ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

今世紀末の気温、海面水位上昇(IPCC第5次評価報告書の理解ノート)

[ 2013/10/04 (金) ]
IPCC第5次評価報告書(IPCC AR5)が発表されました。そのうちの表記の概要などについて、自分なりの理解ノートとしてのまとめです。

0.今後の発表予定など

●2013/9/27 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の政策決定者向け要約(SPM)(Summary for Policymakers)→オリジナル日本の機関による邦訳
●2013/9/30 同上full report→オリジナル(PDFで2216ページと重いので直リンクしません)、邦訳は日本の機関から出る予定
●2014年3月25日~29日 IPCC第38回総会(於 横浜市)、第2作業部会報告書(温暖化の影響)
●2014年4月7日~11日 IPCC第39回総会(於 ベルリン(予定))、第3作業部会報告書(将来への影響を可能な限り抑える緩和措置の検証)
●2014年10月27日~31日 統合報告書に関するIPCC総会(於 コペンハーゲン)、統合報告書

以下、出典はSPM(Summary for Policymakers)の日本の機関による邦訳
1.世界平均地上気温と世界平均海面水位上昇の変化予測

下記が、“2100年に気温が最大4.8℃上昇とか海面が最大82cm上昇”との報道などの出典です。
         1986~2005年の平均に対する偏差
平均気温、平均海面水位02
        「可能性が高い予測幅」は、モデル予測の5~95%の信頼幅

この予測は「気候モデル」というプログラムを用いたシミュレーション結果なので、計算のためのインプット条件として4つのシナリオを使用しています。
これをRCP(Representative Concentration Pathways)シナリオといっており、放射強制力(地球温暖化を引き起こす効果)をもたらす大気中の温室効果ガス濃度エーロゾル*の量がどのように変化するか仮定したものです。
*気象庁の用語ではエアロゾルではなく、これを使うようです。エーロゾルは、大きさ,濃度,化学成分ともさまざまな大気中の微粒子。自然起源の化合物と人間活動の結果として排出された化合物の両方を含む。

具体的には、
  RCP8.5:「高位参照シナリオ」2100年以降も放射強制力の上昇が続く
  RCP2.6:「低位安定化シナリオ」2100年までにピークを迎えその後減少する
  これらの間に位置して
  RCP6.0:「高位安定化シナリオ」2100年以降に安定化する
  RCP4.5:「中位安定化シナリオ」

どのシナリオを実現させるか?は世界的規模での政策合意いかんによる訳です。
なお、報告書全体に渡って可能性の表現が統一されており、
上記のシミュレーション結果表は 「可能性が高い」=66~100%です。

【可能性の表現】
可能性の表現02

2.RCPシナリオの具体的な姿

各シナリオがどんな内容なのか?、2つのグラフが示されています。

           RCPシナリオに対応する化石燃料からの二酸炭素排出量
RCPシナリオに対応する化石燃料からの二酸炭素排出量
これは、具体的なイメージを持てますね。
RCP2.6を見ると、2020年頃がピークでその後、急激に減少するもので、CO2回収・貯留:CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage)などの効果も見積もりに入れているのかも知れません(個人的にはRCP2.6を実現するのは、かなり難しいかと。)
RCP8.5は現行のままで新たな対策を実施しないケースのようです。
予想的にはRCP4.5RCP6.0になってくるのでは、という論説が多いようです。

このての図表を見るときは、単位に注意が必要です。CO2換算の場合と炭素換算の場合があります。分子量の比から、
  CO2換算:炭素換算=44:12=3.7:1 の関係です。
別資料から、2010年の温室効果ガスの排出量は、CO2換算:303億トン炭素換算:82億トン になっており、上記のグラフと整合します(当たり前ですが)。なお、この内、日本の排出量は3.8%のCO2換算:12億トン弱(多分、京都メカニズムクレジットを加味した数値)。

           RCPシナリオに基づく放射強制力
RCPシナリオに基づく放射強制力
放射強制力の具体的な数値やトレンドを示していますが、少々理解し難いです。ただし、SRESとは前回の第4次報告のシナリオなので、今回報告は前回より温室効果ガスの影響度を小さく仮定しているのがわかります。
(以下、少々難解ですが)
放射強制力(wiki)とは、対流圏の上端における平均的な正味の放射の変化で、気温が一定に保たれている状態(工業化時代の始まりの1750年頃)を基準として、地球が持つエネルギーを増やす(気温を上げる)外部因子が正の放射強制力、地球が持つエネルギーを減らす(気温を下げる)外部因子を負の放射強制力としている。
第4次報告のエネルギーバランス図でいえば、大気上端での太陽放射と地球放射の変化を示す数値。

3.報告の中で、特に気になるセンテンスをピックアップします

①人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要因(95%)
CO2濃度は工業化以前より40%増加
1880~2012年において、世界平均地上気温は0.85℃上昇
④第4次評価報告書で基準としている1980~1999年平均に比べ、今次評価報告書で基準としている1986~2005年平均では、気温が0.11℃上昇
1971~2010年において、海洋の上部(0~700m)で水温が上昇(99%)
1992~2005年において、水深3000m以深の深層で水温が上昇(66%)
海洋の温暖化は、気候システムに蓄えられたエネルギーの変化の大部分を占め、1971~2010年の期間ではその90%以上を占めている(高い確信度)
海洋は人為起源の二酸化炭素の約30%を吸収して、海洋酸性化を引き起こしている。海水のpHは工業化以降0.1低下している(高い確信度)
⑨21世紀を通して、世界全体で海洋は昇温し続けるであろう。熱は海面から深海に広がり、海洋循環に影響するであろう。
エーロゾルの排出や、エーロゾルと雲との相互作用による放射強制力は、正味で負となっている。 依然として地球のエネルギー収支の変化の見積もりやその解釈において、最も大きな不確実性をもたらしている
⑪二酸化炭素の累積排出量と世界平均地上気温の上昇量は、ほぼ比例関係
⑩の意味は、エーロゾルは温暖化を抑制する効果と加速する効果があるが、トータルとしては抑制する効果がある、という意味です。太陽放射を減少させるためと推測します。

4.海面上昇の現状と要因

観測事実の記載があります。「可能性が非常に高い」=90~100%
世界平均海面水位は1901~2010年の期間に0.19 m上昇した。
上昇率は、1901~2010年には1.7mm/年1971~2010年には2.0mm/年1993~2010年には3.2mm/年、の割合。


世界平均海面水位の上昇率(AR5)
出典: 潮汐・海面水位の知識 海面水位の変動要因(気象庁)

熱膨張が最大要因になっています。AR5に関した図は見つけられないですが、下図は第4次報告のデータによる図です。

                  第4次報告の図
海面水位の上昇率
出典:環境省パンフレット STOP THE 温暖化2012 の第1章 地球温暖化(出典:IPCC,2007:第4次評価報告書第1作業部会報告書)

第5次報告の将来予想では、これらの要因がどの様になっているか?注目です。

5.1項の表をグラフにしたもの

世界平均気温予想IPCC(邦訳)書いてある数字は例えば39は同じ課題について、39の研究機関が結果を出したという意味
海面上昇予想IPCC(邦訳)
グラフの右側の縦カラーバは、各シナリオで2081 ~2100 年の平均が取る可能性の高い値の範囲と中央値。

以上ですが、今後、full reportの邦訳がでた時点で、本エントリーに追記や修正を加える予定です。

【おまけ】
今年(2013年)の夏は記録的な猛暑だった

今夏の猛暑から温暖化を実感するのは少々違うようです。気象庁が今夏の猛暑を解析して、その原因を、“太平洋高気圧の勢力が強かったこと等に加えて、ヒートアイランド現象の影響が特に強かったこと”としています。
出典:2013年8月のヒートアイランド現象による気温上昇の解析結果について(気象庁2013/9/24)

関連エントリー

温暖化のメカニズム(温室効果ガスによる赤外線の吸収放出)
温室効果ガス関係の図表集

【個人的メモ】
「WEDGE Infinity 杉山大志氏」2014/5/21 現実感失う温暖化「2度」抑制 IPCC報告書はこう読む
地球環境研究センターニュース(江守正多氏)2014/4/14 地球温暖化の解明はどこまで進んだか —IPCC第1作業部会第5次評価報告書
市民のための環境学ガイド2013/10/5 IPCCの第五次報告書 
ナショナルジオグラフィック2013/9/30 IPCCの気候変動報告書、5つの要点
さまようブログ2013/9/29 姿を見せ始めた第5次報告書
ナショナルジオグラフィック2013/9/30 IPCC、6年ぶりの評価報告書関連twitter
スウェーデンの今2013/9/21 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書 in Stockholm
みずほ情報総研 2013/2/12 IPCC次期評価報告書 AR5に対する期待
[ 2013/10/04(金) ] カテゴリ: 地球温暖化 | CM(0)
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