ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

使用済み燃料の“再処理”と“直接処分”の比較など

[ 2012/12/10 (月) ]
使用済み燃料の“直接処分”について、よく耳にするようになった気がします。
“再処理”と“直接処分”の比較などの基本的なところを纏めておきます。

1.使用済み燃料の取扱いは2通りあります。現在の日本の計画は“再処理”です

直接処分とは

 湿式(使用済燃料プール)または乾式(ドライキャスク)で中間貯蔵し、放射性物質が減って温度が下がるのを待ってからから、そのまま放射性廃棄物として最終処分(地層処分)する方法

 使用済み核燃料の組成
 (既エントリー★燃料集合体および燃料棒、燃料ペレットなどから転記)
原子炉でウランU-235(燃料棒の3~5%)が核分裂して熱を発生するが、使用済み燃料中にも、1%程度のU-235が残る。
また、核分裂しないウランU-238の一部は、中性子を吸収してプルトニウムPu-239になり、使用済み燃料中には、約1%のPu-239が含まれる。

軽水炉におけるウラン燃料の変化

再処理とは
既エントリー★プルサーマルの経緯、現状、MOX燃料とはから転記および一部加筆。

 湿式(使用済燃料プール)で数年間冷やしてから、使用済み燃料に含まれているプルトニウムとウランを再処理(抽出)してMOX燃料*として軽水炉*高速増殖炉で使用する。
* 軽水炉(現状の原子炉)でMOX燃料を使う事を『プルサーマル』という。
現在は燃料全体の約1/3をウラン燃料からMOX燃料に置き換えて使っている。
建設中の大間原発(青森県)では、全ての燃料にMOX燃料を使用するフルMOXが計画されている。

* MOX燃料はプルトニウムを下図の比率で含む。

燃料の組成

 MOX燃料への再処理は、今は、英国(セラフィールド)やフランス(ラ・アーグ)に委託しているが、最終的には国内で全量再処理する計画で、日本原燃㈱が青森県六ヶ所村再処理工場を建設中。

 再処理工場は原発に比べ、はるかに多い量の放射性物質を放出する。再処理の工程は裸の核物質を広範囲に扱う。放射線レベルが非常に高く、人が近づくことができない。その為、すべて遠隔操作で行う。
 再処理にともなって高レベルの放射性廃液が出る。溶けたガラスと混ぜ合わせて固定化し、ガラス固化体*として管理する。 一時保管場所で30~50年くらい中間貯蔵し、放射性物質が減って温度が下がるのを待ってから最終処分(地層処分)する方法。
* 高レベル放射性廃棄物とは、このガラス固化体のことを指す。

建設中の六ヶ所再処理工場の現状

核燃料再処理工場が長期の完工延期に追い込まれそうです。

日本原燃は2016年春ごろまで完工を延ばすつもりと言われますが、審査により工場設備の改造が必要になるのは確実ですから設備設計・認可・施工がそんなに短期間で済むはずがありません。核燃料サイクルの中核施設はいつまで経っても完成しそうもなく、やはり稼働が絶望的な高速増殖炉「もんじゅ」と共に核燃サイクル撤退を真剣に考えるべきです。

出典:「Blog vs. Media 時評」 2014/10/2 死に体の核燃料再処理、政府の救済人事も無理か

2013年10月竣工の予定
六ヶ所再処理工場の現状
出典:★原子力政策の課題 2012年11月 資源エネルギー庁 (以下、資料4と記載する)


2.各国の状況

過去の経緯
既エントリー★プルサーマルの経緯、現状、MOX燃料とはから転記および一部加筆。

 プルサーマルの実績は長く、1963年に開始したベルギーを始めとして、イタリアドイツでは1960年代からの経験がある。また、オランダスウェーデンでも行われたことがある。
ただし、ドイツスイスベルギーでは抽出済みのプルトニウム在庫を燃やしたらプルサーマルは終了とされており、今後も再処理を行ってプルトニウムを抽出し、積極的にプルサーマルを続けようとしているのはフランスと日本だけとなっている。

 米国では1960年代にプルサーマルが始められたが、20年間ほど中断が続いた。その後、2005年6月からMOX燃料の試験運転が開始され、同年10月解体核用のMOX燃料加工工場の建設が開始された。
原発の使用済み燃料は再処理をせず、直接処分することが決定している。
ネバダ砂漠にあるユッカマウンテンの地下に大規模な最終処分施設を作る計画であったが、オバマ政権になって計画を中止し、代替案を検討する方針である。

 冷戦の終結と、ソビエト連邦の崩壊によって核兵器の解体が進んでいるため、世界的なプルトニウムの剰余が核不拡散の観点から問題になっている。一方で、プルトニウム利用の主流である高速増殖炉については、各国で計画の中止や遅延が相次いでおり、プルトニウム処理の有効な方法として、プルサーマルを捉える向きもある。

(参考情報)
atomica 各国の軽水炉におけるMOX燃料の使用実績
atomica 世界の主なMOX燃料加工施設
atomica 海外のプルトニウム燃料製造施設 (04-09-01-06)

現在の地層処分の計画進捗状況
出典:資料4
各国における地層処分の進捗状況
スウェーデン(2025年試験操業予定)、フィンランド(2020年操業予定)が進んでいる。

【ブログ主注】
の印が多い印象を与えているが、フランス日本以外は過去の再処理の結果としてガラス固化体もあるよ、といったレベルだと思う。
アメリカが中止したのは、科学的検討によるものではなく、政治的な理由だったと理解している。



3.最近の状況、直接処分と再処理の比較例

(民主党政権の)革新的エネルギー・環境戦略から
出典:資料4

 引き続き従来の方針に従い再処理事業に取り組みながら、今後、政府として青森県をはじめとする関係自治体や国際社会とコミュニケーションを図りつつ、責任を持って議論する。
 直接処分の研究に着手する。
 我が国の地質環境条件等に適した処分概念を構築するため、直接処分の技術開発を検討。(平成25年度概算要求額:経済産業省3.5億円、文部科学省3億円)

 【ブログ主注】
民主党政権がバタバタしながら9月に纏めたもので、2030 年代に原発稼働ゼロを目指すなどの内容ですが、これを参考文書にとどめ、その閣議決定を見送った。(結果としては良かったかと)。これに代わって閣議決定されたのは、「柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する」とした「今後のエネルギー・環境政策について」という一文にすぎない。


直接処分と再処理、対象物の比較
出典:資料4 (この資料は有用である一方で、“再処理が有利だという印象操作”があるようですので、個別に指摘しておきます。

使用済燃料の直接処分の課題
直接処分はキャニスターと呼ばれる容器に燃料集合体を納めて地層処分するのですね。
【ブログ主注】
シート上部の『(1)ウラン/プルトニウムが多量に存在するとともに、臨界可能性がある』はこんなに強調する事項か?(嘘ではないが、可能性が少ない話では?現に、先行しているアメリカスウェーデンフィンランドなどではクリアーされている命題では?)
『(2)(3)』の直接処分の欠点に対して、それに匹敵あるいはそれ以上の再処理工場の操業リスクはいっぱいあるのでは?


核燃料サイクルによる廃棄物の減容・有害度の低減
【ブログ主注】
シート上部の『(1)(2)』の再処理の利点はこんなに強調する事項か?。一方で再処理工場の操業リスクはいっぱいあるのでは?


直接処分と再処理、経済性比較
出典:★「核情報」2010/11/6 原子力に関する日本の決定は、国内問題─日本のプルトニウム計画は国際問題 フランク・フォンヒッペル教授

直接処分は再処理より、5兆円強の安上がりである。

ブログ主注:チョット乱暴な情報です。他に比較条件が明確な情報に巡り逢ったら追記します。


4.国際社会の中での位置づけ
直接処分と再処理だけでなく、原発(軽水炉)や高速増殖炉をも含めた話になりますが、参考までに。

★「核情報」2010/11/6 原子力に関する日本の決定は、国内問題─日本のプルトニウム計画は国際問題 フランク・フォンヒッペル教授

 今日、日本は使用済み燃料からプルトニウムを分離している唯一の非核兵器国
大量の民生用プルトニウムを抱えている4ヶ国の一つ(他の3ヶ国は、英、仏、露)
ウラン濃縮をしている非核兵器国5ヶ国の一つ(他の4ヶ国は、ブラジル、ドイツ、イラン、オランダ)
非核兵器国による再処理実施の先例は重大な意味。韓国は同じ権利を要求。他にも核兵器オプションの開発に関心を持つ国がある。
日本は商業用原子力の分野で中心的国家だ。だが、原発を放棄すればその地位を失う。となると、中国インドペルシャ湾諸国ロシアに今後何年もの間すべての原発が行くことになる。これらの国は核拡散防止の旗を振るような国ではない。



★「Global Energy Policy Research」2012/11/5 核燃料サイクルと原子力政策(下)—重要国日本の脱落は国際混乱をもたらす 山名元

 我が国の燃料サイクル技術は、国際的にも高いレベルにある。実際、商業規模で大規模な再処理リサイクルを進め得る技術力を持っているのは、現在の所は、フランスと日本だけである。実際には、フランスと日本が、産業規模の燃料サイクル技術を牽引してきた立場にある。
 米国では、実用規模の再処理技術や高速炉技術は、現在は保有していないが、将来の技術選択肢としてはこれを放棄しておらず、「日本やフランスの技術に期待している」というのが現実である。我が国の燃料サイクルが消えると、燃料サイクル技術はフランス中国・インドのグループに限定されることになり、米国は強く連繋してきた日本の技術を失うことになる。
 また、フランスは、核燃料サイクル事業の重要なパートナーを失うことになり、産業技術としての自らの存立の基盤の弱体化に繋がる可能性が生ずる。「パートナーよ、去らないで」というのが、仏米の本音ではないか。
 こうなると、中国インドの立場を含めて世界的な技術バランスの変化が生じるであろうし、高度な核燃料サイクル技術が縮退して行くことも考えられる。今後、中国インドがこの分野での世界のリーダーになってゆくのかどうか想像すらできないが、従来からの「日・仏・米」の技術連繋の弱体化が進む可能性は否定できないし、我が国の「技術的な優位性」は失われる。



5.使用済燃料の中間貯蔵

 直接処分にしろ再処理にしろ、使用済み燃料の温度(発生熱)が下がるまでは中間貯蔵が必要です。詳細は下記エントリーに纏めてあります。
★ドライキャスク(乾式容器)貯蔵とは、実績なども含めて [2012/11/12]
★燃料集合体および燃料棒、燃料ペレットなど [2012/11/26]

つぶやき

 日本では、最終処分(地層処分)に対する科学的見解が割れている現状があります。
 たとえ長期的に原発を廃止してくとしても、最終処分(地層処分)問題は解決しなければならない課題です。しかも、高速増殖炉・再処理工場をどうするかとセットでの解決が必要なので、当面、ドライキャスクによる中間貯蔵で時間をかせぎながら、急がずじっくりと検討するが現実的な対応だと思います。


関連エントリー

★9.3トンの分離プルトニウム保有、核不拡散問題 [2012/12/14]
★高速増殖炉の原理、歴史、現状、再処理工場 [2011/06/15]
★プルサーマルの経緯、現状、MOX燃料とは [2011/06/14]

【参考資料】
★日本の原子力発電所の発電総出力と使用済み核燃料貯蔵量 本川裕さんのサイト『社会データ実情図録』

【個人的メモ】
★「石川和男の霞が関政策総研」 2014/5/19 もっとも現実的な「原発ゴミの正しい処し方」
★Togetter2013/10 高レベル放射性廃棄物の地層処分には、実際のところどれだけリスクがあるのか(by f_zebraさん)
★Togetter2013/07/13 使用済核燃料の中間貯蔵について(by f_zebraさん)
★Togetter2012/11/30 原子力委「高レベル放射性廃棄物処分に係る取組」について意見交換(by aquamasaさん)
★「Global Energy Policy Research」2012/11/5 放射能廃棄物についての学術会議報告への疑問 池田信夫
★「核情報」2010/10/11 使用済み燃料の乾式貯蔵への移行を訴える原子力規制委員会委員長
★NHK解説委員室ブログ 視点・論点2012/9/28 「学術会議からの提言・核の廃棄物をどうするか」

★諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について(2012年2月発行)
★諸外国における放射性廃棄物関連の施設・サイトについて(2012年3月発行)
★人工バリアシステムの安全機能の多重性に関する考察 2011/2/22
★深地層の研究施設計画 第1段階研究成果報告書 2007/3
★Togetter 使用済み核燃料の地層処分(最終処分)について(by softarkさん)
★「第2次取りまとめ」から、安定な地質環境の選定に向けて2002年12月
★なぜ地層処分が最適なのでしょうか 放射性廃棄物HP>高レベル放射性廃棄物:Q&Aコーナー>
★核燃料は「リサイクル」できる? (よくわかる原子力:原子力教育を考える会)
[ 2012/12/10(月) ] カテゴリ: 再処理~最終処分に関する | CM(0)
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