ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

“福島原発事故、専門家は責任から逃げるな”についての感想(大きな間違いも)

[ 2013/09/22 (日) ]
【追記】とうとう、やってしまったようですね。→「J-CASTニュース」2014/5/8 ジャーナリストが「美味しんぼ」原作者の「リンチ」呼びかけ?石井孝明氏、批判されツイートを削除


石井孝明氏の論説に対しては頷くことが多いのですが、2013/9/22アゴラ掲載の表記は、少々乱暴な論説と感じました。さらに、一点大きな間違いもあります。
このような論説が出て喜ぶのは、科学コミュニケーション以前の段階のクライシスコミュニケーションや具体的な対応策で明らかな失敗をした政府・行政の関係者や、まともな専門家の主張を取り上げず政府・行政に悪影響を与えたメディア関係者ではないでしょうか。
なお、この論説は主に放射線影響に関するもので、原発のいわゆるメルトダウンに関する話は除外しているようです。
以下、部分的な引用と感想です。(小見出しは原文をそのまま、番号は情報整理のためにブログ主がつけたものです。)

原文に微修正があったようですので、チグハグにならない様にトレースしておきます。【9/23朝、追記】

(1) 放射能パニックにどのように向き合うか
 

①ある政府関連財団の科学コミュニケーションセンターで関係者がTwitterで「専門家による意義深い取り組みです」と、学者が科学知識を伝える組織の活動を紹介していた。
(中略)
科学コミュニケーションの大失敗によって福島県が混乱し、日本経済が負担で崩壊しかねない「戦時」において、「コミュニケーションがどうたら」とご高説を述べるのは、どこの国の「お公家さん」の話かと悲しくなります。今は危機に立ち向かうべき状況なのに
この小論におつきあいいただければ、皮肉を言いたくなる気持ちも読者の方に多少は理解いただけると思う。多少、八つ当たりの面があることは認めるが…


科学コミュニケーションの大失敗というより、リスクコミュニケーションの問題だと思いますが、それは置いておきます。
氏自身も書いていますが、論説の多くの部分が八つ当たり感満載のようです。

②放射能パニックと生まれた恐怖によって合理的な対策が行われず、福島内外の人にストレスを加えている。恐怖は鎮静化しつつあるものの、今でも問題は継続している


放射能パニックと生まれた恐怖が合理的な対策が行われなかった主原因なのでしょうか?むしろ不合理な対策の結果であるような気がします。

③さまざまな混乱が続く。一連の問題は「科学知識の社会の普及」の失敗によって生み出された面がある。「科学コミュニケーション」という言葉は多義的なので、ここではこの意味で使う。放射能のリスクを科学で分かる範囲で正確に認識し、福島の現状を冷静に観察すれば、恐怖を抱くことも、騒擾が社会に包まれる必要もない。現状の混乱はばかばかしいものだ。


「科学知識の社会の普及」があれば混乱は続かなかったのでしょうか?少々単純すぎる分析です。科学コミュニケーションの失敗の原因や責任はどこにあるのかを冷静に分析することが、再発防止のためにも必要ですが、この後を読むと、その原因や責任が専門家個人にあると言っているように思えます。

④こうした状況を憂いて、私は一記者として必要な情報を正確に紹介しようと試みてきた。
(中略)
「御用」とか「原発推進派」とこの2年半、ののしられ続けられた。その中には狂気、憎悪を帯びる異様なものもあった。私だけではなく、放射能とリスクをめぐるコミュニケーションを試みる人は、同じような無駄な手間にエネルギーを費やした。


氏のご尽力には敬意を表しますしその影響力は大きいと思います。ただ、この論説では“俺はこんなに頑張っているのに感”が強いのです。

(2) 責任から「逃げた」専門家が多かった
 

①冒頭の例に戻ろう。私がカチンときたのは、目の前に放射能パニックが存在し、それを解決しようと奔走する人たちがいるのに、専門家がそれに向き合わずに税金を使って「科学コミュニケーションかくあるべし」と語る姿に、「ずれている」と思ったためだ。(中略)後方で汚れない立場にいる「インテリ」への、現場にいる者の不快感だ。


前述したように専門家個人の問題と捉えると判断を誤りますし、専門家という言葉を十把一絡げで使わないほうがよいですし、専門家が下手なサッカーのように一つのボールに集まる必要もないかと。

(以下、本題から外れる自分メモです)
専門性や責任、必要とされるコミュニケーション能力など複雑。
分野では、放射線生物学系?に詳しく多くの論文を評価できること、リスクコミュニケーション系などが今回必要であった“専門家”の要件。(そうでない“専門家”の声が大きかったという事実がある)
表面的な責任の重い順では。(それ以外のファクターも大きい)
  政府や行政の中での役割を担い報酬を得ていた人
  平常時にメディア露出度が高く、有形無形にその恩恵を得ている人
  国公立大学の教授など、その給与を税金で賄われている人(道義的な面?)

②ネット上で話題になった「科学者が放射能騒動に関わらなかった理由」という文章がある。医学系研究者らしいが、まとめれば「騒動とかかわらなくてよかった。何のメリットもない」という文章だ。上に「カチン」としたのと同じ理由で、開き直るその態度に私は不快感を抱いた。


この部分は氏の大きな間違いです。ブログ主はたまたま、その方とはブログ上でお付き合いがあるのですが、まさに氏の言う「正しいことを伝える責任を果たそうとした、多くの科学者・専門家」のサイドの方です。一般的にネガティブに取り上げるときは十分に確認すべきなのにそれを怠っている氏は、結果として、専門家に対する煽り派の行為と同じ事をやっていることになります。まぁ、それ以前の“わずらわしさ感”負荷のほうが影響が大きいかも。

③しかし科学は社会の危機に役割を果たしているのだろうか。放射能問題を取材する時に2011年から12年までの大切な時期に取材をすると組織人、大学人、経済人は「名前を出したくない」「関わりたくない」という人ばかり。自らへ、そして組織への攻撃、批判を怖れていた。この行為が、確かに事故当時、正確な情報を提供しようとした人に「「御用学者」狩り」などとする異様な言論がネットにあふれた。しかし、小さな個人のリスクから逃げ、専門家が「逃げる」行為が、デマを拡散する人々の横暴を許し、状況を混乱させた面がある。


頑張っている氏から見れば、“けしからん”となるのでしょううが、自分基準が強すぎます。ジャーナリストであるならば、そのような現象がおきた原因の深堀りを期待したいのですが。
また、いわゆる御用学者狩りが大きな影響を与えたことについても、あまり書かれていないのはチョット不自然です。(まぁ、基本が八つ当たり論説なので)→(上記のように)少し追記されましたが、

④タレントの中には大学教授など教職・研究者の肩書きを利用して、自分の名前を売り出そうと過激な言説をばらまいた人までいた。日本の専門家の質は、平均値で見れば、能力の面でも、使命感の面でも、どうしようもなく、低いのかもしれない。
(中略)
一連の混乱は「専門家が責任を果たせなかった」「科学的な研究とそこから得られた知識が政策決定に活かされず、社会全体が無駄な損失を受け続けている」という「知の敗北」でもあるのだ。


混乱を煽った専門家に関連して下記のような分析があります。
宝田氏の研究は、いわゆる「自主避難」をしている人々がSNSやメールなどインターネット上のコミュニケーション手段に支えられている側面が大きいことや、武田邦彦・児玉龍彦・早川由起夫の3氏の主張を選択的に重視していることを社会調査によって明らかにしている点で大変貴重なものである。
出典:なぜ科学は放射能パニックを説得できないのか — 被害者・加害者になった同胞を救うために社会学的調査が必要

これらを増幅させたメディアの責任などがありますし、“日本の、、”と言ってしまう段階で、単純な決めつけかなと思うのですが。さらに“知の敗北”があったとしたら、政治・行政、メディアなどが有事に“専門家の知”を生かすことができないという全体の問題かと。

(3) 私たちは「目の前の問題」に責任がある
 

①運営を担ってきた東京電力、原子力をめぐる産官学の関係者が責任を負うべきである。その後に起こった混乱については、政治家、そして政府に責任がある。


だから、冒頭に書いたように思うのです。

②放射能パニックでは、今も不安と恐怖にとらわれ、異様な行動を続ける人がいる。正直に言えば、私はこうした人に向き合うのはうんざりしている。しかし同じ同胞である以上、それを放置するべきではなく、何らかの救いを提供するべきと、思う。


大きな命題ですが、個人的には、2年半経った現状でもなお異様な行動を続ける人に対して第3者が何を言っても無駄のような気がします。ただ、この部分は後の部分と繋がりませんので論説全体から遊離しています。

③科学的なデータと事実が、現状の放射能防護対策に適切に反映されていない面が多い。発生する負担と便益を可能な限り比較し、住民の参加で公開の形で決める。これがICRP(国際放射線防護委員会)などの推奨する政策だ。ところが、日本では「リスクゼロ」を追求するために、コストの先行きは見通せないほど巨額になっている。


これ以降は、概ね、合意できるものだと思います。

(4) 空想ではなく、知の力を使い現実的対策を
 

①原発事故後、不必要な混乱が続いていることは日本社会の「知の敗北」だ。どの立場に立とうと、自分の職分の範囲で「福島事故への責任を果たさなかったこと」の総和がこの状況を生んでしまった。ここで取り上げた科学コミュニケーションの失敗、それを生んだ「専門家の無駄なことには関わらない態度」は原因のすべてではないにしても、大きな部分を占めている。


前述のとおりです。

②特に問題について知識を持ち解決策を提案できる、また問題に関わる専門家の責任は重い。社会から遊離しては、どのような専門家も、存在の意味がなくなる。そして眼前で重要問題が進行しているのに、それに向き合わずに空論を繰り返すことは滑稽であることを、冒頭の言葉は教える。


前述のとおりです。

関連エントリー

なぜリスクコミュニケーションは失敗したのか、日本の一年間、スウェーデンの例

【追記】玄侑宗久氏の論説です。石井氏と比べると違いがはっきりと、、、
除染1ミリシーベルトの愚(玄侑宗久氏)
[ 2013/09/22(日) ] カテゴリ: ゼロリスク風評デマ不信専門家 | CM(2)
Re: 記事のお知らせ有り難うございます
今回は大変でしたね。少し、お休みになってください。

石井氏の文章一般については、良いものもある中で、以前からたまに違和感を感ずることもありました。bloomさんの当事者としてのコメントを読んでとその違和感がハッキリしました。追加としては、読解力以前に想像力が浅い面もあるかと。その反面(あるいは表裏一体で)自分基準が強いのでチョットですね。まぁ、今後は、少し割り引いて読むことにしています。

>リンク先も読まずに批判する人が結構いるんですね、、、
結構ではなく、ほとんどだと思いますよ。特に、ネット有名人のtweetなどの読まれ方としては。

以前の、紫外線と放射線の類似性、DNA損傷の資料はhttp://icchou20.blog94.fc2.com/blog-entry-435.htmlの上1/3ほどの*3にタイトル紹介だけしていますが、焦点を絞って勉強していくのは、自分には内容的に少々難しいと思っています。なお、その少し下の【メモ】に記載した東海大 佐々木政子教授の資料は全部は読んでないのですが良い資料でした。

リクエストの焦点から拡散方向なので役に立たないと思いますが、http://icchou20.blog94.fc2.com/blog-entry-427.htmlなどの記事を書いています。
また、ごく一部情報ですが、http://icchou20.blog94.fc2.com/blog-entry-402.htmlの中ほどに『図2-3 オゾンとDNAの紫外線吸収』の図があります。
[ 2013/10/06 20:20 ] [ 編集 ]
記事のお知らせ有り難うございます
私は石井さんの記事は人並みの読解力がある人の文章とは思えないので、批判とも感じていません。

ああいう記事を書く人はまず演出したい自分があって、科学的な情報も他人の努力もそのネタでしかないと感じています。
私が真剣に書いた記事も「まとめれば”騒動とかかわらなくてよかった。何のメリットもない”という文章だ。」と自分を良く見せるために歪めて引用しているんですよね。
「この人大物?」という twitter も「大物と主張が似ているオレ」アピールが不愉快です。
http://blogs.yahoo.co.jp/bloom_komichi/66610962.html

今回のブログ炎上とそれに伴う脅迫、それを読めずに家族の情報も同じ場所に置いていた自分の浅はかさにはかなり凹んでいます。
それに加えて石井さんの演出に利用され、私の記事本文を読まない人に卑怯者呼ばわりされた事で気力が萎えました(リンク先も読まずに批判する人が結構いるんですね・・)。

しばらくは個人情報の管理と脅迫対策に忙しいし、今はネットに何を書いて良いのか分からない気分なので、しばらくはコメントを返すだけにしようと考えています。

以前教えて戴いた、紫外線と放射線の類似性と違いについて、DNA 損傷という指標でまとめた資料などお持ちでしたら記事にまとめて戴けると助かります。
[ 2013/10/06 16:34 ] [ 編集 ]
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