ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

怪しい科学論文なんて結構ある、という事実

[ 2012/08/20 (月) ]
『当該ヤマトシジミ論文のコメント欄に批判が掲載された』を追記しました。2012/9/30
『個体の異常頻度の検定などについて、bloom先生のコメント』を追記しました。2012/8/21


 一連の放射線がらみの勉強で、色々なことを学びましたが、その一つが表記のことです。
 個別には、バンダジェフスキー論文児玉論文(チェルノブイリ膀胱炎のこと、3項に記述)などでその認識を強めてきたのですが、今回、新たな騒ぎがあり関連情報を含めてアーカイブさせて戴きます。

1.その今回の騒ぎとは

 琉球大の大瀧丈二氏がscientific reports誌に出した「原発事故がヤマトシジミ蝶の突然変異を誘発した」という論文 The biological impacts of the Fukushima nuclear accident on the pale grass blue butterfly に関する論議です。

 ★大阪大学大学院生命機能研究科のサイト⇒パターン形成研究室〈近藤滋教授〉⇒「細胞工学のコラム⇒近藤 滋 教授:生命科学の明日はどっちだ!?⇒番外編として掲載されている「原発事故でチョウに異常」という論文は、壮大な「釣り」ではないのか?

近藤滋教授が、“筆者が非難を受ける事が必須の論文をなぜ書いたか?”という推論の形で論説しておられます。表記のことに関して得る事が多い論説でした。

恐縮ですが部分的に引用させて戴きます。原文にあるリンクは反映していません。できれば原文の通読をお勧めします。小見出し加工、太字加工はブログ主によります。

発端

 大瀧氏の論文が共同通信、時事通信で取り上げられ報道された事である。
 論文内容を簡単に解説すると以下のようになる。
 「大瀧氏らのグループは福島を含む東日本の各地で、事故後の5月からヤマトシジミを採取、非常に多くの個体が形態と翅の模様に変異を持っていることを発見。さらに子の世代でより高頻度の変異が起きることを確認。また、人工的に放射能を当てた場合でも同様の変異が起きることを確認。これ等の事実から、原発事故の影響が野生の昆虫に出ている、とした。」
 このタイムリーな記事は、反原発の人たちの間に広まり、さらにマスコミ方面でも拡散をしているようで、ついにはBBCでも取り上げられたらしい。
 この時期に、この内容の論文が報道されれば、即座に広まるのは容易に想像がつく。

その一方で、一般マスコミの報道後に、研究を批判するサイトが複数立ちあがっている。

 批判の主な理由は以下のとおりである。
 「ヤマトシジミは、現在棲息範囲が北上しつつある種であり、その北限(東北地方)においては、非常に高い頻度で形態や翅の模様に変異がみられる。したがって、このような放射線の影響を測定するには、全くふさわしくない。なんで、わざわざヤマトシジミを使ったのか?しかも、通常時でも変異が出ることを報告しているのも大瀧氏自身である。サンプルの数が異常に少ないことからも、結果ありきのずさんな報告ではないか?」

 (中略)だから、おそらく、今後は批判的な意見が主流を占めていき、この「事件」もゆっくりと収束していく事になると予想する。

だが、不思議に思うのは、なぜ著者らは、このような<突っ込まれるに決まっている>大穴の空いた論文を出したのか?ということである。

 世間の注目を浴びることが確実で、しかも大穴の空いた論文であれば、批判の集中砲火を浴びることは、容易に想像がつく。批判の方に分があることが、研究者の間で広まり記憶されれば、今後の論文掲載、研究費の取得に、致命的な影響を与えるはずだ。研究者であれば、それを予測できないはずがない。それをあえてやるからには、何か隠し玉を持っているか、あるいは、全く別の意図があるのではないだろうか????

 穴だらけの論文を書く意味は??と考えているうちに、昔、似たような事件があったことを思い出した。有名なソーカル事件である。

(中略)

 もしかすると、大瀧氏はソーカル事件の再現を狙って、マスコミや生命科学者を釣り上げたのではないだろうか?

考えてみれば、今回の「事件」は、科学と報道の在り方に対して、大きな問題点を提示する。

 まずマスコミ自身が「報道する内容に対して全く理解していない」事を暴露することになる。

 そんなことは、研究者の間では常識だが、一般人はそう思っていない。筆者(近藤)自身もかつて新聞の科学部(毎日新聞)の方と話して驚いたのだが、科学部は極めてマイナーな部署で、部員が6人しかおらず、しかも半分以上が文系であり、もちろん博士号を持っている人などいなかった。論文を自力で読む能力もなければ、批判する能力も期待できないのである。そんな集団が、社会的に極めて影響力のある記事を書いているのである。
 今回の事件は、極めて社会的に重要な件に対して、<説明されれば中学生でもおかしいと解る>内容の論文が、一般マスコミに報道されてしまった訳だ。マスコミの科学に対する理解力が皆無に近い事を知らしめるのには、理想的な例であると言わざるを得まい。

 次に、インターネット社会における科学的な意識の健全性が、どの程度のものであるかを、記事の広がりと、それを批判する意見の追いかけっこ、と言う形で確認することができる。

 これも結構興味深い。本来であれば、頻繁にマスコミに出ている著名学者(自称学者を含む)の人たち、例えば、脳科学のもじゃもじゃ君などが、即座に反応して、はっきり否定するなりの行動を取ってくれれば良いのだが、どうもああいう人たちは、そういった役には立たないようだ、なんて事が解ってしまう。
 そもそも、健全な(と自分で思っている)科学者が、よってたかって批判しても、この手の記事の拡散を止められない(あるいは止める努力をまじめにしない)ということが解れば、それはそれで科学者本人達(もちろん筆者を含む)に突き付けられた、大問題である。

 さらに、科学界の抱えている問題点も浮き彫りになる。

 本来、科学は「客観的に判断できるはず」なので、論文が査読を経て専門誌に掲載されるということは、形式的には、「正しいと認定された」と言う事になる。もちろん、これは理想である。著者・査読者による勘違い等はいくらでもあるから、(捏造を除いても)間違い論文が多数あるのは当然であるが、「そうあるべき」という点に関しては、皆同意見だろう。
 しかし、最近増えてきた新しいスタイルの雑誌、今回の論文の掲載誌であるscientific reportなどは、「実験手技などに問題がなければ基本的に掲載。評価は出版された後でやってくれ」というスタンスである。このスタイル自体に関しては、特に問題があるわけではない。(現在の査読のやり方も大きな矛盾*1を抱えている)ただ、「評価がなされていない論文が出版される」という事実を、マスコミを含む一般社会が、正しく知らないと、非常に危険な事が起きる可能性があるだろう。

(中略)

 で、「あれは科学者生命を賭した釣りでした」という続報を、文芸春秋あたりを狙ってせっせと書いているのではないだろうか。もし本当にそうだとしたら、「参りました」と頭を下げるしかないかなあ。
どうでしょう?
この推理、あたってますか?


★J-CASTニュース 2012/8/17 「原発事故でチョウに遺伝的異常」准教授論文に異論相次ぐ  メディアには珍しく異論が報道されています。 (上記の論説紹介を含む)

【追記】 *1 【続】怪しい科学論文なんて結構ある、という事実にこの解説があります。

【追記】 生物学者bloom先生から、幾つかのコメントを戴きました。論文の評価に大きく関係する情報のみ本文に移植しておきます。

2012/08/21 00:23 『ヤマトシジミ論文は穴だらけ』より

scientific reports は最近始まったばかりのオープンアクセスジャーナルなので impact factor はまだ決まっていません。正直、現時点での査読はユルユルではないかとヤマトシジミの論文を見て思いました。

2012/09/07 12:06 『専門家の批判コメントが入り始めました』より

元々科学雑誌ではなく科学読み物的な位置づけで、査読もほとんど行われていないので、その分批判コメントでバランスを取るというスタンスの雑誌のようです。

2012/08/21 00:23 『ヤマトシジミ論文は穴だらけ』より

私が気になったのは個体の異常頻度を目視に頼っていることです。
A conventional anatomical microscope was used for abnormality identification. An external morphological examination of the entire specimen was performed. All abnormalities were searched for by two persons, A.H. and C.N., to avoid possible inter-personal discrepancies in the assessment of morphological abnormalities.

2人の研究者が話し合って決めた・・という、細胞の形態観察を仕事にしている私には考えがたい方法ですね(本当に conventional なのだろうか?)。
私達の場合は画像解析で細胞の形態をデジタル化し、自分達が決めた法則(○マイクロメートル以上の長さ、○マイクロメートル以下の幅の突起のみを糸状仮足と規定する、など)に従って淡々と=人間の判断が入らないように数値化します。

二重盲検法(Double blind test)を使っているようでもないし、Atsuki Hiyama さんと Chiyo Nohara さんが「異常だ」と決めれば異常個体になる・・というのは科学的ではないです。

野原さんは生物学の研究を始めたばかりのようですし、twitter を見る限りはトンデモな方々がお好きなようなので、科学的センスにも疑問ありです。

2012/08/22 00:42  『昆虫を使っている方に聞いてみました』より

野生の昆虫はそもそも変異要素を論じる材料には向かないという話のようです。


【追記】 (冒頭に引用した)近藤滋教授が、コラムで“その後”を解説しています。
第十五回:科学者はみのもんたに勝てるのだろうか?
(ごく一部のみ引用)

●ネットピープルによる査読の健全性は?
 (前略)
 どうなるかと興味を持ってみていたが、説得力は、論文の内容に疑問を呈するサイドにあったため、どうやらこのニュースは、それほど大きくならずに終わったようだ。
 個々の研究者は、自由に研究発表をする機会を得、しかし、それをネットに住む住人(この場合はほとんどが研究者であった)が正しく判断する。なんだか理想的である。はからずも、ネット社会は健全であることを証明したのである。
 また、この件が大騒ぎにならなかったのには、大新聞が報じなかったことも大きい。筆者が直接科学部の記者に聞いた話では、その記者は沖縄まで言って、論文の著者に直接話を聞いたのだが、サンプルの数が少ないなど、疑わしい点があったので、(記事にしろという上司のプレッッシャーに逆らい)あえて記事にはしなかったとか。こうした、自制力があるうちは、まだまだ科学リテラシーの健全性は捨てたものではないと感じる。
 一方、反対に役にたたなかったのが、日頃マスコミに出てくる自称「科学者」の人たちだった。彼らが本当に「科学者精神」を保っているならば、このような問題に対しては真っ先に反応し、「科学的な判断」を示してくれれば良かった、というか、そうでなければ「科学者」語る価値はない。しかし、残念ながら彼らはそういうことには興味が無いらしい。芸術とか、経済のことはやたら話したがるのになあ。
 (後略)



【追記】
2.scientific reports誌の当該ヤマトシジミ論文のコメント欄に、放射線医学の専門家の「問題が多すぎる」という批判が掲載

http://www.nature.com/srep/2012/120809/srep00570/full/srep00570.htmlの一番下です。
結論部分のみ和訳しました。(つたないです。)

2012-08-30 04:02 AM
(前略)
結論として、本研究で報告された結果は、その内包する矛盾、および、従来からのより包括的な昆虫に関する放射線生物学の研究との適合性の両方に起因する疑いがあると見なされるべきである。
本研究?の中心的主張である、福島原子力発電所からの人工放射性核種が[ヤマトシジミ蝶]に生理と遺伝子損傷を引き起こした?、という、このステートメントは懐疑的であり、研究データが実際に立証することができるすべてのものを超えている。
故に、本研究?のセンセーショナルなクレームは、これらの比較的低環境放射線量への曝露が重大な健康リスクを招くという誤った結論で住民を怖がらせるために使われるべきではない。

ワシントンDC
ジョージタウン大学
放射線医学科と保健物理プログラム
Timothy J. Jorgensen, PhD, MPH(MPH、博士、ティモシーJ.ヨルゲンセン)

(以下、原文)

Comments
2012-08-30 04:02 AM
Timothy Jorgensen said:August 21, 2012

(前略)
In conclusion, the results reported in this study should be considered highly suspect due to both their internal inconsistencies and their incompatibility with earlier and more comprehensive radiation biology research on insects. The study?s central assertion is that ?artificial radionuclides from the Fukushima Nuclear Power Plant caused physiological and genetic damage to [the pale grass blue butterfly]?. This statement is incredulous and goes well beyond anything that the study data can actually substantiate. Therefore, this study?s sensational claims should not be used to scare the local population into the erroneous conclusion that their exposures to these relatively low environmental radiation doses put them at significant health risk.

Timothy J. Jorgensen, PhD, MPH
Department of Radiation Medicine and the Health Physics Program
Georgetown University
Washington DC



【個人的メモ】
★Scientific Reports(要旨日本語版) ヤマトシジミにおける福島原発事故の生物学的影響
★論文日本語版(大瀧研究室) 福島原子力発電所事故のヤマトシジミへの生物学的影響
★大瀧研究室よるQ&A、補足 ヤマトシジミにおける福島第一原子力発電所事故の影響の論文への質問等につきまして

★「むしブロ+」2012/8/13 ヤマトシジミの奇形は原発の影響によるものなのか
★「Togetter」ヤマトシジミの異常は原発事故の影響? by hashimoto_tokyo
★「Not so open-minded that our brains drop out」2012/8/14 放射能の影響でチョウに異常が生じたとする大瀧准教授、ホメオパシーセミナーでかく語りき


3.生物学者bloom先生による疫学調査などの説明

 児玉論文への反論は、既エントリー“チェルノブイリ膀胱炎”説への明快な反論。・・・に紹介してますが、その中から今回の表題に関連するコメントのみ転記します。
(転記)

疫学調査だけではリスクは論じられない。
疫学調査は統計的な操作である程度の印象を変えることが出来ます。
・一般の方の中は論文に書かれたことは全部正しいと思う人もいるようですが、インフルエンザでも放射線でもバラバラなデータとそれに基づく仮説が多数出ています。
他の研究者が珍奇な説を否定するような実験をしないのは、メリットが無いからです。


 以下は、最近の他ブログへのコメントからの引用です。

・もう一つ、物理系の研究者と話して驚いたのは、生物系の論文にガセが多いということを、非生物系の人が知らなかったことです。
・私の見積もりでは世間に出回っている生物系の論文の1割は意図的なねつ造や手抜きデータが入っています
特に疫学調査は自分のブログ記事で解説したようにごまかしが効く手法なのです。
・チェルノブイリ膀胱炎とか、心臓にセシウムが、胎児に奇形が・・という研究は全て疫学調査のカテゴリーに入ります。
・生データは本人しか持っていないので他人は追試出来ず、「だってボクはあの場所でそういう現象を見たんだも〜ん」と言いたい放題です。
・福島放棄を勧める自称?研究者が拠り所とする論文はほとんど疫学調査です。


【追記】つい最近のコメントです。

生物系の論文のガセ率は、
疫学調査(チェルノブイリ膀胱炎とか)>野外調査(ヤマトシジミとか)>動物実験=細胞実験
だと感じています。



つぶやき

 報道での専門家の知見紹介や、ネット上の論議で、“こういう論文がある” “この論文にはこう書いてある”などを見ますが、本来はその論文が科学的な信頼性のチェックを受けているか?が大切なことなんですね。
 具体的には、
 ・査読(peer review)されているか
 ・その分野で科学的に信頼できる論文誌に掲載されているか
などですが、報道ではスルーしていますし、素人には難しい見立てです。
少なくとも、それらの観点からの問題を指摘されているものや、専門家による反論が多くて賛同が少ない論文は信頼性が低いと判断すべきと理解しました。(反論に対する反論があれば別でしょうが)
 

関連エントリー

★【続】怪しい科学論文なんて結構ある、という事実
 本エントリーおよびbloom先生のブログのコメント欄に寄せて戴いた、わりと普遍的な関連コメントも転記しています。

おまけ

 (本ブログでも幾つかの既エントリーで紹介してますが)福島で頭が下がる活動をされている坪倉正治医師の論文が、JAMA (Journal of American Medical Association アメリカ医学会誌)に掲載されました。

 ご自身が経緯や反響などをご説明されています。(本エントリーの主題の復習にもなります。)
 ★「内部被曝通信 福島・浜通りから」測定結果の論文が載った。その意味は……坪倉正治

 ネット上では、称賛の声が多く見られますが、こんなトホホなリアクションもあったようです。



【個人的メモ】
[ 2012/08/20(月) ] カテゴリ: 怪しい放射線論文 | CM(15)
Re: 研究費がカットされている?
bloomさん

実態を補足説明して頂き、ありがとうございます!!
[ 2013/07/10 00:27 ] [ 編集 ]
研究費がカットされている?
寄付を募っていることは分かりますが、国立大の研究費(校費)はよほどの不祥事を起こさない限りは各大学のルール通りに配分されます。

大瀧研が校費以外の研究費が獲得出来ていないかは分かりません。
科研費分くらいなら真面目に検索すれば分かりますが、調べる気にもなりません。

あの程度のいい加減な研究なら、往復の交通費だけで足りますけどね。
[ 2013/07/09 22:46 ] [ 編集 ]
http://w3.u-ryukyu.ac.jp/bcphunit/kihu.html
琉球大の大瀧研究室は案の定研究費がカットされ、研究継続のために
寄付を募っている模様です。
[ 2013/06/26 22:25 ] [ 編集 ]
和訳有り難うございます
学会後も和訳が出ていなかったらちょっと作ってみます。

「悪意の情報」を見破る方法・・という本がネットニュースで紹介されていますが、ここに書いてあることは私達が論文を読む時に気を付けていることです。
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2012/09/post-cf6e.html
[ 2012/09/07 22:42 ] [ 編集 ]
Re: 論文のサイトに投稿された批判コメント
scientific reports誌のヤマトシジミ論文のサイトに放射線医学の専門家の「問題が多すぎる」というコメントが投稿されています。
http://www.nature.com/srep/2012/120809/srep00570/full/srep00570.html の一番下です。

結論部分のみ、つたない和訳しました。

2012-08-30 04:02 AM
(前略)
結論として、本研究で報告された結果は、その内包する矛盾、および、従来からのより包括的な昆虫に関する放射線生物学の研究との適合性の両方に起因する疑いがあると見なされるべきである。
本研究?の中心的主張である、福島原子力発電所からの人工放射性核種が[ヤマトシジミ蝶]に生理と遺伝子損傷を引き起こした?、という、このステートメントは懐疑的であり、研究データが実際に立証することができるすべてのものを超えている。
故に、本研究?のセンセーショナルなクレームは、これらの比較的低環境放射線量への曝露が重大な健康リスクを招くという誤った結論で住民を怖がらせるために使われるべきではない。

ワシントンDC
ジョージタウン大学
放射線医学科と保健物理プログラム
Timothy J. Jorgensen, PhD, MPH(ティモシーJ..ヨルゲンセン、博士、MPH)

(原文)
Comments
2012-08-30 04:02 AM
Timothy Jorgensen said:August 21, 2012

(前略)

In conclusion, the results reported in this study should be considered highly suspect due to both their internal inconsistencies and their incompatibility with earlier and more comprehensive radiation biology research on insects. The study?s central assertion is that ?artificial radionuclides from the Fukushima Nuclear Power Plant caused physiological and genetic damage to [the pale grass blue butterfly]?. This statement is incredulous and goes well beyond anything that the study data can actually substantiate. Therefore, this study?s sensational claims should not be used to scare the local population into the erroneous conclusion that their exposures to these relatively low environmental radiation doses put them at significant health risk.

Timothy J. Jorgensen, PhD, MPH
Department of Radiation Medicine and the Health Physics Program
Georgetown University
Washington DC
[ 2012/09/07 17:49 ] [ 編集 ]
Re: 専門家の批判コメントが入り始めました
今のところ、ネットに和訳はないようです。
大汗かきかき、結論部分のみ和訳しました。
ここまでで、ご容赦を。
[ 2012/09/07 17:40 ] [ 編集 ]
ねつ造の手口
私は今まで色々なねつ造を見ているし、自分がねつ造をするように圧力をかけられたこともあるので、一番使いやすい手口についてだけ、簡単に解説しますね。

それは「都合の悪いデータを外す」と「測定ミスも疑われる
エキセントリックなデータを使う」です。

前者は実験区と対照区で差が出ては困る時、差が出ないと困る時、どちらでも使われる手口で、都合の悪いデータを「これは異常個体だから」「たぶん測定ミス」「実験が失敗したのかも」などの理由を付けて消去します。

当研究室では本当に異常個体なのか?測定ミスなのか?実験が失敗したのか?という議論や検証実験を経てからデータを削除させますが、それをやらずに恣意的にデータを選ぶ人は結構います。

逆に「この数値は1回しか出ていない(1サンプルしか出ていない)」を入れて平均値を変える手法もあります。
これは実験区と対照区で差が出ないと困る時に良く使われる手口で、私はチェルノブイリ膀胱炎の尿中のセシウム濃度で疑っています。
測定ミスでないことを確認するためには、同じようなデータが複数出るまで解析数を増やす必要がありますが、そのまま論文にしてしまった例はいくつか知っています。

顕微鏡観察で、稀にしか染色されない細胞や切片の画像(不適切な固定条件や染色条件によることが多い)を「常にこの構造が染色される」といった出し方をするのも同様の手法です。
バンダジェフスキーの「心臓にセシウムが溜まる」がこちらに相当するかも知れません。

他にもたくさんの手口を知っているのですが、学会後にでも解説します。

生物系の論文ねつ造事情は白楽ロックビル先生が詳しいと思います。
細胞生物学会のシンポジウムで研究者の倫理問題についてお話しして下さったことがあります。
ttp://www.haklak.com/

山崎茂明先生も「科学者の不正行為―捏造・偽造・盗用」というズバリな本を出しているので、詳しいです。
[ 2012/09/07 12:37 ] [ 編集 ]
専門家の批判コメントが入り始めました
ヤマトシジミ論文のサイトに放射線生物学の専門家の「解析手法と思考回路に問題が多すぎる」というコメントが掲載されています。

http://www.nature.com/srep/2012/120809/srep00570/full/srep00570.html

元々科学雑誌ではなく科学読み物的な位置づけで、査読もほとんど行われていないので、その分批判コメントでバランスを取るというスタンスの雑誌のようです。

こちらは学会直前でちょっと忙しいので批判の和訳を icchou さんにお願い出来ると助かります(でもどこかで掲載されているんじゃないかな?)
[ 2012/09/07 12:06 ] [ 編集 ]
Re: 私はアウトな人々だと思っています
実は、bloomさんの最初のコメントの本文引用で、その範囲に迷いがあったのですが、同業者だからこその厳しい見かたが判りました。
本文引用の最後の2行を追記しました。(追記の旨は記載していません)
[ 2012/08/22 01:13 ] [ 編集 ]
昆虫を使っている方に聞いてみました
昆虫を材料とする研究者は色々な学会にいるので大瀧先生を直接知っている方にはまだ行き当たっていませんが、昆虫を使っている方にどう思うか?聞いてみました。

「怪しい論文として話題になっている」
「飼育環境によって形態がばらつきやすいので、室内で実験をするなら温度他の条件をきっちり合わせる必要がある」
「形態解析はまだ未成熟な部分があるので(=統一された手法がある訳ではないので)目視も有り得るが、形態で見ること自体がね・・」
だそうです。
遺伝的形質が揃っているショウジョウバエの変異体は足に生える毛の数など数値化している例が結構あるんですけど、野生の昆虫はそもそも変異要素を論じる材料には向かないという話のようです。

ちなみに放射線を浴びたホタルは光らなくなるという話は全く聞いたことが無いそうで、いわきの騒動も知りませんでした。
[ 2012/08/22 00:42 ] [ 編集 ]
私はアウトな人々だと思っています
私は野原さんのツイートにはドン引きですね。

木下黄太に論文のニュースを拡散してもらって喜び、竹野内さんとお友達・・なんて方はプロの生物学者にはいませんから、思考回路のレベルが知れてしまいます。

ネットでざっと調べたところ、昭和30年生まれだそうなので現在は50代後半、愛知大学を2007年あたりに退職されているので(定年退官ではないみたいですね)、その後に琉球大学で生物学を学び始めたのではないかと思います。
お友達は「福島から関東の野菜は食べないで」と野原さんの論文を紹介していますね。
ネットには本人の思考や人脈が見えるので怖いですね・・

どうせ大学で勉強し直すならホメオパシーの先生など指導教員に選ばなきゃいいのに・・とも思っていますが、同じ研究者とは言え文系教員の生物オンチぶりはすごいので(自分は教育や政治を安易に語るべきじゃないんだろうと反面教師にするくらい)、大瀧先生に「反原発運動を研究で支えよう」などとそそのかされたのかもと思っています。


Chiyo Ushiro @chiyodon

福島原発事故が環境に与える影響について研究しています。主に食草による昆虫の被曝実験です。現在理学部大学院生、元大学教員(経営学部)。野原千代(旧姓&通称 後 千代)。

@KinositaKouta 木下さん、拡散ご協力いただきましてありがとうございました。(8/14)
@mariscontact 竹之内さん、以前はアドバイスいただきまして、ありがとうございます。(8/12)

http://leo.aichi-u.ac.jp/~backzemi/1.html
http://www.hoyu-kai.jp/dear/teac01.html
http://ameblo.jp/angi-andi/entry-11328370199.html
[ 2012/08/21 23:57 ] [ 編集 ]
カタバミ捕食のF0生存率に関して、謎か解けるかも。Bt菌  クルスターキ菌アイザワイ菌を検出できれば。 
[ 2012/08/21 21:49 ] [ 編集 ]
Re: ヤマトシジミ論文は穴だらけ

bloomさん、omizoさん

論文内容の解説、ありがとうございました。

“オープンアクセスジャーナル”は、また、一つ物知りになれました。

>私が気になったのは個体の異常頻度を目視に・・・
の部分は“なるほど”でした。
さらに、その判定者である野原さん(Chiyo Nohara)のツイッターを私も覗いてみましたが、結構な固有名詞(武田邦彦とか木下黄太とか竹野内真理などなど)や再稼働反対の言葉が出てきて、かなり引いてしまいました。(これと、科学論文の内容とは無関係との建前は理解していますが、これだけ偏りがあると、ですね。)

個体の異常頻度の検定の部分は、結構、ポイントとなる情報だと思いましたので、本文に移植させて戴きました。ありがとうございました。
[ 2012/08/21 11:42 ] [ 編集 ]
ヤマトシジミ論文は穴だらけ
ヤマトシジミの件は記事にしようか思案していたので、先に解説して戴いて助かりました。
また、私のブログやコメントの紹介も有り難うございます。

同じグループが2010年に「北のチョウほど変異が大きい」という論文を出している点も批判されていますね。
http://www.frontiersin.org/Epigenomics/10.3389/fgene.2012.00015/abstract

ちなみに scientific reports は最近始まったばかりのオープンアクセスジャーナル(大学などが契約して読む科学雑誌の方がまだ多い)なので impact factor はまだ決まっていません。正直、現時点での査読はユルユルではないかとヤマトシジミの論文を見て思いました。

近藤先生の記事から堀川大樹さん(パリ大学・クマムシ研究者、放射線生物学も専門)が放射線照射実験の穴を指摘した記事も紹介されています。
http://d.hatena.ne.jp/horikawad/20120813/1344814974
http://d.hatena.ne.jp/horikawad/about

「ここまでの野外個体の調査を見れば、かなり眉唾モノなのだが、なんと著者らは正常なヤマトシジミに低線量の放射線を照射すると奇形が生じたり死亡したりすることを示している。(中略)ところが論文を眺めていると、実験手法に問題点を発見した。著者らはヤマトシジミの幼虫をガンマ線照射装置の中で最大16日間閉じ込めたまま照射している。その一方で比較対照の非照射区の幼虫は通常の飼育環境で過ごしている。照射中の個体はプラスチック容器に閉じ込めたままにしていたようだが、このときに餌を与えていたのか、あるいはどのような温度や日照条件に置いたのかについては、論文に一切記述がない。」

まともな論文ならこの時点で差し戻しがあるはずです。
少なくとも私が査読者ならそうします(私もたまに査読をします)。

私が気になったのは個体の異常頻度を目視に頼っていることです。
A conventional anatomical microscope was used for abnormality identification. An external morphological examination of the entire specimen was performed. All abnormalities were searched for by two persons, A.H. and C.N., to avoid possible inter-personal discrepancies in the assessment of morphological abnormalities.

2人の研究者が話し合って決めた・・という、細胞の形態観察を仕事にしている私には考えがたい方法ですね(本当に conbventional なのだろうか?)。
私達の場合は画像解析で細胞の形態をデジタル化し、自分達が決めた法則(○マイクロメートル以上の長さ、○マイクロメートル以下の幅の突起のみを糸状仮足と規定する、など)に従って淡々と=人間の判断が入らないように数値化します。

二重盲検法(Double blind test)を使っているようでもないし、Atsuki Hiyama さんと Chiyo Nohara さんが「異常だ」と決めれば異常個体になる・・というのは科学的ではないです。

野原さんは生物学の研究を始めたばかりのようですし、twitter を見る限りはトンデモな方々がお好きなようなので、科学的センスにも疑問ありです。
https://twitter.com/chiyodon
[ 2012/08/21 00:23 ] [ 編集 ]
http://www.nature.com/srep/2012/120809/srep00570/full/srep00570.html

のFig. 5d/ e に関する、沖縄ヤマトシジミに福島でのカタバミの葉を食くさせて生存率の低下と形態異常の増加が観られることを示す。内部被曝に関する部分です。

この部分です。形態異常はゆらぎの範囲にですが。生存率の低下は、実験環境下の問題か、反証が難しい所を突いてくるでしょう。 
[ 2012/08/20 16:52 ] [ 編集 ]
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