ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

宇宙線からの自然放射線による外部被ばく

[ 2013/04/02 (火) ]
EMP攻撃の原理について追記 2017/9/8
引用させて頂いた上原貞治氏からの補足コメントを追記 2013/5/2


自然放射線に関していくつかのエントリーを書いてきました。そのシリーズの最後?として、宇宙線について勉強しましたので、まとめておきます。

【おさらい】
日本の自然放射線による平均被ばく量
自然放射線による被ばく、ポロニウムPo-210 、カリウムK-40、ラドンRn-222から転記。

             自然放射線量 合計 2.1 mSv/年
自然放射能21mSv03

今回のエントリーは上記の宇宙線0.3 mSv/年の中身のお話です。

宇宙線による被ばく線量

 放射線医学総合研究所のhttp://www.nirs.go.jp/report/nirs_news/200407/hik04p.htmに市町村毎の宇宙線線量率マップがあります。

市町村毎の宇宙線線量率マップ
【ブログ主注】
図のレベル単位を年間に換算すると、単純に365日×24時間=8760時間を掛けて
   最高の赤レベル38.9 nSv/h ⇒ 0.34 mSv/年
   最低の青レベル33.8 nSv/h ⇒ 0.30 mSv/年
となり上下の幅は小さいです。


上記の原典:我が国における宇宙線からの線量マッピング(藤本健三氏2004年)がありましたので、記載内容を幾つかピックアップします。(少々重くて、開くのに時間が掛かります。)

高度による影響が緯度による影響より大きい
●各宇宙線の線量寄与は、μ粒子:65%、陽子:12%、電子線・光子:4%、中性子:1%、金属原子:0%(海面レベルで)
●宇宙線線量率の平均は、電離成分:29.2 nSv/h、中性子成分:6.1 nSv/h、合計:35.3 nSv/h。(電離成分とは中性子以外)
●国連科学委員会と同じ仮定のもとに年間平均線量を求めると、電離成分:0.21 mSva-1、中性子成分:0.045 mSva-1、合計:0.26 mSva-1(mSva-1は人口で加重平均した集団の平均実効線量のことのようです)。これは電離成分について、室内における建物の遮蔽を0.8、住居係数を0.8としたもの

(上記の図とほぼ同じですが、見やすい図もありましたので、アーカイブしておきます)
市町村毎の宇宙線線量率マップ02

【つぶやき】
μ粒子というものがでてきました。話は深そうですが、以下に勉強の結果をあっさりと。


宇宙線の種類
主な出典:知られざる宇宙線の話(上原貞治氏)の第0次編第1次編第2次編

一次宇宙線
atomica 図1 宇宙放射線の種類
出典:atomica 図1 宇宙放射線の種類

 1次宇宙線として地球に到達するものは寿命の長い粒子で、陽子(光子を除く1次宇宙線の90%)、アルファ粒子:ヘリウムの原子核(同8%)、電子光子(ガンマ線)だけである。
 宇宙空間をはるばる旅して地球にやってきた宇宙線であるが、地球の大気にぶつかるとその多くは反応して変化してしまう。その具体例の一つはトリチウムの生成である。

二次宇宙線

 2次宇宙線は1次宇宙線のおかげで生じるのであるが、おおざっぱに言えば、1次宇宙線と2次宇宙線はほとんど別物といってよい。 1次宇宙線は、地球大気によってほとんど完全に「消滅する」のである。(地球大気の厚さは、密度で言うと厚さ1.3mの鉄に匹敵する。)
atomica 図5 二次宇宙線の発生
出典:atomica 図5 二次宇宙線の発生
atomica 図5 宇宙線
出典:atomica 図5 宇宙線

 高速の陽子が大気の原子核にまともに当たると原子核は破砕され、π中間子(パイ中間子)が飛び出すことが多い。π中間子は、原子核の中で陽子と中性子とを結びつけている粒子で、湯川秀樹博士がその存在を予言したものである。π中間子は、普段は原子核の中だけに沸騰するお湯の中の泡のように一瞬だけ生まれ消えているが、外からエネルギーを与えられると本当の物質粒子となって原子核の外に飛び出して来る。このπ中間子が2次宇宙線の元である。しかしながら、π中間子は寿命が短くおよそ5000万分の1秒で消滅してしまうので、地上に達することは滅多にない。

 π中間子は寿命が短いのですぐに消滅し、μ粒子(ミュー粒子)とニュートリノが生成される。μ粒子はπ中間子と同様に電気を帯びた物質粒子である。これが元のπ中間子の運動エネルギーを引き継ぎ地上まで達する。このμ粒子が2次宇宙線の主成分である。そして、このなじみの薄い「μ粒子」という粒子が我々の体に日々当たっているのである。
 μ粒子も寿命の短い粒子であり、わずか50万分の1秒(光の速さでおよそ600 m)にすぎない。それでも地上に達するのに十分な時間なのである。*1
 μ粒子は極めて「貫通能力」の大きい粒子で、それはX線や陽子線の比ではない。μ粒子は原子核と派手な衝突を起こすことがないので、人体さえもらくらく貫通する。地上に達したμ粒子の多くは、地面に突き刺さり、地下数十mあるいは数百mまで潜り込んだところでエネルギーを失って停止する。そして、そこで寿命の終わりを迎えて、電子とニュートリノと反ニュートリノに崩壊する。
 「貫通能力の大きい粒子が人体を通り抜ける」と聞くと、非常に物騒なように思われるかもしれないのが、それはむしろ逆である。人体を通り抜けるということは人体には影響を与えないのだから、むしろ安全*2なのである。長い目で見れば生物の進化に寄与しているのかもしれない。しかし、臓器や血液そのものが傷つけられて、それによって病気になるような心配は全くない。

*1 アインシュタインの特殊相対性理論によれば、ミュー粒子の寿命は50 万分の1秒ではなく、10 倍ほど寿命が延びます。すると600 m ではなく10 倍走ることができて、6000 m の間は消滅せず走れるようになり、ミュー粒子は地表まで飛来できるというわけです。出典:宇宙線ってなあに?(名古屋大学太陽地球環境研究所)16.なぜμ粒子は地表までやってくるの?
*2 (追記)引用させて頂いた上原貞治氏から、補足のコメントを頂きましたので追記します。2013/5/2
(前略)
 私の書いた「身体を貫通するから安全」という趣旨の説明が言葉足らずだったと思います。これは、μ粒子は体内に停留する危険性がないので、多数が身体にしょっちゅう侵入している割には、内部被曝を起こすラドンや食品等による放射線に比べると安全、という趣旨で申し上げたものとご理解下さい。
 また、実際の線量比較でも、μ粒子は宇宙線の中では最大要素だと存じますが、ご掲載の「日本の自然放射線による平均被ばく量」の図に見ます通り、宇宙線自体が、自然被曝全体の1/7程度に過ぎず、経口、吸入、大地、宇宙線で比べると最小成分になっていますので、被曝全体に対しての寄与は小さい、つまり人体に対するリスクが比較的小さいと言えると存じます。
 なお、この記事は3・11以前に書いたもので、その点でも今から見ると配慮不足かもしれません。おもに、宇宙から馴染みのない物質が常に降ってきて私たちの身体を通っていることを広く知っていただきたくて、このような拙い解説を書いたものです。
(後略)

【個人的メモ】
銀河面ガンマ線放射の解析による宇宙線陽子・電子スペクトルの研究

(二次宇宙線)電磁シャワーとガンマ線

 2次宇宙線のなかでμ粒子の次に多いのは電子である。電子は1次宇宙線にもある程度の量が含まれているが、これがそのまま地上まで降ってくるわけではない。

 まず、1次宇宙線の電子がどうなるかを考えてみよう。電子は、大気中に突入すると、原子核の近くを通過する際に高エネルギーのガンマ線(光子)を放出しさらに飛び続ける(制動輻射と呼ばれる現象)。
一方、ガンマ線はエネルギーが高い場合は、別の原子核の近くを通過したときに電子と陽電子のペアに変化する(電子・陽電子対生成)。陽電子は電子の反粒子で、いわばプラスの電気を持った電子である。陽電子も電子と同様に制動輻射を起こす。
このように、制動輻射電子対生成の繰り返しで、はじめは1個の電子であったものがねずみ算式にたくさんのガンマ線とたくさんの電子と陽電子になっていくのである。この現象を電磁シャワーという。このうちの1つの電子または陽電子が地上に達することがあり得る。
 しかしながら、電磁シャワーはどこまでも発達するわけではない。電磁シャワーのエネルギーの総量は、もともとの1個の電子の運動エネルギーに起因する。シャワーが発達するにつれて粒子1個あたりのエネルギーは落ちていく。そして、そのエネルギーがあらたな粒子の発生を引き起こせないくらいに下がったときに電磁シャワーは終息する。最後には、低いエネルギーの電子は物質中で止まる。陽電子は物質中の電子といっしょになって消滅して2個のガンマ線になる。低いエネルギーのガンマ線は、電子に何度もはねとばされたりしながら、最終的には、原子の中の電子にエネルギーを与えて消滅する(光電効果)。
 
 1次宇宙線がガンマ線であったときも、結果はほぼ同じになることが容易に理解いただけるであろう。逆にいうと電磁シャワーの発達した部分を見ただけでは、元の1個が電子だったのかガンマ線だったのか区別が出来ない。
 さらにガンマ線は、1次宇宙線や電磁シャワーのほかに、原子核の破砕過程においても、中性π中間子の崩壊に伴って発生する。(π中間子には電気を帯びたものと電気的に中性のものがあり、崩壊してμ粒子を生み出すのは荷電π中間子である)。このガンマ線もガンマ線にはかわりがないので、電磁シャワーを起こす。

関連エントリー

自然放射線による被ばく、ポロニウムPo-210 、カリウムK-40、ラドンRn-222

【参考情報】航空機乗務員の宇宙放射線被曝の現状(2000/01/25 野口邦和)
.
難しそうな単語がでてきました(茶色字の単語)。少し調べてみました。
以下はすべて、「放射線科学センター」暮らしの中の放射線からの引用です。

制動放射線
ベータ線の特徴はマイナスの電気を持ち非常に軽いことです。このため、重い原子核の近くを通ると強い力でひっぱられて簡単にその向きが変わります。この時、ベータ線は自分の運動エネルギーの一部をエックス線として放出します。これを制動エックス線または制動放射線といいます。
制動輻射? 

光電効果、コンプトン効果
ガンマ線が自分のエネルギーを全部軌道電子に与え、消滅してしまう場合、これを光電効果といいます。そしてガンマ線のエネルギーを全部受け取った軌道電子は、原子から飛び出し電離が起こります。
光電効果

ガンマ線は粒子のように振る舞う性質があり、電子にぶつかって散乱します。この場合、散乱後のガンマ線の運動エネルギーは入ってきた時より、電子に与えた分小さくなり方向も変わります(コンプトン効果)。
コンプトン効果 

電子・陽電子対生成
ガンマ線のエネルギーがずっと大きければ、電子や原子核の近くを通った時、自分が消滅するかわりに電子と陽電子の“双子”を1組生み出すことがあります
電子対生成 

電磁波の波長、振動数、エネルギー
波長、振動数、エネルギー

【関連エントリー】電磁波と物質の相互作用に関するメモ

【追記】
EMP攻撃(Electromagnetic Pulse)の原理、懐疑論

成層圏などの空気が希薄な高々度で核爆弾が破裂すると、核分裂反応で発生した電磁波:γ線(ガンマ線)は減衰せずに広い範囲に広がる。そのγ線が、成層圏の下にある大気圏の酸素原子や窒素原子に当たり、コンプトン効果で電子が叩きだされる。広域にわる電子拡散が、地磁気の影響で地球の中心に向かう電子の流れを発生させ、それが強力な磁場を生み出す。
高高度核爆発であれば広範囲にEMP:電磁パルスが発生し、その被害も広範囲に及ぶ。
EMPは、ケーブル・アンテナ類に高エネルギーのサージ電流を発生させ、それらに接続された電子機器などに流れる過剰な電流によって、半導体や電子回路に損傷を与えたり、一時的な誤動作を発生させる。
軍事用の電子装置には、金属箔などでケーブルをシールドする、過負荷が予想される箇所に半導体の代わりの真空管を使うなど、電磁パルスに対する防護措置がされているものもある。特に、爆撃機や核ミサイルは、自らの発射した核爆弾や、同じ目標に先行する核爆弾に破壊されないよう、防護措置がされていることが多い。【参考にした情報】電磁パルス(Wikipedia)

【懐疑論】北朝鮮の「電磁パルス攻撃」は脅威か?米専門家の懐疑論 (山田敏弘 現代ビジネス 2017/9/9)

【小見出しとごく一部のみ引用】

  • 恐怖をあおるばかりだが…
    一方で、米国では電磁パルス攻撃に懐疑的な見方も少なくない。特に防衛関係者の間でそれは顕著だ。
  • そんな回りくどいことをするのか?
  • ある高官の発言が元凶?
  • 恐怖を感じさせることが目的とすれば…
    ハワイのケースは、「Starfish Prime(スターフィッシュ・プライム)」というコードネームで行われた実験だった。冷戦下でソ連のレーダーや通信システムを無力化する目的で研究が行われ、上空約400キロで長崎に落とされた原発の100倍という核爆弾を爆発させた。ところが、一部の信号機が停電したことは確かだが、それ以上の大した影響は起きなかったとも言われる。
    むしろ彼らの狙いは、アメリカや日本の恐怖心をあおることの方にあるはずだ。北朝鮮の「EMP攻撃が可能だ」という挑発に過剰に反応するのは、彼らの「思うツボ」なのである。



太陽フレアと磁気嵐

気象庁地磁気観測所|基礎知識|Q&A
Q5.磁気嵐とはなんですか?
Q7.磁気嵐は被害を起こすのですか?

個人的メモ

出典:atomica 図3 地球大気に聖徳して生ずるカスケード過程
出典:atomica 図3 地球大気に衝突して生ずるカスケード過程

宇宙線 50のなぜ(名古屋大学太陽地球環境研究所)
ニュートリノのやさしい解説(東北大学ニュートリノ科学研究センター 教授 白井淳平)
[ 2013/04/02(火) ] カテゴリ: 自然放射線の勉強 | CM(3)
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[ 2013/05/02 12:13 ] [ 編集 ]
Re: 科学的読み物として面白いです
ありがとうございます。
宇宙線については、私もほとんど何も知らず、調べていく中でかなり専門的な分野だとわかった次第です。コメントを頂き、消化不良のままでしたが記事にした甲斐がありました。
手ごわい情報はいっぱいあったのですが、一番、読みやすい解説だったので引用させて頂いた上原貞治氏に感謝です。

残念ながら、紫外線の健康リスクについては、(真剣に探したことはないですが)良い情報に巡り合ったことはありません。参考にならないかも知れませんが、健康リスクを除く紫外線やオゾンについては、気象庁のサイトが充実していると思います。
http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/diag_o3uv.html
最近は、少々必要性があって、環境関係を勉強していますので、放射線情報はしばらくお休みななりそうです。
[ 2013/04/04 23:01 ] [ 編集 ]
科学的読み物として面白いです
お久しぶりです。
放射線と紫外線の健康リスクについて記事を書こうと思って、icchou さんなら情報を持っているかも・・とやってきました。

この記事、放射能問題に関係無く、普通に読み物として面白いですよ。
山の上の方が強いのは分かっていましたが、北の方が強いとは知らなかったです。

私は物理が弱いので、これからも色々教えて下さい。
[ 2013/04/04 17:26 ] [ 編集 ]
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