ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

温暖化のメカニズム~温室効果ガスによる赤外線の吸収放出

[ 2013/09/18 (水) ]
温暖化ガスから放出された赤外線はどうなるか?(個人的な理解)を追記。2013/9/18
初回公開日:2013/8/13


今更ながらですが、表記について勉強しましたのでまとめます。結構、奥が深い命題でした。
このメカニズムを模式的に示した絵は検索すると色々あります。例えば
温暖化004
6温暖化005
などのほか、温暖化関連のエントリーでよく引用させて頂いているJCCCA全国地球温暖化防止活動推進センターすぐ使える図表集*にもあります。

本エントリーは、これらに表現されているメカニズムを深く理解してみた、という内容です。
(その結果ですが)これらの図には、少々、問題もあることもわかりました。【追記】 * ここの図は修正されました。

目次 (ページ内リンクが付いています)

1.太陽放射と地球放射
 (1) まずは、中学?高校?のおさらい
 (2) 地球の熱バランス(太陽放射と地球放射)
2.温室効果ガスが赤外線を吸収・放出するメカニズム
 (1) 気体分子の運動エネルギーと物質の特性
 (2) CO2の分子振動、赤外活性
 (3) IPCCの第4次報告書のエネルギーバランス図
 (4) CO2によって吸収される波長のものがすべて一度吸収されてしまったら、それ以上CO2が増えても温室効果は増えないのでは?
3.酸素や窒素に温室効果がないのは何故?
4.水蒸気(H2O)が最も強い温室効果ガスだが
5.フロン類のCFCやHCFCのGWP(地球温暖化係数)が大きい理由
6.温暖化ガスから放出された赤外線はどうなるか?(個人的な理解) 【追記】
7.主な参考文献
8.個人的メモ

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1.太陽放射と地球放射

(1) まずは、中学?高校?のおさらい

熱の移動は、伝道、対流、輻射(放射)の3種。
全ての物体は、温度に応じた電磁波を輻射している。(黒体放射という)
物体の温度が低い時は赤外線、温度を上げていくと1000℃位から赤い光(可視光線の中では波長が長い)を発する。
放射率とは?赤外線放射率 赤外線サーモグラフィ研究室
温度がさらに上昇すると、可視光線だけでなく紫外線を輻射する。太陽の表面温度は6000℃で紫外線も輻射している。 ただし、ピークは黄色付近の可視光線。
さらに温度が上昇すると、X線を輻射するとともにピークは波長の短い青や紫に移っていき、人間の目には白から青白く見える。中学の理科で、赤い星の温度が低く青い星の温度は高いと学習。
電気の歴史イラスト館
(2) 地球の熱バランス(太陽放射と地球放射)

温暖化006
太陽からのエネルギー放射を太陽放射といい、その波長分布は可視光線を中心に紫外線領域から赤外線領域の波長5μm程度まで(図から読み取り)。
一方、太陽光で大気や地表が暖められてエネルギーが地球から放射することを地球放射といい、その波長分布は波長の長い赤外線領域(波長5~100μm程度、波長の長いほうはマイクロ波領域)である。
平均地表温度(15℃, 288K)が長期間(約1万年)ほとんど変わっていないことから、地球に到達する太陽放射エネルギー量と地球放射エネルギー量はつり合っている*。すなわち、2つの山の面積が等しい。(この山の形は模式的であり、実際には大気中の雲や気体による反射・吸収のために複雑な形になる)
電磁波の波長などの詳細については電磁波と物質の相互作用のエントリーを参照

【参考】
* 地球全体(あるいは平均)では“つり合っている”いるが、局部的に見れば、そうではない。例えば下記のとおり。
          太陽放射と地球放射の緯度による違い
地球の放射収支
出典:「駄目オヤジのぼやき」太陽放射と地球放射

赤道域は、太陽放射>地球放射であり、極域は太陽放射<地球放射であるため、低緯度側から高緯度側へのエネルギーの輸送があることを示している。このエネルギーの輸送を担っているのが、①大気の大循環(ハドレー循環,ジェット気流,極循環)、②海洋の大循環(熱塩循環)、③水蒸気(潜熱)による熱輸送である。この熱輸送があるので、地球上は赤道直下から北極圏までの広い範囲にわたって人が居住できる環境になっている。
【関連エントリー】海洋大循環とは?弱まりつつあるのか?

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2.温室効果ガスが赤外線を吸収・放出するメカニズム

(1) 気体分子の運動エネルギーと物質の特性

気体分子は、並進(飛び回ること)、回転、 分子振動という3種類の運動を行っている。
温暖化002
一般に、並進エネルギー < 回転エネルギー < 振動エネルギー
分子運動のエネルギー

(2) CO2の分子振動、赤外活性

電磁波(赤外線)は電場と磁場が同時に変動する波動であるが、分子に吸収されるときには電場の振動と相関する。
分子振動の振動数も赤外線の振動数も、1013 ~1014Hzのオーダーでほぼ同じである。
なお、回転運動の振動数はマイクロ波領域の電磁波と重なる。

CO2分子は電気的に中性だが分子の内部構造では、電気陰性度の高い酸素原子はマイナスに、電気陰性度の低い炭素原子はプラスに帯電している。このような状態を極性といい、極性を持つ分子を極性分子という。

プラス・マイナスの中心の変動(電気双極子モーメント)の分子振動には、いくつかの振動モードがある。各振動モードに応じた固有の振動数と同じ振動数を持つ赤外線が近づくと、分子はこの赤外線を共鳴吸収して分子振動が激しくなり赤外線の吸収・放出が起こる。 (赤外活性
三好明 東京大学教授の講義・ノート資料でCO2の分子振動のわかりやすいアニメーションを掲載されている。

いったん吸収した赤外線はしばらくしてから放出され、分子は元の振動状態に戻るが、 赤外線の放出の向きはランダム(等方的)になる。 すなわち、放出は360°全方位なので半分が地表方向に放出される。これが温室効果である。
【コメント】違う説明もあります。下記(4)項のコメントをご覧ください。

もしも、地球の大気に温室効果がなかったら、地表付近の平均気温は約−18°Cになることが基本的な物理法則から計算できる。温室効果のおかげで19世紀までは温暖で快適な環境が保たれていた訳である。20世紀以降、温室効果ガスの増加により地表温度が上がっており、これが地球温暖化問題である。

【コメント】やっと、冒頭の概略図を深く理解できたのですが、問題もあることがわかりました。具体的には、太陽放射による入熱と地球放射による出熱のバランスがつり合っていない絵になっていることです。概略図なのであまり複雑なファクターまでを表現しないほうがよいとは思いますが、重要なポイントで無用な誤解を招く懸念があります。

難しいお話なので理解不足ですが、)吸収スペクトルは、励起状態の寿命の不確定性、ドップラー効果、分子衝突による干渉などの影響で線スペクトルとはならず幅を持ち、分布幅は圧力や温度等に依存する。

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(3) IPCCの第4次報告書のエネルギーバランス図

IPCC第4次報告書の図 (FAQ 1 1 Figure 1 ) 【コメント】要は、この図をポイントは正確に押さえながらうまくデフォルメする必要がある、ということですね。
なお、図中の下向き赤外線放射はかなり大きく324 W/m2 ですが、大気、雲、温室効果ガスの合計値と理解します。(温室効果ガスから地上に直接届く値を知りたいところですが。)


(4) CO2によって吸収される波長のものがすべて一度吸収されてしまったら、それ以上CO2が増えても温室効果は増えないのでは?

CO2分子による吸収・放出の回数が増えるたびに、上向きだけでなく下向きに赤外線が放出され、地表に到達する赤外線の量が増える。
正確には、分子が吸収した赤外線のエネルギーは分子間の衝突により、玉突きのように別の分子に受け渡されていき、別の分子から赤外線が放出される可能性が高い。
CO2による吸収放出
出典:二酸化炭素の増加が温暖化をまねく証拠(国立環境研究所 ココが知りたい温暖化)

【コメント】これと異なる以下の説明もあります。
励起された温室効果ガスのエネルギーがN2やO2分子と衝突することによってこれらの分子の並進運動のエネルギーに配分され大気の温度が上がる
すなわち、温室効果ガスが赤外線を吸収⇒大気を温め赤外線を放出⇒地表を温め赤外線を放出⇒温室効果ガスが赤外線を吸収⇒(繰り返し)
温室効果ガスが大気を温める
       ↑この温度は約−18°Cが正解!
【メモ】 CO2は、温暖化の主原因ではない。

6項にブログ主なりに理解したことを纏めました。

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3.酸素や窒素に温室効果がないのは何故?

Ar(アルゴン)⇒ 分子振動ができない単原子分子
O2、N2などの同じ原子からなる2原子分子(等核2原子分子) ⇒ 分子振動をしても双極子モーメントが変わらない無極性分子
これらは、赤外活性のない気体で温室効果がない。

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4.水蒸気(H2O)が最も強い温室効果ガスだが

水蒸気は赤外活性が高く、最も濃度が高い温室効果ガスであり寄与度も高いが、大気と地上での循環の中で変動し、地球平均では一定濃度(飽和濃度の5割くらい)以上にならない。人間活動は水蒸気量に対してわずかな直接的影響を持つに過ぎず、水蒸気量増加は自然のしくみによってもたらされる。
温室効果の寄与度
青線と赤線の差が大気による赤外線の吸収、すなわち温室効果の強度を表す。図中のH2O、CO2、O3は、それらの分子による赤外線吸収が起こる波長領域を示す。地球の平均気温が上昇すると大気中の平均水蒸気量が増加し、温室効果が高まる懸念がある。
地球放射(実態)
また、高空で凝縮する際に放熱し雨や雪氷の形で地上に戻るサイクルを通じて宇宙空間への放熱を促進するほか、正負両方の気候フィードバックが働くなど複雑なファクターがある。
例)気温が上昇⇒水蒸気が増加⇒雲が発生⇒太陽光が反射される⇒気温が低下。
例)気温が上昇⇒水蒸気が増加⇒雲が発生⇒放射冷却現象が妨げられる⇒気温がさらに上昇。
いずれにしろ、人間の活動によって水蒸気が増える訳ではないので、対策は不可能である。そのため、対策としてはCO2を削減する以外に方法はない。すなわち、水蒸気削減の議論をしても仕方がないのである。

ちなみに、電子レンジで食品が温まるのは、赤外線と同様に電磁波の一種であるマイクロ波が食品中の水分子によって吸収されるため。

【関連エントリー】大気通過後の放射スペクトル分布
【メモ】 さまようブログ 2010/12/11 『正のフィードバック 』

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5.フロン類のCFCやHCFCのGWP(地球温暖化係数)が大きい理由

これらの気体は大気寿命*1が長いことのほか、これらの気体の赤外吸収帯が地球放射の窓領域(上図の8~13μm)付近に存在するために他の気体の影響を強く受けることがない*2、また、大気中の濃度がppt レベルであるために赤外線の吸収が濃度に対して直線的に増加する、ということにある。
*1 詳細はフロンのエントリーを参照
*2 地球放射の窓領域ではオゾンの9.6μmの吸収があるだけ。

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6.温暖化ガスから放出された赤外線はどうなるか?(個人的な理解)

温暖化の解析は、気候モデルというプログラムで行い鉛直方向には多くの層をとって解析しているようですが、素人がその辺の部分に立ち入ることは無理なので、かなり感覚的な理解を纏めてみました。

(6.1) 温暖化ガスの鉛直分布

実態が気になったのでCO2に関して調べた結果を別エントリーに纏めています。
地表から3~4kmの範囲がそれより上空に比べて15ppm位濃度が高いと言えそうです。
また、水蒸気については、高度が高くなるほど気温が低下し飽和蒸気圧が下がり、余分な水分が凝縮して雲になってしまうので、こちらも地表面に近いほど濃度が高いと考えてよさそうです。

(6.2) 感覚的な理解

(1) 上記から、地表面から放射された赤外線は、大気圏の下層で温暖化ガスに(振動数により選択的に)吸収され分子振動に変換される。
(2) 温暖化ガスの持つ分子振動は、①窒素・酸素分子との衝突によりその並進エネルギーに変換され大気の熱エネルギーとなるか、②分子が元の振動状態に戻るときにランダム(等方的)に(固有の振動数の)赤外線を放出するかで失われる。
(3) 放出された赤外線は①そのまま進むもの、②温暖化ガスに再度吸収されるもの、③雲すなわち水に吸収されるもの、の3とおりある。
(4) (2)①と(3)③で温められた大気や雲は、赤外線を上下方向に出す。(黒体放射)
(5) それらの繰り返しにより、地表面には①温暖化ガスからの下向き赤外線、②大気・雲からの黒体放射の赤外線が届く(IPCCの第4次報告書の図では合計で324 W/m2
(6) 同様に、宇宙空間には①温暖化ガスからの上向き赤外線の一部、②大気・雲からの黒体放射の赤外線、のほか、③地表面からの地球放射の内の窓領域の波長の赤外線、の3とおりでエネルギーが出て行く(IPCCの第4次報告書の図では合計で235 W/m2

分子振動の部分は、奥が深い命題で、突き詰めると量子光学、さらには量子力学などの分野の話にまで行くようですが、そこまでは能力がないので立ち入れませんでした。

【個人的メモ】
温室効果ガスの分光学励起状態ダイナミクス
「The Black Crowes-擬似科学の行方を追跡するブログ」2007/12/6 微視的な視点からの温度の理解へ向けて

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主な参考文献

出典を記載した資料の他は次の文献。
  環境の科学(中田昌宏 著)
  環境科学の基礎(岡本博司 著)

【追記】 温暖化メカニズムを簡潔に説明した図がありました。
温暖化006
出典:気象研究所 気候研究部 2008年6月 地球温暖化の基礎知識

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個人的メモ

NHK高校講座 地学 第33回 大気と海洋 太陽放射と熱収支これは勉強になりました
macroscope 2013/9/7 地球温暖化に関する議論
いまさら温暖化論争? 温暖化はウソだと思っている方へ(江守正多) ( Yahoo!ニュース 個人 2015/12/2)
気候感度とは何か(安井至 市民のための環境学ガイド 2015/1/31)
地球温暖化懐疑論批判

ココが知りたい温暖化(国立環境研究所 地球環境研究センター)
  二酸化炭素以外の温室効果ガス削減の効果
  氷床コアからわかること
  IPCC報告書とは?
  座談会:IPCC疑惑をめぐって

地球温暖化 50のなぜ(名古屋大学太陽地球環境研究所)

関連エントリーはカテゴリーにひとまとめにしています。記事下部or左欄のカテゴリーリンクから、どうぞ。
転記
[ 2013/09/18(水) ] カテゴリ: 地球温暖化 | CM(2)
Re: 記録としてのメモ
本コメントの下のSECRETコメントは『(株)ウェスポーランドからの広告掲載オファー』でした。
検索してみたら、全く同じ文面でオファーを受けた方が結構いらっしゃいました。
参考になった記事のリンクです。
http://freesoftb.com/blog-entry-347.html
                       以上
[ 2013/09/20 18:24 ] [ 編集 ]
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[ 2013/09/20 13:18 ] [ 編集 ]
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