ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

PM2.5、SPMの環境基準達成状況、PM2.5はどのくらい危険なのか?

[ 2016/04/01 (金) ]
環境省の最新資料を反映しデータを更新。2016/4/1
(上記までの更新記録は割愛)
初回公開日:2013/06/03


目次 (ページ内リンクが付いています)

1.大気環境基準達成状況など
 (1) PM2.5の環境基準達成状況
 (2) 測定局について
 (3) SPMの環境基準達成状況
 (4) PM2.5SPMの過去からの濃度推移
2.世界の状況
 (1) 中国5都市の状況
 (2) 世界主要都市の濃度
 (3) 大気汚染 国別ランキング
 (4) 世界各国のPM2.5の環境基準
3.PM2.5の組成、起源
 (1) PM2.5とは 
 (2) PM2.5の組成、どのような物質からできているのか?
 (3) PM2.5の起源
 (4) バックグラウンド濃度
 (5) 生成機構図
 (6) その他
4.人体への影響など
5.調理排気中のPM2.5
つぶやき
関連エントリー

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1. 大気環境基準達成状況など
特記していない図表の出典は、「環境省 報道発表資料」2016/3/31 平成26年度 大気汚染状況について(一般環境大気測定局、自動車排出ガス測定局の測定結果報告) です。  
(1) PM2.5の環境基準達成状況

2014(H26)年度の環境基準の達成率は一般局、自排局ともに改善した。

PM25環境基準達成状況【一般】

PM25環境基準達成状況【自排】
環境省のデータからブログ主が作成。
環境基準が設定されたのが2009年と最近で、本格的な監視開始が2010年からです。

環境基準
1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ、1日平均値が35μg/m3以下であること

注意喚起のための暫定的な指針として70μg/m3(1日平均値)が2013年2月設定。
【参考資料01】
この暫定的な指針を決めた時の専門家会合の報告書からの引用が別エントリーにあります
【参考資料02】
この暫定的な指針を“大きく超えない限り”、健康な人に影響がみられるわけではないので、運動会等の屋外での行事を中止する必要はない。
“大きく超える場合”とは? 十分な科学的知見はないが、米国の空気質指数(Air Quality Index)では、150μg/m3を超える場合に「すべての人はあらゆる屋外活動を制限するべき」としている。
一方で、高感受性者における影響は個人差が大きく、環境基準(1日平均値35μg/m3)より低い濃度であっても健康影響がみられることがある。
出典:PM2.5の健康影響について(2014/1/27 兵庫医科大学公衆衛生学 島正之教授)

2014年度 【一般局】 35μg/m3を超えた延べ日数
35μg/m3を超えた延べ日数20142013(H25)年度に比べ非達成となった日が5、6月に増加したものの、7、8月には減少した。また、2013年度は2月に風が弱いなどの気象条件により、関東地域を中心に日平均値が高くなった日が多かったが、2016(H26)年度は2月に日平均値が高くなる日が大幅に減少した。

2014年度 【一般局】 長期基準(年平均値15μg/m3以下)と短期基準(1日平均値35μg/m3以下)の両者を達成した場合に、環境基準を達成したと評価
PM2.5環境基準達成マップ(一般局)2014

(2) 測定局について

PM2.5を含め大気汚染の状況は、下記の測定局で観測されています。
『一般局』
一般環境大気測定局
『自排局』
自動車排出ガス測定局
目的地域全体の汚染状況を常時監視人が常時生活し、活動している場所で、
自動車排出ガスの影響が最も強く現れる
道路端又はこれにできるだけ近接した
場所を常時監視
設置
場所
住宅地などの一般的な生活空間交差点、道路、道路端付近など
局数約 1,500局約 400局
備考工業専用地域や臨港地区及び、通常、
住民の居住が考えられない地域の
測定局は環境基準が適用されない。
(監視報告から除外)
沿道局と車道局の2種類
沿道局は、採気口が道路の沿道上。
車道局は、採気口が道路の中央帯、
車道、交通等の上にあり環境基準が
適用されない。(監視報告から除外)


(3) SPMの環境基準達成状況

2014(H26)年度の環境基準達成率は、一般局で99.7%(1318/1322局 )でやや改善、自排局で100%(393/393局)で改善。
SPMの環境基準達成状況
環境基準
1時間値の1日平均値が0.10mg/m3以下であり、かつ、1時間値が0.20mg/m3以下(1973年設定)


(4) PM2.5SPMの過去からの濃度推移

日本のSPM、PM2.5の経年変化2014の2
環境省のデータからブログ主が作成。
【ブログ主注】データがある2001年以降のPM2.5のSPMに対する比率は70~80%*で、結構、相関があります。データが無い過去のPM2.5の数値は、その比率で目途を付ければ、1970年代前半は、かなり高いレベルであったと推測されます。
* 下記の東京都資料では、PM2.5質量濃度は、SPM 質量濃度の約60~90%の範囲であり、全季で平均すると約73%程度。

SPM と PM2.5 の相関
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2. 世界の状況

(1) 中国5都市の状況

SPMについて、日本の過去データと中国5都市の状況を比べた下記のグラフも参考になります。2007年の中国の状況は60年代から70年代初頭の日本の工業化都市のレベルとのことです。
中国SPMその3
出典:日本の公害防止設備投資と汚染濃度との相関分析から見た中国の現段階(2012年 吉野敏行)を一部加工

(2) 世界主要都市の濃度

WHOが2005年に公表した粒子状物質(PM2.5を含むPM10)の濃度。(PM10の説明は下の方にありますが、SPMとほぼ同じとの解釈で良いです。
世界のPM25
経済発展が著しい東アジア(カラチ、ニューデリー等)、北アフリカ(カイロ等)、ラテンアメリカ(リマ、アレキパ等)の地域は汚染がひどいことが分かる。約10年前のデータであるが、北京より汚染が進んでいる都市も少なくはない。これは、日本も経験したように高度経済発展する一方、環境対策が置き去りにされていると見ても良いだろう。
出典:「危機管理とBCPの専門誌 リスク対策.com」2013/4/8 クローズアップされるPM2.5の大気汚染問題(リスクマネジメント最前線より)

(3) 大気汚染 国別ランキング

大気汚染全体についての米イーエル大とコロンビア大の調査「環境パフォ-マンス2012」では、アジアや中東、アフリカといった地域の国々で深刻な状況にあり、132カ国の最悪はインドとしている。
大気汚染国別ランキング
出典:大気汚染、アジアを覆う 132カ国調査、最悪はインド(2013/3/24 朝日新聞)

(4) 世界各国のPM2.5の環境基準

米国EU韓国WHOのPM2.5環境基準
中国の一部地域:北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタ等の重点地域、直轄市及び省都の計74都市
小さい文字出典:東京都の大気環境(PM2.5)の現状と国の暫定指針に対する都の考え方(2014/1/27 池田誠 東京都大気保全課長)
PM2.5 をめぐる問題の経緯と今後の課題(2013/10/2 立法と調査)、
微小粒子状物質(PM2.5)とは(2013/3/21 樋口幸弘 東京都環境科学研究所)

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3. PM2.5の組成、起源

(1) PM2.5とは

PM2.5は、大気中に浮遊する粒子状物質であって粒径が2.5μm の粒子を50%の割合で分離することができる分粒装置を用いて、より粒径の大きい粒子を除去した後に採取される粒子を指す。
一方、SPMは、粒径が10μm の粒子を100%の割合で分離することができる分粒装置で測定。
ちなみに、PM10は、粒径が10μm の粒子を50%の割合で分離することができる分粒装置で測定。

粒子状物質の分級
PM25定義の2
出典:日本自動車工業会 微小粒子状物質 SPMからPM2.5へ2011/3

粒径チャート、粒径分布などの詳細は こちらのエントリーを参照ください。

(2) PM2.5の組成、どのような物質からできているのか?

地点分類別成分割合(全国)2014
出典:「環境省 報道発表資料」2016/3/31

有機態炭素(OCシュウ酸やコハク酸といった有機酸やベンゾピレンなどのPAHs(多環芳香族炭化水素))、元素状炭素(ECいわゆる“すす”)、NO3-、SO4-、NH4+、Mg+・Ca+・K+・Na+・Cl-、その他の成分(土壌粒子や水分)などから構成されている。すなわち、主要な構成成分は硫酸塩や硝酸塩などの無機塩、そして炭素成分ということになる。

様々な発生源から粒子状の物質が大気に放出されている(一次生成粒子)。発生源により多種多様な種類があるうえに地域や季節、気象条件などによってその組成が変動する。
そのように原因が明らかな一次粒子に加え、大気中の粒子の約半分は、前駆物質が大気中で反応して生ずる(二次生成粒子)。
【関連情報】
★「FOOCOM NET」2013/3/7 PM2.5は食品に影響を及ぼすのか?
★「国立環境研究所ニュース21巻5号」2002/12 【環境問題基礎知識】粒子状物質中の炭素成分について

(3) PM2.5の起源

一次生成粒子二次生成粒子
人為
起源
 
ばい煙発生施設(ボイラー、焼却炉等)
粉じん発生施設
自動車、船舶、航空機
家庭等群小発生施設(調理、給湯器等)
その他(野焼き等)
二次有機粒子(産業活動、燃焼由来のVOCの変換)
SO4- (燃焼等由来のSO2からの変換)
NO3- (燃焼等由来のNOxからの変換)
NH4+ (畜産等由来のNH3からの変換)
Cl- (燃焼由来のHCl からの変換)
自然
起源
土壌
海洋(海塩)
その他(火山活動、森林火災、花粉等)
二次有機粒子(植物*や森林火災等からのVOCの変換)
SO4- (火山からのSO2、海洋生物からの硫化物等からの変換)
NH4+ (土壌生物等によるNH3からの変換)
NO3- (土壌、落雷、森林火災などのNOxからの変換)
出典:東京都環境局HPの微小粒子状物質(PM2.5)対策のPM2.5の発生源と生成機構
* 植物から放出される自然起源のVOC排出量は人為起源のVOC排出量とほぼ同量ある(出典

発生源別
(4) バックグラウンド濃度

人為的影響の無い(少ない)地点でもPM2.5濃度は6~12μg/m3ほどはある、つまり、6~12μg/m3程度は自然発生源由来のバックグラウンドとのことです。

【環境省の直近資料】
バックグラウンドのデータとして19地点の平均があり都道府県までは分かりますがそれ以上はわかりません。(どのような場所なのか?まで記載して頂くとありがたいのですが)
成分では、硝酸イオン、元素状炭素の割合が低く、硫酸イオンの割合がやや高い。
地点分類別成分割合(全国)2014
一般環境     14.3μg/m3 102地点
道路沿道     15.0μg/m3 34地点
バックグラウンド 10.3μg/m3 19地点

少し古い下記のデータをみると、バラツキが大きいですが、もし、12μg/m3という数値が定常的であれば環境基準の年平均15μg/m3の達成は難しい目標ではないかと。
PM2.5バックグラウンド
【参考情報】
ファミリーレストランのPM2.5の濃度(4/1読売記事)
産業医科大大和浩教授と測定してみた。外気濃度は30μg/m3程度だったが、若者グループら約10人がいる喫煙席は133 μg/m3、喫煙席と仕切りのない禁煙席でも外気の1.5倍の44μg/m3。匂いは感じなかったが煙が漂ってきているらしい。
【コメント】
室内濃度は調理排気の影響もあるので、バックグラウンドとして、全席禁煙のファミレスも測ってほしかったところです。


(5) 生成機構図

今回の諸データーを読んで、下記の生成機構図を良く理解できました。
PM25の主な発生源と大気中の挙動
出典:「国立環境研究所 環境儀 NO.5」2002年 VOC 揮発性有機化合物による都市大気汚染PDFはこちらのコラム

(6) その他

上のほうにも引用していますが、日本自動車工業会の資料が読み応えがあります。(少々、専門的ですが。)
【pdf版】微小粒子状物質 SPMからPM2.5へ 2011年3月
【html版】JAMAGAZINE 2012年6月号の3/11~8/11。pdf版とダブル部分も多いですが、こちらだけの情報もあるようです。

【これらから一部引用】
新たに開発された最新の解析手法として、測定したPM2.5中のC(炭素)について、化石燃料中にはなくて植物中のCに含まれるC-14を手がかりに、C-14とC-12の割合を解析することにより、植物由来のC割合を解析する手法がある。
関東地区の各地点のPM2.5中のC分は、化石燃料からだけでなく30%から50%は植物からきていることが導き出された。同じ方法を使ってPM2.5中のCの季節による植物からの割合を推計した結果、収穫後の農地での焚き火等、植物の燃焼によると思われる炭素割合の増加が冬季に見られる。今日まで大気中の炭素の多くが化石燃料から、主に自動車由来と考えられてきたが、解析手法が新しくなることにより、より正確でより多くの情報が得られるようになった。大気中の自動車からのPM割合が従来考えられていた割合より少ない可能性もでてきている。

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4. 人体への影響など

安井至氏が「市民のための環境学ガイド」2013/2/24 PM2.5は新たな悪者か? で要約されていますので引用します。

6.PM10、PM2.5を吸入すると何がおきるのか
 ここの記述としては、環境省による微小粒子状物質曝露影響調査報告書を、それこそ1/10000程度に圧縮して記述する。当然、記述は不正確になる。もしも、不正確さが気になるのであれば、この参考文献の入手は容易であるので、ご自分でご検討いただきたい。若干の用語が難しいので、一々ネットで意味を調べることになるため面倒であることを除けば、一応の理解はできるのではないかと思う。
6.1 体内での挙動とサイズによる違い
 簡単にいえば、呼吸器に沈着する。沈着する部位や沈着量は、粒子の粒径、形状、吸湿性、水溶性かどうか、などによって影響を受ける。
 上気道、下気道、肺胞など部位によって違うが、ざっとした結論では、1μ以下は沈着しにくく、また、10μを超すと肺には沈着しにくく、3μより大きいと気道に沈着しにくい。
 気道では、したがって、1~3μmの粒子を、肺胞では1~10μmの粒子を主として考えれば良いことになる。ただし、肺胞では、2~4μmの粒子の沈着率が最大である。
 要するに、どうやら1~4μ程度の粒子径のものを考えれば良いようである。
 沈着した粒子はどうなるのか。様々な機構によって、外に排泄されるなどで除去される。
 肺胞に沈着した粒子は、気道に沈着した粒子より除去されにくい
6.2 呼吸器系への影響
 考えられている影響は次の3項目である。
(1) 気道や肺に炎症反応を起こす。より高濃度に曝露すると、肺障害がおきる。
(2) 気道の抗原抗体反応がおきる(喘息やアレルギー鼻炎などを悪化)。
(3) 呼吸器系感染症に罹りやすくなる。
6.2 循環器系への影響
(1) 呼吸器への刺激が自律神経機能に影響して、不整脈など心機能に影響する。
(2) 生理活性物質や過酸化物が増加し、血管の劣化が加速する。
(3) 血液凝固機能が加速され、血管狭窄を起こし、心臓に直接的・間接的悪影響を与える。
6.3 免疫系への影響
(1) マクロファージ(白血球の一種)の殺菌能力を下げる。インターフェロン(攻撃用物質)が減って、感染症に罹りやすくなる
(2) 抗体を大量生産するような作用もあり、アレルギーなどが悪化する。
6.4 発がん影響
 特にディーゼルエンジンに由来する微粒子のうち、炭素が主成分のものについては、発がん性があると考えられる。肺組織が炎症を起こし、マクロファージ(白血球の一種)が攻撃用の活性酸素を出すからである。
6.5 毒性金属の影響
 アルミ、バナジウム、ニッケル、鉛、亜鉛、クロムなどを含む粒子は毒性があるはずだが、実験の結果は確定的でない
6.6 疫学的な知見 - 短期的な影響
 死亡者数とその日のPM濃度との相関を見ること。65歳以上について調査した。
 諸外国では多数の研究報告があり、WHOなどによって研究報告がまとめられている。しかし、これらの報告ではPM10に関するものが多く、PM2.5との関連を検討したものは少ない。
 環境省検討会の結果、呼吸器疾患の3日遅れの死亡は有意であったが、それ以外の結果は明確ではなかった
 米国等の結果は、PM2.5濃度25μg/m3あたり、死亡リスクの増加割合は、全死亡で2~6%、循環器系死亡で3~7%、呼吸器系死因で2~7%である。
 検討会での解析結果は、PM2.5濃度10μg/m3あたりで、全死亡で0.8~2.4%循環器系死亡で1.2~2.8%呼吸器系死亡で0.8~2.8%で、米国の諸研究の下限値に近い値であった。
 PMの組成が違うなど、様々な理由が考えられるが、確実な知見はないとのこと。
―――――(以下、安井氏の別資料から引用)―――――
 これを具体的な数値に直すと、以下のようになる。
 PM2.5の平均濃度が環境基準値である15μg/m3だとすれば、それが25μg/m3であった日から3日後には、65歳以上の全死亡者が、普通の日には3000人であるものが、0.8%から2.4%増加して、3024名から3072名であった。しかし、この全死亡者についての結果は、統計的には有意ではなかった。ということである。
(中略)
 65~70歳と85歳以上では状況がかなり違うと思われるものも、ある意味でいつ死んでも不思議ではない年齢層では、ちょっとしたなんらかのキッカケで死亡する。PM2.5の濃度が高い日もそのようなきっかけになり得て、高濃度の日から3日後には死亡数が若干増えるということである。
 すなわち、若く健康な人の死亡率がPM2.5によって0.8~2.4%増えるということでは全くない。ちょっとしたきっかけ、例えば、激しく咳き込んだら死亡しかねないといった年齢層を対象とした調査から、PM2.5のリスクを求めている。
 同じような解析は、オキシダントについても行われていて、何かキッカケがあれば死亡するような人であれば、オキシダント濃度が高い日に死亡する確率が高いということを調査し、オキシダントは死亡率を高めると結論している。もっとも、こちらの場合には、オキシダント濃度が高い日は、気温が高い日でもあるので、気温の効果も見ている可能性があるので、それなりの処理は行われている。
 疫学が行なっている調査の実体を理解せず、誤解してしまうと、PM2.5というものが、極めて怖いものに見えてしまう。
        出典:2013/3/3 続PM2.5 悪者論クローズアップ現代 疫学の解析法
――――――――(もとの資料に戻る)――――――――

6.7 疫学的な知見 - 長期的な影響
 2001~2002年までの2年間を対象として、3歳児健康診査対象者と保護者にヒアリングを行った。
 その結果、PM2.5濃度が3~7歳の呼吸器系症状と喘息に関係しているということを示す疫学的知見は得られなかった
 保護者(両親)の持続性の咳については、PM2.5に限らないが、大気汚染物質への曝露が関連している可能性があった。

7.PM2.5の基準値
 以上のようなPM2.5であるが、どのぐらい怖いと考えるべきなのだろうか。
 日本の環境基準値は、すでに述べたように、「1年平均値が15μg/m3以下、1日平均値が35μg/m3以下」。
 もう一度繰り返すが、環境基準値というものは、ヒト健康を適切に守るために維持されることが望ましい基準である。疫学的な知見でも、短期的な影響はよくわからないので、一応、安全のために、1日平均値が35μg/m3を超すかどうかよりも、1年平均値を重視すべきであろう。
 一方、WHOの微小粒子状物質に対するまとめは、環境省の検討会のものとは若干違って、以下のようになっている。 【】内の記述は、筆者の個人的見解である。
◎PMへの曝露が健康へ悪影響を及ぼすという証拠は増加しており、それらは、アジア、ヨーロッパ、南アメリカ、北米の都市における現状の濃度レベルのPM曝露による有害影響を立証している。【かなり断定的であり、日本の疫学の結果とやや異なる
◎しかしながら、現状の科学的知見からはPMへの曝露による健康影響が認められない濃度を特定することができない。ということは、バックグラウンド濃度まで低減しない限り、いかなる濃度の基準を設定しても、いくらかの残留リスク(some residual risk)が残りうることを意味している。 【ある値なら安全であるというしきい値が見つからないということ。これは、疫学的手法で検出できるような毒性がそれほど高くないからかもしれない】。
◎そのため、大気中PM2.5濃度の基準値を地域的な制限、能力、公衆衛生の優先性を考慮したうえで可能な限り低濃度にすることを目標としている。【何がなんでも下げろとは言っていない】。
◎汚染レベルの高い地域においては、大気汚染の段階的低減の漸進的ステップが必要で、急性かつ重篤な健康影響が懸念されるレベルの高濃度の大気汚染を、段階的に低濃度へ移行させていくことが重要で、最終的にはガイドライン値の達成を目標とする。【まずは、悪者を確実に退治せよということ。そして、ガイドラインが目標値にできれば、それでひとまず目標達成】。


 上記のほかでは、環境省の微小粒子状物質(PM2.5)に関するQ&Aも参考になります。

【メモ】 PM2.5の健康影響と環境基準(国立環境研究所 新田裕史 )

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5.調理排気中のPM2.5

他のエントリーに記載していますのでリンクします

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つぶやき

大気汚染物質の環境基準の達成率の悪い順、すなわち、汚染レベルでは、
   光化学オキシダント>PM2.5 
で、これらがワースト2です。
環境基準は対応施策の目標となるもので、健康被害には直接的にはリンクしないものですが、光化学オキシダントがあまり騒がれていないのは、慣れているせいでしょうか?
それとも、PM2.5は発がん懸念のイメージ、光化学オキシダントは目やのどへの直接被害という、健康被害の質の違いによるものでしょうか?

また、PM2.5は放射線問題との類似の面が多々あると思います。具体的には
①環境基準と人体影響の関係は放射線の基準値をめぐる話、なお、環境基準のことを“安全基準”さらには“危険基準”と勘違いしている人も居るようですね。
②過去に高い汚染レベルがあったことは放射線の過去のフォールアウトの話、
③バックグラウンドの話、
④危険性を強調ぎみのメディア報道
などが共通する部分かと。

PM2.5が科学的に認知されたのが近年のことで、わかっていないことも多い一方で、日本の過去の公害による酷い汚染の時代には、大気中にかなり多く存在していた訳です。今の日本のレベルは“リスク”として高くはなく、それをやみくもに恐れる必要もないと思いました。

最後に、安井至教授の冷静な解説と感想を参考までに引用します。(出典は上記と同じ記事)

(一部のみ引用)

 環境問題の面白い特徴の一つは、メディアによってそれが「作られる」ことである。
 そして、健康至上主義、これは自己至上主義の一部であるが、の現代人にとって、非常に怖い悪者になることもある。
 その条件は、まず「新鮮な用語」、要するに、記者も一般市民も知らない単語であること。そして、もう一つの条件が危機を煽ることができること。健康被害は勿論だが、加えて、現状であれば、中国・韓国に対する国民的反感を増幅できることも条件の一つである。
 要するにメディアの商業主義と現代人の自己至上主義という二つの条件を満たしていることであるが、久々にこれらに合致したものが、「PM2.5」であった。

 まず、中国だが、目に見えるスモッグも大変だろうが、実際には、より古典的大気汚染であるSO2の規制強化を鋭意検討すべきである。健康被害は、むしろ昔からの悪者で決まるのではないか。
 韓国はPM2.5の濃度が比較的高いが、そのすべてが中国起源であるとは思えない。すなわち、自国の自動車排ガス規制を強化すべきである。

 九州などの地域。PM2.5は、中国だけでなく、韓国からも輸送されてきている。しかし、幸いにして、中国の濃度の1/10程度以下である。しかし、ときに35μg/m3という環境基準値を超すことがあるかもしれないが、あくまでも環境基準値であることを理解したい。
 個人的な防御策はほぼ無意味である。PM2.5は、普通のマスクでは止まらない。室内濃度も室外濃度とそれほど変わらないので、室内が安心ということではない。空気清浄機も絶対に効くと思わない方がよい。
 気にすればするほどストレスが溜まって免疫力が低下するので、逆効果だと思われる。空気が綺麗な日に、外部で充分活動をして、良い空気を楽しむということでストレス解消を狙うのが良さそうである。

 東京などの地域。東京はもはや世界の大都市としては、もっとも空気がキレイな街になった。まあ、それを享受しよう。

 メディアへの要請。中国政府による経済最優先・環境対策無視が、今回顕在化した大気環境の悪化の直接原因であり、これに気象条件が重なった、と報道してほしい。すなわち、日本に対する影響がどうのこうのと言うよりも、日本の環境対策を見本にして、もっと自分の健康を気にするように、と中国国民に伝えるよう努力して欲しい。

 今回のPM2.5関連の報道でも、メディアの挑発主義と内容の空疎さが目立った。これでは、ゼロリスクが可能と思っているゆえに不安になる人では、かえって自己免疫を低下させてしまう割合が増えるだろう。これが個人的感想である。


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関連エントリー

★PM2.5に関するまとめ、リンク集(越境大気汚染) [2013/03/06]
★再浮遊粉じん吸入による内部被ばく、セシウムの土壌付着
★大気中の放射性物質の挙動(フォールアウト時、再浮遊時、現状)

【メモ】
国立環境研究所ニュース Vol.32 No4 特集「大気汚染の現状と影響評価」
[ 2016/04/01(金) ] カテゴリ: 大気汚染 | CM(2)
Re: 着々と勉強中ですね
bloomさん
コメントありがとうございます。
私の勉強は好奇心の赴くままのものですが、お役にたつものがあればお使いください。
最近は好奇心だけでなく+αのファクターもありますが、その部分はメールをお送りする予定です。

まさに今、興味を持っているのは化学物質のリスクで、ダイオキシンや環境ホルモン問題の歴史的経緯?の世間の反応の部分が放射線と似ているので興味深かったです。いつものようにゆっくりと勉強していこうと思っていますので機会があれば、いろいろと教えて頂けると、嬉しいです。
[ 2013/07/10 00:26 ] [ 編集 ]
着々と勉強中ですね
icchou さん、お久しぶりです。
その後も着々と勉強中ですね。
PM2.5 を含め、私が気になるテーマが多いのでそのうち授業の参考資料に使わせて戴くかも知れません。

原発事故の時に都内の非生物系研究者が微妙な放射線量の上昇を躍起になって測定していたので「それより都内の大気汚染の方が危険」と言ったことは合っていそうですね。

私は放射線と紫外線は太古の昔から浴びているのである程度の量まで平気だと思っているのですが(実際にそのような実験データはあるし)、化学物質は生命にとって初めての出会いになる事が多いので結構怖いです。
九州も黄砂が怖くて住めません。

でも放射線と同様、化学物質で DNA 損傷が起きてもある程度は修復しますけどね。
[ 2013/07/09 22:41 ] [ 編集 ]
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