ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

9.3トンの分離プルトニウム保有、核不拡散問題

[ 2012/12/14 (金) ]
 将来的に原発をどうするか?、再処理・プルサーマル・高速増殖炉をどうするか?などに絡んで、表記の問題があります。基礎的な情報をまとめておきます。
 11月12日のドライキャスクから始まり、知りたがりの虫が騒ぐままに調べてきたエントリーの最後ですが、チョットしたシリーズになりました。(下のほうに関連エントリーリストがあります。また、カテゴリーも新設しました。)

1.プルトニウムについて基本的なこと

日本および各国のプルトニウム保有量

2011年末の日本の“分離プルトニウム”保有量
全プルトニウム核分裂性
プルトニウム *1
国内9.3 トン6.3 トン
フランス *217.9 トン11.7 トン
イギリス *217.0 トン11.6 トン
合計44.3 トン29.6 トン
*1 Pu-239及びPu-241
*2 英仏に再処理を委託し、既に分離されてはいるが、まだ我が国に返還されていないもの。これらは原則として、海外で混合酸化物(MOX)燃料に加工され、我が国の軽水炉で利用されることになっている(プルサーマル)。
出典:「第39回原子力委員会資料第2号」2012/9/11 我が国のプルトニウム管理状況

下図は2010年末の保有量(数値は全プルトニウム量、日本のデータは国内分のみ
各国のプルトニウム保有量01   各国のプルトニウム保有量02各国のプルトニウム保有量03
出典:★原子力委員会のこれまでの活動と経緯(資料4-2)2012/10/31(第1回 原子力委員会見直しのための有識者会議) からブログ主が加工

“分離プルトニウム”が核不拡散上の問題となる
 出典:★「核情報」2010/11/6 原子力に関する日本の決定は、国内問題─日本のプルトニウム計画は国際問題

分離前の“使用済燃料”は放射線が高いので100年以上の「自己防衛性」を持っている。一方、“分離済みプルトニウム”は簡単に運び去ることができる。テロリスト集団が8kgを盗むと、世界のすべての都市が危機にさらされる。

分離プルトニウムが核不拡散上の問題

使用済み核燃料に約1%のPu-239が含まれる
★燃料集合体および燃料棒、燃料ペレットなどから転記
軽水炉におけるウラン燃料の変化

(放射性崩壊図)半減期は2万年、最小臨界量は5.6kg など

プルトニウム

atomica U-235とPu-239の相違:比放射能および最小臨界量


2.核不拡散問題など、論説いろいろ

★「池田信夫 blog」2012/11/30 原発は「フェードアウト」できるのか

(一部のみ引用)

 原発をゼロ*にするなら、日本が核拡散防止条約(NPT)の例外として平和利用に限定して認められているプルトニウムの保有は認められない。それを認める日米原子力協定は破棄され、日本はNPT違反になるので、北朝鮮のように脱退するしかない。それは日本が核武装しないという日米同盟の根幹をゆるがすので、安保条約の破棄も覚悟しなければならない。これが民主党の「原発ゼロ」政策がわずか1週間で撤回された原因だ。

*ブログ主注:原発をゼロでなくても、プルサーマルを止めるなら、ですね。

★「Global Energy Policy Research」2012/11/12 核燃料サイクル対策へのアプローチ 澤 昭裕

(一部のみ引用)

 日本は利用目的のない余剰のプルトニウムは持たないとの方針を内外に明らかにしているが、使用済み核燃料を再処理して回収されるプルトニウムは当面MOX燃料にして既存の原発で使用しつつ、将来的には高速増殖炉で燃やす以外に、正当な所有目的を探すことは難しい。
 米国が、革新的エネルギー・環境戦略の方針*について強い懸念を示したのは、同戦略を遂行した場合に不可避的に発生する余剰プルトニウムを日本はどうするつもりなのか不明であること、日本が厳しい査察を受けつつ、核燃料サイクルを目指すことを条件に、米国が非核保有国で唯一再処理の包括同意を与えている日米原子力協定の基礎が崩壊することが、その理由である。

* ブログ主注:民主党政権がバタバタしながら9月に纏めたもので、2030 年代に原発稼働ゼロを目指すなどの内容ですが、これを参考文書にとどめ、その閣議決定を見送った。(結果としては良かったかと)。これに代わって閣議決定されたのは、「柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する」とした「今後のエネルギー・環境政策について」という一文にすぎない。

★「核情報」2010/11/6 原子力に関する日本の決定は、国内問題─日本のプルトニウム計画は国際問題 フランク・フォンヒッペル教授

再掲です。(一部のみ引用)

 今日、日本は使用済み燃料からプルトニウムを分離している唯一の非核兵器国
大量の民生用プルトニウムを抱えている4ヶ国の一つ(他の3ヶ国は、英、仏、露)
ウラン濃縮をしている非核兵器国5ヶ国の一つ(他の4ヶ国は、ブラジル、ドイツ、イラン、オランダ)
非核兵器国による再処理実施の先例は重大な意味。韓国は同じ権利を要求。他にも核兵器オプションの開発に関心を持つ国がある。
日本は商業用原子力の分野で中心的国家だ。だが、原発を放棄すればその地位を失う。となると、中国インドペルシャ湾諸国ロシアに今後何年もの間すべての原発が行くことになる。これらの国は核拡散防止の旗を振るような国ではない。




(一部のみ引用)

 非核兵器国の日本が核不拡散を徹底して保証する姿勢が国際標準として存在することで、第三国の「異端性」を主張し、厳密な保障措置の適用を要求する圧力をかけることが可能になってきたのではないか。すなわち、非核兵器国としての日本が、NPT体制の維持に貢献しその核燃料サイクル活動が国際的に認められてきたことは、我が国の特別な優位性でもあり、国際的な核不拡散への強い貢献でもあったと考える。
 我が国の核燃料サイクルが消滅するとなると、NPT体制下での、この国際的な核不拡散の仕組みが変化することが懸念される。我が国の核燃料サイクルが国際的認知を得ていることが、NPT体制の中での、一定の「重し」になってきたということで、この「重し」を一気に取り去ることは、国際核不拡散の体制に少なからず影響を与えるであろう。


再掲です。 

 我が国の燃料サイクル技術は、国際的にも高いレベルにある。実際、商業規模で大規模な再処理リサイクルを進め得る技術力を持っているのは、現在の所は、フランスと日本だけである。実際には、フランスと日本が、産業規模の燃料サイクル技術を牽引してきた立場にある。
 米国では、実用規模の再処理技術や高速炉技術は、現在は保有していないが、将来の技術選択肢としてはこれを放棄しておらず、「日本やフランスの技術に期待している」というのが現実である。我が国の燃料サイクルが消えると、燃料サイクル技術はフランス中国・インドのグループに限定されることになり、米国は強く連繋してきた日本の技術を失うことになる。
 また、フランスは、核燃料サイクル事業の重要なパートナーを失うことになり、産業技術としての自らの存立の基盤の弱体化に繋がる可能性が生ずる。「パートナーよ、去らないで」というのが、仏米の本音ではないか。
 こうなると、中国インドの立場を含めて世界的な技術バランスの変化が生じるであろうし、高度な核燃料サイクル技術が縮退して行くことも考えられる。今後、中国インドがこの分野での世界のリーダーになってゆくのかどうか想像すらできないが、従来からの「日・仏・米」の技術連繋の弱体化が進む可能性は否定できないし、我が国の「技術的な優位性」は失われる。



つぶやき

 すでに過去の話ですが、鳩山元首相が温暖化ガス排出量を2020年に25%(1990年比)削減する国際公約を打ち出したことを受けて、目標原発比率を5割としました。その後、東日本大震災で原発事故が発生し、将来の原発比率がゼロまでの幅の中で様々な論議があります。
 今回、一連のエントリーをまとめて、この問題が多義に渡ることを再確認できました。気が付いた範囲で列挙します。

 ● 代替電源(当然コスト裏付けなどの経済問題を含む)
 ● エネルギー安全保障
 ● NPT問題
 ● プルサーマル・高速増殖炉、
 ● 使用済燃料の再処理、最終処分問題、むつ小川原開発計画の後始末問題
 ● 廃炉、次世代原発、国際共同研究などの技術育成
 ● 地球気候変動(温暖化)対応

 いずれの課題も、将来の世代にどの様な日本の姿を残すか?と言う命題に繋がる『国家50年 or 100年の計』ですね。これらの課題との関連性に触れずに、あるいは、現状や将来に対するキチンとした分析なしに、原発をゼロをスローガンのように言う政治家は無責任です。

 ちなみに、ブログ主は現在、原発に対しては電力の安定供給の手段として必要、再処理と高速増殖炉に対して懐疑的、プルサーマルに対して消極的賛成、という立場です。


関連エントリー

★9.3トンの分離プルトニウム保有、核不拡散問題 [2012/12/14] ←本エントリー
★使用済み燃料の再処理、直接処分の比較など [2012/12/10]
★燃料集合体および燃料棒、燃料ペレットなど [2012/11/26]
★ドライキャスク(乾式容器)貯蔵とは、実績なども含めて [2012/11/12]
★高速増殖炉の原理、歴史、現状、再処理工場 [2011/06/15]
★プルサーマルの経緯、現状、MOX燃料とは [2011/06/14]

【参考資料】
★日本の原子力発電所の発電総出力と使用済み核燃料貯蔵量 本川裕さんのサイト『社会データ実情図録』

【個人的メモ】
★「JBpress(日本ビジネスプレス)」2012/10/12「原発ゼロ」挫折の影に浮かび上がる核武装問題 原爆5000発分のプルトニウムをどうするのか 池田信夫
★「JAEA-Review」2010/7/13 核不拡散に関する日本のこれまでの取組みとその分析
★「読解力図解力と教える技術の謎解きブログ」2011/11/6 原子力論考(27)発電用原子炉のプルトニウムで原爆は作れません
★「読解力図解力と教える技術の謎解きブログ」2012/11/24 原子力論考(72)原発を作る動機は核武装だというよくある主張について
[ 2012/12/14(金) ] カテゴリ: 再処理~最終処分に関する | CM(0)
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