して、残りがグリーンランド湾で沈みます。この海流は、メキシコ湾岸流ですが、海水の温度が高いので、そのお陰でヨーロッパの冬は、その位置から考えられるほど寒くないのです。
赤道を通過するもう一つの地点は、ニューギニア付近を通過しているときですが、そこから赤道にほぼ平行に移動し、喜望峰の沖に向かうのですが、余り緯度が違わない経路なので、北部大西洋ほど気候に影響するような重大な現象が起きるということではないのです。
出典:地球は寒冷化に向う!!?(安井至氏 市民のための環境学ガイド 2013/1/12)

現在、熱塩海洋循環は弱まりつつあるのか

将来の予想は不確実性が高いようです。

熱塩海洋循環は、地球温暖化との関係で近年注目されている。すなわち、地球温暖化が、極地の氷の溶融による塩分濃度の低下水温上昇をもたらし、その結果、海水の密度が低下して、沈み込みが停滞ないし停止するのではないかという懸念がもたれている。
2005年に、Harry L. Bryden ら、イギリスの国立海洋学センターの研究グループは、2004年の北大西洋の熱塩海洋循環が、1957年と比べて、30%も速さを落としていると発表した[Harry L. Bryden et al.(2005) Slowing of the Atlantic meridional overturning circulation at 25°N]。
しかしながら、現在すでに熱塩海洋循環に異常が見られると主張している科学者は少数派である。多くの科学者は、その異変を自然の変異ないし測定誤差の範囲内とみなしている。
気候変動に関する政府間パネル第4次評価報告書(IPCC, 2007)では、深層循環の変化に何らかの傾向があるかどうかを判断する十分な根拠なく、21世紀中に深層循環が大規模かつ急激に変化する可能性はかなり低いとしている。
出典:熱塩海洋循環の停滞は何をもたらすのか(永井俊哉氏 システム論アーカイブ論文編)

現在のモデル予測では、大西洋の深層循環は、21世紀のうちに弱まる可能性がかなり高いという結果が出ています。 しかし、深層循環の急激な弱まりや完全な停止を予測しているモデルはなく、深層循環の強さには、ほとんど変化がないという予測から50%以上弱まるという予測まで大きな幅があります。 これらのモデルの予測結果を平均すると、2080~2099年の大西洋の深層循環の強さは25%弱まるという結果がでています。
出典:気候と海洋の知識 深層循環の変動について(気象庁)

現実の海洋における熱塩循環は未だに大きな謎に包まれています。熱塩循環の流れが微弱である故に直接観測が大変困難であることが、その第一の理由です。 現在の図は理想化した理論や化学トレーサーの分布に基づいて熱塩循環の様子を大雑把に推測したものに過ぎません。 このような場合にこそ、スーパーコンピュータの力を借りた数値シミュレーションが問題を解決する万能の手段であると思われるかもしれません。しかしながら、ここにも大きな壁が存在します。
出典:熱塩循環(東大理学部 地球惑星物理学科

3月にでる第2作業部会報告書に注目ですね。

【参考】
太陽放射と地球放射の緯度による違い

地球の放射収支
       出典:「駄目オヤジのぼやき」太陽放射と地球放射

赤道域は、太陽放射>地球放射であり、極域は太陽放射<地球放射であるため、低緯度側から高緯度側へのエネルギーの輸送があることを示している。このエネルギーの輸送を担っているのが、①大気の大循環(ハドレー循環,ジェット気流,極循環)、②海洋の大循環(熱塩循環)、③水蒸気(潜熱)による熱輸送である。この熱輸送があるので、地球上は赤道直下から北極圏までの広い範囲にわたって人が居住できる環境になっている。

【関連エントリー】温暖化のメカニズム~温室効果ガスによる赤外線の吸収放出

主な参考文献
上記出典を記載した資料の他は以下の文献。

大気と水の循環~地球の成り立ちと気候変動(環境展望台:国立環境研究所)
海洋大循環とは(コトバンク)

関連エントリーはカテゴリーにひとまとめにしています。記事下部or左欄のカテゴリーリンクから、どうぞ。

【メモ】
「macroscope」 2014/7/1 メキシコ湾流
NHK高校講座地学 第40回 大気と海洋 大気と海洋の結びつきこれは勉強になりました
NHK高校講座地学 第34回 大気と海洋 大気の大循環
海の深層と気候(羽角博康 東京大学気候システム研究センター)
深層海流
[ 2014/01/20(月) ] カテゴリ: 地球温暖化 | CM(0)
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