ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

放射能忌避とマグロの有機水銀との違い

[ 2013/10/11 (金) ]
中西準子氏の論説を追記:2013/10/11
初回公開日:2012/07/31


 ツイッターで、 表題に関連のKontan_Bigcatさんを中心とした会話を目にしたのでアーカアイブさせて戴きます。さらに、マグロの有機水銀について勉強した結果もまとめています。

1.まずは会話の引用

 上記の会話から始まる連続ツイートです。

(以下、全文を引用。太字はブログ主による。)

@shanghai_ii 放射能は見えないから恐いのか? このフレーズ、よく書かれるんだけど、多くの化学物質は見えないよね。どこが違うのだろう。微量でも量に応じた害(LNT仮説)があるから? ダイオキシンなんかもLNT仮説を採ってる。僕は逆に放射能は極微量でも見えるから恐いんだと最近思い始めた

@Kontan_Bigcat やっぱり、今までなかったもの、人間にとってつきあいの浅いものだから、不安なんじゃないかなぁ。比較対象としていい例ではないかと思うのは、有機水銀のこと。人類と水銀のつきあいは長く、昔はいまから考えられないような使われ方をしていた。
 水俣病の悲惨さは万人の知るところ。一方、マグロや深海魚などに有機水銀が多く含まれることもよく知られており、特に胎児への影響が大きいことから、妊婦はこれらの摂取を控えめにするべき、ということもよく周知されている。
 発症濃度以下の有機水銀の影響もはっきりしない。だけど日本人は、マグロに過剰な危険を抱くこともなく、適切にコントロールできていると思う。これと同じことが放射性セシウムでできないのは、「つきあいが浅いから」では?

@shanghai_ii 「つきあいが浅い」のはその通りですね。マグロの例は、生活の中で妥協する一線を暗示してますね(それが正しいかどうかは別として)。水銀忌避ならばマグロは食べるべきではないっす。

@fishing_pippo 食品への忌避に関してだけなら「選択肢がある」ってのも大きいかもしれません。マグロがもし○○産のマグロは水銀が多いってなったらそこのマグロは忌避されるのかなーと今ふと思いました。

@Kontan_Bigcat そういう例で言うと、カドミウムによる農地汚染、コメの汚染などはよく知られているわけですが、「カドミウムが平均より高いコメ」を忌避する人が、それほどいるわけではないですよね。ゼロカドミウムを求めたらコメは食べられません。

@shanghai_ii カドミウムは過去のものじゃなくて、実害が今でも存在してると考えられてますね。http://t.co/GPIoeMWX カドミウム対策は結構セシウム対策に似てますね。 http://t.co/DiuKymP9

@shanghai_ii 基準値への信頼性ですね。あと、今後どのぐらいのスピードで下がっていくのかを予測できるとええんだけど。

 会話は、米のカドミウムからセシウムの基準値、東電の賠償金へと進んでいきます。Togetterに纏めておられるので参照ください。
●僕らの努力で東電の賠償金が下がるのは納得できない(by @Kontan_Bigcatさん)

2.マグロの有機水銀について

 これについて、ブログ主は“普通の食べ方をしている分には気にしなくて良い”位の理解しかありませんでしたので、少し、深堀りしてみました。

(1) ググるとトップにある安井至先生の論説です。

●「市民のための環境学ガイド」2005/8/21 マグロのメチル水銀
(一部のみ引用)

 魚中のメチル水銀に関わる報道は、2003年6月に大問題を起こしている。いわゆる、キンメダイ・メカジキ問題である。

 今回は、前回の厚労省の通達の改正版とでもいったもので、WHO・FAOが基準値をより厳しくしたことに食品安全委員会も対応したが、そのために厚労省もマグロに対応した、とも言える。すなわち、クロマグロなど、日本人にとってより一般的な魚種が加えられたところが新しい。

 2003年のキンメダイ事件が起きたのは、厚生労働省が出した報道資料が分かり難かったことが一つの原因でしょう。

 今回のマグロのメチル水銀報道で、果たして風評被害はでるのかでないのか。それを予測してみたい。

 多分、「でない」だろう。それは、2回目だからだ。1回目にある程度学習を済ませたメディアは、前回、非難された記憶をまだ持っていて、恐らく注意深く報道するだろう。NHKのニュースを見た限りでは、そんな印象だった。

 市民側もなんとなく聞いたことがある話題なので、慣れているのが大きいのではないでしょうか。妊婦はやはり胎児のことがすごく心配ですから、常識として残る可能性が高いと思います。本当のことを言えば、妊娠前から注意すべきですが。

 メチル水銀の胎児への影響は、そのエンドポイントすなわち、胎児に起こる可能性のある悪影響は、聴覚神経の伝達速度の若干の低下*
 そして、その危険性を回避することができる摂取量の限界は、一週間の摂取量で決められていて、
以前は、3.3 μg/kg/週であった。これは、体重50kgと仮定すると、24 μg/日に相当する。日本人のメチル水銀平均的な摂取量は、8.4 μg/日程度でまだまだ余裕があった。
ところが、WHO・FAOの合同の委員会が2004年6月にこの数値を、1.6 μg/kg/週に引き下げた。となると、同じく体重50kgと仮定すると、11.4 μg/日で、これだと日本人の一部では、基準を超して摂取している人が多そうだということになる。
 WHO・FAOの値は、日本人のように魚を多食している民族の場合には厳しすぎる、と考えられたのか、食品安全委員会では基準値を2.0 μg/kg/週という値に定めた。このあたり、もともと安全係数が掛かっているので、どのぐらい意味があるのか微妙なところですね。

 今回、この報道を市民に伝達するとしたら、何と何が重要だと考えられるかといった検討をしてみよう。

対象となる人が妊婦のみであることの記述→それ以外の人は乳幼児を含めて対象外でOK。
② 妊娠の可能性のある場合の追記→本当は1年前ぐらいから多少気にしたいところ。
③ 16種の魚介類のリストと摂取回数→下にリストが見つかる
④ マグロの場合、様々な場合まで記述→ツナ缶まで記述しているか。ツナ缶は問題ない。
⑤ 魚を食べること全般へのコメント→一般的には魚を食べることはお奨めであること。
⑥ 半減期的な考え方半減期が40~70日であるので、しばらく休めばまた食べられること。
⑦ エンドポイントの記述→胎児への影響は聴覚神経の伝達速度の僅かな低下*であること。
⑧ なぜ、今、情報提供するか→食品安全委員会が基準を強化したため。

(以下、新聞、テレビが実際に報道した内容の調査が続きますが、略)

* 水銀と健康(国立水俣病総合研究センター)に詳細説明があります。


 1回の食事でのマグロの摂取量を80gとしたとき、妊婦は週に2回までに制限すべきだということがその内容であり、それほど神経質になるようなものでもないが、無条件に健康によいと言える食材ではない。

 出典:http://www.yasuienv.net/RedTuna.htm

厚労省からの注意(2005年8月12)
厚労省からの注意(2005年8月12)
     出典:水銀と健康(国立水俣病総合研究センター)

【メモ】
日本生活協同組合連合会 2009/3/21更新 魚介類・鯨類の水銀についてのQ&A
食品安全に関するリスクプロファイルシート(2009/3/6 検討会用)

【追記】
(3) 中西準子氏が、厚労省による注意事項導出のプロセスの問題点2つの記事で指摘しています

雑感315-2005.9.7 水銀に関する厚労省注意(050812)03年6月に出された水銀に関する「注意事項」でのごまかしは修正されたか?(その1)

この記事では、2003年(H15年)に出された注意との比較で論説されています。以下、内容がわかるレベルの部分的な引用ですので、詳細は原文で確認ください。

いくつかの問題を指摘する。しかし、マグロを食べると危険というものではないし、妊婦の場合でも、平均値の2倍も摂取するというようなことがない限り問題はない

今の日本人の水銀によるリスクは、何が原因で、どのくらいか、もし減らすとすれば何を減らすべきかということがすっかり消されて、原理的に言えば、濃度だけの判断に戻った。
詳しく見れば、食べる回数を2週間に1回にしなさいというような注意は、最終的にはリスクを下げろということになる。しかし、現状がどうかということが分からない。注意に書かれた「2週間に1回のコビレゴンドウ」「1週間に1回のメカジキ」「1週間に2回のイシイルカ」を見ると、コビレコンドウのリスクが最も高いと誰もが思うだろう。そのように思わせるようになっている。しかし、これは、リスクが高いのではない、濃度が高いだけである。

一番重要な情報は、通常の生活で何からどのくらい摂取しているのか、もし減らそうとすれば、どうすればいいかであるが、それがない。いきなり、濃度によって食べる回数が指定されているのである。現実のリスク源についての情報を秘匿したのである。

まず、軒並み濃度が下がっている。

平成15年度注意事項の中で最も濃度が高かったインドマグロは、今回は検査結果のリストからも姿を消した。

基準の計算に人の体重の値が使われている。通常、厚生労働省は日本人の平均体重として50kgを使ってきた。今回は55.5kgが使われた。妊婦の平均体重は55.5kgだという。体重を50kgとして、メチル水銀の濃度が15年度に出された今回より高い値で厚労省の方式で計算すると、クロマグロの場合、「2週間に1回」の部類に入る。つまり、コビレコンドウと同じグループになる。
先に、濃度の順に並んでいるだけと言った。しかし、それは正確な表現ではなかったことが分かる。つまり、濃度の順だが、どの分類に入るかは重要な点なのである。


雑感316-2005.9.15 メチル水銀の胎児への影響(厚生労働省や食品安全委員会は、何をしたのか?(その2)) メチル水銀の規制値の国際比較

専門的な話で恐縮:少し面倒だけど、どこにも書いてないので書いておく。

規制値(耐容摂取量)は、どのようにして決まっているか?
メチル水銀の胎児への影響を考慮した耐容摂取量は、
JECFA*が1.6 μg/kg/週、日本が2 μg/kg/週、米国EPAが0.7 μg/kg/週としている。
* JECFAとはFAO/WHO合同食品添加物専門家会議
これらの値は、すべてほとんど同じ疫学研究を基にしているが、少しづつ数値が違っている。どこが違うのか、それを見ておくと、規制値とか標準値に対してゆとりをもって接することができるようになる。ただ、私がいつもいつも書くように、だからと言ってごまかしてはいけないし、その都度異なるパラメータをもってきてはいけない。規制値は、相当柔軟性があるものだ。しかし、それでもなぜその数値をとるか、説明は一貫していなければならない。

メチル水銀と胎児影響
厚労省の説明でも、食品安全委員会の評価書で書かれているように、メチル水銀規制の基になっている影響は、極めて微々たるものであって、しかも、フェロー諸島の調査では影響が出たが、セイシェルでは見られないというように、通常の感覚では無視できるほどの小さな影響である。しかし、一応このフェロー諸島での結果と、セイシェルでは出なかったという結果から結論が出されている。

(以下、中西氏の説明を超要約すると)

中西氏、一日太陽摂取量
の導出のなかで、不確実性係数の違いが規制値に大きく影響しており、
JECFAは6.4日本が4米国は10を採用している。

『不確実性係数』=『代謝能力の個人差』×『毛髪中濃度から血中濃度への換算のばらつき』

前者の『代謝能力の個人差』については妥当。しかし、JECFAが3.2に対して日本が2とした理由を説明すべきである。根拠を示し、その数値を他の場合にも使うことである。水銀の場合だけ、他の場合と違う数値を使いその説明がないとすれば、リスク評価ではなく数合わせである。

後者の『毛髪中濃度から血中濃度への換算のばらつき』については、日本はJECFAの2という係数をそのまま受け入れた

JECFAの説明と、この係数を導入することは間違いだというのが、私の主張である。

日本はJECFAをすべて受け入れると魚は危険となるので、『代謝能力の個人差』だけを3.2から2に変えてしまった。先にも書いた通り、その説明がない。

私が提案するとすれば、不確実性係数は、全体で、代謝能力の個人差の3.2か2である。

リスク評価とは説明である。その説明が、一貫していることが大切である。


(おまけ)
雑感220-2003.6.9「メチル水銀のリスク」
中西氏が、この記事のなかで、日本人のメチル水銀摂取量を基礎にリスク評価を行っています。
  • 水俣病⇒ 無視できるほど小さい(計算値6×10-8)(1億分の6)。
  • 日本人の妊婦(影響は胎児に出る*)⇒ 10-5(10万分の1) ~3×10-4(1万分の3)。
    *7歳時点での神経行動学的影響(本人や親が自覚できるような大きな影響ではない)

【追記】
水銀濃度が高い水産物 出典:日本生協連 魚介類・鯨類の水銀についてのQ&A
水銀濃度が高い水産物

魚介類の摂食に関する基準等既エントリーから転記
表5 魚介類等の摂食に関する日米欧の基準値
補足説明が日本生協連 魚介類・鯨類の水銀についてのQ&A にあります。

3.総水銀の摂取量

総水銀の摂取量
日本人の食品からの水銀(総水銀)の摂取量は、厚生労働省のトータルダイエット調査によると、2003年において8.1 μg/人/日(体重50kgで1.1 μg/kg体重/週)、このうち84%が魚介類からの摂取とされている。1994年から2003年の過去10年の平均は、8.4 μg/人/日1.2 μg/kg体重/週)と報告されている。
       出典:魚介類等に含まれるメチル水銀について

4.関連エントリー

水銀について基礎的な事

【メモ】
母親を「鮭やマグロは有害物質を含有」で危機感を煽る能力開発・知能UP専門家はやっぱりトンデモさん(五本木クリニック | 院長ブログ 2016/3/5)
雑感524-2010.6.23 クジラと水銀(その3)-太地町の毛髪中水銀値の結果をどう受け止めるか
雑感(その76 -1999.12.20)「メチル水銀による胎児リスク」
新潮45、1998年12月、環境ホルモン空騒ぎ

5.余談ですが、ググったトップページにこんな情報もありました。

●「きっこのブログ」2008/1/26 お寿司屋さんからマグロが消える日

 その筋で有名な人ですね。(閲覧はお勧めしません)

つぶやき
 
 中々興味深いものがありました。
 放射能は“閾値なし”、一方の有機水銀は“閾値あり”の違いや“放射能は極微量でも見えるから”はあるものの、リスクコミュニケーションの面で類似していることが起きているんですね。

 確かに、“慣れ”や“つきあいの深浅”はリスクの捉え方に対して大きなファクターになっている気がします。
 しかし、実際には、カリウムやラドンなどの自然放射能や過去のフォールアウトなど、“つきあいは深いのだけど事故前はほとんど知らなかった”訳で、これもポイントの一つかな、と思います。

 ちなみに“選択肢がある”ことは、放射能有機水銀の違いとは別のフェーズのファクターで、関谷直也准教授が仰る『風評被害が起こる条件』の一つですね。
●【風評被害02】関谷直也准教授の解説(前篇)

 余談の5項では、政府の隠ぺい陰謀説や、一部の危険を主張する学者の紹介や、ほとんどの先進国で絶対に食べないなど、危険の煽り方が今の放射能と似ていることに驚きました。

 さらに余談になりますが、下記のツイートが結構、的を得ていて同意です。一般人を対象に放射能に関するテストで国際比較をしたら日本はダントツの金メダルでしょう。それは果たして良いことなのか?(自戒もありますが)



関連エントリーはカテゴリーにひとまとめにしています。記事下部or左欄のカテゴリーリンクから、どうぞ。
[ 2013/10/11(金) ] カテゴリ: 食品中の化学物質,リスク | CM(1)
私も「調べて理解して自分の頭で考えよう」と多くの人に言いたくなるのですけれど、でも何でもかんでも各自が深いところまで調べたり考えたりしなきゃいけないっていう状況は分業が成り立ってないってことですよね。

医者の決定権は、パターナリズムと批判されてきたわけで、そこで米国型のインフォームドコンセントが要求されたわで。 セカンドオピ二オンとなることで、患者側の意思決定権が・・・。まさしく、「調べて理解して自分の頭で考えよう」となるわけで。

で、医療民事裁判で、裁判所は、説明義務違反という判断で、賠償を道める場合が多々あるわけで、患者の意思決定の情報提供を妨げた。

パターナリズムと批判しておきながら。「でも何でもかんでも各自が深いところまで調べたり考えたりしなきゃいけないっていう状況は分業が成り立ってないってことですよね。」
て、都合主義、言いとこどりでしか。

患者自身のことは、患者自身で決める。医者の勝手にさせない。との整合性は、どこにあるのか。
[ 2013/10/17 19:48 ] [ 編集 ]
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