ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

ドライキャスク(乾式容器)貯蔵とは、実績なども含めて

[ 2012/11/12 (月) ]
 原発の使用済核燃料の中間貯蔵(一時保管)の手段として、ドライキャスクという設備が良く出て来るので、勉強しておきます。
 色々な資料から、ピックアップしたものです。

使用済燃料の中間貯蔵すなわち一時保管

 再処理能力にくらべて使用済燃料の発生量が上回ることが予測されるので、注目を浴びている問題である。貯蔵方式には湿式と乾式がある。わが国の原発では、主に湿式(使用済燃料プール貯蔵)により保管管理されているが、一部の原発の敷地内においては乾式(金属キャスク貯蔵)により保管管理されている。どちらの貯蔵方式も国内外において数十年の実績があり、安全に貯蔵する技術が確立されている。
乾式貯蔵は、湿式にくらべ運転経費が安いことと貯蔵に要する放射性廃棄物の発生量が少ないために経済性が高い。
出典:ATOMICA 使用済燃料の乾式貯蔵に関する研究

 使用を終えたばかりの核燃料は、放射線量も崩壊熱もきわめて高いので、原子炉の直近にある核燃料プールで貯蔵するしかありません。ただ、そのままではプールがすぐに一杯になってしまうので、1年後を目途に、発電所内にある共有プールに移されます。もちろん、水に漬けたままの移動という作業です。その後、そこで数年間冷やしてから再処理、というのが電力会社と日本政府の目論見でした。
出典:私設原子力情報室

 乾式貯蔵についての基本的考えは、使用済み核燃料からの崩壊熱が炉からの取り出し後約10年経過すると、空気の自然循環で冷却できるレベルに達するということだ。核燃料からの発熱量はキログラムあたり、運転中は30kW運転停止1週間後は100W10年後は2Wとなることだ。
出典:Togetter 乾式貯蔵

日本での実績・予定世界での実績は結構あるようだ)

 金属キャスク貯蔵方式は2つの原発において行っている。東京電力の福島第一原発では1995年より9基の金属キャスクが貯蔵されており、日本原子力発電の東海第二原発では2001年より貯蔵を開始し、2008年には使用済燃料を貯蔵中の13基に加え、新たに2基の貯蔵が行われる予定である。福島第一原発においては、2000年と2005年に、貯蔵容器の抜き取り調査が実施され、金属ガスケットなどの密封性および使用済燃料被覆管の健全性に問題がなかったことが確認されている。
キャスク福島第一 キャスク東海第二
福島第一 出典はこちら            東海第二 出典はこちら

 原子力安全委員会は、金属製乾式キャスクを用いる使用済燃料中間貯蔵施設のための安全審査指針を2002年に策定している。

 東京電力は、2005年に青森県・むつ市の使用済燃料中間貯蔵施設了承を得ている。東京電力と日本原子力発電は「リサイクル燃料貯蔵株式会社」を設立し、2007年に国に事業許可申請書を提出した*最大288基(3000t規模貯蔵)の金属キャスクを貯蔵することとしている。

 また、コンクリートキャスク貯蔵方式についても技術要件等が制定されるなど、実現に向けた環境が整備されつつある。
出典:ATOMICA 使用済燃料中間貯蔵技術

 * 現在の進捗
 むつ市のリサイクル燃料備蓄センターは建築中で2010/8/31に本体工事着工、2013年10月に事業開始の予定。
 金属キャスクを含む建設費は1,000億円程度となる見込み。この内、金属キャスクの費用が7~8割を占める。 価格
出典:貯蔵建屋工事(本体工事)の概要(リサイクル燃料貯蔵株式会社)
【つぶやき】ざっと見た限り、このHPの情報量は少ないようですね、もうちょっと丁寧な説明がほしい気がします

【追記】中部電力は、浜岡原子力発電所に使用済燃料の乾式貯蔵を行う施設の建設を計画中、とのこと。

金属キャスクの詳細

 熱伝達に優れ不活性ガスであるヘリウムガスとともに頑丈な金属製の乾式キャスクに封じ込め、貯蔵する方式です。
乾式キャスクの蓋は、一時蓋と二次蓋からなる二重構造になっており、それぞれに密閉性を高めるため耐久性に優れた金属シールがあり、二重蓋間をヘリウムガスで加圧し、圧力を常時監視できる構造となっています。
金属キャスクの図
出典:乾式キャスクの概要 日本原子力発電株式会社

貯蔵施設の概要
出典:乾式キャスク貯蔵施設の概要 日本原子力発電株式会社

 10年?(20年?)経って崩壊熱は下がったとはいえ放射線量は強いので、燃料の装荷と一次蓋の装着は燃料プール中で行い、その後、除染ピット内でキャスク内部及びガスケット部の水を排水後、真空乾燥操作を行い水分を除去する。この後、二次蓋を取り付けて輸送及び貯蔵される。真空乾燥を行うのは、各部の水による腐食への対策と、貯蔵期間中の内圧の上昇を抑えるためである。

 装荷は“燃料集合体”の形で行われる。
別エントリーの★燃料集合体および燃料棒、燃料ペレットなど に燃料集合体の構造などの情報があります。

【つぶやき】
 臨界防止機能について素人の疑問(専門家が決めたことなので“そうなのかレベル”のことですが)
中性子吸収材を加えた仕切版(ほう素添加ステンレス鋼)を使ってますが、保管中の使用済燃料に臨界の可能性はあるんでしょうか?


 福島第一原発の金属キャスク貯蔵設備に関して興味深い情報が結構ありますので抜き書きします。

現在9 基(中型4基、大型5 基)の乾式貯蔵キャスクにて408 体の使用済燃料を貯蔵している。

共用プールの空き容量を確保するため、共用プールに貯蔵中で健全性が確認された使用済燃料を乾式貯蔵キャスク及び輸送貯蔵兼用キャスクに装填し、キャスク仮保管設備に保管することを検討している。

乾式キャスク表面の線量率が2mSv/h 以下及び乾式キャスク表面から1m の点における線量率が100μSv/h 以下となるよう設計されている

設計貯蔵期間は、乾式貯蔵キャスク:40 年輸送貯蔵兼用キャスク:50 年である。

キャスク保管建屋貯蔵棟の天井付近まで冠水した痕跡が確認されており、貯蔵中の乾式貯蔵キャスクは全数が一時的に水没したとみられる。
乾式貯蔵キャスク及び支持構造物の外観観察において、容器本体には冠水時のゴミの付着や汚れの他に、擦り傷が確認されたが、地震による変形等の構造に影響を及ぼすような異常はみられなかった。
 ブログ主補足:東電のキャスクは横置き保管、上のほうの写真を参照

棒温度計にて乾式貯蔵キャスクの胴部表面の温度を測定した結果、25.0~30.0℃程度(周囲温度14.0℃)と震災前の周囲温度が同程度のときの表面温度と同程度であり、また警報値を十分下回っており、異常はみられなかった。

震災前に可搬式線量計にて測定した乾式貯蔵キャスクの線量率は、表面線量率は4.5μSv/h、また表面から1m 位置での線量率は1.35μSv/h であった。一方、震災後、可搬式線量計にて測定した乾式貯蔵キャスクの線量率 は、胴部の表面線量率が2.0~4.0μSv/h 程度、また表面から1m 位置での線量率が2.5~4.5μSv/h 程度 と設計基準を十分に下回っており、異常はみられなかった。

Togetter 乾式貯蔵 (by mmkazesanさん)
 飯泉仁@aquamasaさんによる米国のコンクリートキャスクに関する解説です。(一部は上の方にに引用済み)

問題をもっとも現実的に考え提案しているのが、Frank von Hippel プリンストン大教授で、彼がこの難問の解として提案しているのは、乾式キャスクによる中間貯蔵である。→「核燃料サイクルを再考する」(日経サイエンス 08年10月号)

同様な使用済み核燃料冷却貯蔵をJAEAで研究炉の使用済み核燃料について行った例がある。なお教授提案のキャスクにかかる経費は1基100万ドルである。

安全を見越して、水中で20年ほど貯蔵した後、写真のキャスクに移す。キャスク2基に百万キロワット原発の一年分の使用済み核燃料を収めることが出来、これを集中してでなく,各原発サイトに貯蔵することが経済的だとしている。

米国ではすでに実用化していて、写真はコネチカット州のYankee原発(廃炉済み)のもの。じつは日本でも六ヶ所村に建設する計画がある。vH教授は、一ヵ所に集めるより各原発に置くことを推奨している。日本では地元了解が得られるかが問題。

キャスクがテロリストに襲撃されたら,という疑問はあるが、分厚いコンクリートにおおわれていて、対戦車砲で攻撃しても、使用済み核燃料破損は一部であり、飛散する放射性廃棄物は僅かであって攻撃の対象とはなりにくい。大規模水中貯蔵プールが爆撃されるほうがよほど怖い。

乾式貯蔵の意義は、核燃料サイクルを選択することなく、使用済み核燃料の最終処分問題の解決までの時間稼ぎができることである。百年は貯蔵可能である。その間に技術的・経済的状況が劇的に変化すれば,取り出して再処理または消滅処理などの解決策に転じることも可能である。

サイクルを行うとしても、高レベル廃棄物最終処分問題は変わらず存在し、特に国土が狭く地震の多発する日本では、地層処分は実現不可能だと私は考える。核兵器廃絶が実現するような時代状況になれば、処分問題も多国間で国際的解決ができるのではないかと考えている。

参照した論文:前記日経サイエンスのほか、Managing SF in the US.(2007)A nuclear waste solution(LATimes 09/9/15)Managing SF from Nuclear Power Reactors: Experience and Lessons from around the World.

金属キャスクとコンクリートキャスクの比較

金属キャスクとコンクリートキャスクの比較1-2金属キャスクとコンクリートキャスクの比較2-2

キャスクの経済性比較表1-3-2は、文献*におけるキャスク(固定費)の経済性比較の例である。この種の公開文献は、きわめて限られており、実際のコストはそのときの条件により異なる。同文献には、原子力発電所やMRS貯蔵等でのハンドリングコストも記載している。固定費と運転費を合計した全システム費用で比べると、コンクリートキャス貯蔵は金属クキャスク貯蔵に比べて10~20%低コストとされている。価格、単価
* Lambert, R.W., Zabransky, D.K. and Massey, J.V.:“Evaluation of Comparative System Economics and Operability of Concrete Casks for Fuel Storage”Proc.Waste Management(1992)
出典:なぜコンクリートキャスクか(中間貯蔵技術としてのメリット)(電力中央研究所 2006年2月)

【つぶやき】
 大きな違いは自然冷却の方法である。
 金属キャスクは直接その表面を自然冷却、コンクリートキャスクは吸排気口があり内部に収納したキャニスタ表面を自然冷却。(キャニスタには放射線遮断効果はない)
 どちらの方法がよいか?は専門家に検討して結論を出してもらえばよいかと。
 なお、キャニスタへの燃料装荷は燃料プール内で作業する。


つぶやき

 原子力発電所を持つほとんどの国は乾式貯蔵方式を導入しており、50年前後~100年程度の一時貯蔵(中間貯蔵)ならばリスクの少ない方法だ、ということが判りました。
 最終処分(地層処分)に対する科学的見解が割れている現状?や高速増殖炉・再処理工場をどうするかとセットでの解決が求められている状況なので、当面この手段を使って、急がずじっくりと検討するが現実的な対応と思いました。


関連エントリー

★9.3トンの分離プルトニウム保有、核不拡散問題 [2012/12/14]
★使用済み燃料の“再処理”と“直接処分”の比較など [2012/12/10]
★燃料集合体および燃料棒、燃料ペレットなど [2012/11/26]
★ドライキャスク(乾式容器)貯蔵とは、実績なども含めて [2012/11/12] ←本エントリーです
★高速増殖炉の原理、歴史、現状、再処理工場 [2011/06/15]
★プルサーマルの経緯、現状、MOX燃料とは [2011/06/14]

【参考】
★日本の原子力発電所の発電総出力と使用済み核燃料貯蔵量
 本川裕さんのサイト『社会データ実情図録』

【個人的メモ】
輸送貯蔵乾式金属キャスク(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)
ここの写真で大きさのイメージが掴めます。
★「核情報」2010/11/6 原子力に関する日本の決定は、国内問題─日本のプルトニウム計画は国際問題
フランク・フォンヒッペル教授(上の方の飯泉仁@aquamasaさんの出典と同人物)の講演内容で、一読の価値があるかと。
★「ATOMICA」海外諸国の使用済燃料貯蔵の現状 (04-07-03-17)
[ 2012/11/12(月) ] カテゴリ: 再処理~最終処分に関する | CM(0)
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