ポストさんてん日記

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【4】一日摂取許容量:ADI 、許容残留量:MRL (閾値がある化学物質)

[ 2013/01/11 (金) ]
前号の【3】 イニシエーション作用、プロモーション作用、プログレッション作用からの続きです。

閾値がある化学物質の安全基準

(図の再掲)
化学物質の主な安全性試験

毒性試験
こちらから転記
 発癌性と催奇形性が認められなかった閾値のある化学物質については、長期毒性試験短期毒性試験が行われる。

安全性を確認するための試験02
 出典:日本食品添加物境界「もっと知ってほしい食品添加物のあれこれ」

最小有害作用濃度(LOAEL:Lowest Observed Adverse Effect Level)と
無有害作用濃度(NOAEL:No Observed Adverse Effect Level)

 これらは毒性試験の結果に基づいて求められる。
 動物実験において設定した投与量の内、影響が認められた最少濃度が最小有害作用濃度(LOAEL)である。用量・反応関係は通常直線的であることから、影響が認められた用量を結んで水平軸と交わった点が無有害作用濃度(NOAEL)である。
(読みは“ろあえる”、“のあえる”)

閾値がある化学物質の安全基準

一日摂取許容量(ADI: Acceptable Daily Intake)

 一日摂取許容量(ADI)は、多くの場合、無有害作用濃度(NOAEL)の100分の1に設定される。その根拠は、実験動物の成績をヒトに外挿する訳だから種差を考慮しなければならず、多くの既存データ(たとえば致死量の比較)から、不確実係数として10倍、さらに、ヒトにも老若男女の感受性の違いがあることから、個体差として10倍安全係数を見込んでいる。これが100分の1の根拠である。
“多くの場合”の例外としては、重大な疾病要因となる場合であり、1000分の1に設定される。すなわち、多方面の科学的知見に基づいて、動物実験の結果からヒトが摂取しても健康障害を起こさない用量が検討される。動物の生涯に亘る投与試験から求められた一日摂取許容量(ADI)は、ヒトが生涯に亘って摂取しても健康に影響しない量である。

許容残留量(MRL: Maximum Residue Level)

 特定化学物質Xについて一日摂取許容量(ADI)が設定されたら、Xが含まれる可能性のある全ての農畜水産物の一覧を作成し、国民栄養調査で求められたそれぞれの摂取量を書き加える。許容残留量(MRL)は、それぞれの農畜水産物に含まれるXの上限濃度(ppm)であるが、農畜水産物の摂取総量で一日摂取許容量(ADI)を割った値が基本となる。
しかしながら、頻繁に食べる農畜水産物と滅多に食べないものを同等に扱うのは不合理であり、米のように毎日食べるものの安全性をより強く考慮することが合理的である。また、それぞれの農畜水産物の生産過程における病害虫の防除等にXの必要性が高いか低いかということも考慮の対象となる。すなわち、頻繁に食べる農畜水産物であって、生産過程におけるXの必要性が低い場合には厳しく設定し、滅多に食べないもので生産過程におけるXの必要性が高い場合には緩めに設定される。
すなわち、それぞれの農畜水産物の許容残留量(MRL)を決定する際に、 総和が一日摂取許容量(ADI)を超えない範囲で、生産過程におけるXの必要性生産物の有用性が考慮される。

一日摂取許容量(ADI)と許容残留量(MRL)の関係
      一日摂取許容量(ADI)と許容残留量(MRL)の関係(1)

 市販の農畜水産物は行政が定期的に検査しており、その結果が公表されているが、検出された農薬であっても、許容残留量(MRL)の数十分の1から数百分の1程度に留まっている(食品中の残留農薬の一日摂取量調査結果(平成17~18年度))。
実際の残留量の総和は、一日摂取許容量(ADI)を大幅に下回っている。下図では、赤い部分が沢山残っていることで示した。
ところが、時々、ある農畜水産物が許容残留量(MRL)を超えていたと発表されることがある。「基準を超えていたのだから、危ない」と判断する方が多いが、実はそうでないことを右下図に示した。たとえ数倍の濃度が残留していたとしても、総和としては一日摂取許容量(ADI)に達しておらず、まだ余裕がある。しかも、一過性のことであり、一生涯を通して食べ続けることを想定した一日摂取許容量(ADI)からすると、健康への悪影響は全くない。

一日摂取許容量(ADI)と許容残留量(MRL)の関係(2)
      一日摂取許容量(ADI)と許容残留量(MRL)の関係(2)

 こうしたことを理解できれば、ポジティブ・リスト制度簡潔な説明厚労省のパンフレット)の下で発表される許容残留量(MRL)を超えていたという発表に添えられる「仮に今回の○×を毎日一生涯食べ続けたとしても、健康に悪影響を及ぼすことはない」という説明が納得できるでしょう。決して、<危ない本>を読み漁って、不安を増幅することがないように願うばかりである。とくに、マスメディアの方々には、不安を煽ることがないようにお願いしたい。

出典(個別に明記してある部分以外)

岡本教授の【分かりやすい安全性の考え方】
 一日摂取許容量と許容残留量

【関連エントリー】
【資料編0】安全性試験(毒性試験)の種類

次号:【5】実質安全量:VSD (閾値がない化学物質)
[ 2013/01/11(金) ] カテゴリ: 栄養学?や基礎的な事 | CM(0)
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