ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

除染1ミリシーベルトの愚(玄侑宗久氏)~リスクコミュニケーションの失敗の観点

[ 2013/10/17 (木) ]
丹羽太貫名誉教授の発言 を追記 2013/10/21


「Will」2013年6月号に掲載の表記論説。
リスクコミュニケーションの失敗の観点から、“なるほど”と思ったセンテンスをつまみ食い的に引用しました。詳細は原文をご覧ください。

つまみ食い的な引用

  • 事の発端は、2011年4月に行われた計画的避難区域の設定と、学校の校庭で遊ぶための基準設定の齟齬だったような気がする。
  • いくらなんでも、同じ値を少しでも超えたら避難せよというのに、少しでも下回れば子供に遊んでいいという話は無茶である。それに抗議する人々が、県内の父兄をはじめ大勢で文科省の前に坐り込み、基準は「年間1mSv以下」にすべきだと訴えた。やがて、内閣参与に採用された元ICRP(国際放射線防護委員会 )の委員、小佐古敏荘(こさことしそう)氏が4月29日、涙の記者会見をするに及び、文科省は抗議を認める形で「1ミリ以下」という基準値に変更したのである。
  • 少なくともICRPの委員たちからは、彼の行為が「これまでの学問的蓄積を無にした」と批判されているのである。
  • 小佐古氏の涙ながらの発言を歓迎した人々は、次々に専門家たちを糾弾していった。
  • 素人が専門家たちをジャッジし、マスコミもそれに従った。学問にとって、こんな不幸なことがあるだろうか。
  • その間に過敏な意見を振りまいた人々のなかには、どう見ても放射線防護学、生物学、影響学などの専門家はいなかった。そして2011年7月、一見、専門家と思えるアイソトープ研究所所長、児玉龍彦氏が衆議院厚生労働委員会でこれまた涙ながらの参考人発言を行なったことで、悲観派はその意を強くする。さらに『内部被曝の真実』という脅しのような彼の著書が、迷っていた多くの人々に県外避難を決意させるのである。
  • 私はこの事態の責任の一端が、マスコミにもあると思っている。素人と一緒になって専門家たちを埒外に追いやり、その復権に手を貸そうともしない。
  • いみじくも、私の知る編集者が言った。「玄侑さん、安全は売れないんですよ。売れるのは危険なんです」なるほど、そうなのだろう。フクシマは、いまやマスコミの大事な商品なのだ。
  • 県内に住み、安心材料を捜す私には、明るい材料が次々に見つかるのだが、マスコミはこれらを決して大きく扱うことはなかった。こんな問題にも、資本主義の論理が蔓延しているのだと思うと、本当にやりきれない。
  • やっぱり目指すのは1ミリだ、という雰囲気は、2012年4月の厚労省による基準値改訂によって明らかに強まった。当時、厚労相だった小宮山洋子氏によれば、「(暫定基準の)年間5mSvでも安全は確保されていたが、子どもをもつお母さんたちが心配していたので、安心してもらうために年間1mSvにしなげればならなかった」とのこと。ここにおいて専門家の研究成果は全く尊重されることなく、それどころか政治判断という名目で踏みにじられた
  • 小宮山氏は、いまでも「この基準値のままでいい」と主張し、「世界に誇れる基準」だとするが、いったい何を誇るというのだろう。こうなると、単に潔癖症が一日何度も掃除することを誇るようなものだ。
  • 低線量被曝についても、よくわからないのだから最悪に考えておいたほうがいい、という態度が、どうやら「知的」な人々の基本姿勢になってしまったのだ。
  • 1ミリシーベルトを目指す除染とは一体何なのか、もう一度考えてほしいのである。
  • こんなせつない景色はこれまで見たことがない。それは学問の無力さ政治の無知と横暴メディアの無責任など、実にさまざまな思いを喚起させる。総じて言えば、せつなくて仕方ないのである。
    もう二年の時間が経ったのだから、あらためて専門家たちにきっちりと、今度は泣かずに考えを述べてほしい。メディアもいまさら「危険」など売り物にせず、真の復興のための智慧を絞ってほしいのである。
    停電や汚染水漏れなど、このところ福島第一原発の未収束状況が露わになりつつある。毎日四百トンも出る汚染水の処理のほうが、除染などより遥かに喫緊の課題であることは間違いない。

なお、この論説に対しては、『余剰線量であるとか、小麦の移行とか、間違っているところが多々あります』との指摘がありますが、上記引用部分は問題ないかと。

【追記】
丹羽太貫名誉教授の発言ほか
出典:福島民報2013/03/25 第二部 安全の指標(12) 揺らいだ基準 世界の総意生かされず

  • 小佐古先生がしたことはICRP(国際放射線防護委員会)の考えにもとる」ICRP委員で京大名誉教授の丹羽太貫(68)は、シンポジウムに出席していた保物学会長で元ICRP委員の小佐古敏荘(62)を批判した。
  • 小佐古先生が涙を流して抗議した映像ばかりが流され、福島の現場では『1 mSvにすべき』との発言として伝わった」
  • (記者)「1 mSvの呪縛」が政府の政策、県民の意思決定を硬直化させた
  • (記者)幻と消えた報道機関向け勉強会で小佐古が「1~20 mSvの下方部分から選定し、子どもの感受性の高さを考慮すると5 mSvが妥当。将来的には1 mSvにすべき」と丁寧に説明しようとしていたことが資料で明らかになっている。
  • 「『将来的には1 mSv』が、現場には『1 mSvにすべき』としか伝わらなかった。真意がきちんと伝わらなかったのなら、後からでも時間をかけて説明する努力をすべきだった」

自主避難者が頼った専門家について次のような分析があります

宝田氏の研究は、いわゆる「自主避難」をしている人々がSNSやメールなどインターネット上のコミュニケーション手段に支えられている側面が大きいことや、武田邦彦・児玉龍彦・早川由起夫の3氏の主張を選択的に重視していることを社会調査によって明らかにしている点で大変貴重なものである。

出典:なぜ科学は放射能パニックを説得できないのか — 被害者・加害者になった同胞を救うために社会学的調査が必要

【武田邦彦・児玉龍彦氏について】きわめて主観的なメモ(信用する専門家、しない専門家)
【早川由起夫について】(メモ)早川由起夫を初めとする各氏について

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[ 2013/10/17(木) ] カテゴリ: 放射線のリスクに関する | CM(5)
郡司さんで、語れていない、売血とは
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/9043/baiketsu/index.html
[ 2013/10/27 20:31 ] [ 編集 ]
http://8910-1000.at.webry.info/200801/article_26.html

ここに、北村さんがコメントをされています。 
[ 2013/10/24 22:23 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
いずれも、内容の濃い資料ですね。
ありがとうございます。
[ 2013/10/22 12:06 ] [ 編集 ]
追記
草田氏が過去に興味深い事を
http://www.lap.jp/lap1/nlback/nl35/nl35-7.html
[ 2013/10/21 22:46 ] [ 編集 ]
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080304150708.pdf

これを読んで、行政政府が、どう傾くかわかるはず。

 リスクコミの意味も理解していないから、安易にリスコミなんて言葉が氾濫するのだよ。リスコミという言葉を素人が安易に用いるべきない。

社会学はHIV血液感染にどうやくだったか。

栗岡氏の構成主義的社会学

http://jaids.umin.ac.jp/journal/2006/20060802/20060802067077.pdf
[ 2013/10/21 22:42 ] [ 編集 ]
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