ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

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【3】イニシエーション作用、プロモーション作用、プログレッション作用(多段階発がん機構)

[ 2013/01/10 (木) ]
前号の【2】 遺伝毒性(変異原性)、発がん性の補足的な説明です。


 発がんのメカニズムについては、複数の因子が段階的に関与して起こるという説がよく知られています。
 まず化学物質やウィルスなどの発がん物質のうち、イニシエーターによって、細胞内の遺伝子が障害を受け変異します(イニシエーション作用)。
そこにさらにプロモーターが加わると、細胞の増殖が促進されます(プロモーション作用)。
この細胞がさらに遺伝子に障害等を受け変異した場合に細胞はがん化します(プログレッション作用)。

 しかし、通常は細胞のなかにあるDNA修復遺伝子がん抑制遺伝子が遺伝子を修復したり細胞の異常増殖を抑えたりして、がん化するのを防いでいるために、遺伝子変異のすべてががん化することはなく私たちは健康でいられると考えられます。このDNA修復遺伝子がん抑制遺伝子が正常に機能しなくなると発がんに至ると考えられます。

 発がん物質にはイニシエーター*として働くもの、プロモーター*として働くものがあり、どちらか一方だけでは細胞はがん化しないのです。タバコの煙に含まれるベンツピレン(ベンゾピレン)紫外線ウィルスイニシエーターとしてはたらき、塩分プロモーターとしての働きをもっているといわれます。イニシエーターとプロモーターの両方の性質を持った物質もあります。

 私たちが日常生活で接している物質にも、食物などの天然物質を含めて発がん性があるといわれる物質はたくさんあります。それでも、がんにならないのは、ヒトに備わっている防御機構によることはもちろんですが、その物質が発がんイニシエーターかプロモーターかなどの違い、日常生活のなかでその物質に接触する程度などによるものと考えられます。発がんのリスクが示唆されている場合には、そのリスクを現実的な被害としないために適切に管理されることが求められます。

* 発がん性試験によって、がんの誘発性の有無が調べられ、がんが認められた場合にはそのメカニズム試験が実施されます。イニシエーション作用によるものかプロモーション作用によるものかを変異原性試験の結果なども参照し判定します。
プロモーション作用の場合はがんの誘発されない用量(閾値)があると考えられるので、閾値以下に農薬の摂取量を管理することでヒトへの安全性が確保できます。
イニシエーション作用によるものと判定された場合は農薬登録されません



病気事典 がん細胞の成り立ち(メディカルiタウン)から引用

多段階発がん
 いくつかの遺伝子異常の集積によってがんが発生する多段階発がん機構は、どの臓器においても一般的に受け入れられている概念です。これは、発がん物質の投与から実際の発がんに至るまでにある一定の期間が必要なこと、がんに至るまでのさまざまな病理学的変化がみとめられていること、がんに好発年齢があること、などの理由によるものです。
 また、最近の分子生物学の進歩により、さまざまな病理学的変化と遺伝子異常との関連があきらかにされてきたことも多段階発がん機構を証明する大きな要因の1つとなっています。
 多段階発がん機構は、イニシエーションプロモーションプログレッション悪性変化の4つの段階に分けることができ、この発がん過程に少なくとも2回の遺伝子異常が関与していると考えられています。
イニシエーション02
イニシエーション
 発がん物質がDNAを傷害すること、あるいはDNA複製時のエラーとして核酸に異常が生じることを指します。
 頻度としては、後者のほうが高いといわれています。DNAに生じたエラーが修復*1されずに次の複製がおこなわれると、この異常が固定されることになります。多くの場合、DNA複製エラーは細胞にとって無害ですが、たとえば増殖に関与する遺伝子にこの複製エラーが生じると、細胞は発がん過程の第一歩を踏み出したこととなります。これがイニシエーションの段階です。
プロモーション
 イニシエーションを受けた細胞がある条件下に置かれると、細胞は自律的に増殖を開始し、過形成性変化と呼ばれる状態になります。これがプロモーションの段階で、発がん過程の第2段階です。プロモーションをひき起こす原因をプロモーターといいます。たとえば食塩*2は胃がんのプロモーターの1つと考えられています。 食塩だけでは胃がんになりませんが、胃の発がん過程を助長するものです。
 プロモーションは可逆性で、遺伝子異常ではないため、プロモーターが消失するとイニシエーションを受けた細胞の増殖もとまり、過形成性変化も消失することとなります。*3
プログレッション
 イニシエーションを受けた細胞がプロモーターの影響下に増殖しているとき、次の重要な遺伝子異常が生じると、細胞は腫瘍(しゅよう)性変化を起こします。これがプログレッションと呼ばれるもので、発がん過程の第3段階です。
悪性変化
 プログレッションは不可逆性変化で、この段階の細胞に最終段階の悪性変化が生じてがんとなります。このような多段階発がん機構は大腸がんで研究が進んでおり、それぞれの過程に関与する遺伝子もわかってきています。
イニシエーション03

 【ブログ主注】
*1 細胞の持つ修復機能や、細胞自体が消滅すること(アポトーシス)
*2 食塩は胃がん、脂肪は大腸がん、アルコールは食道がんのプロモーターと考えられている。(農水省「がん」と「遺伝毒性発がん物質」
肺がん発症において、石綿(アスベスト)はプロモーターの役割を果たしている (厚労省資料
*3 イニシエーション作用を持つ遺伝毒性発がん物質の多くは、それ自体がプロモーション作用も同時に持っている。(農水省「がん」と「遺伝毒性発がん物質」

(参考として)他の図

イニシエーション05

イニシエーション出典:安全学基礎 化学物質・放射性物質によるリスク(長崎晋也教授)

イニシエーション05
出典:多段階発がん説/発がんは30年後(ニッスイ企業情報サイト)

がん化のプロセスと抑制機構出典:東日本大震災―放射線の影響3

イニシエーション04出典:ビールの発がんプロセス抑制作用に関する研究(キリンHD)


関連エントリー

★放射線によるDNAの損傷・修復(アポトーシス・免疫システムなど、がん化防止のプロセス) [2011/10/24]

次号:【4】一日摂取許容量:ADI 、許容残留量:MRL (閾値がある化学物質)
食品中の化学物質の安全性の一覧ページはこちら
その他の関連エントリーはカテゴリーにひとまとめにしています。記事下部or左欄のカテゴリーリンクから、どうぞ。

【個人的メモ】 芽細胞発癌説という主張もある。
癌の発生について:新しい発癌仮説ー芽細胞発癌説(fetal cell carcinogenesis) (大阪大学大学院医学系研究科 甲状腺腫瘍研究チーム 髙野徹氏)

甲状腺癌の発生機序−最近の基礎研究からの 知見(日本甲状腺学会雑誌 Vol. 1 No. 2/Oct. 2010 長崎大学大学院 光武範吏氏)

【個人的メモ】
ガン発生理論の新旧 ~ガンの親細胞と遺伝子異常~(ブラックジャックの孫 間 黒助 の ガン治療研究ブログ 2013/8/24)
我楽多頓陳館 ガンと遺伝子
化学物質の発がん性評価について(福島昭治 2013/2 化学物質の発がん性と労働者の健康障害防止のためのリスク評価に関する意見交換会
がんメカニズム(イニシエーションとプロモーション)
変異原性(イニシエーター)から見たリスク評価(鈴木孝昌)
消化管癌グループ 研究 広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 消化器・移植外科学
[ 2013/01/10(木) ] カテゴリ: 食品中の化学物質,リスク | CM(0)
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