ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

炭素C-14とは?危険性は?放出量の基準は?

[ 2013/09/09 (月) ]
トリチウムに続いて、炭素14の基礎的なところについても纏めておきます。
人体を構成している多量元素のうち、水素・炭素・カリウムの3元素が自然界に放射性同位体を持ちます。すなわち人体の中にも自然放射性物質が一定量が存在する訳です。(動植物全体に言えることですが)
カリウムのエントリー水素=トリチウムのエントリー、は作成済ですので、本エントリーで3元素が揃いました。

目次

1.崩壊図、半減期
2.生成、存在量
 (1) 天然起源
 (2) 大気圏内核実験での生成
 (3) 原発(原子炉の中)での生成
3.人体への影響
 (1) 実効線量係数
 (2) C-14による内部被ばく量、摂取量
4.再処理工場などからの放出の基準
 (1) 放出量の基準
 (2) 法令による放出濃度の基準
5.主な参考文献
6.関連エントリー

1.崩壊図、半減期

C-14は質量数が14で中性子を8つ(通常のC-12は6つ)持つ炭素の同位体。炭素の同位体の存在率は、質量数が12のC-12が98.9%、13のC-13が1.1%で、この2つは安定元素。C-14は極めて微量で0.00000000012%(1.2×10-12である。

C14の01       原子番号質量数
β崩壊についての詳細はこちら

半減期が5730年でβ崩壊し窒素に壊変するが、放出されるβ線のエネルギーは最大:0.156MeV、平均:0.049MeV で、オーダーとしてはセシウムCs-137,134 やカリウムK-40同じか一桁低いレベル

2.生成、存在量

(1) 天然起源

大気圏上層で、高エネルギーの一次宇宙線によって生成された二次宇宙線に含まれる中性子が、窒素と核反応を起こしC-14ができる。その量は約1,200兆(1.2×1015)Bq/年で質量換算すると7.5kg/年 。 ただし、地球磁場や太陽活動の変動の影響を受けるので厳密には一定ではない。

C14の02

生成されたC-14は直ちに酸素と結合して二酸化炭素(CO2)になって大気中に拡散し、海水、生物の体内、土壌中の有機物などに蓄積する。生成と崩壊がバランスし、地球上の存在量は 1,500京(1.5×1019)Bqほどで質量換算する約91トン

【豆知識】化石の年代測定のトレーサー
植物は光合成により大気から炭素(CO2)を取り込み食物連鎖で動物にも移行するので、動植物の内部におけるC-14の存在比率も死ぬまで変わらない。死後はC-14の新規供給がなくなり半減期にしたがって減衰するので、化石中のC-12/C-14比から年代を推定することができる。
放射性炭素年代は、BP (Before Present もしくはBefore Physics) で表記されるが、これは大気圏内核実験による放射線の影響をあまり受けていない1950年を起点として何年前と、実年代が表記される。
なお、厳密には大気中のC-12/C-14比は、生成量の年毎の変化の影響を受けて変化している。さらに、化石燃料の燃焼により排出されるCO2のC-14量は崩壊により少ないので、その影響で大気中のC-14の割合が減少することが知られている。
【メモ】広域地下水流動評価のための地下水年代測定技術

(2) 大気圏内核実験での生成

大気圏内核実験以前の大気中の二酸化炭素には炭素1gあたり0.23Bq*のC-14が含まれていた。 * この比率から計算するとC-14/C-12比は、1.2×10-12となり、1項の記述と整合する。

1963年の大気圏内核実験停止条約締結までに、約220兆(2.2×1017)BqのC-14が放出されたと推定され、これは天然起源生成量の180年分程度、存在量の1.5%程度に相当する。そのために1960年代半ばの大気中の二酸化炭素では、炭素1gあたり0.45Bqと核実験以前の約2倍に達した。

現在の濃度
大気中のC14
出典:トリチウムはどうなっているの? :放射線診療への疑問にお答えします(国立保健医療科学院)

この表では炭素1gあたり0.23Bqで、大気圏内核実験以前のレベルに戻っていますね。

(3) 原発(原子炉の中)での生成

核分裂では生成せず、炭素・窒素・酸素などと中性子の反応によって生じる。その量は大きくないと推定されている。

3.人体への影響

β線は外部被ばくはほとんど害がなく、内部被ばくだけを考慮すればよい。

(1) 実効線量係数

経口摂取(有機物)    5.8×10-10 Sv/Bq
吸入摂取(エアロゾル)  5.8×10-9 Sv/Bq
吸入摂取(二酸化炭素) 6.2×10-12 Sv/Bq


Cs-134,137と比較すると、経口摂取では100分の1のレベル、吸入摂取ではエアロゾルで10分の1のレベル、CO2で一万分の1のレベルである。
また、(極めて低い値である)トリチウムと比べると経口摂取で10倍のレベルである。

なお、生物学的半減期は約40日とされる。(実効線量係数は、体内に取り込んだ放射性物質がどのように生体内で代謝されていくのか、といったことから設定されており、生物学的半減期のファクターはその係数に反映されている。)
 
(2) C-14による内部被ばく量、摂取量

摂取と排出がバランスし人体中には3,600 Bq のC-14が存在している。自然放射線による日本人の平均被ばく量2.1mSv/年の内訳に、かろうじて現れています。
自然放射能21mSv03
経口摂取で0.01 mSvと他の核種に比べて低い値なので、例え、これが多少増えたとしても、気にするレベルではないかと。
なお、この年間被ばく線量から1日の摂取量を逆算すると、47 Bq/日となる。
 (1×10-5Sv/年)÷365÷(5.8×10-10Sv/Bq)=47


【参考】大気圏内核実験による被ばく線量
atomica 表2 大気圏核実験で生成された放射性核種による実効線量預託によると、C-14による影響が他の核種に比べて大きい。具体的には、全核実験による預託実効線量は北中緯度地域の平均で 4.4 mSv で、その59%の 2.6 mSv がC-14によるものとされている。詳細はこちらのエントリー

4.再処理工場などからの放出の基準

(1) 放出量の基準

再処理工場からの気体のC-14排出のみに単独の基準値がある。その理由は核燃料を硝酸に溶解する際に、揮発性元素として炭素、水素=トリチウム、クリプトン、ヨウ素の4種が溶液から蒸発し放出されるため、とのこと。
個々の原発の保安規定に記載されている放射性廃棄物の放出基準には、C-14単独の基準値はないようです。

【具体的な基準値】
表1の六ヶ所村の欄が保安規定に定められた基準値で、年間800トンの使用済核燃料を処理することを前提として、気体のC-14の基準を 52兆(5.2x1013)Bq/年としている。なお、液体のC-14の放出基準量はなく、他の核種と合わせて2100億(2.1x1011)Bq/年である。 (出典はこちら

 表1 再処理工場運転の際の主な放射能の年間放出量 単位:兆(1012)Bq/年
再処理工場のトリチウム、C-14、クリプトン-85、I-129の放出基準
  出典:六ヶ所再処理工場からの放射能放出に関する研究(2007年 古川路明)

フランスのラ・アーグ再処理工場からの放出量は2003年の実績値で、
液体C-14 → 8.7兆(1.2×1012)Bq/年
気体C-14 → 17兆(1.7×1013Bq)Bq/年

本題からは少し外れますが、ブログ主個人は再処理そのものには否定的な意見です。(放射性廃棄物とは別の理由で)

【メモ】
原子力資料情報室(CNIC)クリプトン-85
希ガスの放射性物質について クリプトンとキセノン(環境科学技術研究所)

(2) 法令による放出濃度の基準

排液中又は排水中濃度限度(有機物)   2 Bq/cm3=2,000 Bq/L
排気中又は空気中濃度限度(二酸化炭素) 0.02 Bq/cm3=20,000 Bq/m3
出典はこちら

5.主な参考文献

出典を記載した資料の他は次の文献。

 炭素14 - Wikipedia
 原子力資料情報室(CNIC) 炭素-14

6.関連エントリー

トリチウムとは?危険性は?海洋放出量の基準値は?
自然放射線による被ばく、ポロニウムPo-210 、カリウムK-40、ラドンRn-222
[ 2013/09/09(月) ] カテゴリ: 自然放射線の勉強 | CM(0)
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